Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:元ジャミトフの狗

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遅くなりました。北の海ラストです。


第11話

 

 

 

 海賊。それは海の無法者たちの総称である。

 

 海上で商船と遭遇すれば、容赦なく金品食料を奪うならず者。島に上陸したら住民を一方的に虐殺した上で、最後にはやはり略奪の限りを尽くす碌でなし。それが世間一般が想像する海賊の姿である様に思う。事実、その認識は()()()

 

 しかしながら、この世界における海賊の定義は少々特殊である。

 

 海で略奪行為を働く者たち()()が海賊と呼ばれるのではない。知的好奇心に突き動かされた冒険家もまた、場合によっては海賊と見なされることがある。

 

 重要なのは世界政府の判断。政府が海賊と認定すれば、それは海賊なのである。

 

 西の海(ウェストブルー)出身のニコ・オルビアはその好例だろう。もう十年以上前に亡くなった人物だが、彼女は初頭手配にして7900万ベリーという高額な懸賞金を懸けられた海賊である。しかしその実態は、歴史の本文(ポーネグリフ)の探索及びその解読を目的とした考古学者であった。

 

 だが政府は歴史の本文とそこに記された()()()1()0()0()()に関する情報の一切を規制している。その存在を知ることは許されても、研究と探索は重罪という訳だ。規制に次ぐ規制。世界政府にとって都合の悪い事実が歴史の本文に刻まれている事は明白である。

 

 しかし、この話においてそこはあまり重要ではない。

 

 着目すべきはニコ・オルビアという()()の結末が、歴史を追い求めた果てに生国諸共吹き飛ばされたという事実である。しかもただ歴史の本文が読めるというだけで、その娘さえも同額の懸賞金首になったという後談付きだ。世界政府の非情さと徹底ぶりがうかがえる

 

 

 では己が籍を置くハートの海賊団はどうか。

 

 

 歴史の本文云々の話は、実のところ我々も無関係ではない。

 

 船長たるローの本名はトラファルガー・D・ワーテル・ロー。 ”ワーテル” が忌み名で ”D” が隠し名であると、いつの日か彼女は告白した。ソレらが意味するところは、ロー自身も把握していないという。

 

 そしてどうにもこの ”D” という名は、この世界の歴史において非常に重要な意味を持つらしい。場合によっては本名の改竄すら厭わないのだから、政府の知られたくない情報が ”D” に隠されているように見える。或いは空白の100年にも関わっているのかもしれない。

 

 さて、 ”D” に纏わる話と歴史の本文(ポーネグリフ)が特大の厄ネタである事が分かった上で。ローは己の数奇な人生の意味を知りたいと、即ち ”D” の探究を決意している。

 

 当然のことながら、現時点における彼女の最優先事項はドンキホーテ・ドフラミンゴの打倒である。しかしトラファルガー・ローは()()()も見定めていた。

 

 

 ――手伝ってくれる?

 

 

 墓参りの帰り道。ローは己にそう問うた。答えは決まり切っている。俺個人としても、世界政府と天竜人には思うところがある。歴史の探求にも決して興味が無い訳ではない。何より、船長の意向を添えずして何が船員(クルー)か。

 

 

 ――勿論、どこまでも

 

 

 惚れた女に最後まで忠を尽くす。雪山で一生を終えるよりもよほど上等な人生だろう。

 

 

 と、そういう経緯で。ハートの海賊団は七武海の打破と謎多き歴史の追究を目的とした犯罪組織と相成った訳だ。世界政府としては、大変頭の痛くなるような海賊だろう。

 

 とはいえ当然ながら、それを口外する事はあり得ない。あくまでもハートの海賊団は打倒ドフラミンゴを目的とした海賊団である。歴史関連の話は、初期メンバーでのみの秘密だ。

 

 また、どれだけ海賊を自認しようとも。船長のローは無辜の民に対する略奪を良しとしない。その方針は一貫して、堅気には手を出さない、である。ただし相手が同業者であるのなら――

 

 

「な、何なんだお前らぁ!!」

 

 

 北の海(ノースブルー)のとある島にて。地に伏せるは人攫いを生業とする海賊団の頭目。髭の形が特徴的なこの男の名は、果たして何と言ったか。確か懸賞金は3000万越えの大物という触れ込みだったが、蓋を開ければこの通りだ。

 

「何って。見て分からない? 唯の海賊よ」

 

 敵頭目の喉元に長刀を突き立てるローは、つまらなそうに告げた。

 

 まずもって地力が違う。シャチとペンギンの兄弟が雑魚を一蹴し、ローは数度刃を振るうだけで敵船長を無力化した。己は特に何もしていないし、他のメンツは誘拐されていた人々の解放にあたっていたくらいだ。余裕の完勝である。

 

 交戦した理由は勿論――

 

「キャプテーン! お宝たんまりあったぞー!」

 

 金銀財宝が詰まった宝箱を抱えて、元気よく駆け寄ってきたのは白熊のベポ。知り合った当初と比べて、彼は随分とその体躯を大きくさせていた。身長が190㎝近くあるローが見上げるくらいなのだから、もう相当デカいと分かる。

 

「はい、良く出来ました。あら、1000万ベリーはありそうね」

「て、てめぇ!! それは俺の――」

切断(アンピュテート)

 

 何やら喚こうとした男の身体が真っ二つになる。

 

 だが流血はない。死んでもいない。ただローに()()()()()()()()()だけだ。しかしその奇怪な事実は男の正気を奪うのに十分だったようで、瞬く間に泡を吹いて気絶してしまった。気の毒である。

 

 トラファルガー・ローが有するオペオペの能力。手術と言う概念を大いに拡大解釈した、人体改造自在人間とでも言えば良いだろうか。

 

 究極の悪魔の実と称されるだけあって、その潜在能力は凄まじい。だが出来ることの範囲が広すぎて、明晰な頭脳を有するローでなければ使いこなせないだろう。それに加えてオペオペの能力を十全に行使するには、高度な医療知識も要求される。

 

 つまり癖が強すぎるのだ。己が食した悪魔の実がシンプルな動物系(ゾオン)で良かったと切に思う。

 

「ん? これは一体」

 

 ローが宝箱から取り出したのは、球状のガラス玉。その中には針らしき物がぶら下がっている。以前、俺が奴隷だった頃に見たことがあったソレは――

 

記憶指針(ログポース)か」

「記録指針?」

「ああ、偉大なる航路(グランドライン)を航海するなら必需品となる特殊なコンパスだ。ベポなら知っているだろう?」

 

 俺が話を振ると、白熊のミンクは「うん、おれ知ってる」と頷いた。流石は偉大なる航路出身の航海士。なら俺がわざわざ解説するまでもないが――

 

「説明しなさい」

 

 と船長に命じられたら是非もない。己が知る限りの事実を話した。

 

 偉大なる航路では特殊な磁場が常に生じているため、普通のコンパスは使い物にならないという事。また天候を予測する事は困難であり、海流に至ってはでたらめな動きを見せるため、記憶指針が無ければまず間違いなく遭難するという事。

 

 内容としては、少し調査すれば分かることだ。だが知らなければ()()である。偉大なる航路に臨むにあたって、情報収集が如何に重要であるかよく分かる事例の一つだ。

 

「やけに詳しいじゃない」

「一応、俺の出身地は偉大なる航路だ。言ってなかったか」

「……聞いてないわね」

 

 己の生国は偉大なる航路にあった、とある世界政府非加盟国である。そして奴隷となってからも聖地マリージョアで過ごしていた訳だから、今世の半分以上は偉大なる航路にいたことになる。残念ながら己にその実感はないが。

 

「まぁいいわ。貴方の話が本当なら、ここで()()を手に入れられたのは幸運という事になるのだけれど」

 

 ローの言葉に対し頷いて肯定する。

 

 記録指針がどういった市場で、どの程度の値段で取引されているのか。己では皆目見当もつかない。

 

 だが記録指針は偉大なる航路以外の海域では全く必要としない道具である。もし仮に北の海でそれを手に入れようとすれば、相当な手間が掛かる事は想像に難くない。

 

「……そう。なら、案外頃合いかしら」

「行くのか」

「ええ。丁度清算も終えた訳だし」

 

 北の海(ノースブルー)の治安はお世辞にも良いとは言えない。悪の大帝国ジェルマの陥落から300年。未だに戦争の火種は燻っており、国家同士の争いは激化の一途を辿っている。

 

 かつて珀鉛産業で栄えたフレバンス王国。傭兵ビジネスで有名な海遊軍事国家、ジェルマ王国。政府加盟国にして軍事力強化に余念がないドイル王国。

 

 戦争で経済を回している海域。それが現状の北の海である。近年では革命軍の動きも活発化している。治安の悪さで言えば偉大なる航路(グランドライン)後半の海、『新世界』にも引けは取らないだろう。

 

 そして、そこに油を注いだのがドンキホーテファミリーの奴隷産業だ。

 

 戦争に敗北した政府非加盟国の住民を誘拐し、天竜人ないし国の要人に奴隷として売り払う。ドフラミンゴはこの道徳心の欠片もないビジネスを北の海で打ち立てた。

 

 その結果、ドフラミンゴが活動の拠点を新世界に移した現在でも尚、北の海の奴隷産業は息巻いている。少なくとも海賊が人攫いで莫大な利潤を得られる程度には。

 

 尤も、それも今日でお終いである。

 

 かつてドンキホーテ海賊団に所属していたローは、その取引相手と人攫いの居場所をある程度把握していた。ならばあとは略奪を実行するのみ。

 

 大義名分などありはしない。ただ外道相手に同じことをするだけ。海賊とはそういうモノである。しかしそれとは別に、己が所業にケジメをつける。彼女の言う()()とは、とどのつまりそういう事だった。

 

「律儀な事だ」

「実入りが欲しかったのも事実よ」

「照れているのか?」

「いいえ、人助けをする海賊が少し気持ち悪いと思っただけ」

 

 ローはきっぱり答える。また、その顔は苦虫を嚙み潰したように不快気だった。

 

 これまでハートの海賊団は悪徳商人や人攫いをブチのめしてきた。そしてそんな悪人から奪った金品財宝を収入とし、食料に燃料、医療器具などの必需品を揃えてきた。やっている事は強盗とそう変わりはないだろう。

 

 とはいえ、彼らに虐げられてきた人々からすれば関係ない。奴隷解放、不正な寡占を撤廃。ローが悪事を実行するのに伴って、虐げられてきた人々はローに感謝する。図式としては野蛮かつ歪であるかもしれないが、道理でもある。

 

 しかし、どうにもローはそれが気に入らないらしい。

 

「前々から気になっていたんだが、何がそんなに面白くないんだ?」

「海賊に困っていた人たちが海賊に感謝する。その姿が滑稽に見えるのよ」

「ほぉん?」

 

 ちょっとだけ、分かった気がする。

 

「つまりロー。お前は彼らが心配なんだな?」

「……どうしてそうなるのよ」

「だってそうだろう。善人が悪人に利用されるのは世の常だ。まして海賊にしっかりお礼を言えてしまうような真っ当な人間なら猶更――」

「黙って。うるさい。静かにして」

 

 ぽんと胸を叩かれた。照れ隠しにしては少々愛嬌が過ぎる。帽子に隠れて分かりづらいが、耳の端が真っ赤に染まっていた。

 

「まぁ、大丈夫だろう」

「何を根拠にそんな事を」

「俺もお前に救われた一人だからだ」

「――っ」

 

 どくんと胸が躍った。一気に心拍が上がっている事が分かる。未だこちらに顔を向けない様が、まったくいじらしかった。

 

「貴方って本当に――」

「生意気か」

「ええ。ついでにキザでバカ」

「酷い言われようだ」

 

 

 

 





北の海で奴隷云々はほぼ捏造です。
でもフラミンゴ野郎ならこれくらいやってそうだなって。

しかしフレバンスやジェルマの事を考えると、北の海って相当物騒ですよね。
まぁでもワンピースの世界観って明るく見えて色々終わってるから今更か。
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