Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:元ジャミトフの狗

12 / 19
偉大なる航路編、スタート


偉大なる航路編(前半)
第12話


 

 

 

 

 偉大なる航路(グランドライン)に入るための手法は大きく分けて二つ存在する。しかし片方の方法は一般的な海賊では、ほぼ不可能であるためここでは割愛させてもらう。

 

 もう一方は海の無法者たちにとって、概ね普遍的な手法である様に思う。だが死亡率は高い。具体的に言えば50%。偉大なる航路に臨むにあたって、まず半分の海賊が入口で全滅する訳だ。

 

 その手法とは、四方の海と面するリヴァース・マウンテンと呼ばれる御山の運河を()()()()というもの。物理法則をまるで無視した入場方法である。

 

 偉大なる航路がもたらす出鱈目な海流は、山頂に向かって逆流する事も容易いという事だろうか。正直な話、どういう原理でこのような現象が生じているのかは興味深く思う。

 

 さて、ここで重要になってくるのがその死亡率だ。

 

 未だ内燃機関の技術が未成熟なこの世界では、基本的に船の推進力は風である。当然ながら海流の影響も強く受けることだろう。

 

 つまり海流と風の勢いが強いリヴァース・マウンテン付近で、帆船を操縦する事は大変困難である。それでいて運河の入場に失敗すれば、船は赤い土の大陸(レッドライン)に叩きつけられて木端微塵となるのだ。約半分の海賊が脱落するのも納得の理由である。

 

 そして我がハートの海賊団であっても、リヴァース・マウンテンを駆けあがる事は至難の業だった。というか海流の軌道に乗り損ねたので、ローがいなかったら多分普通に大破して終わっていたと思う。シャンブルズって本当に便利。

 

 そういう訳で、我々は何とか偉大なる航路に突入した。全く問題が無かった訳ではないが、ポーラータングは無傷である。活動に支障はない。強いて言うのなら、食器がちょっとお釈迦になった程度か。

 

 

「どうして海軍がいないのでしょうね」

 

 

 船の点検を終えた後のこと。傍らにいるローがそんな事を宣った。

 

「それはどういう?」

「ただの思い付きなのだけれど。偉大なる航路(グランドライン)の入口に、海軍の基地があったら厄介だなって」

「確かに」

 

 ローの言う事は一理ある。

 

 双子岬*1で海軍が待ち構える。有効な手段だ。海軍としても疲弊した海賊に追い打ちをかける訳だから、そこまでの労力も必要ない。しかし――

 

「採算が合わないんじゃないか?」

「というと」

「例えばの話だが、実際に海軍の前哨基地がここにあったとしてだ。恐らく俺たちならば、その突破も不可能ではないだろう?」

 

 相手が大将かそれに準ずるクラスが待ち構えていない限りは、と付け加えておく。

 

「全ての海賊がそうだとは言わないが、偉大なる航路に挑もうと言うんだ。四方の海でもとりわけ名を上げた()()()が来ることは想像に難くない」

 

 当然、待ち構える以上は海軍の方が有利である事は間違いない。海賊のレベルもピンキリである事を考えれば、海軍が敗北する確率は限りなく低いと見て良い。

 

 ただ連日の如く海賊と戦い続ければ、海軍側も士気を維持し続ける事は難しい。ましてリヴァース・マウンテンを越えてきた海賊の中には、一筋縄ではいかない手合いもいる。それこそハートの海賊団が全力を尽くせば、前哨基地の一つや二つ容易に破壊出来るだろう。

 

 加えて、世界政府の資金も無限ではない。その泉源が加盟国からの税金であることを鑑みれば、あまり無駄遣いもできないと分かる。それでいて交戦の度に疲弊するのは必至かつ連戦が予想されるのだから、やはり双子岬で海軍が基地を構える事は、人的資源並びに金銭的な観点で言っても厳しいものがあるのだろう。

 

「実施しない理由を挙げるのなら、こんなところだろうか」

「成程ね。流石の世界政府も一枚岩とはいかないか」

「憶測に過ぎないがね」

 

 海軍は正義を謳ってはいるが、あくまでもそれは政府加盟国に限った話である。偉大なる航路の進路には、当然ながら止むを得ない理由――その殆どは天上金を払えないというもの――で世界政府に属すことの出来ない国家もある訳で。

 

 海軍が大枚を叩いて世界の入り口を守る義理もない。薄情と言ってしまえばそれまでだ。だが綺麗事だけでは正義を為せない。世知辛い世の中である。

 

「一概に、()()()()とは言えんだろうがな」

 

 不意の発言。咄嗟に構えるも、その男に戦意はない様に思えた。とはいえ警戒は怠ることはない。ローは長刀の柄に手を添えながら問うた。

 

「貴方は?」

「私の名はクロッカス。双子岬の灯台守をやっている。歳は66歳で血液型はAB型だ」

 

 身長は2mはあろうか。老齢を感じさせぬ体躯を有する男がそこに居る。ただ花弁の様な髪型は少々奇抜で、馬鹿正直な自己紹介はどこか間が抜けていた。

 

「……ご丁寧にどうも」

「お前たち海賊か」

「ええ」

 

 隠すような事でもないが、自ら海賊である事を明かすのは何だかおかしな気分になる。実際、ローは微妙な顔をしていた。

 

 そも海賊と予想がつきながら単身で話しかけてくるのも、よくよく考えてみれば豪胆が過ぎる。彼からすれば、我々などヒヨッコ海賊団に過ぎないのだろうが、それにしたって危険には違いない。

 

「ご老人。先のそれだけではない、という言葉の真意を伺って宜しいか」

「構わん。勿体ぶるような話でもない」

 

 そう言ってクロッカスと名乗った老人は石造りの椅子に腰を下ろした。

 

「その前にお前たち。記録指針(ログポース)は持っているか?」

「ああ、今はウチの航海士が持っているが」

「そうか。ならば偉大なる航路を進むにあたって、7つの航路が存在する事も知っているな」

 

 クロッカス氏の言葉に対し首肯する。北の海(ノースブルー)で情報収集した結果、記録指針が示すルートは7つ存在するという。またどれを辿っても最終的には一つの島、『ラフテル』に辿りつくという触れ込みだった。

 

「勤勉だな。お前たちは長生きするぞ」

「恐縮の至り」

 

 この大海賊時代で70年近く生きている猛者が言うのだ。まずもって説得力が違う。また前世と数えても、己よりクロッカス氏は年上である。

 

「話を続けよう。記録指針は島が有する磁気を()()()次の島の指針を得る。だがこの磁気というのが厄介でな。偉大なる航路の気候が不安定である事も、この磁気によるモノが大きい」

 

 普通のコンパスが偉大なる航路(グランドライン)では使い物にならない理由もこれだ。偉大なる航路では異常な地磁気が渦巻いており、それがコンパスの指針を狂わせている。だから航海における一切の常識が、()()では通用しない。

 

 記録指針が磁気を貯めるという行為も、言ってしまえば疑似的に安定した磁場を形成しているだけである。理屈としてはそう難しいものではないだろう。

 

 そしてそんなバカげた磁気が世界をめぐっているのだから、気候も海流も出鱈目になる。成程、読めてきたぞ。

 

「7つの航路。つまり偉大なる航路の入口付近では、7つの島が発する磁場が作用し合っている。それは極めて危険な異常気象が生まれやすい土壌であるとも考える事が出来る」

 

 思考をまとめる様に口から言葉が出る。ほぼ無意識だった。

 

「ほう。頭の回転は悪くないようだな」

「有難く。そしてこの異常気象そのものが防波堤になっている。軟な航海者では、最初の航路でさえ踏破し得ない。だから海軍も双子岬に基地を構える必要もない。相違ないか」

「正解だ」

 

 クロッカス氏がサムズアップをくれる。ここまでヒントをくれたのだから、分からない方が逆に失礼というモノだ。

 

「少し良いかしら」

 

 会話を打ち切る様にローが声をかけてくる。見やれば、大変複雑そうな顔をしていた。

 

「どうしたロー。何か分からない事が?」

「いえ、今の結論に異論はないわ。納得もした」

「では何か問題が」

「いや、あの。自然に話が進んだものだから、割り込むタイミングを見失ったのだけれど。この人、貴方と知り合いなの?」

「いや、初対面だ」

 

 己が答えるとローは頭を抱えた。そして恨めし気にこちらを一睨みする。

 

「知り合いじゃないのなら、相応の距離感があるでしょう。もうちょっと考えて行動して」

「す、済まない」

 

 唐突に現れた男性と談笑する。思い返せば確かに今の己の態度は初対面の人間に対してするには、少々不適切だった。主に距離感がバグってたと思う。

 

 ハートの海賊団以外の原作キャラと出会えて、柄にも無く己は興奮していたらしい。素直に反省する。

 

「あとそこの貴方、私たちが海賊だと分かっているのならもう少し用心なさい。もし私たちが短慮な海賊だったら、今頃殺されてるわよ」

「お前たちは私を殺すのか」

「常識的に考えて、海賊はそういう人種でしょうに」

「そう言えるか」

 

 ローの返答に、クロッカス氏は嬉しそうに笑った。

 

「ツバメ、この人と話してると調子が狂うわ」

「諦めろ。こんなところで灯台守をする様な人間が普通である訳がない」

 

 先の言説が正しければ、彼は多くの海賊たちと接触してきた筈だ。その上で今日まで生きている。現に彼から感じる覇気は洗練されており、生半可な海賊では相手にもならないだろう。

 

「……まあ良いわ。それで何か用件でも? まさか何の用事もなく話しかけに来た訳じゃないでしょう」

「ああそうだ。実は鎮静剤が切れそうでな。少し融通してもらえると助かるんだが」

「図々しいわね。で、用途は」

「あそこに大きなクジラがいるだろう。あいつがな――」

 

 医療に携わる者同士、何か通じるものでもあるのだろう。気づけば専門用語が飛び交う議論が始まっていた。こうなると完全に己は蚊帳の外だ。

 

「副キャプテーン。出航準備整いましたよーって、誰だあの爺さん」

 

 暇を持て余した頃に現れたのはシャチだった。思えば彼とも長い付き合いだ。海出て3年。出会った当初は少し頼りなく感じたあどけなさも、今ではすっかり精悍な雰囲気を帯びている。

 

 副キャプテン。最近はそう呼ばれるようになった。

 

 元々は機関士の真似事をしていた己。ただウチの船長は原作同様、単独行動を好む傾向にある。故に不在中のローに代わって、己が船員に指示を与える機会も多かった。

 

 そうして新たに割り振られた役職が副キャプテン。恐れ多い事である。

 

「ご苦労。見ての通り、出発はもう少し後になりそうだ。それまでゆっくりするよう皆に伝えてくれ」

「りょーかいです。なんか飲み物持ってきますか?」

「頂こうか。コーヒーを頼む」

 

 びしっと敬礼した後、元気にポーラータングに戻っていくシャチ。少々陰気な己とローと違って、船員は皆陽気である。そうだな。前世であれば陽キャとか陽の者とか、そういう括りに入る者達ばかりだ。

 

「さて、暫く新聞でも――」

 

 懐に仕舞っていた世界経済新聞を開く。その隙間から落ちた新規の手配書が二枚。その一つは見知った女の顔写真が張り付けられている。そしてもう片方は――

 

「そうか。これで晴れて俺も立派なお尋ね者となった訳だ」

 

 地面に落ちた手配書を拾い上げる。2500万ベリー、それが俺の首にかけられた賞金であるらしい。

 

 またローの懸賞金は前回から2500万増額して5000万ベリー。罪状は職業安定所(奴隷売り場)の襲撃、また多くの凶悪な海賊を海に沈めた危険性との事らしい。

 

「勝手なことだ」

 

 思わず笑みがこぼれた。

 

 己とローはただ気に入らなかった。だから奴隷売買が行われていた会場を、そして人攫いの海賊たちを襲撃した。再起なんて発想さえ浮かばない様に、跡形もなく、徹底的に破壊し尽くした。

 

 その結果が彼らと同じ犯罪者。力でこの世の道理をねじ伏せたのだ。文句はない。ただ少しばかりこの世界の歪さが、気に入らなかった。

 

「あら、貴方もついに札付きか」

 

 ローが頭上から手配書を覗き込んでくる。どうやらクロッカス氏と話がついたらしい。

 

「みたいだな。お前の金額も増えたぞ」

「どうでも良いわね」

「全くだ」

 

 懸賞金なんてものは結局のところ、政府にとっての危険度、更に言ってしまえば()()()()()を示したモノに過ぎない。

 

 今回俺たちの懸賞金が跳ね上がったのも、北の海(ノースブルー)の戦争経済に打撃を与えたからだろう。そう考えると、成程。やはり俺たちは悪党である訳だ。

 

「クロッカス氏とは話がついたのか」

「ええ。食料と食器、あと医療器具を交換してくれるって」

「そうか」

 

 それはちょうどいい。特に食器は先のリヴァース・マウンテン越えで幾許か割れてしまったから。

 

「悪いけど、少し出航が遅れるわ」

「そう思って既に指示は出してる」

「ありがとう」

「どういたしまして」

 

 

*1
リヴァース・マウンテンの出口、あるいは偉大なる航路の入口





こういうちょっとした小ネタの考察もどきが楽しい。
でもそのせいで更新が遅くなるのは考えものですね。

アンケートを始めます。
最初は前作と同じトリトリの実の通常種でいこうと思ったのですが、意外と幻獣種を求める声も多かったので。
お答えいただけると幸いです。

主人公くんの悪魔の実は――

  • 中二病の具現、トリトリの実、幻獣種!
  • ノーマルこそ正義、トリトリの実の通常種!
  • 奇をてらうヒトヒトの実、幻獣種
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。