Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~ 作:元ジャミトフの狗
【お願い】
ジャンプ本誌のネタバレ(それを匂わすような内容も含めて)を感想に書くのは、お控えください。
感想を頂ける事自体は非常に、もう本当にすごく嬉しいですし、執筆の活力にもなって有難い事この上ありません。
しかし感想欄を見る人の中には、アニメや単行本でワンピースを追っている方がいるかもしれません。
ですので、感想はあくまでも本作の感想にのみ留めて頂きたいのです……。
正直な話、二次創作をやっている人間が言えた義理ではないかもしれませんが、どうかご留意して頂けると幸いです。
それでも私と本誌の内容を共有したいと思う奇特な方がいらっしゃるようであれば、ハーメルンのメッセージ機能かTwitterを利用するようお願い申し上げます。
我儘を言ってしまい、本当に申し訳ございません。
でもやっぱり本誌ネタは、デリケートに扱うべきであると私は考えます。
ウィンドウショッピング、という言葉がある。
洋服や装飾品、化粧品などの商品を見て回ることを楽しむ行為。どちらかと言えば、女性的な趣味と言えよう。聞くところによれば、
とはいえ確かに、この世界にはインターネットなどという便利な情報通信網はない。つまり、どのような商品がお店で売られているのかを確認するためには、自ずから店舗に足を運ぶ必要がある訳だ。無論、実際に買い物をする時も同様である。
そう考えるとウィンドショッピングという行為にも一定の価値と意義がある様に思える。しかしよく考えるとだ。そも趣味に効率を求めている時点で、己がその文化を正しく理解する日は来ないのではないか。そう思う。少なくとも相性は良くない。
つまり何が言いたいのかというと、女性の買い物は長い。その不文律はこの世界においても変わらないという事だ。
「これ、どっちが似合うと思う?」
そう言いながら、二着の服を見せつけてくるロー。右のパーカー、左もパーカー。違うのは色とジッパーの有無である。白状すると、それ以外に大きな違いは見られない。ファッションに疎い俺には、服の良し悪しなど分かる筈もなく。
「どちらも似合う、ではダメか」
「逆に良いと思ってる訳?」
だろうな、と口にする事はなかった。というか出来なかった。そんな適当な事を宣えば、流石にぶっ殺される。となれば、何かしら彼女を満足させる答えを導かなければならない訳で。
「まぁ何だ。黄色の方がお前らしいよ」
「ふぅん?」
「理由はない。直感だ」
「そう」
己の返答はギリギリ及第点だったらしい。ローはそのまま俺の選んだ服を会計に持って行った。これで5着目、ジーパンにタンクトップときてパーカー。彼女はラフな格好が好みなのだろうか。
会計を終え、店を出たあたりで。少しばかり重くなっていた口を開く。
「……荷物持ちはすると言ったがな」
「何よ」
「俺に審美眼を期待するなという話だ」
「最初から期待してないわよ」
「なら何故」
「貴方が選んだ服を着たいだけ」
返答に困った。酷い殺し文句である。端的に、今のはかなりときめいた。成程、何事に於いても不意打ちは卑怯であると良く分かる。
悶絶している俺に反し、彼女は「それに――」と悠然に言葉を続ける。
「どちらも似合ってるだなんて、そんなの分かり切ってるのよ。その上で貴方に選ばせてるわけ。ここまで言わせちゃうなんて、貴方って本当におバカね」
「……返す言葉もない」
「ふふ、しっかり反省する様に」
浮かれているのか、くるりと彼女は回った。すると羽織ったコートが翻る。
ただただ楽しそうに。まるで野原で跳ぶウサギの様に愛らしく。ここが海賊の街である事を忘れてしまうくらいには、優雅な様子で。
「さ、次はシックな感じの服を探しましょう」
後ろ手を組みながら、こちらを覗き込んでくるロー。全くこの娘は本当に。分かってやっているのだろうか。無自覚だとしたら、なお性質が悪いが。
「……ご随意に。だが意外だな」
「何が?」
「てっきりカジュアルな物を好んでいるのだとばっかり」
「私の趣向ならそうね。でも貴方はちょっとお上品な方が好きでしょう?」
「む」
ファッションの趣向なんて、考えた事もなかった。まずもって自分が着服している代物に頓着はない。当然、それは相対する者の服装にも同じことが言える。
雪山で暮らしていた俺にとって、服とは防寒具という認識が強い。前世の大学時代では少し色気づいていた時期もあった気もするが、それも数十年前と気が遠くなるほど昔の話だ。
「自分でも気づいてないようだけれどね」
「?」
「貴方、案外目に出るわよ」
「
「マジよ」
根拠とするには些か乏しい様に思えるが、ローからすれば
「あ、そうだ。ならこの期にちょっとコーディネイトしてみましょうか」
「誰を。まさか己をか」
「当たり前じゃない。他に誰がいるのよ」
「ベポとか」
「……それはそれで面白そうね」
ちょっと思案顔となるロー。あの白熊のミンク族の青年は、なんというか、愛嬌という言葉をそのまま形にしたような生物だ。
かわいいし、もふもふだし、性格もちょっと抜けてるところが癖になるし、みんな大好きだし。それを着せ替え人形にしようというのだから、まぁ絶対面白い事になる。口からの出任せだったが、自分も興味が湧いてきた。
「ま、それは別の機会に回しましょう」
「別に構わないが、男を着飾って面白いのか?」
「おもし……じゃなくて、私だって隣に立つ男の見栄えくらい気にするわよ。貴方、顔が良いから
ローはそう言いながら、俺の服を引っ張る。白い
「俺は気に入ってるが」
「ああもう、鬱陶しいわね。大人しく着せ替え人形になりなさい」
「隠す気がない。いっそ清々しいな。これがパワハラか」
「五月蠅い生意気」
鞘の先でどつかれる。どうやら拒否権は無いらしい。
★
「疲れた」
モックタウンのとある酒場。そのカウンターで己は突っ伏していた。
ローのショッピングは恙無く終わった。だがその後の試着の嵐、もとい着せ替え人形の時間が酷かった。
次から次へと真新しい服に袖を通し、試着室のカーテンを何度も開閉する作業の繰り返す。ああでもないこうでもないと、ローが満足するまで終わらず。ようやく一着決まったと思ったら、「次行きましょうか」と言われた時は軽くめまいを覚えた。
挙句の果てには、ドレスコードを指定されたとしても問題なく使えそうなフォーマルな服装一式まで揃えて。一体どれだけのお金を使ったのか。いや、確かに楽しかったけども。
「悪かったわね。その、少し興が乗って」
「
「う、ごめんってば」
唇を尖らせながらローが宣う。自覚はあったようで何より。
「……だが、いい気分転換にはなったよ。有難う」
病魔に侵されたのがつい先日の出来事だ。張り詰めた毎日に疲れ切っていた身体も、随分リフレッシュできたように思う。それもローが気遣ってくれたお陰である。
「いいえ、こちらこそ。いつも私の我儘に付き合ってくれて」
彼女がお酒が注がれたグラスを掲げる。己もそれに倣い、自身のグラスをぶつけた。
「乾杯。お疲れ様」
「お互いに」
労いの言葉と共に酒を呷る。値段にしては悪くない。深く苦い味わいが口の中で広がっていく。そして、苦みの中に秘められた甘い風味をじっくり楽しむ。
ラム酒、サトウキビの蒸留酒である。海賊と言えば
店内はやはり騒がしかった。良く言えば、活気があると言えなくもない。本来であれば、自分もローも静かな場所を好むところだが、たまにはこういう大衆向けの酒屋も悪くない。この店を選んだのは、そういう魂胆だった。
「……しかし、陸に上がってまで
グラスを揺らしながらローは言う。気持ちは分からなくもない。ラム酒は安価であり、また保存性の良さから海の男たちにとっては馴染みある飲料でもある。当然、ポーラータングにもその備蓄がある。
「今日は目一杯冒険を楽しんだんだ。飲み物くらいは、普段通りで良いだろうさ」
「そ」
適当なことを言って、適当な相槌を返される。割といつもの事だった。
「……そう言えば、今年でお前も二十歳だったな」
「ん? そうね。それがどうしたの?」
「いや、ようやっと合法に酒が飲める年齢になったなと」
「どこの国の法律よ、それ」
遠い昔、前世の記憶。大衆酒場なんぞにいるから思い出す。どうしてか、何か脂っぽいものが欲しくなった。
「店主、揚げ物とかないだろうか」
「フライドチキンしかない。それで良いかい?」
「構わない」
短いやり取りの後、店主が厨房の奥へ消えていった。すると隣に座るローが、くすりと笑った。
「夜、食べられなくなっちゃうわよ」
「夕方から酒盛りしてるんだ。今更だろう」
「そうね。なら私も何か頼もうかしら。何かおすすめとかある、お兄さん?」
兄か。俺とローの年の差が4つ程。確かにそういう兄弟もいるだろう。ならば先達らしく答えるとしよう。
現在ローが飲んでいるカクテルが、ホワイトラムにライムと砂糖、そして氷を混ぜて作った、いわゆるダイキリ。となれば―――
「チョコレートとか」
「あら、そうなの。意外」
「今お前が飲んでるカクテルに、チョコを足せばまた面白い味わいになる」
「どこでそんな事覚えてくるのよ」
「昔取った杵柄だ」
それこそ前世の知識である。ちょっと大人を気取って、色んな酒とカクテルを覚えようとした時期がある。これはその名残だ。全くもって恥ずかしい記憶だが。
「さて、そろそろ定時連絡の時間だ。少し席を空けるぞ」
「ええ。でも早く
「何を言う。問題なく
「馬鹿ね。そこは最後まで格好つけるところでしょうに」
席を立つ。連絡の時間まであと5分ほど。余裕はある。
店の扉を開け、外を見やる。そこには無頼の群れが。その筆頭に立つ男が「おや」と意外そうに、しかし獰猛な笑みを浮かべた。
知らない男だった。だが何者かは分かる。つまらない因縁である。だからわざわざ店の外に出たのだ。
「カムラン・ジョーと言ったか」
「ええ、如何にも」
「お前の部下を通して、忠告をしたつもりだったが」
「ああ。アレって冗談ではなかったんですねぇ」
軽薄な口ぶりでジョーなる海賊は告げる。ともすれば嫌な予想が脳裏をよぎった。
「あまりに腑抜けた事を言うから、弾みで殺してしまいましたよ」
「――お前」
「我々の海賊団に弱卒は要りませんので」
弾みで殺す。他所の方針に口を出すつもりは無いし、事を仕損じた部下の制裁も理解できる。ましてこの大海賊時代において、殺人など大して珍しくもない。
「殺したのか、自分の部下を」
縋るように言葉を紡ぐ。現実を受け入れられない阿呆が一人、ここに居た。
「そうだと言っているでしょう」
何でもない事の様に男は言った。丁寧なのは、口調だけだった。この男の本質は獣である。正に海賊と呼ぶに相応しい。だが、海賊であるのなら――
「お前が気に入らない」
「はぁ? 何を言うかと思えば――っがぼばぁ!!!?」
瞬きの出来事だった。腰を落とし、拳を振り抜く。たったそれだけの動作だ。
結果、頭目は殴り飛ばされる。拳に伝わる鈍い感触。遅れて、身体が熱くなった。未熟にもほどがある。怒りに身を任せ、拳を振るうなど。激情は覇気の強度を底上げさせるが、制せねば暴走あるのみだ。
「……い、一撃。カムラン船長が、たった一撃で」
誰が呟いた言葉だろうか。しかし端的に事実を示している。つまるところカムラン・ジョーと言う男は、口ほどにもなかった。この程度の実力で四皇の傘下を希望し、剰えローに挑もうなどとは。片腹痛い。
だがソレを痛快だと感じる自分がいる。そして同時に、如何に己が幼く、矮小な存在であるかを思い知るのだ。
「次はないぞ」
その一言で、海賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
海に出てからというもの、こんな光景を何度も見てきた。ちっとも面白くない筈なのに、己の卑屈な部分が喜べと言っている。
「喜べる筈がないだろうが」
たかだか雑魚を一人、打ちのめしただけだ。たかだか数千万の懸賞首、大海原にいる木端な海賊の一人に過ぎない。これより先で現れるであろう傑物たちを相手にするには、未だ己の実力は不足している。
この劣情とすら形容できる全能感は一過性だ。自戒せよ。まだ何も始まっていないのだから。
「――もっと、もっと強く」
ただ己に言い聞かせるように。深く、決意を口にした。
更新が遅れて申し訳ありません。
ちょっと最近洒落にならないくらい忙しくて(言い訳)
これからも週1の更新が出来るかどうか怪しいところですが、少しずつ書いていきます。
……だからその、浅ましい上に前書きとは真逆の事を言う様で恐縮なのですが、本当に少しで構いませんので感想を書いて頂ければなと思います。
面白かった、の一言でも自分は天に昇る勢いで喜びます……。