Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:元ジャミトフの狗

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Q.同じ設定で前書かれてた方ですかね?
A.はい。


第3話

 

 原作のキーパーソンに、トラファルガー・ローというキャラクターが存在する。

 

 出身はフレバンス王国。両親は名医で、裕福な家庭だったという。しかしながら、ローが10歳の時分に家族共々珀鉛病に侵され、その父と母は病の解明に奔走するも隣国の兵士に射殺された。この世界では然して珍しくないもない。ただ、悪夢の様な現実を経験した()()である。

 

 そう、少年。つまり男だ。断じて少女ではない。だが彼女は確かに己をローと名乗った。

 

 ―――俺の推しが女体化してるんだが

 

 日課で始めた正拳突きが、今日はどうにも鈍っている。動揺している証だ。

 

 おかしい。だが有り得ない話でもない。この世界には性転換を容易にする悪魔の実が存在するからだ。しかし俺が見た限りでは、口調、仕草、雰囲気、何をとっても()()だった。否定の余地がない。

 

「……まぁ、そういう事もある」

 

 分からない事は分からない。疑問は尽きないが、実のところあまり興味もない。そも俺は転生という摩訶不思議を体験しているのだ、未知なんて今更である。

 

「そうだ、落ち着けよ」

 

 原作キャラ、それも推しキャラが女性だったことに戸惑いはある。だがそれがどうしたという。俺の知る限り、差異はソレだけである。少なくとも他の人物にそういった変異はない。

 

 記事でよく目にする四皇やその幹部、七武海に海兵。有名どころは皆、俺の記憶の通りだった。いや、それならどうしてローだけが――

 

「――キリがない。切り替えろ」

 

 思考を無理やり断ち切る。考えを止めるという行為は俺の好むところではないが、こればかりは仕方がない。多分、どんなに考えても答えは出ない。そんな気がする。

 

「集中」

 

 ぱんと、強く己の頬を叩く。まずは今やるべき事に専念しよう。

 

 腰を深く落とす。日課(正拳突き)の続きだ。数は重要じゃない。拳に込める意志、覇気と呼ばれる力。それをより強く、重く、硬くする。

 

 武装色の覇気には幾つか種類、というよりも段階がある。単に覇気を纏うだけでは、意志の力を十全に発揮したとは言えないのだ。

 

 例を挙げると、硬化と内部破壊の武装色。前者は覇気を習得した者が次に目指す段階であり、後者は一握りの強者が至る領域だ。武装色だけでも奥が深い事が良く分かる。

 

 そして現在の俺は――

 

「――っ!!」

 

 降雪を、空気を打ち抜く黒漆の拳。硬化の武装色。俺はその会得に苦心している。

 

 正確には硬化自体は出来るのだ。だがその実現には高い集中力が要求される。しかもその硬度は非常に疎らで、未だ再現性も低い。会得したというには少々恥が勝る。

 

「精が出るわね」

 

 年齢不相応な落ち着きを帯びた声音。現在、我が家に絶賛居候中のローだった。

 

「起こしたか」

「いいえ。久しぶりの快眠だったわ」

「そうか。飯は?」

「頂いてもいいのかしら」

「今更だろう」

 

 そんなやり取りを経て、木造の家宅へと戻る。元はマタギの翁が暮らしていただけあって、作りはしっかりしている。ただ八帖の部屋は、二人で過ごすには少し手狭だった。

 

「握り飯しかないが」

「好物よ。でも梅干しだけは勘弁して」

「贅沢言うな」

 

 好物が同じで、嫌いな物も原作と同じ。やはり認めざるを得ないだろう。彼女は、やはりトラファルガー・ローなのだ。

 

 そんな益体もない事を考えながら、朝餉の準備に取り掛かる。おにぎりと沢庵、そして味噌汁。我ながら質素だが、元日本人としてはこれ以上ない程の朝食だった。

 

「それで、()()。お前はどうするつもりなんだ」

「……そうね」

 

 顎に手をやり、思案する姿が様になっている。あと数年もすれば魔性の女になるだろう。何となくだが、そんな気がした。

 

「暫く、ここに置いてくれないかしら」

 

 何か不安でもあるのか、伏し目がちに請うてくる。

 

「俺は構わんが。どうした、何か懸念でもあるのか。ああ、いや、確かに男と一つ屋根の下で暮らすのは外聞が良くないか」

「いえ、そうじゃない。貴方の事は信用してる。ただ――」

 

 どうやら言葉に詰まる程度には、何か()()()があるらしい。或いは言葉にする事さえためらう程の厄ネタか。想像はつく。

 

「話したくないなら、話さなくていい」

「いいの?」

「構わない。それとも聞けば話してくれるのか?」

「それは――」

 

 停止していた思考回路を動かす。

 

 時系列的に言えば、今の彼女はコラソンと別れた後だろう。つまりオペオペの実を食べたあたり。

 

 オペオペの実。悪魔の実の中でも、とりわけ究極と称される果実だ。曰く、その実を食した者は他者に不老不死を施すことが出来るという。

 

 そして海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴはその秘術を追い求めている。何せ50億という、四皇の懸賞金を凌ぐほどの金額を支払う事すら厭わないくらいだ。ドフラミンゴにとって、ローは今最も必要とする人材と言えるだろう。

 

 ならば、彼女が危惧するところも自ずと知れる。

 

 その上で、良しとする。ここまで関わっておいて、今更見放す根性は持ち合わせていない。

 

「……貴方は」

「ん?」

「貴方は、強いのね」

 

 彼女の言葉を受けて閉口する。意図を測りかねたからだ。

 

「……腕っぷしには自信があるが」

「そうじゃない。そうじゃ、ないの」

 

 やけにしおらしく感じた。それも、今に崩れてしまいそうな儚さを伴っている。しかしそれも一瞬のことだった。

 

「さて、配膳くらいはさせてもらうわ。これ、持っていくわね」

「あ、ああ」

 

 何事も無かったように、ローは器を載せた盆を運ぼうとする。

 

 

 

「――ありがとう」

 

 

 

 離れる間際。小さく、彼女は謝意を告げた。その笑顔があまりにも綺麗で、見惚れるあまり俺は無言で首肯することしかできなかった。

 

 





にょたろーのヤンデレに至る過程は、じっくりことこと書いていく所存です。
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