Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~ 作:元ジャミトフの狗
本日の執筆開始時刻は12時で、執筆時間は3時間。
つまり何が言いたいのかというと、誤字脱字の恐れがあるという事です。
誤字脱字の報告、誠にありがとうございます。
相対するは黒髪の少女。そのしなやかな指に握られた無頼の刀は、彼女の背丈ほどもある。凡そ女性が扱うには長すぎる得物。しかし――
「―――はぁっ!!」
少女は深く踏み込み、長刀の切先が鋭い弧を描く。粗削りだが、見事な一撃だ。
――だが、まだ甘い。
刃物の軌跡を沿うようにして、上体を逸らす。ただそれだけでやり過ごす事が出来る。
見聞色の覇気。気配を読み、相手の動作を捉える。彼女が一歩踏み出した時点で、その攻撃は成立しないことが確定していた。
「このっ!!」
少女とて理解している。だからこそ、初撃の不発を認める以前からで次の動作に備えていた。即ち、斬り上げと横薙ぎ。その二連がほぼ同時に繰り出される。
末恐ろしい娘だ。どちらか一方でも直撃すれば致命傷となる。彼女が何の躊躇もなく振るう刀は、確かに人の命を奪うに値するのだ。
対する我が身は無手。間合いという観点で見れば、少女に軍配が上がる。故に隙があるとすれば、それは二撃目と三撃目の間。一見すると空きの見えない
長刀は空を切り裂く。立て続けに振るわれる横薙ぎの一閃。それが実現するよりも先に――
「剃」
瞬間移動と見紛う程の速度を以て少女に迫る。己を迎え撃つにも、既に三撃目を振るわんとする少女の身体は追い付かない。
故に勢いに任せて娘の服を掴み、そのまま転倒させる。その後の反撃を期待したが、どうやら引き出しは尽きたらしい。ならば、己の拳は彼女の顔面に振り下ろされるのみだ。
「痛っ」
少女の鼻先を小突いた。手心を加える余裕がある。それが現状の俺と彼女の差だった。
「これでまた一本」
事実を告げる。本日で10度目の宣言だった。
「……貴方、本当に強いのね」
雪の大地に倒れこんだまま、いかにも彼女は、トラファルガー・ローは不満そうに頬を膨らませる。どうやら相当にご立腹の様だ。
しかし容姿が優れていると損だなと思った。俺からすれば、その怒った表情は食料を頬袋にため込んだリスにしか見えない。だから正直な話、まるで怖くない。口にするともっと愛らしくなると思われるので、黙っているが。
「鍛えているからな」
「嫌味ったらしい」
「そんなつもりは無いが」
「知ってる。手も足も出ないから拗ねてるだけよ。忘れなさい」
「成程、承知した」
手を差し出す。ローも躊躇なくその手を握った。引っ張り起こすと、如何に彼女が軽いか分かる。食生活を見直すべきか。女性とは言え、戦闘に身を置くのであればもっと体重がいるだろう。
「今日はここまでだな」
「……私はまだやれるけれど」
「前にも言っただろう。数は重要ではない。残りの時間は反省とその共有に回そう」
何をしたか。何をしたかったのか。何が悪かったのか。何が出来なかったのか。質の良い鍛錬とは結局のところ、そうした地味な作業の繰り返しだ。
「分かった。貴方がそう言うのなら、素直に従うわ」
「不満か?」
「いいえ。ただ以前
以前世話になった。彼女が言うそれは、十中八九ドフラミンゴファミリーの事だろう。確か前にも砲術や格闘術、剣術を嗜んだとか言っていた。
「どんな訓練だったのか、参考程度に聞いても良いか」
「面白い話じゃないけど」
それでもと頷く。するとローは一つ息をついた。彼女が言うには、基本的に痛みで覚えさせるスパルタ方式だったとか。蹴る殴るは当たり前。それも普通にボコボコにするし、何なら毎日のように意識を失ってたとか。
「それは、何というか。すごいな」
俺が何とも言えない顔つきになると、「だから言ったでしょ」とローは呆れたように呟く。
「だがある意味、それも効率的と言える」
「というと?」
「基本的に人間は痛みを伴って学習する。刃物に直に触れると痛いから危ない。転ぶと痛いから、しっかり足を上げて歩かなければいけない。こういった具合にな」
俺の言に対し、あからさまに嫌悪の混じった表情となる。俺の言いたい事が想像できたらしい。やはり敏い子である。
「何よそれ、まるで生まれたばかりの赤ちゃんみたいじゃない」
「だがそういう事だろう? 事実、君の教官となった者達からすれば君は赤子に等しかった訳だ」
元は裕福な家庭の娘だ。戦い方も知らなければ、運動神経も子供の範疇を過ぎない。それを使い物になるようにしようというのだ。当然、
「それじゃあ、貴方のやり方は?」
ふと、ローはそんな事を聞いてくる。言葉の裏に不安が混じっている様に感じたのは、果たして俺の杞憂か。
「覇気を教えてほしいと言ったのは君の方だろう。だから最短ルートだ。そんな
―――お願い。私を強くして
数日前の話だ。ローは沈痛な面持ちのまま、そう教えを乞うた。
俺は彼女の過去を知っている。
授けた技術が復讐に使われると分かっていながら。俺はローの頼みを断ることが出来なかった。その選択が正しいかどうかなんて、俺には判別がつかない。
ただ共感した。
恨みがあるから殺す。恩人を殺されたから殺す。その思想に異を唱えられる程、俺は善良ではない。だって分かってしまう。一度でも本当の殺意を抱いたら、それを止める事なんて到底できやしない。
「君の基礎は固まっている。なら改めて俺が教える必要もないだろうさ」
「そう?」
「そうだとも。ロー、君は強い。自信を持っていい」
「何よ。気持ち悪いわね」
全く遠慮がない。ストレートな悪口は、いっそ心地よく感じた。
こんな毎日が続けばいいのに。柄にも無く、そんな事を思うのだった。
「ところで覇気の存在はどこで?」
「黙秘権を行使するわ」
「そうか」
攻略されるのは何もヒロインだけではない。
主人公もまた攻略されるのです。