Re:ワンピース~俺の推しが女体化してるんだが?~   作:元ジャミトフの狗

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次回から偉大なる航路編と言ったな、あれは嘘だ。


第9話

 

 

 

 

 

 海に出て暫く。我々はハートの海賊団を結成した。

 

 ローに曰く、ハートが意味するのは心臓と愛なのだとか。或いはとある人物に対する()()()()か。ローの過去を知る者としては、中々に反応に困るところだった。

 

 初期の船員は己とベポにシャチとペンギンの兄弟、そして船長のトラファルガー・ロー。しかし、基本的に我が海賊団は航海の素人である。故に問題に直面する度に、我々は場当たり的な対応を余儀なくされた。食料と健康状態に気を遣うのは勿論の事、海の機嫌に左右されるのは中々骨が折れる仕事である。

 

 素人ばかりの船員が今日まで無事でいられたのは、とある発明家が開発した潜水艦に因るところが大きい。旗艦の名をポーラータング。意訳すれば極地を征く潜水艦といったところか。

 

 ローが言うには、船体の構造材料が『世界で最も硬い金属』であるらしい。そんな如何にも加工が難しそうな材料で、ここまで優れた潜水艦を一人で設計開発したというその発明家には畏敬の念を覚える。

 

 また耐食性も凄まじいもので、ともすればチタン合金と同等か以上の耐食性を有している様に見える。もちろん現物が手元にないため、定量的な比較は行えない。だがこの潜水艦は原材料からしてオーバーテクノロジーの塊であることは明白だ。控え目に言って頭がおかしい。

 

 しかも船内にはご丁寧にメンテナンス及び操縦法に関する取説も添えられていた。取説とは言うが、六法全書が如き分厚さの書物である。到底一日二日で読める様な代物ではない。

 

 そして船員の中で、論文に類する書物に耐性がある者は限られてくる。となれば、目立った役職を持たない己が機関士の役を務めるのが道理である。

 

 とはいえ、どれだけ知恵者を気取ろうと。己は潜水艦の知識など持ち合わせていない。はっきり言って、専門外である。故に己はトライ&エラーの精神で、何とか内容を飲み込んでいった。幸い取説の内容は端的かつ分かりやすく記されており、理解する事自体はそこまで困難ではなかった。

 

 そうしてポーラータングの全容を把握した上で、個人的な見解を述べるのであれば。やはりこの潜水艦を発明した人間は頭がおかしい。そも地殻を砕ける船体ってなんだ。もしかしてMADSに所縁のある研究者だったりしたのだろうか。いや、絶対あるだろ。

 

 

 閑話休題。

 

 

 そうしておっかなびっくりで大海原を航海すること約一年。

 

 何事にも慣れが存在する様に、我々もまた相応の船乗りとなった。船員が10人に増えたのも大きい。仕事の分担によって得られたゆとりは、思いの外大きかった。休息もそうだが、それ以上に――

 

「そうか、もう一年か」

 

 航海と修学に忙殺されていた頃と違って、今は過去を偲ぶ余裕も生まれた。

 

 ローと思いの丈をぶつけ合い、剣と拳を交え、その果てに至った心臓の交換という結末。未だ俺にとっては新しい記憶だが、光陰矢の如しと言う様に月日が過ぎ去るのは本当に早い。

 

 何と無しに、左胸部に手を当てた。どくんと、()()の鼓動を感じる。己の正気はとうの昔に失われていたようで、その事実が堪らなく嬉しく思えた。

 

「――すぅ」

 

 深く息を吸う。潮の香りが鼻を打った。今ではもう慣れ親しんだ匂いである。私室で休息をとっている彼女に、それが届けば良いと思った。

 

 あの日。決闘に敗北した俺は約束通り、ローが率いる海賊船で機関士の真似事をしている。

 

 現状、トラファルガー・ローとツバメの関係性に大きな違いは見られない。ただ船長と機関士という役割が新しく加わったのみで、本質は何も変わっていなかった。だが俺自身の考えは多少なりとも変容した様に思う。

 

 己の存在が彼女に悪影響を与えてしまった。今でもその考え自体は揺るがない。しかしその自覚があるのなら、俺はやはり責任を取るべきなのだと。

 

 時折、ローが俺に見せる愛情。それはどのように言い繕っても健全とは言い難い。そして性質の悪い事に、彼女はその自覚がある。

 

 支配と束縛。それはトラファルガー・ローという人間が重んじる思想(自由)とは、全く相反する概念だ。しかし最近気づいたのだが、ローはそういう()()()()()()()()()()()()()を楽しんでいる。

 

 壊れるほど愛し、壊れるほど愛されたい。そういう魂胆が見え隠れするのだ。全く以って度し難い癖だが、しかし彼女の経歴を鑑みれば理解できない事もない。

 

 付き合うのも一興。だがその一方で、現状はこのままでも良いと考える自分もいる。何せマンネリは破局の兆候と聞く。現状でも十分楽しめているのなら、一歩踏み込むのはもう少し後で良い。

 

 ああ、そうだ。俺がとるべき責任とは――

 

 

 

「難しいこと考えてる」

 

 

 

 ひょいと視界の端に現れたのはニット帽の女性。我らが船長、トラファルガー・ローだった。

 

「いや、そうでもない」

 

 そう、何も難しいことではなかった。己がどう思い、受け止められるか。これは元からそういう話だったのだ。なのに、たったそれだけの事に気づくのに俺は一年も要した。我ながら情けない事である。

 

「なんだか貴方から強い好意を感じる」

「分かるのか」

「ええ、気の所為だった?」

「どうかな」

 

 答えなんか分かり切っているから、敢えてはぐらかす。それくらい遊びがあって良いだろう。

 

「生意気」

「俺は面倒だって言ったろう。で、何の用だ」

「ん、これを見て」

 

 ローが見せてきたのは北の海(ノースブルー)の海図。旅をする内に、読み方は自然と身についた。そしてどうやら彼女は行きたいところがあるらしい。

 

「いいぞ」

「まだ何も言ってないけれど」

「墓参りだろう?」

 

 海図に描かれたバツマークは、亡国となって久しいフレバンス王国を示している。そしてフレバンスはローの故郷である。ならそこから導き出せる答えなんて分かり切っている。

 

「ただフレバンスの国境付近は厳重に封鎖されていた筈だ。俺なら上空から侵入できるが、さて」

「……なんか最近の貴方、物分かりが良すぎて怖いのだけれど」

「元から察しは良い方だ」

「どうだか」

 

 今も昔も変わらないやり取り。過ごす場所が山から海へと変わっただけで、俺たちの生活は変わらない。存外、海賊稼業も悪くなかったという訳だ。

 

 

 

 

 





色々テコ入れ回。
もう少しだけプロローグというか、北の海編は続きます。
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