「やった、これで終わったんだな」
「……ああ」
最後の魔神を倒し、喜ぶ十三英雄のリーダー、リク。この世界で、十三英雄は”誰も欠けず”に冒険を終え、ハッピーエンドを迎えようとしていた。その立役者とも言える青年の背中を見ながら、ツアーは暗い表情で静かに呟く。リクは終わったと言っているが、彼の中では終わってはいなかった。未だ大きな仕事が残っている。リクを殺すと言う仕事が。
(すまない)
心の中で詫びる。リクはプレーヤーだが、害悪な存在ではない。寧ろ過去のプレーヤーが残し、世界を破壊した魔神、プレーヤー達の呼称で言えばNPCを数多く倒した英雄。ツアーにとっては恩人と言ってもいいだろう。
(だが、君はあまりに危険なんだ)
にも関わらず殺さなければならない理由。それは彼が最強のプレーヤーだからだ。正確に言えば、彼が所有し、彼だけが使える武器があまりに強力すぎるのだった。
その武器の名は『世界意志(ワールドセイヴァー)』、無限に攻撃力が強くなる武器。ゲームの設定とそれが現実化したことによって、元から規格外だった武器は更に規格外になった。ログアウト、アップデート、ゲームならば存在した様々なリセット要素がこの世界には無い。このまま放っておけば、いずれリクは間違いなくツアーよりも遥かに強くなる。
(そうなった後で、万一にも君が邪悪に落ちたのなら、誰にも止められないんだ)
それはあくまでも可能性、しかし世界の守護者を自認するツアーにはその可能性を無視することができなかった。
今なら未だ、不意打ちをすれば殺すことができる。腕を振り上げ、しかし躊躇する。
(リク……)
それはツアー自身、偽りではなく本心からリクのことを仲間だと思っていたからだ。個人として殺したくない、役割として殺さなくてはならない。二律背反の感情、その迷いが殺さない理由を思いつかせる。
(彼を、こちらの側に引き込むことができれば……)
八欲王以降、現れたプレーヤーは全て個人単位だった。だからこそ対処ができたが、再びギルド単位でプレーヤーが現れればツアー一人で対処できる可能性はかなり低い。しかし、リクを仲間にすれば別だ。ワールドセイヴァ―を更に成長させたリクとプレーヤーにとっては未知の力を持つツアーが組めば、ギルド単位のプレーヤ―にも十分対応できる。それはとても良い考えに思えた。
(問題は、この申し出を彼が受けてくれるかだけど……)
この申し出が自分の欲求から産まれたものであることは理解していたが、同時に理屈の通るものでもある。それ故に、この案を切り捨てることができなかったツアーは、それを提案することを決めた。
「リク、頼みがあるんだ」
「えっ?」
ツアーの言葉に振り返るリク。ツアーは彼に願いをぶつけた。
「僕と一緒に、これからもこの世界を守ってくれないか?」
「話はわかった。これからまた、100年置きに俺のようなプレーヤーがこの世界に現れる可能性があるから、そいつの行動次第で一緒に戦って欲しいって言うんだな」
「ああ」
話を聞き終えたリクは内容を要約し、確認する。その言葉にツアーは頷いた。
「けど、俺は100年も生きられないぞ」
話は理解したがそれには問題があった。リクは人間だ。プレーヤーではあるが、力はあっても長く生きられる訳では無いのだ。
「それならば、問題無い。僕の始原の魔法で何とかする。君は永遠に近い時を生きられるようになる」
「永遠……」
「正確には僕が死ぬまでかな。永遠と言うには大げさだけど、少なくとも1000年は軽く超えるだろう」
悩む様子を見せるリク。いや、その意思は明らかに拒絶の方へと傾いていた。異形なメンタルを持たないリクにとって、長すぎる寿命と言うのは重荷でしかないのだ。
「悪いけど……」「頼む!!」
拒絶の言葉を紡ぎかけたリクに対し、ツアーをそれを遮るように叫んだ。聞いた瞬間に、彼はリクを殺さなくてはならなくなる。
「僕一人ではこの世界を守りきれない。君の力が必要なんだ」
リクの心を動かすため、ツアーはその立場からすれば漏らすべきでは無い弱音を敢えて漏らした。
その言葉にリクの心が揺らぐ。
「……」
「……」
落ちる沈黙。これ以上、紡げる言葉は無い。ツアーは覚悟を決め、答えを待った。
「……わかった、なるよ。この世界の守護者に」
「!! 本当か!?」
「ああ、凄く迷ったけどな。今のツアーの言葉、本心からだって分かった。仲間は見捨てられない。それに、俺も、守りたいんだこの世界を」
荒廃し、滅びかけた元の世界を知るからこそ、この美しい世界を守りたいと言う気持ちがリクにはあった。それは元の世界では単なる一般人に過ぎず、初期は低レベルで力もなかったリクが戦い続けて来られた原動力の一つでもある。
「ありがとう」
「ああ、けど、そうなると一生、結婚とかは無理そうだな。冒険が終わったら、嫁さんでも探そうと思ってたんだが」
「む、なら……」
<選択肢1:「キーノを嫁にしたらどうだい?」へ進む>
<選択肢2:「責任をとって、僕が君の嫁になろう」へ進む>
選択肢1:「なるべく原作通りのイメージで行きたいな」ルートを選択しました
「キーノを嫁にしたらどうだい?」
「キーノを?」
「ああ、彼女はアンデッドだ。同じように長い時を一緒に過ごすことができる。それに彼女の好みは自分を守ってくれるような強い男だそうだよ。君ならピッタリじゃないか」
「うーん、キーノか。ちょっとロリ過ぎるような、でも嫌いじゃないしな~」
躊躇いを見せつつも、満更でもなさそうな表情を見せるリク。しばらく考え、結論を出す。
「一旦、保留で。今日は特大の決断をしたしな。一日で大きな決断を幾つも下すのは流石にきつい」
「そうか、確かにそうかもしれないな」
自分も先程まで悩んでいたが故に、決断に使う体力の多さに納得を示すツアー。話題をひっこめ、代わりに手を差し出す。
「これかもよろしく頼むよ」
「ああ、こちらこそ」
がっちりと握手する二人。こうして、ツアーはリクを殺さずに済んだ。そして二人は長き時を生きる共に歩む友となり、この世界を守っていくことになるのだった。
選択肢2「ツアー、実は女の子だった(原作大崩壊)」ルートを選択しました。
「責任をとって、僕が君の嫁になろう」
「えっ、いや、男と結婚する趣味は……」
「あれ、言ってなかった? 僕は雌だよ」
衝撃発言をするツアー。その言葉にリクは目を丸くする。
「えっ? いや、待てよ。そもそも性別以前に、お前の正体ってドラゴンだろ? 幾ら何でも……」
「大丈夫、前例があるからね。人間と子供を作った竜王が居るんだ」
「そ、そうなのか」
連続して返される衝撃的な答えにリクは言葉につまる。ちなみにその竜王の子孫が竜王国の王族である。
「ああ、君の子供なら一杯産んであげるよ。今では真なる竜王は産まれなくなってしまったけど、君との子なら強い子が産まれそうだし、一石二鳥だね。これで僕も変態の仲間入りだね。まあ、リクを殺す位なら全然いいよ 」
最後の部分は小声で呟くツアー。人間と子供を作った七彩の竜王は異種姦の変態と言われていた。
「何かノリノリだなツアー」
「そうかい?」
リクを殺さなくてはいけないと言う重責から解放されたことで、ツアーは見たことが無い程にテンションが高かった。そのテンションの高さにリクはそれ以上、ツッコミを入れられなかった。
(まっ、いっか)
内心で呟く。それはツアーを嫁にするのを納得したと言うことではなく、とりあえず今は言わなくてもいいという考えだったのだが、結局その後、結婚。二人とその子孫達によってこの世界は守られていくのだった。
そして200年後、200年物の世界意志(ワールドセイヴァー)が存在するのを知って、どこかの骨が存在しない胃を消し炭にするレベルのストレスを抱えながら、必死に争い回避に奔走するのであった。