「なんだこれ」
思わず目の前の者に現実逃避したくなった。
ここは病室。怪我はほとんど治っているが念のためと包帯ぐるぐる巻きてほぼ無理矢理入院させられている和澄シンだ。そしてこれは目の前には山のように積まれた箱。
そう、お見舞いの品である。
どうやら先日のサイボーグ幼女との戦いを撮られていたらしく、入院した場所も
幸いなことに、対処は早かったので
「いくらなんでもこれはないよなぁ」
病室の机に乗らないほど山盛りになってる箱を見て俺はそう呟いた。
俺が入院して早三日、お見舞いとしてやってくる同僚や一般人がおいていく見舞い品が自分の手に負えないと言いいうことに二日で気づいた。
果物やお菓子はともかく、お見合い写真やきわどい下着(多分使用済み)など目に毒になるようなものまで置いてある。
流石にこれは不味いと警備をしている同僚がささっと余計なものだけを持って行ってくれた。
下着とかどうしようもないんだよなぁ。俺が着るための衣類とかも送られてたけど靴のサイズとかぴったりなのがほとんどでいつ測ったんだよとと言いたくなる。
でも奴らなら目測でやりかねない。だって男がらみになると途端に身体能力が上がる連中だもの。*1
「えー、とりあえず検査の結果ですが、結論から言うと全治1週間です」
「おかしいだろう!?高さ10mから鉄塊を下敷きにしながらとはいえ落下したんだぞ!?それに2日間意識不明だった!それが全治1週間だと!?」
「ひいい!?しょ、署長さん落ち着いて!」
俺の頑丈さと再生能力の高さにブ千切れしてら。
当然といえば当然だ。普通、明らかに重症になるはずがあっさりと治ってしまうのだからキレるのも無理はない。
『サイン』に変身して俺の身体は人の元から離れつつあったのは自覚している。事実、ダークヒーローとは別に怪人態もなろうと思えばなれる。
ただし、それは本当の本当に最終手段で元に戻れる保証もない。あのクソボケゴミカス野郎の滅亡厨との決戦で一度変身する力が尽きた際に二度と戻れない覚悟で怪人態になったんだ。
ぶっちゃけ理性がほぼ飛んでたようなもんだが、
そして今に至るって訳。
「私だって綿密に検査したんですよ!?骨だって折れてたし、内臓もかなり傷ついていました!でも手術するかって言われたら微妙な所で、よほどのことがない限り保存的治療を…………」
「奇妙な薬を使ったとかはないな?」
「医療従事者はそのようなもの使いません!」
俺の体質で滅茶苦茶口論している2人を放置するのは少々心が痛む。
だって理不尽な現象にあって慌てるのはしたかない事だが不毛な議論が続くのは時間の無駄だ。
丁度いいものもあるし、これを使って黙らせよう。
「でーすーかーらー、むぐっ」
「だーかーらー、むぐっ」
「はいはい、喧嘩はそこまで。菓子でも食って落ち着けって」
俺はベットから抜け出して、2人の口に貰い物の菓子を突っ込んだ。
雑で山盛りに置かれている箱から適当に取り出したが、細長いクッキーがちょうど目についたから選んでみた。
「ぽりぽりぽり…………は、初めてアーンしてもらった…………」
「ボリボリ、おま、お前、もう歩けるようになったのか!?」
俺の回復力の高さに驚く二人。医者らしい白衣の女性は何やら混乱していそうだがあえて無視する。
「俺くらいになったらこの程度はすぐ直る。全治1週間は当たり前、OK?」
「OKじゃないが?」
冷静なツッコミを受けても飄々とする態度をとる、これがプロのダークヒーローだ。*2
「そんなことよりも、これの配分を決めようぜ」
そうして俺が指を差したのは山積みになった箱。最初に述べた通り、たくさんのお菓子や衣類、小物が入っている。
この量は俺一人で消費しきれない。食べきる前に賞味期限が切れてしまう。
俺としては問題ないが、寮に仕舞い切れるはずがない量をどうにかせねばならない。
ならば好感度稼ぎとして同僚に配ればいい。
「署長、これ持って帰ってくれ」
「待て、いきなり話が分からない」
「俺一人に処分は出来ないんだって。だから、皆に配ってほしい」
「…………何の意味が?」
「頼むよ、俺が居なくなってみんなピリピリしてるんじゃないか?」
俺の予想を口にしただけだったが、署長の顔が僅かに歪んだのを見逃さなかった。
やっぱりな。本来なら守るべき対象が勇敢に戦いに行って怪我してしまうことは、心苦しいもんだ。
特に自分に憧れて無茶した奴は、な。*3
メンタルケアとしては及第点すら貰えない行動だが、俺からの贈り物とでも言っておけば勝手に食いつてくれるだろう。
「迷惑料と思ってくれよ~?なぁ~?」
「…………全くこの悪ガキが」
即座にクビにしない程度に俺を思っていてくれて嬉しいよ。俺だったらこんな悪ガキとっととクビにしてる。
「戻った時の言い訳を考えておけよ?」
「へいへい、明日には退院できると思うから」
「できませんからね???」
目をグルグルさせたまま混乱しているとはいえ俺にドクターストップをかけてきた。
流石に冗談だ、全部治るのにあと3日はかかる。
「全く…………みんなが寛容じゃない事だけは忘れるな」
「はーい」
適当に返事をしてベッドの上にゴロンと寝転がる。
野宿よりもマシだが、寮のベッドの方が恋しいな。
そう思ってしまうのは私物が置いてあるからなのだろうか、はたまた山積みになっている差し入れから目をそらしたいからなのか。
「もっと研究して…………いや、でも男の人を相手にそんな…………!」
部屋の外で葛藤する医師の声を聴きながら、俺は暇を持て余し続けた。
『シンきゅんのお菓子はアタシのものだぁ!』
『取り合うな馬鹿共!配給制だ!』
その後、警察署内で仁義なき戦いが勃発したことを告げられて俺は大爆笑するのであった。
次回!大怪我したって聞いたけど大丈夫?任せて、シンきゅんは私が養うから!え?他の奴らも同じことを言ってる?やってやらぁ!
『第十二 引退させろ』
『まだ辞めねえよ』
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