元ダークヒーローは世界初の男性警官となる   作:蓮太郎

11 / 11
しおりを挟んでた古い作品が更新されたからちょっと復活。


第十一 、おかし争奪戦

 

「なんだこれ」

 

 思わず目の前の者に現実逃避したくなった。

 

 ここは病室。怪我はほとんど治っているが念のためと包帯ぐるぐる巻きてほぼ無理矢理入院させられている和澄シンだ。そしてこれは目の前には山のように積まれた箱。

 

 そう、お見舞いの品である。

 

 どうやら先日のサイボーグ幼女との戦いを撮られていたらしく、入院した場所もなぜか(・・・)バレて病院も大変な事になっていた。

 

 幸いなことに、対処は早かったので

 

「いくらなんでもこれはないよなぁ」

 

 病室の机に乗らないほど山盛りになってる箱を見て俺はそう呟いた。

 

 俺が入院して早三日、お見舞いとしてやってくる同僚や一般人がおいていく見舞い品が自分の手に負えないと言いいうことに二日で気づいた。

 

 果物やお菓子はともかく、お見合い写真やきわどい下着(多分使用済み)など目に毒になるようなものまで置いてある。

 

 流石にこれは不味いと警備をしている同僚がささっと余計なものだけを持って行ってくれた。

 

 下着とかどうしようもないんだよなぁ。俺が着るための衣類とかも送られてたけど靴のサイズとかぴったりなのがほとんどでいつ測ったんだよとと言いたくなる。

 

 でも奴らなら目測でやりかねない。だって男がらみになると途端に身体能力が上がる連中だもの。*1

 

「えー、とりあえず検査の結果ですが、結論から言うと全治1週間です」

 

「おかしいだろう!?高さ10mから鉄塊を下敷きにしながらとはいえ落下したんだぞ!?それに2日間意識不明だった!それが全治1週間だと!?」

 

「ひいい!?しょ、署長さん落ち着いて!」

 

 俺の頑丈さと再生能力の高さにブ千切れしてら。

 

 当然といえば当然だ。普通、明らかに重症になるはずがあっさりと治ってしまうのだからキレるのも無理はない。

 

 『サイン』に変身して俺の身体は人の元から離れつつあったのは自覚している。事実、ダークヒーローとは別に怪人態もなろうと思えばなれる。

 

 ただし、それは本当の本当に最終手段で元に戻れる保証もない。あのクソボケゴミカス野郎の滅亡厨との決戦で一度変身する力が尽きた際に二度と戻れない覚悟で怪人態になったんだ。

 

 ぶっちゃけ理性がほぼ飛んでたようなもんだが、あいつ(ライン)のおかげで正気を取り戻し、再び『サイン』に変身できるようになった。

 

 そして今に至るって訳。

 

「私だって綿密に検査したんですよ!?骨だって折れてたし、内臓もかなり傷ついていました!でも手術するかって言われたら微妙な所で、よほどのことがない限り保存的治療を…………」

 

「奇妙な薬を使ったとかはないな?」

 

「医療従事者はそのようなもの使いません!」

 

 俺の体質で滅茶苦茶口論している2人を放置するのは少々心が痛む。

 

 だって理不尽な現象にあって慌てるのはしたかない事だが不毛な議論が続くのは時間の無駄だ。

 

 丁度いいものもあるし、これを使って黙らせよう。

 

「でーすーかーらー、むぐっ」

 

「だーかーらー、むぐっ」

 

「はいはい、喧嘩はそこまで。菓子でも食って落ち着けって」

 

 俺はベットから抜け出して、2人の口に貰い物の菓子を突っ込んだ。

 

 雑で山盛りに置かれている箱から適当に取り出したが、細長いクッキーがちょうど目についたから選んでみた。

 

「ぽりぽりぽり…………は、初めてアーンしてもらった…………」

 

「ボリボリ、おま、お前、もう歩けるようになったのか!?」

 

 俺の回復力の高さに驚く二人。医者らしい白衣の女性は何やら混乱していそうだがあえて無視する。

 

「俺くらいになったらこの程度はすぐ直る。全治1週間は当たり前、OK?」

 

「OKじゃないが?」

 

 冷静なツッコミを受けても飄々とする態度をとる、これがプロのダークヒーローだ。*2

 

「そんなことよりも、これの配分を決めようぜ」

 

 そうして俺が指を差したのは山積みになった箱。最初に述べた通り、たくさんのお菓子や衣類、小物が入っている。

 

 この量は俺一人で消費しきれない。食べきる前に賞味期限が切れてしまう。

 

 俺としては問題ないが、寮に仕舞い切れるはずがない量をどうにかせねばならない。

 

 ならば好感度稼ぎとして同僚に配ればいい。

 

「署長、これ持って帰ってくれ」

 

「待て、いきなり話が分からない」

 

「俺一人に処分は出来ないんだって。だから、皆に配ってほしい」

 

「…………何の意味が?」

 

「頼むよ、俺が居なくなってみんなピリピリしてるんじゃないか?」

 

 俺の予想を口にしただけだったが、署長の顔が僅かに歪んだのを見逃さなかった。

 

 やっぱりな。本来なら守るべき対象が勇敢に戦いに行って怪我してしまうことは、心苦しいもんだ。

 

 特に自分に憧れて無茶した奴は、な。*3

 

 メンタルケアとしては及第点すら貰えない行動だが、俺からの贈り物とでも言っておけば勝手に食いつてくれるだろう。

 

「迷惑料と思ってくれよ~?なぁ~?」

 

「…………全くこの悪ガキが」

 

 即座にクビにしない程度に俺を思っていてくれて嬉しいよ。俺だったらこんな悪ガキとっととクビにしてる。

 

「戻った時の言い訳を考えておけよ?」

 

「へいへい、明日には退院できると思うから」

 

「できませんからね???」

 

 目をグルグルさせたまま混乱しているとはいえ俺にドクターストップをかけてきた。

 

 流石に冗談だ、全部治るのにあと3日はかかる。

 

「全く…………みんなが寛容じゃない事だけは忘れるな」

 

「はーい」

 

 適当に返事をしてベッドの上にゴロンと寝転がる。

 

 野宿よりもマシだが、寮のベッドの方が恋しいな。

 

 そう思ってしまうのは私物が置いてあるからなのだろうか、はたまた山積みになっている差し入れから目をそらしたいからなのか。

 

「もっと研究して…………いや、でも男の人を相手にそんな…………!」

 

 部屋の外で葛藤する医師の声を聴きながら、俺は暇を持て余し続けた。

 

『シンきゅんのお菓子はアタシのものだぁ!』

 

『取り合うな馬鹿共!配給制だ!』

 

 その後、警察署内で仁義なき戦いが勃発したことを告げられて俺は大爆笑するのであった。

 

*1
説明しよう!修羅場で人数が集まれば集まるほど超次元なバトルをしていたぞ!純粋な人間のはずのヒロインがライバルをボコボコにしている様子をシンはドン引きして見ていた!

*2
説明しよう!シンはダークヒーローになりたての頃は迷走しておりゴミ箱の中から登場したりかっこつけて車道に飛び出した瞬間に轢かれてたりしていたぞ!

*3
説明しよう!シンのようなダークヒーローに憧れてしまった青年が彼の真似をして『デストロイヤンズ』に喧嘩を売ってしまったことがある!拷問され殺されそうになったところをシンが助け、二度とこのような真似をするなと脅したことがある!




次回!大怪我したって聞いたけど大丈夫?任せて、シンきゅんは私が養うから!え?他の奴らも同じことを言ってる?やってやらぁ!

『第十二 引退させろ』

『まだ辞めねえよ』

ブックマークとお気に入り、特に感想をいただくとモチベが上がるのでよろしくおねがいします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

貞操逆転世界に転生した俺は目のクマが濃いボサボサ頭ジト目研究バカの二人称少女系性癖破壊お兄さんらしい。(作者:くっきーたべたい)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼自分の好きなソシャゲの世界に転生したと思っていたら、その世界の貞操観念が逆転していた。▼まあそんなことは関係なく、色々あって世界が崩壊することを防ぐため、治癒魔法の研究を死に物狂いでした。▼結果…▼うら若き少女の性癖を破壊し尽くす男が生まれたのだ。


総合評価:485/評価:8.79/連載:1話/更新日時:2026年08月26日(水) 23:33 小説情報

百合エロゲの世界で主人公の母親とワンナイトした件(作者:ランマ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

百合エロゲーの世界に転生した星見(ホシミ)射音(イオ)▼彼は家を追い出されたと同時に前世の記憶を思い出した▼途方に暮れていると美女に拾われて……?▼「あ゛あ゛あ゛やっちゃったー!」▼原作主人公の母親とワンナイトした射音は、この先どうなってしまうのか▼カクヨム及びなろうでも掲載しています


総合評価:356/評価:7.23/連載:10話/更新日時:2026年06月30日(火) 12:00 小説情報

ロボゲー世界でロボに乗りたいので色々と画策してみる。(作者:裁縫セット)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼ 全然ロボットに乗せてくれないし乗る機会のないファンタジーロボゲー世界に転生した少年『アキ』▼これは、彼がですわですわ煩い悪役令嬢を利用してロボット作ったり。▼ パイロット技術化け物の主人公と決闘したり。▼「こんな事もあろうかと」でわけわからんアイテム取り出したり。▼ 物のついでにラスボスの計画狂わせたりしてロボットに狂うお話。


総合評価:246/評価:8/連載:3話/更新日時:2026年07月18日(土) 17:06 小説情報

クソ美人な教授に目をつけられて俺の単位はもう終わりかもしれない。(作者:アロアロス)(オリジナル現代/コメディ)

 世に伝わる勇者パーティが世界を救ってもう数年が経つ。▼ ▼ 邪神討滅の知らせを聞いた時は純粋無垢な高校生だった俺は、気づけば大学四回生の崖っぷちに立っていた。▼ ▼ ▼ ▼ そう、単位が足りないのである。▼ ▼ ▼ ▼ まだ留年確定という訳でもない。この一年全力で頑張れば卒業はできるだろう。▼ ▼ 季節は春。温かい春風と日々の狂った寒暖差に見舞われながら、…


総合評価:556/評価:8.18/短編:1話/更新日時:2023年05月31日(水) 10:59 小説情報

転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ(作者:水色の山葵)(オリジナル現代/冒険・バトル)

人より道のりは長いが、ダンジョン中毒の彼にはあまり関係がない。▼カクヨムにも投稿してます。▼https://kakuyomu.jp/works/2912051601499000526


総合評価:8140/評価:7.93/連載:39話/更新日時:2026年08月13日(木) 07:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>