『文豪』が記すのは、大海賊時代の物語   作:宮川アスカ

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サブタイトル後でつけます。とりあえず本編をどうぞ


第3話 いずれ世界一の剣豪へ

 

 深い深い霧の中を渡る小型船。小型船からは電伝虫を通し、男の声が響いていた。

 

『──スリラーバーク付近には既にいるな?』

 

「ええ。待機してますとも」

 

 電伝虫の声の主、世界政府に向けて、ナツメはそう返答する。ナツメの小型船の目の前には、船と呼ぶにはあまりにも巨大すぎるゴースト島の姿が浮かんでいた。

 

『先程既に現地に向かわせているくまからモリアが倒されたと連絡があった。まだ息はあるらしい。そう簡単に次々と七武海が落ちてしまっては、その名の威厳を失う……。奴の措置は後だ、まずは生きたまま連れ戻せ』

 

「……了解」

 

『麦わら海賊団はくまに消すよう命じている。貴様はウォーターセブンでの一件がある。くれぐれも助けようなどとは思うなよ』

 

 それだけ言うと、ナツメの返事も待たずにブツッと通話が切れる。目を閉じた電伝虫を見て、ナツメは小さくため息をついた。

 ウォーターセブンでの一件はひとまず厳重注意という形で対処された。エニエス・ロビーが崩壊し、ただでさえ忙しい現状。その前にはクロコダイルも落とされ、その上にナツメまで立て続けに地位剥奪となると、市民から政府に対する信頼や印象は悪くなる。

 そもそも、ナツメは作家としての活動だけでかなりの大金を稼いでいおり、その収益の1部も政府に収めている。資金繰りという面でも政府にとってナツメは切るに切りにくい存在なのだ。これが、彼が王下七武海でありながら、ある程度自由に行動出来る理由だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達の命は助けてやろう。その変わり、麦わらのルフィの首1つ差し出せ。その首さえあれば政府も文句は言うまい」

 

「……仲間を売れってのか?」

 

「そうだ。さぁ、麦わらのルフィをこちらへ」

 

「「「断る!!!」」」

 

「……残念だ」

 

 スリラーバーク。瓦礫の山の上で、くまはそう言うと、小さく圧縮した大気の塊を弾く。

 

熊の衝撃(ウルススショック)

 

 肉球の形をした小さな塊は徐々に広がっていく。小さく圧縮された大気は元に戻ろうとし、大きな衝撃波を生む。そう、これは一種の爆弾である。

 広がりきった肉球の膜が麦わらの一味を、その場にいた海賊達を飲み込み、爆発する。

 

「ほう。例え自分の命がかかっていようと仲間の、船長の首だけは絶対に取らせない。海賊として素晴らしいものだな」

 

「……文豪か。何をしにきた」

 

「おや、政府からは何も聞いていないのか。まったく、任務を与えるのなら、このような情報はしっかりと共有しておいて欲しいものだ」

 

 くまが声のした方を向くと、そこには瓦礫の山の上に座るナツメの姿が映る。くまの問に、ナツメは少々悪態をつきながら、瓦礫の山から立ち上がる。

 

「なに、私はモリアを回収しに来ただけだ。キミの邪魔はしないから安心したまえ。それと……、戦いの最中にあまりよそ見はしない方が良い」

 

「なに……?」

 

 くまは、ナツメの言葉に疑問を抱きながら、ルフィのそばの瓦礫を自身の能力で飛ばした時、ナツメではない何者かが地面を蹴る音が聞こえた。

 

獅子歌歌(ししそんそん)!!」

 

「?!」

 

 仰け反るくまの左肩から胸にかけて、ゾロの斬撃が通る。油断していたとはいえ自身に傷をつけた斬撃と、あの攻撃を受けてもまだ倒れない事に、くまは少しばかり驚愕する。

 そして、斬撃によって破けた服の部分から、まるで機械の様な鉄の肌が姿を見せる。

 

「てめぇ、その体……。改造人間(サイボーグ)か……?!」

 

改造人間(サイボーグ)……。確かにそうだが、お前の知る改造人間(サイボーグ)とは違う。俺はパシフィスタ(・・・・・)。まだ未完成の、政府の人間兵器だ」

 

 パシフィスタ。それは政府の天才科学者、Dr.ベガパンクが開発した人間兵器である。人類があと500年かけて辿り着くとされる頭脳をもつ男が開発したそれは、能力者ということもあり、未だ未完成ながらも王下七武海にも引けを取らない実力を持ち合わせている。

 

 目の前には、王下七武海とそれに匹敵する強さを持つ人間兵器。何故かは分からないが以前は自分達を助けてくれたナツメも、どうやら今回、そのつもりはないらしい。既にスリラーバーク海賊団との戦闘で疲弊しきったゾロの身体では、いや例えこれが万全な状態でも、戦力差は歴然のものだった。

 それを理解したゾロは、どかりとその場に座りこむ。

 

「どうしても……、どうしても、ルフィの首を持って行くか……?」

 

「……それが最大の譲歩だ」

 

「分かった……、首はやるよ。ただし! 身代わりとして俺のこの首1つで許してもらいてぇ!!」

 

 そう言ったゾロは、地面に手をつき頭を下げる。

 

「お前の首にそれだけの価値があると?」

 

「まだ大して名のある首とは言えねぇ……。だが、やがて世界一の剣豪になる男の首だと思えば、取って不足はねぇはずだ!!」

 

「……そんな野心がありながら、その男に変わって死ねると言うのか」

 

「仲間を、ましてや船長1人守れなくて、てめぇの野心もねぇだろう」

 

 そして頭をあげこう言い放つ。

 

「ルフィは、海賊王になる男だ!!!」

 

 それを聞いた者は馬鹿げた事だと笑うだろう。しかし、彼の瞳には疑いなど1つもない。それを聞いて、それを見て、ナツメは手帳を開く。

 

「面白い。海賊狩りのゾロ。キミの覚悟、気に入った。くま、私からもお願いしよう。見逃せとは言わん。ただ、1%でもいいから彼が生き残れる選択をくれてほしい」

 

「文豪……。邪魔はしないと言ったはずだが?」

 

「なに、これはあくまで私からの提案だ。強制はしていない。キミが麦わらのルフィ、または彼の首を取りたいと言うならそうすればいい」

 

 その言葉にナツメはただ、と付け加える。

 

「もとよりキミは、そうするつもりだったようだが?」

 

「……いいだろう。ただ、死より辛い地獄をみせる」

 

 くまはそう言うと、ルフィを持ち上げ、肉球でトンと軽く押す。すると、まるで何かが抽出されたかの様に、ルフィの背中から巨大な肉球の形の膜が出現する。

 

「これは、今回の戦いで受けた麦わらの痛み、そして疲労だ。身代わりになると言うならお前がこの全てを受けろ。ただでさえ疲弊しきったその体で、この全てを受ければ間違いなく死に至る。ただ、万が一にもこれを耐えきる事が出来れば、そこの男の言うとおり今回は見逃してやろう」

 

 くまはそう言うと、その1部を取り出し、ふわりとゾロに飛ばす。ほんの1部、ただの小さな球体が当たった瞬間、ゾロの心臓が跳ね上がる。そしてとてつもない激痛が全身を襲う。

 

「ぐああああああああ!!」

 

 一通りの苦痛が終わり、バタリと倒れるゾロにくまは問いかける。

 

「どうだ? これでもまだ続けるか?」

 

「ハァハァ……、場所だけ、変えさせてくれ……」

 

 膜の中に両手を突っ込む。激痛が、耐えきれない程の苦痛が走る、皮膚が切れ、全身から血が溢れ出す。仲間から少し離れた森の中で、1人、剣士の叫び声だけが響いていた。

 

 

 スリラーバークの門の上に、ナツメとくまは立っていた。

 

「……いい仲間を持っているな。流石はあんたの息子だ、ドラゴン……」

 

「その名を王下七武海の隣で言っていいのかい?」

 

「なに、ただ名を口にしただけだ」

 

「ふふっ。確かにそれもそうだ」

 

 ナツメはそう言うと、手帳を閉じ、歩き出す。

 

「さて、私も本来の任務に戻るとしよう。既にモリアの部下に手配はしてある。あまり待たせるのも酷だ」

 

「……政府への報告にお前の名は伏せておく。安心しろ」

 

「ほう、それは助かる。それではな。あまりやりすぎて、政府に勘づかれないよう気をつけたまえよ」

 

 お前だけには言われたくはない事だ。くまはそう呟き、歩いていくナツメを見届けた。

 

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