「大将黄猿だぁ! もう逃げるしかねぇ!!」
「海賊達を討ち取れ! 賞金首は至る所にいるぞ!! 億越えに注意せよ!!」
大将の登場に逃げ出す海賊達とそれを追う海兵。そんな喧騒の中、当の本人は1人呑気に自身の手首につけられた電伝虫に話しかける。
「オー……もしもし? こちら黄猿ぅ……おや? おかしいねぇ」
そんな黄猿を見た1人の海賊が血迷った行動にでる。大将を討ち取れば自身の名を世界に轟かせる事が出来ると考えた男は、黄猿に向かい発砲する。しかしその銃弾は黄猿の身体を通り抜けていく。
「おっかしいねぇ〜……。そこのキミ、ちょっとものを尋ねたいんだけど……」
「ギャー!!!」
突如として目の前に現れた黄猿に、海賊達は逃げ出す。
「まったく……。ものを尋ねただけでしょうがぁ……」
黄猿はそう言いながら、軽く足を上げる。足の裏が一瞬光り、次の瞬間、海賊達の叫び声と共に、遠くの方で爆発が起きる。
そんな中、爆発によって折れたヤルキマン・マングローブの方から、爆風の中に1人の人影が現れる。
「……黄猿。キミ、わざと狙ったろ?」
あの爆発から生き延びていた者がいた事に海兵達が驚く中、黄猿はニコリと微笑む。
「さぁ〜……たまたまだよぉ〜。それより、何でキミがいるのかなぁ〜? 王下七武海は招集を受けているはずだがねぇ……」
「たまたま近くにいたものでね、寄り道さ。なに、他の者達が着く頃に間に合わせれば問題ないだろう?」
その声に、海兵達の誰もが生き延びたわけに納得する。声の主、ナツメはポンポンと爆風によってついた服の埃を叩いた。
「オー……そういう事にしておくとするよぉ。ところでぇ〜……戦桃丸くんを探しているんだけれども、知らないかぁい?」
「私は見てないな。電伝虫はどうしたんだい?」
「それが中々繋がらなくてねぇ〜」
黄猿はそう言い、先程から話しかけている電伝虫を見せる。
「ん? それは盗聴用の黒電伝虫だ。こういう電伝虫を持っていないかい?」
ナツメはそういうと、子電伝虫を取り出す。それを見た黄猿は、何かを理解した顔をする。
「あぁ、これかぁ〜。もしもーし……こちら黄猿ぅ──」
ゴソゴソと取り出した子電伝虫を使い、黄猿は戦桃丸に連絡を取る。
「それじゃあ〜……わっしは麦わらの方へ行くとするよぉ」
「黄猿さん! 億超はモンキー・D・ルフィ、ユースタス・キッド、トラファルガー・ロー以外にも数名いますがどうしますか?」
「オー……そうだねぇ。忙しいなかせっかく来たんだぁ……、みすみす逃がすわけにもいかんでしょお」
部下の言葉に、黄猿なそう言いながらナツメの方を見る。
「他の海賊は……キミに任せてもいいかなぁ?」
「断ろう。私は政府に呼ばれているのでな」
「オー……、他の七武海が着くまでに間に合えば大丈夫でしょお〜」
「……食えんやつだ」
ナツメは小さくため息をつきながら歩きだす。
「期待してるよぉ」
黄猿の言葉に、ナツメはヒラヒラと軽く手を振るのであった。
シャボンディ諸島24番GR。木材の箱の上に腰掛け、タロットカードを触るホーキンスの側を、巨漢が倒れる様に飛んでくる。巨漢の正体、ウルージが飛んで来た方向からは、ゆっくりと歩いてくる人間兵器の姿。
「ハァ……ハァ……。まいった、なんという強さ……! ここまでか?」
「安心しろ。お前にはまだ死相が見えない」
仰向け状態で血だらけのウルージに、ホーキンスは立ち上がりながらそう答える。すると、突如としてまた別の男が人間兵器に攻撃する様な形で現れる。
「……
何故関係のない男がわざわざ攻撃してきたのか疑問に思っていると、反対側からとある男の声が聞こえてくる。また誰か現れたのかと見ていたホーキンスの部下達は、その男の姿に驚愕し、絶望する。
「『魔術師』バジル・ホーキンス、懸賞金2億4900万ベリー。『怪僧』ウルージ、懸賞金1億800万ベリー。『赤旗』X・ドレーク、懸賞金2億2200万ベリー。3人……いや、4人か……。なんにせよ1箇所に集まっているとは運が良い。探す手間が省ける」
──?!
そこに立っていたのは、複数の手配書を持ったナツメであった。
「前方に人間兵器、後方には七武海。なんという悲運……!」
「しまった……海軍大将だけでなく七武海までいるとは、誤算だ……」
「『戦闘』敗北率100%。『生存』死亡率……0%」
三者三様の反応を見せる中、ナツメは思わぬ人物を見つける。どうやら今日は本当に運が良いらしい。いや、レイリーに巻き込まれ、黄猿に見つかった事を考えればトントンだろうか。寧ろこのくらいの事がなくては割に合わない。
「パシフィスタじゃないか。丁度いい。彼らの相手を任せてもいいかな?」
「お前は混ざらないのか?」
ドレークの言葉に、ナツメは軽く首をふる。
「面倒事は避けたいんでね。そもそもキミ達程度ならパシフィスタで事足りるだろう。それとも……私の参加が希望かな?」
「そこまで言われて断るわけにはいかんだろう! 随分とやられたが……ボチボチ反撃してみよう……!!」
そう言うと、元々大きいウルージの身体が、モコモコとさらに巨大化していく。
ルーキーとはいえ億の首。海賊団の船長が舐められたまま黙っているわけがない。
「ただ……! まずはお前からだ! さっきまでの私とは思いなさんな! 因果晒し!!」
重い一撃がパシフィスタに入る。腹を殴られたパシフィスタは建物へと直撃する。建物が崩れ、砂煙が舞う中から、1本のレーザーがウルージを撃ち抜く。
「グワァ!!」
まるで黄猿の攻撃を再現したかの様な人間兵器は、あの攻撃を受けてなお、何事も無かったかの様に立ち上がる。
そのまま、ドレークの方へと向かい、ドレークは人の姿を変えていく。
「古代種……。久しく見ていなかったが……ん?」
ドレークの姿を見ながら、ナツメは自身の中で未だ少女のままである、彼女のいる国の事を思い出していると、視線の端の方でホーキンスの身体がザワザワと動き始める。
「降魔の相」
「まったく。油断も隙もないな」
藁の怪物の様になったホーキンスを見て、ナツメはスっとガラスペンを抜く。そのままナツメが文字を書こうとした時、どこからか陽気な楽器の音が聞こえてくる。
「やはりいたか、海鳴り」
『海鳴り』スクラッチメン・アプーは身体の至る所を叩く。頭を叩けばシンバルの音が、胸を叩けば太鼓の音が、歯を弾けばピアノの音が、腕を吹けば笛の音が鳴る。
「届いてるかー?! この
アプーはそう言うと再び頭を叩く。
「スクラ──ッチ!
──!
ナツメが素早く1歩横に動くと、元いた場所に斬撃が走った様な跡がつく。避けられる事を見越してか、アプーはそのまま胸を叩く。
「
次の瞬間、ナツメの目の前で爆発がおこる。
「アッバッバッバ! チェケラ〜!! ま、流石にこれじゃあ、やれねぇだろうし! ほんじゃ、トンズラこくぜ! あばよ!!」
それだけ言い残し、アプーは建物の上を走っていく。
一方、爆風の先では、地面から生えたような壁で爆発から身を守ったナツメは、即座にペンを走らせる。
【SPEAR】
文字が槍へと変わり、ナツメはその槍を大きく振りかぶる。
「おあいにくさま、やられっぱなしは趣味じゃないので……──ねっ!」
言葉と共に放たれた槍は、爆風を消し飛ばし、風を切り、逃げるアプーを一直線に突き刺す。
「──ぐっ?!?!」
突如として背後から貫かれたアプーは建物から落ちる。それを確認したナツメは、驚愕で固まる3名の方を向く。
「さて、新たな世代の海賊諸君。暴れ足りたかね?」
「何を……」
【EXPLOSION】
──?!
何かを言いかけた矢先、先程のアプーの攻撃のように、ドレークの目の前で爆発が起こる。
「こいつはやばいな!!」
「怪僧、キミのタフさでは爆発はきかなそうだ」
【WATER】
文字から変わった水達が、まるで命を持っているかのように、殴ろうとするウルージの顔の周りに集まり、首から上を閉じ込める。いくら図体がデカかろうと呼吸が出来なければ人は死ぬ。気を失い倒れるウルージを尻目に、最後の1人へとナツメは語りかける。
「魔術師、キミの身体は良く燃えそうだ」
【FIRE】
火がホーキンスの身体を焼き尽くす。
「ホーキンス船長!!!」
ホーキンスの部下達が彼を心配する中、ナツメは首を傾げる。
「おや? 確かに燃やしたはずだが、これはどういう原理だい?」
「流石は王下七武海。やはり文豪相手に、たった10体では心許ないな……」
確かに焦げ跡の様なものはあるが、それも微々たるもの。焼けたはずのホーキンスの腕からは、藁人形の様な物が落ちただけであった。
「……今のはレイリーの覇気か」
12番GRの方を向きながらナツメは呟く。木箱に座るナツメに傷は無く、24番GRには4人の船長が倒れていた。
モンキー・D・ルフィとは不思議な男だ。彼には、人を惹きつける不思議な力がある。ナツメは物語に介入しない。しかし、彼を前にすると、少々手を出してしまいたくなる。現に今も、12番GRへ向かいたい衝動を抑えていた。
レイリーが介入したのなら、黄猿がいるとはいえ、そう簡単には死なないはずだ。ただ、戦桃丸にパシフィスタ、戦力差がありすぎる。
ちょっかいを出しに行きたいところだが、流石に今回ばかりはナツメも助けられない。天竜人を殴ったというのなら尚更。
どうしたものかと考えている時、1人の男が現れる。
「……お前にしては珍しくつまらん顔だな。文豪」
「おや、くまじゃないか。どこへお出かけだい……?」
「12番GRだ」
「それは何故……いや、聞くのは野暮か……」
ナツメはそう言うと、少し暗い顔をして俯く。
「……なあ、くまよ」
「なんだ」
「私は今からキミに死ねと言う」
「いいだろう」
「麦わらの一味を……逃がしてほしい」
「……無論だな。文豪、お前とは数度任務をこなした程度の仲だったが、私は割とお前の事を気に入っていた」
くまそう言いながら歩き出す。ナツメは振り返らない。未練は、彼に対して失礼だから。
「俺に課せられた最後の任が、お前からのもので良かった」
天竜人を殴った罪人をわざと逃がせば、それ相応の罰が下る。命が残ってれば良い方だ。いや、彼の場合は改造人間。死んだ方がましと思える仕打ちが待っているかもしれない。ナツメがくまに頼んだ事は、すなわちそういう事だ。
その日、麦わら海賊団は、世界中の各所に散りばめられる形で、この島から姿を消した。
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次回ヤマト関連の話を書いて、その後頂上戦争編に移りたいと思います。
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