「津波だあああっ!!」
海兵達の悲鳴じみた叫び声の先には、両端に聳え立つ巨大な波の壁。
そんな海軍本部ごと飲み込む大きさの波を、1人の男が止める。
「
大将青キジ。彼の放った冷気が、津波を氷の絶壁へと変える。
「
「グラララ! 青キジィ……若造が……!」
続けて白ひげに放たれた氷の矛は、彼に届く事無く青キジ諸共、大気ごと砕かれる。
「あらら」
しかし砕かれた青キジの身体は氷となり、落ちた先で再び自身の形を形成する。そしてそのまま海面につけられた彼の手は、湾内丸ごと凍らせた。
「砲撃ィ!! モビーディック号を破壊しろー!!」
湾内が凍った事により、動きを封じられたモビーディック号に向かい砲撃が始まる。しかし、海面が凍ったという事は足場が出来たという事。白ひげ海賊団の隊長、傘下達が、一斉にエース目掛け迫り来る。
「……とうとう始まったな」
海賊と海軍の力と力のぶつかり合いを見て、ナツメは戦争が始まった事を嘆く。そんなナツメの横で、ミホークは背中の黒刀を静かに抜く。
「おや? いきなり動くのかい?」
「推し量るだけだ……。近く見えるあの男と我々の本当の距離を」
そう言いながら、握られた黒刀を軽く縦に一振した瞬間、分厚く凍った海面を抉るように、斬撃が白ひげに向かいまっすぐ飛ぶ。
「鷹の目!!」
白ひげの部下達が驚く中、当の本人に焦りは見られない。その焦りが崩れる事なく、斬撃はモビーディック号の手間で止まる。いや、正確には、止められる。
白ひげ海賊団3番隊隊長『ダイヤモンド』ジョズ。世界一の斬撃を防いだダイヤモンドの肉体に、傷1つ見られない。
しかし政府側の攻撃は止まらない。上空がピカッと眩しい光に包まれ、黄猿が現れる。
「
「おいおい、眩しいじゃねぇか……」
白ひげに向けられた無数の光のレーザーを、またも別の男が防ぐ。
「いきなりキングは取れねぇだろうよい」
「怖いねぇ〜……白ひげ海賊団」
白ひげ海賊団1番隊隊長『不死鳥』マルコは青い炎を盾に、そう呟いた。
「怯むな!! 広場へ踏み込め!!」
「陸に上げるな! モビーディック号を落とし白ひげを討ち取れぇー!!」
その一方で、隊長率いる海賊と中将率いる海兵の戦いが繰り広げられる。お互い1歩も譲らない中、1人の巨人族の男が姿を現す。
「オオオオ!! エースぐんは優じいんだ。絶だいに死なぜねぇ!!」
『国引き』オーズの子孫。リトルオーズJr.の姿を、湾岸に立つ王下七武海は興味深そうに見つめる。
「ほう、これは凄い。巨人族の域を超えているな」
「海外には巨大な男がおるものじゃな」
「キシシシ!! オーズの子孫?! 欲しい! アイツの死体が欲しい!!」
「……」
「フッフッフッ! 疼いてくるぜ……」
彼らの目の先で、リトルオーズJr.は進軍する。しかし、その巨大な身体は海軍にとっては格好の的。数多くの海兵が彼を標的にする中、今だ七武海に動きはない。
「エースぐん! 今そごへ行ぐぞおおお!!」
──!!?
叫ぶリトルオーズJr.は船を持ち上げ、湾頭の片方を破壊する。リトルオーズJr.が破壊した事により、海賊達に湾内への突破口が開かれる。
そちらに注目が集まる中、1人の海賊がハンコックに銃口を向ける。
「オーズに気を取られてると攻め落としちまうぞ!」
放たれた砲弾に気づいたハンコックは唇に人差し指を当てる。そしてチュッと投げキッスをすると、口から指先にかけて、ハートの形をした膜が現れる。
「
弓矢の様に引かれた膜はハンコックが手を離すと同時に破れるように弾け飛び、放たれたハート型の矢が砲弾だけでなく、当たった者全てを石化させる。
「
湾岸から飛び降り、蹴りを入れた場所が次々に石化し、砕けていく。しかしその攻撃は見境なく、海賊だけでなく海兵にまで被害が及ぶ。
「貴様……海兵にまで手を……!」
「白ひげと戦う事は承諾したが、ソナタ達の味方になるとは言っておらぬ。男など、敵も味方も皆同じじゃ。……あの方以外は」
「何をぉー?!」
「妾の、美しさに免じて」
海兵は尚も抗議するが、その言葉に、頬をポッと赤らめる。
「またあの方。男だと言う事は分かったが……やはり気になるな」
湾岸から、未だこの戦争に関与していないナツメは、興味深そうにハンコックの会話を聞く。すると、彼の上部に巨大な影が差す。
「おや?」
「ハァ……ハァ……。せめで、王下七武海1人でも……!!」
攻撃をくらい続け既に限界の近いリトルオーズJr.の拳が、王下七武海の元へと振り下ろされる。
そんなリトルオーズJr.の上空を、攻撃を躱したドフラミンゴばバサバサと宙を舞う。
「面白ぇ!! フッフッフッフッフッ!!」
ドフラミンゴがリトルオーズJr.の背後に着地すると同時に、いきなり右足が綺麗に切断される。
「!!?」
足が切り落とされ、ガクンと態勢が崩れる中、その痛みは右足だけでなく、先程自身が振り落ろした左腕からも訪れる。
「おっと……。すまないモリア。つい切り落としてしまった」
砂煙の中、リトルオーズJr.の手首から先はなく、剣を握るナツメは、モリアへと全く申し訳なさそうに見えない謝罪をする。
「アイツら! 手と足を切っちまいやがって! コイツの死体は俺が貰うってのに!!」
モリアはそう言いながら、手に
片手と片足を失い、全身から血を流しながらも、リトルオーズJr.は進軍を止めない。広場へ踏み込み、まだ残った右手をエースの方へと伸ばす。
「もう、すごし……」
その巨大な身体を、これでもかと伸ばす。その手はエースの目の前まで到達する。もう身体は限界を迎えている。あと1歩踏み出せればという所で、突如動きが止まる。
「
モリアの放った
「エース……ぐ……ん……」
処刑台までもう数センチという所で、ドゴォンという音と共に、リトルオーズJr.はその場に倒れ込む。
「キシシシシ! 見ろ! こうやってスマートに殺すんだよ!」
「フッフッフッ! たまらねぇ! フッフッフッ!!」
「オーズ船長! ちくしょう! 七武海の奴ら!!」
「オーズ──!!!」
倒れた先で聞こえるのは、七武海2人の笑い声と、嘆く彼の船員。そして、目の前で仲間が自身を助けようしたばかりに殺された、エースの悲痛の叫びであった。
「オーズを踏み越えて進めぇ!!」
「うぉおおお!!」
そんな中でも、海賊達は、白ひげの声と共に突き進む。ここは戦場だ。いつどこで誰が死んでもおかしくない。仲間の死を悲しみはすれど、自身の死を恐れる暇など彼らにはないのだ。
「オーズの開いた道を閉ざすな! 湾内へ進めー!!」
海賊達が叫ぶ中、1隻の船が表せる。『氷の魔女』ホワイティベイの船がもう片方の湾頭を破壊し、より多くの海賊が湾内へと突き進む。
そんな報告を受けて尚、センゴクは問題ないと呟く。彼の中で計画は既に進んでいる。
「……何しに来た、ガープ。作戦に異論でも?」
そんなセンゴクの元に、ガープが現れる。
「相手は海賊。同情の余地はない……」
「ならば──!」
「黙れ! ……よかろう、ここにおるくらい」
ガープはそう言うと、エースの横に座り込む。
「悪党に同情はねぇが、家族は違う……!! わしゃあ、どうすればいいんじゃい……!!」
「ジジィ……!」
「エース貴様……! 何故ワシの言う通りに生きなんだ!!」
そう言葉を紡ぐガープの表情には力が入り、僅かに涙が浮かんでいた。
そこに、またもや1人の男が現れる。
「いや、それは違うなガープ。火拳の人生はキミのものでは無い。彼自身のものだ。彼の生き方は、彼が決めていいんだ。それを我々の匙で善悪を決めるべきではないだろう」
「……ナツメ。貴様が何故ここにいる……」
「なに、大将2人はいきなり席を空け、我々七武海も湾岸を降りてやりたい放題。湾頭は破壊され、戦況が刻刻と変化するなか持ち場などあってないようなもの。私も少しくらい持ち場を離れても問題なかろう。それに……ここは全体がよく見渡せる」
そんなナツメにセンゴクが何か言おうとした時、複数の叫び声と共に、何かが空から降ってくる。
「ああああああああぁぁぁ……あ! 俺ゴムだから大丈夫だ!!」
「貴様1人で助かる気カネ! 何とかするガネー!!」
「畜生ぉ! てめぇの提案なんか聞くんじゃなかったぜ麦わらぁ!!」
「こんな死に方ヤダッチャブル!! 誰か止めてぇ〜ンナ!!」
逆さの軍艦から落ちてくるのは麦わらの一味。では無く、ルフィとインペルダウンの脱獄囚達であった。
さて、ここらから場面場面でごちゃごちゃし出すので、ナツメにスポットを当てて頂上戦争編を書いていこうと思います。書きたい場面はある程度決まっているので、あまり長引かないように書いていきます。