彼女は冴えない人であった。
筈だった。
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そうだな…これについて語るにはまず、私と彼女の出会いから話さなければならないと思う。
私と彼女の邂逅は確か、今から十年前の少し肌寒くなってきた秋。彼女が小学校に転校してきた日の事。
二学期の初め頃という実に珍しい時期に、彼女は私のクラスにやってきた。
彼女への第一印象は正直覚えていない。私がまだ七歳と幼かったことも大きく関係するのだろうが。恐らく余りにも物静かな様子だったから、気にも留めていなかったのだろう。
但し偶然、そう。本当に偶然だが、彼女は私と席を横にすることになったのだ。
その頃の私は無知で且つ無恥ではあったが、馬鹿ではなかった。
故に、転校したての彼女は嘸かし不安であるだろうと思い何かと気にかけた。
誰に頼まれたというわけでもあるまいに。不慣れであろう彼女に校舎の案内をしたり、話しかけたり。
こういう場合の典型例とも言えるべきものは凡そしたと自負している。彼女からすれば良い迷惑であっただろう。
但しそれは親切心などという大層であり妙々たるものから来たのではなかったと思う。
ただ単に。『転校生に優しくしている私』という偶像の自分に浸り、酔いしれたかったのだろう。今思い返しても、実にいい性格をしていると思う。
今の私という存在はこの頃にすでに形成されていたのだろう。
ただその甲斐あって、彼女とは親友とまではいかないがそれなりの交友関係を築けていたように思う。
兎にも角にも、彼女の転校時の挨拶は気にも留めてなかった癖に。私は実に勝手なやつであった。
但し同時に、この時が私の人生に於ける絶頂期であった。
それは何故か。
それを一々聞くような愚かな奴は
只まあ詳しく知らないであろう君には教えておこう。
この時の私は未だ、彼女に対する優位性を保持していたのだよ。
この時はね。
私は今になって、その時彼女への行いを大変後悔している。
いや、それどころか関わってしまった事さえも。
今でも鮮明に覚えている。
彼女の…。
否。
進級したてでまだ少し慌しかった頃。新しく友達ができるかなんて
そんな四月二十日だった。
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そうそれは。思わず顔を顰めてしまう程に、ね。
その日の私は少し重いランドセルを背負い、えっさえっさと2階へと続く階段を上りながら。
新しい教室に向かうのにも少し慣れてきたな。
何て呑気な事を考えていた。
そうして教室まで辿り着き、扉を開けようとしたその時だった。
何やら教室が騒々しいということに気が付いたのは。
だけども、それに気が付いたからといってどうということは無い。扉の前に立つだけで中の状況を把握する能力など私には無かったから。
ただ少し。昨日までなかったような熱気が教室内から湧き上がるのを感じて。
躊躇いながらも私は扉を開けた。
そんな私を出迎えたのは。
待ちに待ってたと言わんばかりに飛び込んできた。
今まで見たこともないような美少女の熱烈な抱擁であった。
突然の事態に着いていけない私が惑い、戸惑い、困惑している中。
抱きついてきた美少女は口で歪な三日月を描きながら——
最初は捻くれてるけど優しい女の子と曇りやすい女の子の話を書こうとした筈なのに…!