魔法少女まどか☆マギカ~紡がれる戯曲~   作:saw

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ほとんど会話だけです


転校生

「うおぉぉぉ!?」

「待てぇぇぇ!!!」

 必死に逃げている途中で俺たちが待っていた三人を見つけた。

「お、おはよー、皆!」

 なんとか声を出して挨拶する。かなり長い距離を走ったせいで、もう息も切れ切れだ。見ると中沢も息を切らしていた。

「うわーなんか久々だね、アンタらのそれ」

 そんな俺達の姿を見て呆れ混じりにさやかはそう返してきた。だから見世物じゃないと言ってるじゃないですか、さやかさん。

「あはは……」

 まどかは苦笑している。曖昧にお茶を濁しているけど、それは半ば認めているのと同じですよ、まどかさん?

「おはようございます、洲道君、中沢君」

 仁美はいつも通りに挨拶してくる。いつもの朝に戻そうとする姿勢は尊敬します、仁美さん。

 

 しかし、今回はそれがまずかったらしい。

「皆もなんで俺のことは名字で呼ぶんだよ!?」

と、中沢はまどか達に問い詰めた。すると三人は、

「いやー、だって……ねえ?」

「そうですわね」

そうさやかと仁美は互いに頷き合い、

「あはは……」

まどかは苦笑いで中沢に返していた。どうでもいいけど、さっきから苦笑いしかしてないですよ、まどかさん。

「くぅっ……!!」

 心にダメージを負った中沢は崩れ落ちた。大丈夫だ、中沢。いつか神様がお前に名前を与えてくれるから。

「名前は普通にあるっつうの!!」

 そう言いながら中沢は俺に詰め寄った。というか、なんでさっきから俺の考えていることが分かるんだ?

「お前の目がそう言ってんだよ!」

 マジですか。

 

 

 復活した中沢を連れて五人で登校する。

「しっかし、また志筑はラブレターもらったのか。これでもう二通目か」

「そうそう、いやーほんとに仁美はもてるよね!」

「なにぃ!俺以外にもう一人仁美にラブレターを渡したやつが……!?」

「その内の一人がアンタかい!!」

と、さやかにつっこまれる。

「でも、ラブレターじゃなくて、直に告白できないようじゃ駄目だって、ママが言ってたよ?」

 まどかも追撃してくる。お前のママさんはそんなこと言ってたんかい。それはいくらなんでも暴論のような気もするのだが、ここで必死に否定するのもなんだかかっこ悪いような気がしたので、黙っていることにした。

「あはは、じゃあ裕一は男としては駄目ってことかぁ!」

 いかん、黙っていたのは失敗だったか?このままでは駄目で意気地のない男にされてしまう。よろしい、ならばこの洲道裕一、男の意地を見せてご覧にいれましょう。

「なら、この場で言うか。俺と付き合おうぜ、仁美?」

 よし、相手を真っすぐに見て、かまずに言えた。どうだ、皆。俺の男前っぷりを見たか。さて、肝心の仁美はどうだろうか?仁美は少し困ったそぶりを見せて、

「え、えっと、すみません……」

 数秒で振られました。ブロークンハートです。だが俺はめげずにこう言った。

「まあ、そんな感じに言えば、相手をあまり傷つけずにすむと思うぜ? よかったな、俺で練習できて」

「無理矢理自分の行動を正当化しているよ!?」

 さやかさん、うるさいです。男の意地は見せたんだから、もうほっといてよ。

「でも、いいなあ、私も一通くらいもらいたいなあ、ラブレター」

 そうまどかはぼやく。よく見るとまどかはいつも髪につけているリボンを変えていた。もしかしてそのイメチェンはそういった気持ちの表れなのだろうか? 

よし、それならば、俺の出番だ。

「よし、任せろ。お前の願い、すぐに叶えてやるよ」

「駄目駄目、アンタみたいな節操無しにはまどかはやれないよ。まどかはあたしの嫁になるのだぁ!」

 そう言ってさやかはまどかを抱いてもみくちゃにする。さやかに取られちゃったよ。本日二度目のブロークンハートです。

 その時仁美が咳払いをした。辺りを見ると周りがこっちを見ていた。どうやら少し騒ぎすぎたようだ。実を言うとこういうことは初めてのことではないのだ。主に原因は俺とさやかなのだが。仁美の咳払いに俺達は少し自重して登校することにした。

 一人いないけど、これが俺たちのいつもの光景だ。

 

 

 

 教室に入ってから授業の準備をしているときに女子達の会話が耳に入ってきた。

「ねえねえ、私の今日の運勢はどうかな?」

「アンタ、しし座だっけ? どれどれ……『今日は少し遠出をしてみましょう。熱い出会いがあなたを待っています』だってさ」

「熱い出会いってなにさ。ライバルとか、そんな感じ?」

「燃えるような恋とか、そういう意味なんじゃない?」

「なんか微妙だなーその結果」

「でも結構当たるって評判だよ」

 ふーん、熱い出会いか。男としてはいいかも、それ。

 

「なあ、洲道。お前、先生はあとどれくらいだと思う?」

 唐突に中沢が話しかけてきた。中沢が聞いていることは俺達の担任である早乙女先生のことである。すでにいい年をしていて婚期を焦っている人なのだ。今は付き合い初めて三か月の恋人がいるが、今回もうまくいかないだろうというのが、大方の生徒達の考えだった。とりあえず俺も長くは続かないとは思っているが、それだと先生がかわいそうな気もするので、

「もう少し続くんじゃね?」

 まだ可能性があるかもしれないということにしておいた。しかし、中沢はゆっくり首を振って俺の言葉を否定した。

 

「いや、俺はそろそろとみたな。あせってくっついたカップルは大抵今頃になって崩れるもんさ」

「そういうもんか」

 きっかけはなんであれ、誰かと離れることはさみしいことだと、俺は思う。そんなことを考えていると、先生が教室に入ってきた。

「皆さん、おはようございます。今日は皆さんに大事なお話があります。心して聞くように!」

 そうして咳払いをして、一歩踏み出してきた。思わず、身構えた。

「目玉焼きとは、片焼きですか?それとも、半熟ですか!?」

 ……ハイ? 何をのたまっているのでしょうか、このお方は。

「はい、中沢くん!」

 いきなり中沢に指し棒を向けてきた。いきなりの難問に中沢はあせって、

「えぇ!? えっと、どっちでもいいんじゃないかと……」

と、当たり障りのない答えを返した。というより、この場でどちらかについて熱く語れる人がいるのなら、ぜひ見てみたいものである。

「その通り! どっちでもよろしい!」

 どうやら、正解のようだ。一発で正解を当てるとは、やるな、中沢。

「たかが卵の焼き加減なんかで女の魅力が決まると思ったら、大間違いです!!」

 そう言って指し棒をへし折った。これで何本目ですか、先生。

「女子の皆さんは、くれぐれも半熟じゃなきゃ食べられないとかぬかす男とは交際しないように!!」

「駄目だったんだな」

「やっぱり俺の予想通りだったな」

 俺達は互いに苦笑し合った。

 しかし、いくらなんでも目玉焼きの焼き加減で別れるというのはありえないような気がする。俺はきっかけはなんでもよかったんじゃないだろうかと思っていた。中沢の言う通り、焦ってくっついたとしても、いずれどこかで綻びが生まれてしまうものだ。そんなことで別れるなら、きっと今でなくともいつかは破局していたのだろう。本当の人との関係というものは無理矢理で作るものでは、きっとない。

 俺は恭介やまどか達との関係もそんな簡単なことで綻ぶものではないと信じていた。いや、信じていたかったのだった。

「そして、男子の皆さんは絶対に卵の焼き加減にケチをつける大人にはならないこと!」

 胸にとどめておきます。

 そうして少し落ち着いてから急に先生は笑顔になった。

「はい、あとそれから、今日は皆さんに転校生を紹介します」

「転校生そっちのけで目玉焼きの話してたんですか!?」

 思わずつっこんでしまった俺は間違っていない。絶対に。

「じゃあ、暁美さん、いらっしゃい」

 今まで目玉焼きの話でずっと待たされていたのか。まじでかわいそうだな、その人。

 

 

 

 そうして、転校生が入ってきた時、一瞬思考が止まった。流れるような長い黒髪にヘアバンド、それにこの上なくマッチしている綺麗な顔立ち。幼さは残るが、あと数年でさらに美しく成長するだろう。そんな美少女が今俺達の目の前にいた。

「はい、じゃあ自己紹介いってみよう!」

 先生の言葉でふと我にかえった。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

 そう言ってホワイトボードに名前を書いていく。名前はひらがなでほむらか。なんかかわいい印象受けるな。そんなことを考えていると、突然暁美はある方向を向いた。

その視線の先にいたのは……まどかだった。

 

 

 

 休み時間になり、暁美の周りには人だかりができていた。皆は美人の転校生に興味津々だ。俺達は今まどかの席に集まっていた。

「なあ、まどか。お前暁美と知り合いなのか? さっきお前のことじっと見てたけど」

 俺の見間違いじゃなければ、暁美はあのとき間違いなくまどかを見ていた。まどかに転校生のことについて聞くことにしてみた。

「いや、えっと…」

 まどかは困っているみたいだ。心当たりがあるのか、ないのか、判断が難しい。

 すると俺達に近づいて来る人がいた。話題の人物、暁美だ。

「鹿目まどかさん。あなたがこのクラスの保健係よね。連れてってもらえる?保健室」

 お願いしているようだが、有無を言わせない迫力があった。その時に一瞬俺と目が合い、暁美は目を見開いた。なぜか俺と中沢を交互に見て戸惑っているみたいだ。

「う、うん。分かった、こっちだよ」

 考えている間にまどかはそう言って暁美を保健室へと連れて行った。

「な、なあ、中沢。あいつ俺達のこと見てたよな?」

「え、お前もそう思ったか?」

 中沢にも心当たりがあるようだ。ひょっとして暁美も俺達のことを知っているのだろうか? そんな、はずが……

「お二人とも、暁美さんと知り合いなんですの?」

「いや、俺があんな美人を忘れるはずがない。たとえ眼鏡をかけようが、髪形を変えて雰囲気を変えようが、忘れるはずがない」

「アンタがそれ言うと、結構説得力あるね……」

「俺も心当たりがないな」

 どうやら中沢も俺と同様のようだ。それならなぜ暁美は俺と中沢の方を見ていたのだろうか? 少し頭をひねってみた。俺と暁美に接点はないはずだ。しかし、彼女は俺をじっと見た。そこから導き出される解答は……

「なるほど、一目惚れか」

「「「それはない(ね)(ですわ)」」」

 本日三度目のブロークンハート。一日でこんなに心が壊れる人間なんて、世界で俺くらいだろう。しかし自慢にもならないから、嬉しくもなんともなかったのだった。

 

 

 結局この場で暁美について何も分からなかった。あとでまどかに聞いてみよう。




中沢は裕一がいることでまどか達といるので、ほむらにとってはどっちもイレギュラーな存在です。  
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