魔法少女まどか☆マギカ~紡がれる戯曲~   作:saw

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前回の魔法考察とえらく話数をはさんでいるなあ、と思う今日この頃です。


魔法考察(佐倉杏子、暁美ほむら編)

「さあ、毎度おなじみ魔法少女達の力の検証コーナーの始まりでーす」

 

「毎度おなじみって前に一回しかやってないじゃん……」

 

 明るく始めようと思ったのに、さやかが呆れた様子で茶々を入れてきた。

 俺はやれやれとため息をついて言ってやった。

 

「まったく、これだからさやかは……」

 

「なんで空気読めてないのがあたしみたいに言ってんの!? どう考えても空気が読めてないのはあんただからね!?」

 

「そうか?」

 

「そうだよ!!」

 

 うがーっと吠えるように突っかかって来るさやかを軽やかにかわしていった。

 ふはは、お前が俺を屈服させるなんざ百年早いんだよ。

 

 俺を力で屈服できないことを悟ったら、さやかはゆらりと俺に視線を向けた。

 

「裕一、あんまり調子に乗るようならね……」

 

「へえ、何をしようってんだ? 大抵のことじゃあ、俺はどうにかできないぜ?」

 

 俺は幼い頃から訓練をしている。強靭な意志を持つ俺は簡単な脅しなどには屈したりはしないのだよ。

 

 さやかはそんな俺の耳元で囁いた。

 

「……杏子に今まであんたがやってきたセクハラまがいのことを教えるよ?」

 

「やめてっ!!?」

 

 訓練が無駄になった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

「まどか、あの二人はいつもああなの?」

 

「ええっと……うん、割とそうなんだよ。よく二人が暴走するのを私達が止める、みたいな感じで」

 

「なんだか頭が痛くなってきたわ……」

 

「あはは……」

 

 してやったりの表情をするさやかと、そんな彼女にペコペコと頭を下げる裕一の姿に他の四人は呆れた視線を向けていた。

 

「つーか、修行はいつもこんなノリだったのかよ、マミ?」

 

「修行自体はいつも真面目にやっているわよ? 実際美樹さんの戦闘技術も、洲道君の魔法制御もかなり上達しているし」

 

「あいつらが脱線しそうになったらどうすんだ?」

 

「その時はいつもこうやって……」

 

 そう言ってマミはリボンを取り出して裕一とさやかを縛り上げた。

 そんな二人に対してマミは極上の笑みを浮かべた。

 

「二人とも、そろそろ《真面目に》修行を始めるわよ?」

 

「「はい……」」

 

 そんなマミに対して二人が反抗する術などあるわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「洲道君、今のあなたの中にある魔法は誰のものなの?」

 

「さやかと杏子の魔法です。さやかの方は後少しでなくなると思います」

 

 俺の中にある魔法は昨日の杏子との闘いの時と同じだ。さやかの方は、昨日の闘いと今日の怪我を治すときに使ったからほとんどなくなりかけている。

 

「それなら佐倉さんの魔法の練習から始めましょう。コンビネーションを円滑にするためにも、皆も佐倉さんの魔法の特性をよく理解してね」

 

 さて、それじゃあ始めようか。

 

 俺は杏子の槍を取り出す。槍はあまり使ったことはないが、妙に手になじんでいる気がする。

 

「杏子のメインはさやかと同じように近接戦闘だな。パワーもスピードもこの中では一番だ。他にもこの槍の連結を解除して立体的な攻撃するのもありだし、地面から槍を召喚するっていうことも可能だ」

 

 実際に闘ったからこそ、その闘い方はよく理解しているつもりだ。

 敵としての実力を理解している分、味方になってくれたらこれほど心強いことはない。

 

「とりあえずお前の武器についてはこんな所でいいか。杏子?」

 

「ああ、そんな感じでいい。だからお前はまずその槍を使いこなす所から始めるぞ。マミ、いつかの時のあれを頼む」

 

「ええ、分かったわ」

 

 マミさんはいくつか出したリボンでリングを作り、さらに一つ的を作ってそれらを空中に浮かべた。

 それに対して杏子は自分の槍を取り出して、それらの連結を解除し、一本の鎖として動かした。その槍は空中にあるリングを全て通り抜け、最後に槍の穂先を的に当てた。

 

「槍の軌道は自分の意志で変えることができる。お前はこれらのリングを切らずに通り抜けさせて最後の的に槍を当てるんだ」

 

「なるほどな。それで槍のコントロール力を養うのか……」

 

 かつて杏子がやっていた修行方法、俺もすぐにクリアしてこの槍を使いこなしてみせるぜ。

 

 

 

 

 

 そして、それはすぐに難航した。

 

「あっ、三つ目のリング切っちまった!!」

 

 五回目のトライも失敗だった。これがなかなか難しい。

 少しでもかすってしまったらリボンが切れてしまうのだ。槍が通り抜けられる箇所はただ一点のみだ。槍を完璧にコントロールするには、全ての軌道を完璧に自分の意志通りに動かさないといけない。

 かと言って、槍のスピードを遅くしようとしたら、それだと意味がないと杏子に怒られてしまった。

 スピードとコントロール。この二つを両立させないとこの多節棍の槍は使いこなせたとは言えない。

 

「上手くいかないなぁ……」

 

「けどお前結構筋がいいじゃん。初めてにしてはよくやれてると思うぜ?」

 

「マミさんのリボンを操るのと同じような感覚でやってみたんだよ。最初はそれすら満足に操れなくてな……」

 

「マミのリボン……」

 

 そう呟くと、いきなり杏子の方から殺気が溢れてきていた。

 ……ちょっと待ってくれ。なんでそれで殺気を出すことになるんだ?

 

「そう言えばさぁ……」

 

 その時杏子の声から発せられたプレッシャーに俺は背筋が凍ってしまった。

 

「マミから聞いたけど……お前がマミのリボンをコントロールしている時にさやかをからめ取ってしまったそうじゃん……? それでエロい恰好をさせたとか……」

 

「えっ!? あ、いやぁ……そ、それは事故なんだよ!! 俺だってそんなつもりはなくてさ!!」

 

 何て所をピンポイントで教えているんですか、マミさん!?

 抗議の視線を向けると、マミさんはすまなそうに頭を下げていた。

 

「それでリボンの制御はばっちりだとか言ったそうじゃねえか……?」

 

 マミさあああああぁぁぁんっっっ!!!? なんでそこまで教えるんですかぁぁぁぁ!!!!

 

 もう一度マミさんの方に顔を向けると、マミさんはしきりに頭を下げていた。

 

「そ、それは、その……あ、相手をしっかりとからめ取ったという意味で成功したと言ったんだ!!

 何もやましいことなんてない!!」

 

「えー? そんなの嘘でしょ? だって裕一、あの時その格好エロいな、とか言ってたじゃん。目もなんだか血走っているように見えたしさー?」

 

 さやかあああああぁぁぁぁっっっ!!!! 追い打ちかけんなぁぁぁぁ!!!

 

 さやかはあの時の怒りを思い出したのか、とどめの一言を言ってしまった。

 抗議の視線を向けても、さやかは目をそらして口笛を吹いていた。

 

「あたしにセクハラしただけで飽き足らずにまだそんなやましい気持ちがあるのか……」

 

 地の底から聞こえるような深い怒りを溜めこんだ声におそるおそる振り返ると、そこには仁王立ちしながら槍を蛇のようにして操っている杏子の姿があった。

 ジャラジャラという鎖の無機質な音が俺の心を不安にさせる。

 心なしか、若干目のハイライトが消えている気がする……

 

「裕」

 

「……はい」

 

「おしお……修行だ」

 

 今おしおきって言おうとしたよね? ねえ?

 

「今からあたしの槍をお前の槍で防いでみろ。そこから動かずにだ。そこから逃げ出したり、あたしの槍に捕まった時は……もぐからな」

 

「またかよっ!!?」

 

 そこまで俺の男の原点に恨みがあるのかよ、こいつは……

 

「す、少しは手加減をしてもらえるとありがたいのですが……」

 

 最後の希望として杏子の良心に訴えてみた。彼女は神父の娘なんだし、きっと優しさを見せてくれるはず……

 

 そんな風に祈りを捧げる俺に、杏子はにっこりとほほ笑んでくれた。

 

「手を抜いちゃったら修行にならないじゃん? あたしはお前のために全力を出すんだよ」

 

 祈りは、届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ、ほら、佐倉さん!! もういいでしょう!? もう十分使いこなせているじゃない!?」

 

 槍を棒代わりにして立っている俺の姿を見かねて、マミさんがようやく止めてくれた。

 

「離せっ!!」

 

「とっくに洲道君の体力はゼロよ!? もう終わったのよぉ!!」

 

 い、生きてる……!! 俺はまだ男でいていいんだ……!!

 

「それより佐倉さん!! まだあなたの魔法の説明は終わっていないでしょう!? あなたの幻影の魔法よ!!」

 

「そ、それは……」

 

 幻影の魔法か。確かにそれこそが杏子の魔法の本分だ。

 武器の練習はもう嫌というほど行ったのだから、今度はその練習をするべきだな。

 

 それを教えてもらおうと杏子の方を見ると、杏子は気まずげな顔をしていた。

 その表情に何か言い知れぬ不安を覚えた。

 

「佐倉さん、洲道君にロッソ・ファンタズマの使い方を教えてあげて」

 

「……マミさん、なんですかその名前は?」

 

 いきなり聞いたことのない名前が出てきたよ。これってまさか……

 

「佐倉さんの幻影の魔法の名前よ。赤い幽霊という意味があるのよ」

 

 ……やっぱりそうか。杏子も以前マミさんと修行をしていた時にいちいち名前を付けていたんだな……

 俺達の技にも名前を付けようとしてたもんな、この人は……

 

「悪い、マミ……それは、無理だ……」

 

「ど、どういうこと……?」

 

 相変わらずのマミさんに呆れていると、杏子がそんなことを言ってきた。

 ……無理とはどういうことなのだろうか? 何か事情があるのか?

 

「今のあたしはそれが使えないんだよ……あの時以来からな……」

 

「っ……!? そう、だったのね……」

 

 俺は『あの時』とはいつのことなのかはすぐに分かった。

 杏子の父親が壊れてしまい、杏子の家族を巻き添えにして自殺してしまった時だ……

 

 その日以降にマミさんと一緒に闘った時、杏子はそれを使うことを止めたと言っていたそうだ。

 だけどそれは正確ではなく、使わないではなく、使えないだったんだ。

 多分、その時のことがトラウマになって使うことができなくなってしまったんだろうな……

 

「……とりあえず、裕。それまであたしが使っていたときの感覚を教えてやるから、それでやってみろ。あたしと違って、お前は実際使っていることは確認しているからな」

 

「ああ、分かったよ……」

 

 俺が杏子にしてやれることって一体何だろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を取り直して、杏子の教え通りに幻影の魔法を使ってみた。

 すると俺の幻影が二人現れて、俺が三人になった。

 

「「「へえー、これが杏子の幻影の魔法でできた分身か。一度使ってみたとはいえ、こうして見ると俺の目の前に俺がいるって、なんだか変な気分だな」」」

 

「不気味だから分身も一緒にしゃべらせないでよっ!!?」

 

 分身をしゃべらせることができると聞いたので、試しにやるとさやかに不気味扱いされてしまった。

 確かにさやかの言う通りだったので、分身を黙らせて改めて分身達を観察してみた。

 

「見れば見るほど俺と全く同じ姿だな。鏡を見ている気分だよ」

 

「お前の分身なんだからそれは当たり前だ。それぞれの分身に簡単な動作をさせることもできるぞ」

 

 それはすごいな。よし、右のやつは杏子の槍の乱れ突き、左のやつはさやかの剣でジャグリングだ。

 

 頭の中で指令を送ってみると、二人はその通りに行動した。

 

「おお、本当にその通りに動いたぞ!! よし、次は杏子の槍の連結解除とマミさんのリボンのコントロールだ!!」

 

 さながら大道芸のごとくのパフォーマンスをやらせようとしてみたら、片方が杏子の槍を出したが、もう片方は何も出せなかった。

 

「あれ? もう片方の洲道君の分身は何も出せてないよ? どうしちゃったのかな?」

 

「……おそらく今の裕一の中にある魔法しか分身は出せないのではないかしら?」

 

 まどかの疑問にほむらはそう結論を出した。

 多分それが正解なのだろう。分身が本体にできないこともできてしまったら、それはもはや分身の域を超えてしまっている。あくまで分身は囮だ。分身に気を取られている内に横から敵を襲って倒す。それがこの魔法を使う場合の闘い方なのだ。

 

「この魔法の練習は、とにかく分身の数を増やして、それぞれに指示を出すようにすることだな……」

 

「まあ、それが妥当だな。ワルプルギスの夜と闘うのなら、囮は多い方がいい。今からアイツが来るまで修行するとなると……七、八人くらいが目標か。

 だけどまずは槍のコントロールをマスターする方が先だ。それがあたしのメインの武器なんだからな」

 

 やることは山積みだな。一人の魔法の使い方をマスターするだけで血反吐を吐きそうだ。

 だけど一人が長年積み上げてきた技術を身につけるにはそれぐらいの覚悟が必要だ。

 

「死にたくなかったら、死ぬ気で身につけろ。お前ならできるだろ、裕?」

 

「ああ、やってみせるさ。それが必要なことならな」

 

 挑戦的な目をしてくる杏子に俺は不敵に笑ってみせた。そんな目をする杏子には期待以上の働きを見せつけてやりたいと思ってしまう。お前の技術を完璧にマスターしてやるさ。

 

 

 全ては自分と自分の大切なものを守りぬくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一通りの練習をした後、杏子の魔法は使い切った。次が最後の魔法少女の力だ。

 

「じゃあほむら、頼む」

 

「ええ……」

 

 俺はほむらの手を取って、彼女の魔法をこの身に宿した。

 その力を武器として具現化してみると、俺の左腕に楯が現れた。

 

「これがお前の武器なのか? これでどうやって攻撃するんだよ?」

 

 楯とはすなわち、自分の身を守るために作られたものだ。相手を攻撃する機能がこの楯についているとは思えなかった。強いて言うなら、この楯をチャクラムのように投げて相手を攻撃するくらいか?

 

「私は時間を操る魔法だけに特化した魔法少女なのよ。だから攻撃するための魔法は持っていないの」

 

「え? それじゃあお前は今までどうやって闘っていたんだ?」

 

 時間を止めるだけでは相手を倒すことはできない。攻撃用の魔法がないのであれば、別の攻撃手段を用意しなければならないはずである。

 

 その疑問に答えるためにほむらはおもむろに楯のところに手を突っ込んだ。そこから出したのは妙にごつい拳銃だった。

 

「これが私の攻撃手段よ」

 

「色々聞かせてほしいんだけど……まず、それは本物か……?」

 

「もちろんよ」

 

 言いきっちゃったよ、こいつは。近代兵器を使う魔法少女って、こいつ以外に未だかつていなかったんじゃないか……? 他の皆もなんだかひいているし……

 入手経路については聞かないでおこう。触れてはいけない話題のような気がする。

 

「それで、その武器はどこから出したものなんだよ? さっき楯に手を突っ込んでいたような気がするんだけど……」

 

「私の楯の内部には一種の異空間ができあがっているのよ。武器一式がその中に収納されているのよ」

 

 その言葉に俺も自分の楯を見てみると、確かに手と楯の間に黒い空間のようなものが広がっている。

 そこに手を突っ込んでみると、手がどこまでもその空間に沈んでいった。

 

「ほむらちゃんの楯って、なんだかあれに似ているよね」

 

「あ、まどかもそう思った? あたしも未来から来たタヌキロボットのポケットに似てると思ったんだ!」

 

「美樹さん。タヌキじゃなくて、ネコでしょう? 間違えちゃかわいそうじゃない」

 

「つーかマミ、耳がなくなったあいつってタヌキに見えるか? タヌキにだって耳はあるじゃんか」

 

 ほむらの楯をまどか達はそんな風に評価していた。やっぱり皆も小さい頃に見ていたんだな。

 遠い未来よりやってきた、地球すら破壊出来てしまう青いオーバーテクノロジーのネコ型ロボットと、成績は駄目だが、その発想力によってやつの持つ道具を使いこなす人間が、他の人間共をひれ伏させるという、二人の覇王伝を。

 俺もあの男と暮らしていた時に見たことがある。

 あの二人の相棒を相棒と思わない容赦ないツッコミによる掛け合いは見ていて中々面白かった。

 

「……私の魔法をネズミロボットのポケットと一緒にしないでもらえるかしら?」

 

「お前が一番間違ってるからな、ほむら」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だけど、あのロボットのポケットか……」

 

 確かに言われるとほむらの収納空間はそいつに似ている。あれもそのポケットの中に広がる空間に収納した道具を取り出していた。

 

 ……試してみる価値はあるかもしれないな。

 

 

 俺は再び自分の収納空間に手を突っ込み、自分とほむらの空間を繋げるイメージを頭の中で作ってみた。

 

「……ん?」

 

 するとほむらの方で反応があった。なにかしらの違和感を感じたのかもしれない。

 そして俺の方も何かを掴んだ手ごたえがあった。そして一気に手を引き出した。

 

 その手に握られていたのはパイナップルのような形をした手榴弾だった。

 

「そ、それは……私の手榴弾!?」

 

 俺の手にある手榴弾にほむらは驚愕の視線を向けていた。

 そして俺も驚いていた。何でテレビでしか見たことのないものがこんな所で出てくるのか、と。

 本当に怖ろしいやつだな、暁美ほむら……

 

「ま、まあ、思った通りだったな。同じ魔法によってできた空間は繋げることもできるんだ。これで俺もほむらと同じ攻撃ができるわけだ」

 

「私自身ですら知らなかったわ……」

 

 それはそうだろう。自分と全く同じ魔法を使える存在だなんて、普通は考え付かないものだ。俺という同じ魔法を使う存在がいることによって発見できることがまだあるのかもしれないな……

 

「それだけじゃないわね。洲道君と暁美さんの空間が繋がったのなら、例えば二人が離れている時に遠くからの物品の受け渡しも可能になるわ。物資の運搬は闘いにおいても重要よ。最も、洲道君が暁美さんの魔法を持っている時限定だけどね」

 

 マミさんがさらに補足をしてくれた。確かにそれは大事なことだ。例えば俺のそばにいる人の魔力が尽きかけているときに別の人が持っているグリーフシードを受け渡すことも可能になる。

 これでほむらの武器の使い方にさらに幅がでてきた。

 

「これを名付けるとするならどんな名前がいいかしらね……」

 

「名付けなくていいですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほむらの武器についてはこんなところだろう。次はいよいよ魔法の練習だ。

 思えばこれが俺が最初に使った魔法だった。病院の結界の時、ほむらと接触したおかげでマミさんも俺達も生き残ることができたのだ。その幸運に俺は感謝した。

 

 ほむらの魔法は時間操作。文字通り時間を操る、まさしく規格外の魔法だ。これが発動したときには相手はまさしく無力となる。攻撃するのもよし、逃げるのもよしという、実に都合がいい魔法と言えよう。

 

 しかし……

 

「これは使い所が難しいなぁ……」

 

 何回か試してみた俺の感想がそれだった。

 

「え? どうしてさ、裕一。時間を止められるのなら相手をボコり放題、まさに無敵と言えるんじゃないの?」

 

「燃費が悪すぎるんだよ。病院の結界の時だと俺は時間停止の魔法を一回使って空っぽになってしまったんだ。俺自身の器も成長しているけど、それでも二回で空っぽになってしまうんだよ」

 

「ま、まじで……?」

 

 相手が普通の魔女であるのならまだそれでもいいかもしれない。だが、相手は最強の魔女であるワルプルギスの夜だ。二回時間を止めたくらいでどうにかなる相手ではない。ほむらの中にある武器を全てぶつけてもアイツを倒せないことは、ほむらがこの場にいることから明らかだ。

 かと言って、補充するためにほむらのそばにいるくらいなら、最初から彼女に時間を止めてもらった方が早い。

 

 それにもう一つ問題がある。それは、『触れた相手の時間も動く』という特性だ。

 

「試しに石を放ってみたんだけど、時間停止中だと俺の手を離れた途端に空中で止まってしまったんだ。これって要するに、時間停止中ではマミさんやほむらの銃による遠距離攻撃は通用しないってことなんだよ」

 

「それならあたしの剣や杏子の槍での近接攻撃とかはどうなの?」

 

「武道の達人はどこかに触れられた時点で反撃に転じることができることもあるそうだ。ましてや、並大抵ではやられない魔女が相手だとどうだ? 一撃で倒せないと反撃を受ける可能性がある。それも至近距離でだ。そうなったら絶対絶命だ」

 

「な、なるほど……」

 

 ここで俺の使える魔法の量が限られていることがネックになるとはなぁ……

 魔法をコピーしたからと言っても、その闘い方自体も真似するよりは、別の応用方法を考えた方がいい。

 俺はどちらかと言うと近接の方がメインだし、もう一つ別の魔法も使えるのだ。

 

「ほむら、他に何か使えるものはないか? お前の時間操作は絶対に戦闘で役に立つ。だけどこれだと宝の持ち腐れだ。アイツと闘うための手札は多いに越したことはないからな」

 

「……一つ魔力消費を抑える方法があるわ。それは魔法の効果対象を変えることよ」

 

「どういうことだ?」

 

「時間停止の魔法は基本的に自分以外の周りの世界を対象にしているわ。対象が大きいためにその時間を操作するためのコストがかかってしまう。それなら魔法の対象を世界ではなく自分にすれば、対象が小さくなるからコストも小さくなるのよ」

 

「対象を世界にするか、自分にするかの違いか……」

 

 なるほどね。確かにそれなら魔力の消費を抑えられるかもしれないな。

 どうやらほむらの場合はその二つしか対象に選ぶことができないようだ。だから狙った相手の時間を操作するということもできないのだ。

 

「だから自分自身の時間を倍速状態にすることもできるのよ。ただし、時間停止以外で自分自身の時間の流れをいじるとその後の反動がくるのよ」

 

「反動か……まあ、そのダメージはさやかの魔法で治してみるかな」

 

 とりあえずやってみるか。

 

 

 

 

 

 

 ほむらに教えてもらった通りに魔法を使ってみた。

 自分自身の時計の針を速くする。さらに、さらに加速させる……!!

 

 その状態で走ってみた。すると周りの声がなんだかスローモーションで聞こえてきた。

 世界の全てがスローに見える。自分が速くなるとは、すなわち周りが遅くなることと同義だ。

 自分と世界の時間がずれていくことを実感した。

 

(皆との時間がずれていく寂しさか……ほんの少しだけ分かったかもしれないな……)

 

 そして時間操作の魔法を解除してみた。

 

「ぐっ!?」

 

 その瞬間身体に痛みが走った。それは身体のリミッターを外した痛みと似ていた。違うのは、その痛みが身体の一部分ではなく、身体全体であったことだ。

 慌てて身体の痛みをさやかの魔法で治した。

 

「だ、大丈夫か、裕!?」

 

 俺の状態を確認しに来たのは杏子だった。そんな彼女に対して俺は身体を振って問題ないことをアピールしてみた。

 

「ああ。一緒に入れてたのがさやかの魔法じゃなかったら、痛みに震えてたかもな。それでどうだ、杏子? 俺の動きはお前らからはどう見えていた?」

 

「……お前がものすごく速く走ったように見えてたよ」

 

「こっちはお前らの動きがスローに見えた。相対的に見ると俺が速いのか、お前らが遅いのか……」

 

「お前が自分を速くしたんだろうが」

 

 ごもっともだな。

 

 

 

 

 

 

 さて、ほむらの魔法に新たな使用方法が生まれた。自分に時間操作の魔法をかけて倍速の状態にするというものだ。この方法はほむら自身にもダメージがいってしまうので、俺だけが使うものになるだろう。これを使えば、俺は要所要所で自分を倍速状態にして闘うことができる。

 ただし、その際に受けたダメージはさやかの魔法で治さないといけない。ほむらの魔法を使って闘うのなら、基本的にさやかの魔法をセットにしないと駄目だろう。

 

 

 

 魔法少女達のそれぞれの魔法の特性は大体理解した。それじゃあ第二段階だな。

 




とりあえず公式の設定に若干独自設定も加えました。もしもどこかに間違いがあったり、この独自設定だと矛盾が多すぎると指摘して下さったら、すぐに直します。

ここまでは魔法少女の単独の力の確認です。次は裕一だけが使える力の確認です。
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