Memento Mori~希死念慮冒険者の死に場所探し~【最新話からイマドキのサバサバ冒険者に統合】 作:埴輪庭
「クロウ様、護衛の合同依頼を受けませんか?」
アシュリーの提案にクロウは即断を下した。
「いいえ」
クロウは奉仕依頼のようなモノでさえもギルドの要請ならばそれを受ける。
しかし、誰かと組む類のものは全て断わっていた。
ギルドとしては無理強いはできない。
依頼は場合によっては命に関わることもあり、その辺のリスク計算は冒険者が個々人で行うことだからだ。
命を失ったり、身体を欠損したり、そういったときの責任を冒険者へ求める…という意味も大きい。
普段ならアシュリーもここで引いた。
しかし今回は少々毛色が違った。
「頼む、今回は戦力に不安がある。シルファは事情があって参加できない。お前の腕は信用出来るし、シルファもお前なら俺たちと組んでも問題ないといっている。それに今回の依頼はどうもな、キナ臭い」
声のほうへ振り向くとグランツがたっていた。
クロウは悩んだ。
【頼まれて】しまうと弱い。しかも知り合いにだ。
しかも、以前彼らは助力をしてくれたし、グランツなどとは個人的にも食事をしたりしている。
━━キナ臭い?
クロウが疑問に思いグランツをみやると、グランツは何となくクロウの言いたいことがわかったのか親切に説明してくれた。
「ああ、もともとな、この依頼はシルファが彼女の個人的なツテでもってきたものなんだ」
シルファの素性についてはすでに彼女からきいている。
グレイウルフの群れから救ったことで、シルファの家、ロナリア家からは礼がしたいと何度も打診がきていた。
クロウは自分自身でも自分が貴族家などにいって、礼儀正しくふるまえるなどとはおもってもいないので色々理由をつけて先延ばしにしてはいるが…。
そんな彼女の個人的なツテというと…
クロウは思案した。
━━普通の護衛依頼ではないのか
「その顔は察しがついてるようだな。そうだ。表向きは商隊の護衛だ。ロナリア家の御用商人なのだがな。少し臭い。どうにも、ロナリア家の実情や物資が横流しされているようなんだ」
━━横流し
クロウが「横領みたいなものか」とおもっていると、事実はそれよりもう少しバイオレンスなものだった、
「最近、ロナリア家の商隊への襲撃が急増している。巡視の連中に聞いても賊が増えている、というわけでもないんだ。この時点で匂うだろ?」
グランツは苛立ちをみせながらガリガリと頭を掻いた。
「何者かがロナリア家を狙い撃ちにしている。そうとしか思えない。だからお嬢様、ああ、シルファは狐を動かした。ロナリアの狐だ。名前くらいはきいたことあるんじゃないか?」
ロナリアの狐といえば、簡単にいえばロナリア家直属の諜報部隊だ。
上級とされる貴族家はなにがしかの諜報機関を自前でもっているのは周知の事実であった。
「狐の調査で、とある御用商人があぶりだされた。直接的、もしくは間接的にそいつが関わった商隊のおおよそ半数が賊の襲撃にあって物資を根こそぎ奪われているんだよ」
ここまで言われればクロウにもよくわかる。
要するに、その御用商人というのが裏で賊と繋がり、商隊の荷をかっぱらってるということなのだろう。シルファが参加できないというのは、彼女の面が割れている可能性が高いから、ということか。
「シルファは御用商人の尻尾をつかみたいと思ってるんだ。賊の襲撃があることを見越して動く。襲撃があれば、賊を1人は生かして捕らえたい。俺とアニーは何も知らない冒険者を装い、依頼を受けるんだが、お前もきてくれないか?」
一気に言い募ると、グランツは頼むよ、とばかりに眉をハの字型へゆがめた。
「ほかに参加する冒険者もいるんだがな、場合によっては商人の息がかかってるかもしれない。あまりに多勢に無勢、分が悪いようなら撤退も視野にいれているが、信用出来るのが俺とアニーだけでは心許無い。絶対に裏切りは無く、それでいて腕が立つ冒険者がいればだいぶ違うんだ。お前はギルドマスターのおすみつきというのもある、さすがに賊の一味ではないだろう」
グランツの話をきいて、クロウは思案する。
自分の欲望、願望とは全く反りのあわなそうな話だ。
そもそも貴族の問題に首を突っ込みたくは無い。
だが、自分を頼んで提案してきたという事には少し心が動かされた。
前世、散々部品扱いどころか、100円ライター以下の扱いをされてきたクロウは、クロウ自身を熱心に求められるということに弱かったのだ。
そういうわけでクロウは、ニコニコ顔のアシュリーが差し出す依頼票を渋々受取ったのだった。