Memento Mori~希死念慮冒険者の死に場所探し~ 作:埴輪庭
商人も多く使う近くの街道に、最近山賊が出るらしい。山賊団は
馴染みの食堂の親父の情報を聞きながら、クロウは肉と野菜が雑にいためられたモノをモソモソと食べていた。
「お前はよう! もっと旨そうに食えないのか?」
親父がクロウにクレームをつける。
「はい」
クロウは短く答えた。旨くはないので旨そうに食うことはできないという意思を強くこめたつもりである。はあ、と親父はため息を一つついた。
「ところでよ、お前さんやらかしたらしいじゃねえか!」
──何を?
クロウが訊ねる前に、親父が続けた。
「ロナリア家のご令嬢をよ! 助けたらしいじゃねえかよ。すっかり噂になってるぜ!」
「いいえ」
クロウは短く答えた。貴族の令嬢を助けた覚えなどない。……いや、もしや。
「……」
否定のすぐあとに黙り込んだものだから、親父がきいてもいないのに教えてくれる。
「護衛一人つれていって森で何をするつもりだったのかね? お貴族様のやりたいことはわからねえなあ。それでグレイウルフの群れに襲われてあわやってときにクロウという男に助けられた……らしいなあ。運が良いお嬢さんだ。グレイウルフの群れをどうにかできる冒険者なんぞ限られてるからなぁ!!」
クロウとしては、ふうん、というところであった。確かに助けたが、助けた後の話なんてどうでもいい。貴族になんて好き好んで関わるつもりはないし、そのご令嬢にしたってすぐ自分の事など忘れることだろう。
「あ!! お前はよォ! なんで青菜を残すんだ? しっかりくえ! じゃねえともうつくってやんねえぞ!」
クロウは黙ってモソモソと青菜を食べた。
◆
「あ! クロウさん!」
ギルドに入るなり、受付嬢のアシュリーが元気よく話しかけてきた。クロウは礼儀正しくぺこりと頭を下げると、そのままカウンターを素通りして依頼ボードへ向かう。
「ちょっと! 無視しないでくださいよう!」
アシュリーが訴えかけてくるので仕方なく話をきくことにする。
「クロウさん、ロナリア家という貴族家をご存知ですか? そちらのご令嬢がクロウさんにどうしてもお礼をしたいということで」
「いいえ」
アシュリーの言葉に被せていくクロウ。同時に、手に持つ依頼票を手渡す。
「いえ、だから貴族家のお達しですから断わると面倒なことに」
「いいえ」
トントンと依頼票を指差すクロウに、アシュリーはまるで公道上に転がる馬糞を見るような目を向けた。はあ、とため息をつくアシュリーは、クロウの持ってきた依頼票を見て目を剥いた。