パラサイト・ルーム   作:涼宮田之介

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第十二話:ようこそ、素晴らしき実力主義の世界へ

 

 数日後、始業前の教室は俄かな喧騒に包まれていた。

 

 日付は5月1日。本日はポイントが支給される期日であり、同時にこの学校の実態が公になるXデーでもある。本来であれば、大半の生徒たちは皆10万ポイントが振り込まれていないことに疑念を抱いているのが通例だろうが、軽井沢の推察を聞かされていたDクラスの生徒はその疑念がたちまち確信へと変わっていく。

 

「ねえ、やっぱり10万ポイントも振り込まれてないよ」

「うん。軽井沢さんの言った通りだったね」

「凄くない? 予想的中じゃん! 軽井沢さんが居てくれてよかったあ」

「だねー。もし軽井沢さんが居てくれなかったら私たち今頃ポイント貰えてなかったかも」

 

 教室のあちこちでクラスメイトが口々に軽井沢へ感謝の念を述べている。それに聞き耳を立てながら、私はシガレットタイプの駄菓子(イチゴ味)を味わう。

 

「みんなおはよー」

 

 程なくして、渦中の人物が登校する。

 

「あ、軽井沢さん!」

 

 彼女が教室に入るや否や、クラスメイトが(こぞ)って押しかけた。その中には平田や幸村と言った男子に、いつもつるんでいる松下や佐藤の姿もあった。やや遅れて、櫛田も彼らに混じる。櫛田からすれば自分より人望を集め始めた軽井沢の存在は面白くないだろうに、それでもなお接触しようというのだから大した強かさだ。

 

「ありがとう軽井沢さん。ポイントのロスをここまで抑えられたのは、ひとえに君のおかげだよ。本当にありがとう」

「や、やめてよ平田くん。あたしはそんな、別に大したことはしてないってば」

「そう謙遜するなよ、軽井沢。あの時、軽井沢の忠告が無ければ俺たちDクラスには雀の涙ほどのポイントも入っていなかっただろうしな。……感謝するぞ。お前の推察は正しかった」

 

 幸村が礼を言うと、軽井沢は困ったように笑い首を振った。

 

「……ううん、それでも、やっぱりあたしは大したことしてないよ。これは皆があたしを信じて行動してくれた結果だからさ。あたしの方が感謝したいくらいなんだよね」

 

 たはは、と恥ずかしげに頬をかく軽井沢。誰もが温かく彼女を見つめるなか、櫛田がそんな軽井沢の手を取り礼の言葉を口にする。

 

「私からもお礼を言わせて! 軽井沢さんのおかげで皆のポイントが残せたし、なによりあの演説でクラス皆の心が一つになったもん! だからありがとう軽井沢さん!」

 

 にっこりと天使のような微笑みを浮かべる櫛田に、一部の男子の視線が釘付けになる。可哀想に、お前ら騙されてるよ。

 

「ほら櫛田さん、あんまり褒めると軽井沢さんまた泣いちゃうから」

「そうそう。その辺にしてあげなよ」

「な、泣かないわよ!?」

 

 松下と佐藤のコンビが微笑ましいものを見るような視線で軽井沢から櫛田を引き剥がす。当の本人は真っ向から否定しているが説得力は欠片もない。

 

 やんややんやと賑わっていると、始業のチャイムが鳴り茶柱が教室にやってくる。その手にはポスターらしき筒を携えており、表情もどこか険しい。

 

「お前ら席に付け。これより朝のホームルームを始める」

 

 蜘蛛の子を散らすようにクラスメイトたちは各々の席に戻る。彼らの瞳はうっすらと緊張の色が見えた。

 

「その前に、何か質問があるなら聞こう。些細なことでも今のうちに聞いておいたほうがいいぞ?」

 

 教壇に立つ茶柱の口ぶりは、まるで生徒から質問があると確信しているようだった。そして生徒からも当然手が挙がる。挙手したのは平田だ。

 

「先生。単刀直入にお聞きします――――軽井沢さんの推察は全て当たっていますか?」

「ふっ、それはお前たちが1番よく分かっているんじゃないか?」

「ということは……」

「そうだ。彼女の推察は見事的中した」

 

 茶柱の言葉にクラスメイトが感嘆の声を上げる。

 

「改めて軽井沢に感謝することだな。彼女が働きかけていなければ、私は例年通り“お前らは本当に愚かな生徒たちだな”と口汚く罵っていたところだった」

「茶柱先生、それはどういう――」

「まあ慌てるな。これから説明してやろう」

 

 ほんの僅かに態度を和らげた茶柱はひと呼吸置いて口を開く。

 

「まず最初に、この学校ではクラスの成績がそのままポイントに反映される。基準を10万ポイントとし、そこから様々な要因によって減算する。これはお前たちがしたように模範的な生活を送れば抑えられるが加点されることもない。その理由は軽井沢も指摘した通り、これらは全て出来て当然のことだからだ。当たり前のことを学校はわざわざ評価しない。例外は赤ん坊までだ」

 

 言葉は辛辣だが、茶柱の言うことは正しい。皆もそれが分かっているのか反論を口にするものはいない。それよりも、もしあのまままともに授業を受けていなければ、今頃10万ポイントもの巨額のアドバンテージを全損させていたかもしれないという仄暗い結末を回避できたことに、ほっと胸をなで下ろす生徒たち。

 

「待ってください茶柱先生。加点されないということは、僕たちは今のポイントをずっと維持し続けなければならない……そういうことですか?」

「そうだ。卒業まで継続する」

 

 端的に述べられた事実に、教室がざわめく。しかしそのざわめきは然して大きくない。確かに、入学当初から10万もの大金を手に一ヶ月こうして生活してきたが、軽井沢のおかげでポイントの減少を最小限にまで食い止められていた事実が彼らの冷静さを保っていた。節制生活を送った生徒も少なくないだろうし、この一週間の様子を見る限りポイントを使い切った馬鹿もいないようだ。

 

 それにしても、卒業まで加算方法がないのは幾らなんでも考えにくい。仮に一ヶ月を怠惰に過ごしポイントを全て失ったクラスが存在した場合、卒業まで0ポイントで過ごさなくてはならないのだ。各箇所に救済措置があるとはいえ、生徒たちのフラストレーションは相当なものになるだろう。どこかで爆発するのは避けられないし、自主退学も後を絶たないはず。

 生徒たちの自己責任と言ってしまえばそれまでだが、それで不満を募らせた生徒がカツアゲや他クラスへの妨害行為を起こすのは目に見えている。

 ならば、加算する方法は必ずある。

 

 考えうる中で最もその可能性が高いのは、学生の本分である学業――テストだろうな。

 

 思考を巡らせていると、チャイムが鳴り響きホームルームの終わりを告げる。しかし、肝心の本題にすら入っていない段階で中断されるわけがなかった。

 

「続けるぞ。お前たちにとって、むしろここからが本題だからな」

 

 茶柱はそう口にして不敵な笑みを浮かべると、手に持っていた筒から厚手の紙を取り出し、それを広げて黒板に磁石で貼り付けた。書かれていたのは各クラスの名前とその隣に4桁の数字。殆どの生徒は検討もついてないが、情報を得ていた私はそれを見て茶柱と同じくにやりと口角を吊り上げる。

 

「これは各クラスが現在保有するポイントの総量だ。さて……なにか気づくことがあるんじゃないか? そうだな、軽井沢はどうだ?」

「はい。ポイントの並びが綺麗過ぎる(・・・・・)と思います」

 

 問いかけられた軽井沢がよどみなく答えると、茶柱は満足そうに頷く。

 

「良い着眼点だ。察しの良い奴らはもう気づいてるんじゃないか? 何故、上の位置にあるAクラスと下のクラスでここまで差があるのかにな」

「“Aクラスには優秀な生徒が集められている”、ですよね?」

「やはり気づいていたか、軽井沢。そうだ。Aクラスには優秀な生徒が配属されている。しかし、なにもAクラスに限った話じゃない。Bクラスには模範的な生徒を、Cクラスにはやや平均以下の生徒を、そしてDクラスには――――それ以下が集められている。ここは謂わば、落ちこぼれが集まる最後の砦。お前たちは最悪の不良品というわけだ」

 

 茶柱の辛辣な発言に、多くの生徒はショックに打ちひしがれ顔を強ばらせていた。およそ教師の発言とは思えないが、それもクズどもの掃き溜めであるDクラスの生徒なら致し方ないように思える。

 

 しかし、誰も彼もが反感を抱きつつも沈黙に身を置いているわけではなかった。

 

「先生、その言い方はあんまりじゃないですか?」

 

 立ち上がったのは平田でも、ましてや怒りに打ち震え今にも哮り出しそうな須藤でもなく、クラスを危機から救った主導者――軽井沢だった。

 

 努めて冷静に指摘した彼女に、クラスメイトたちの視線が一斉に集まる。軽井沢の憤りを『自分たちのために怒ってくれている』と誰も彼もが信じ込む。もはや、彼女がクラスのリーダーとなる存在に相応しいのは明白だった。皆も諸手を挙げて賛同することだろう。

 

「私は何か間違った事を言っているか? お前らも胸に手を当ててよく思い出してみろ。中学で、お前たちはどんな生徒だった? 素行は良く、成績優秀だったか? コミュニケーション能力に問題はなく、分け隔てなく友好的な関係を築けていたか? 学校生活で問題は起こさなかったのか? お前たちは本当に、自分には何ら問題はなかったと胸を張って言い切れるのか?」

 

 沈黙が支配する。誰も、反論することはできなかった。茶柱の言葉は全て正しい。反論の余地などなく、自分たちのツケが今になってやってきたに過ぎなかったのだ。それを分かっているから、誰も異を唱えることができない。軽井沢もまた、口を一文字に結んで力なく俯いて椅子に座った。あいつの場合は、劣悪な環境が原因なんだがな――。

 

「そんなお前らだからこそ、学校はDクラスが相応しいと判断したまでだ」

 

 痛いくらいの静寂。クラスメイトは皆思い当たる節があるのか、やはり反論するものは出てこない。

 

 そんな静けさの中で、茶柱は「しかし」と切り出す。

 

「喜べ、お前たちはどうやら不良品ではないらしいぞ」

 

 茶柱の思いもよらぬ言葉に皆一様にして顔を上げた。

 

「クラスのポイントは、何も毎月振込まれる金と連動しているだけじゃない。このポイントの数値が、そのままクラスのランクに反映される――それを踏まえて、もう一度これを見てみろ」

 

 貼り付けられた厚紙をクラスメイトたちは食い入るように見やる。

 そして、ひとり、またひとりと理解が及んだ生徒たちの表情に歓喜の色が宿っていく。喜びの波動はたちまちクラス中に伝播した。

 

 私も改めて、紙に記された結果へ視線を送る。

 

 Aクラス――950。

 

 Bクラス――730。

 

 Cクラス――520。

 

 

 

 Dクラス――――――590。

 

「――おめでとう。お前たちは今日から“Cクラス”だ」

 

 その瞬間、歓喜が爆発した。

 

『おおおおお――っ!!!』

 

 クラスメイトたちが一斉に咆哮を上げる。ついさっきまでお通夜みたいな消沈しきった重苦しい空気感は何処へやら、生徒たちの顔には笑顔が弾けていた。

 

 ……というのも束の間、仮にもホームルームが継続中だというのに皆揃って勝利の雄叫びを上げてしまった失態に気づき、クラスメイトらはハッと正気に戻る。

 

「そう構えるな。今ので減点するほど私も鬼じゃない」

「よっしゃー!」

「とはいえ2度目は無いぞ、池」

「すんませんでした!」

 

 机に額をこすりつける池を横目に、茶柱は黒板にもう一枚紙を追加で張り出した。その用紙にはクラスメイト全員の名前がずらりと並び、名前の横にはまたもや数字が並んでいる。察しの良い生徒は既に何人かその紙の正体に気づいているようだ。

 

「喜ばせておいてなんだが、これから話す2点は残念ながら悪い知らせだ。そのひとつがこれ――この数字が何か、元不良品のお前たちでも理解できるだろう」

 

 茶柱はカツ、とヒールを鳴らし、教壇から生徒たちを一瞥する。

 

「先日やったテストの結果だ。揃いも揃って粒ぞろいで、先生は嬉しいぞ。中学で一体何を勉強してきたんだ? んん?」

 

 張り出された紙を見やれば、大半の生徒は60点前後の点数しか取れておらず、須藤に至っては14点という馬鹿の極みのような点数を叩き出していた。次点で池の24点だがこんなものはどんぐりの背比べである。平均点は65点前後といったところか。

 

 彼らの馬鹿さ加減に辟易としながら、私は軽井沢の名前を探す。仮にも勉強を見てやったのだから上位には混じっていて欲しいが――居た。点数は……70点か。まあ、あれだけ壊滅的な学力から3週間足らずでよくここまで持ち直せたものだ。私が教えていない間も自主的に勉強していたのだろう。といってもラストの難問以外は大した難易度ではなかったので出来れば85点は取ってもらいたかったが。どこかでケアレスミスでもしたか?

 

「良かったな、これが本番だったら7人は入学早々退学になっていたところだ」

 

 まるで他人事のように言ってのけた茶柱に、私も思わず瞠目した。赤点を取れば一発退学はこの学校のことだからあるんじゃないかとは考えていたが、それよりも7人も赤点を取っていた事実に驚きだ。流石は元不良品の集まり、といったところか。

 

「た、退学? どういうことですか?」

「なんだ、説明していなかったか? この学校では中間テスト、期末テストで1科目でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば、32点未満の生徒は全員対象と言うことになるな。それが嫌なら学生らしく勉学に励むことだ愚か者め」

「は、はああああああ!?」

 

 私以上に瞠目し、驚愕の声を上げたのはその7人に該当する生徒たち。紙には7人のなかで最も点数の高い(赤点には変わらない)菊池という生徒の31点の上に赤いラインが引かれている。それ以下の生徒は問答無用で赤点。本番なら即退学ということだ。

 

「ふっざけんなよ茶柱先生! 退学とか冗談じゃねえよ!」

「私に言われても困る。学校のルールだ、腹をくくれ」

「ティーチャーが言うように、このクラスには愚か者が多いようだねえ」

 

 なおも収まらぬ怒りに食ってかかる赤点生徒に、隣人は普段通りの不遜な態度を崩すことなく言ってのけた。

 

 足を机に上げ、爪を研ぐその姿はまさに傲岸不遜。偉っそうに微笑む高円寺だが、私はそんな彼を見ても「相変わらず自由人だなー」くらいにしか思わない。

 

「何だと高円寺! どうせお前だって赤点組だろ!」

「フッ。どこに目が付いているのかねボーイ。よく見たまえ」

「あ、あれ? ねえぞ、高円寺の名前が……あれ?」

 

 下位の生徒から順に、クラスメイトたちの視線が上がる。そしてたどり着いた高円寺六助の名前は最上位――同率首位の1人に名を連ねているではないか。内訳は幸村、堀北、高円寺、そして私こと久我の以上4名。私たちは難度の高い問題を1問解いた最上位90点の生徒だった。

 

「絶対須藤とおんなじバカキャラだと思ったのに……」

「というか久我も頭良いのかよ……」

 

 雑魚が何やらほざいているが、こちとら日々の勉強を怠ったことは一度たりともない。お前らと一緒にしないでもらいたいものだ。

 

「それからもう一つ付け加えておく。国の管理下にあるこの学校は高い進学率と就職率を誇っている。それは周知の事実だ。恐らくこのクラスの殆どの者も、目標とする進学先、就職先を持っていることだろう」

 

 茶柱の物言いに既に何人かの生徒は嫌な予感を覚えているだろう。パンフレットには確か就職率、進学率共に100%だなんだと胡散臭い文言がでかでかと書かれていたことを思い出す。こんな特殊過ぎる学校が謳い文句通りに希望する進路まで導いてくれるわけがない。大方、卒業時点での成績優秀者上位30名まで進路先に推薦状を送ってくれるとかそんな感じに違いない。それかAクラスに最後まで在籍した生徒たちだけにその権利が与えられる――これが一番可能性としては高そうだ。

 

 もっとも、私は希望する進路なんざ持ってない。ただ外部からの接触を絶てるという好条件に惹かれて入学したに過ぎないのだから。

 

「が……世の中そんな上手い話はない。お前らのようなDクラス上がりの人間がどこにでも進学、就職できるほど世の中は甘くできているわけがないだろう。お前たちが将来の望みを学校に叶えて貰いたければ、Aクラスにのし上がるしか方法はない。それ以外の生徒には、何一つこの学校は保証することはないだろう」

 

 そら思った通り。どこまでも実力主義な学校だことで。

 

「そ、そんな……聞いてないですよそんな話! 滅茶苦茶だ!」

 

 幸村が不満に耐え切れず立ち上がる。まあ、彼のようなちゃんと進路先を考えていた生徒からすれば騙し討ちを食らったようなものだろう。私はそんなものないからノーダメージだが、彼からすれば大問題だ。

 

 そんな彼の憤りに、隣人は不愉快だとばかりに溜め息を漏らした。

 

「みっともないねえ。男が慌てふためく姿ほど惨めなモノは無い」

「……Dクラスだったことに不服はないのかよ、高円寺」

「不服? 何故不服に思う必要があるのか、私には理解できないねえ」

「俺たちは学校側からレベルの低い落ちこぼれだと認定されて、その上進学や就職の保証もないって言われたんだぞ、当たり前だ!」

「ふっ。実にナンセンス。これこそ愚の骨頂と言わざるを得ない」

 

 なおも爪を研ぐ手を止めない高円寺。眼中にないとばかりに幸村へ視線を合わせることすらしない。

 

「学校側は私のポテンシャルを計れなかっただけのこと。私は誰よりも自分のことを評価し、尊敬し、尊重し、偉大なる人間だと自負している。学校側が勝手にD判定を下そうとも、私にとっては何の意味もなさないと言うことだよ。仮に退学にすると言うのなら、勝手にするがいい。後で泣きついて来るのは、100%学校側なのだからね」

 

 思わず、目を奪われる。

 

 高円寺の言葉から滲む、誇り高い意志を感じた私は心の底から高円寺六助という人間を尊敬していた。だからこそ、久我緋乃という人間が途轍もなく矮小な存在に思えてくる。きっと、私の実力では彼の足元にも及ばないだろう。

 

 遠く、遠く、手を伸ばしても届かない。

 

 故に憧れた。

 

 私は彼の友人で在ることを生涯誇りに思う。

 それほどまでに彼は眩く、どこまでも気高かった。

 

 ――やっぱすげえな。高円寺。

 

 彼の一言一句に感銘を受けながら、私はその言葉を深く胸に刻み込む。

 

「それに私は学校側に進学、就職を世話してもらおうなどとは微塵も思っていないのでね。高円寺コンツェルンの跡を継ぐことは決まっている。DでもAでも些細なことだよ」

 

 高円寺がそう締めくくり爽やかスマイルを浮かべて白い歯を零すと、幸村も黙って腰を下ろすしかない。

 

「浮かれていた気分は払拭されたようだな。お前らの置かれた状況の過酷さを理解できたのなら、この長ったるいホームルームにも意味はあったかもな。中間テストまでは3週間、まあじっくりと熟考し、退学を回避してくれ。お前らが赤点を取らずに乗り切れる方法はあると確信している。Cクラスに上がったからと言って浮かれるなよ? 実力者に相応しい振る舞いを持って挑んでくれ」

 

 またもや意味深な言葉を残して教室を去る茶柱。目の前に退学という大きな壁が立ちはだかった赤点組の生徒たちはがっくりと項垂れている。せっかくCクラスに繰り上がったというのに、教室の空気は重たい。

 

 そんな空気感を払うように、おもむろに立ち上がった軽井沢は何事かと言葉を待つクラスメイトたちを見渡して高らかに宣言する。

 

「とりあえず――――Cクラス昇格を祝って、打ち上げしよっか!」





>コウエンジの カウンター!

>ユキムラはおとなしくなった

>アケノは コウエンジを そんけいしている!


※各クラスの残存ポイントが原作より上昇している件についての補足。
軽井沢が放課後の教室で演説を行ったため、通りすがりの生徒が情報を耳にしてクラスへ共有。また、他クラスへ友人を持つDクラス生徒が悪意なく情報を漏らしてしまったためそこでも情報が流れてしまう。情報統制ガバガバですが、確証がなかったから仕方ないね。まあ軽井沢は久我経由で全部知ってるんですけど。

Aクラスは坂柳と葛城の派閥があるとは言え、そもそも優秀な生徒が多いので上昇量は10と少なめ。それでも50減ってるのは戸塚のせいでしょう。多分。

Bクラスは模範的な生徒も多く、他クラスの生徒との交友関係も広い上に早期から一之瀬を筆頭にまとまっているので情報の伝達スピードが他クラスの比じゃありません。なので原作よりプラス80しました。

Cクラスは龍園が王になるのに2週間は必要だろうと予想し、他クラスより出遅れたこととクラス内に情報を共有するのが遅れた2点から30ポイントしか増加してません。

そして問題のDクラス。池や山内、須藤と言った問題児たちが素直に従うのか? と思ったそこのあなた、僕もです。でも女の子の軽井沢があそこまで筋の通った確率の高い推測を立てたんだから男としては良いとこ見せようぜ的なあれがあったんでしょう。軽井沢泣いちゃいましたし。
須藤に至っては軽井沢にバスケ頑張ってねと応援されたので割と好感度高いです。頑張れ堀北お前このままじゃ他の女に須藤取られちまうよ!

というわけでまた次回。
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