問題児たちが異世界から来るそうですよ?~忘却の魔王~ 作:ソヨカゼ
今回も遅くなってしまってすみませんでした!
そしてなぜか今回、文章量がいつもの倍というよくわからない現象が起きてますが……気にしないでください笑
それではどうぞ!
「さぁ選ぶと良い。万に一つでも勝てる可能性を取るのか、その可能性さえも捨てるのか。もしも後者を選ぶなら、僕は魔王として相手になろう」
レーテはレティシアを下ろして前へ出る。
魔王を魔王たらしめる物。
彼らが災厄と呼ばれる理由の一つ。
そもそもギフトゲームは双方の同意があってはじめて成立するものだが、この権限を持つ者は別だ。
主催者権限は誰であろうと強制的にゲームを押し付けることができる。
それが例えどんな内容であっても、だ。
さて、ならばレーテはなぜ普通のギフトゲームとこれを提示し選ぶ猶予を与えているのか。
理由は至極単純、ギフトゲームを受けないのなら主催者権限を使うという相手が逃げないための脅しだ。
ルイオスも混乱こそしているが腐っても英雄の子孫。
レーテの言わんとしていることをしっかりと理解していた。
「ッ!くそッ、なんでこんな……」
理解しているからこそ、ギアスロールを押し付けられたルイオスは一歩ずつ後退りしていく。
その顔は真っ青で今にも泣きそうになっていた。
そんなルイオスを止めたのは新たな来訪者だった。
「おいおい、まさかこいつがペルセウスのリーダーだとは言わないよな?」
「!?」
ルイオスの背後から聞こえた呆れ声。
襖に手をかけ仁王立ちしているのは金髪ヘッドフォンの少年、十六夜だった。
「なんじゃ、おんしたちも来たのか?」
「おう、そこのロリコン魔王さまに呼ばれたんで来てやったぜ」
「ちょッなんて事を言ってるんですかこのお馬鹿様!?」
白夜叉の問いにどや顔で答えた十六夜に、背後から巨大ハリセンを降り下ろす黒ウサギ。
この程度で機嫌を損ねるレーテではないのだが、どうやら黒ウサギはそうとう白夜叉に注意されたらしい。
それもかなりの尾ひれを付けて。
これは後でお仕置きかな?と密かに誓うレーテだった。
「あら、魔王さまというからどんな悪人面かと期待したのだけれど……彼がそうなのかしら?」
「……普通に優しそう」
一連のやり取りの後、黒ウサギの後ろから現れたのは二人の少女だった。
先に現れた赤いドレスを着た方はフンッと鼻を鳴らし、次いで現れた猫を抱えた方はレーテの事をじっと見つめている。
どうやらノーネームのメンバーらしいが、なかなか個性的な面子が揃ってるようだとレーテは思う。
「あはは、よく言われるよ。さて、初めましてだね。忘却の魔王ことレーテです」
「ええ、久遠飛鳥よ」
「……春日部耀」
「オーケー、覚えたよ。さて、ギャラリーも揃ったことだし本題といこうかルイオスくん?」
今まで蚊帳の外だったルイオスは突然話を戻されたせいかビクッと震える。
だが少しだけ冷静になれたのか、顔色はよくなっていた。
「……本題も何も、ギフトゲームを受けなかったら主催者権限を使うってことだろ?」
「まあ、そうなるね」
「クソ。戦っても負け、逃げても負けかよ。……だったら、たまには英雄の子孫らしく真正面から戦ってやる!」
覚悟を決めたのか、ルイオスはギフトカードから不思議な形の剣、ハルペーを取り出す。
それは間違いなくペルセウスの宝具。
魔王アルゴールを倒した伝説の剣だ。
「なるほど、腐っても英雄の子孫というわけか。面白い、その心意気に免じで君にも勝てる可能性のある簡単なゲームにしてあげよう」
舞い降りるのは通常のギアスロール。
どうやら、主催者権限は使用されなかったらしい。
「白夜叉さん、舞台を貸してもらってもいいですか?」
「うむ、ここでやられては敵わんからな。いいだろう」
パンパンッと柏手を打つ白夜叉。
刹那、風景が変わる。
現れたのは雪原。
沈まぬ太陽を象徴とする白夜のステージ。
「さて、始めようかルイオスくん」
☆☆
『ギフトゲーム名 "Gift from the past"
・勝利条件 対戦相手の戦闘不能(リタイアは含まないものとする)
・敗北条件 気絶等の戦闘不能
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、" "はギフトゲームを開催します。』
「まあ、要するに果たし合いだね」
良く言えばたが。
力の差は歴然、つまりは一方的な蹂躙ではないか。
「クソッこんなところでやられてたまるかッ!!」
開幕の合図はない。
気合いと共にハルペーを降り下ろすルイオス。
しかし、その刃は届かない。
「なっ!?」
「ほらほら、たった一撃避けられただけだよ?」
「くっ、おおおおぉぉぉぉォォォーーーー!!」
ルイオスはただひたすらに剣を振るう。
しかし、そのどれもがレーテには届かない。
確かに当たるはずなのに。
確かに斬ってるはずなのに。
そのどれもが数センチばかり届かず、時には真横を通りすぎる。
その様は端から見ても異常だった。
「うーん、太刀筋は良いんだけどなぁ。惜しむべきは状況の認識が甘いことかな?」
「ハァッハァッ!何を言って……ッ!?」
「うん、ようやく見えてきたね。君の状況が」
ルイオスが見たもの、レーテがゲーム開始と同時に仕組んだもの。
それは謂わば結界。
「なッなんだよこの光の壁はッ!?」
二人を囲むように展開された光の壁。
否、レーテを中心に広がるその輝きは、十六夜たちがノーネーム本拠で見た光に類似していた。
「『忘却結界』と言ってね。この中で起きた事象は僕の任意で記憶される前に忘却されるんだよ」
つまり、避けたという結果はわかるがその過程を忘れさせているのだ。
言ってしまえば某奇妙な冒険に登場するキン○クリムゾン。
過程を消せるのだ。
「そんな無茶苦茶だッ!!」
「まあね。でもそんなことを言ってしまったら、石化もかなり反則だと思うよ?当たれば一撃なわけだし」
「ッ!?アッ、アルゴール!!」
レーテの指摘で打開策が見つかったのか、ルイオスは後ろに跳ぶと首から下げていた石の装飾に触れその名を叫ぶ。
するとそれは光だし、二人の間に巨大な何かを出現させた。
人のものとは思えない土色の肌。
拘束具を着けた囚人服を思わせる服装。
そして何より、まるで髪の毛のように頭から生えた無数の蛇。
その姿はまさしく神話の怪物「メデューサ」。
コミュニティ「ペルセウス」が持つ最大にして最強のギフト「魔星・アルゴール」が顕現したのだ。
しかし、相手の切り札を前にしたレーテの顔は今まで以上に涼しげなものだった。
まるで恐れていないどころか、どこかアルゴールを懐かしんでいるようにさえ見える。
「さて、ようやくご登場かい?なら、少々早めの第二ラウンドと洒落込もうか?」
☆☆
うむ、早速始まったか。
レーテのやつ、どうやら先手は譲るようだが初めからあれは少々エグいのではないか?
―――忘却結界
僅か半径五メートルの中ではあるが、そこで起きた事象を記憶する前に忘却させることができる。
本来なら攻撃や回避の瞬間だけ出すのだが、どうやら遊んでいるらしいな。
「……全然見えねぇな。あれもあいつのギフトなのか?」
隣で見ていた十六夜が目を輝かせながら聞いてくる。
どうやら、見ていて自分もやり合いたくなってきたのだろう。
「まあ、半分は正解だな」
「どういうことだ?」
「おんしたちはどうやらレーテの強さを誤解しているようだな。言っておくが、あいつの最大の武器はギフトではなく拳だ」
「つまりあれは体術だってか?あり得ないだろ。どんなに技術を磨いても、何の予備動作もなくあんな動きができるわけねぇ。瞬間移動だって言われた方がよっぽどシックリくるんだが?」
「瞬間移動か。あながち間違いではないかもしれんな。……やつの場合、鍛え上げた肉体によって可能となる超人的な動きをギフトで超状現象の域にまで高めているのだ」
つまり、超高速のフットワークをその動作を無かったことにすることで瞬間移動に似た現象を引き起こしている。
どんなに目を凝らしても見えない理由はそれだ。
「……なるほどな。おっと、ルイオスのやつが距離をとったぞ?」
となると、そろそろアルゴールを使うか。
面倒なことにならなければ良いのだがな。
☆☆
「やれ……アルゴール!!」
『ーーーーーーーーーー!!』
アルゴールはルイオスの声に応じるように、人では理解できないような叫び声をあげる。
「……石化、ね」
アルゴールを中心に広がる褐色の光。
それに触れたものは、氷であろうと水であろうと即座に石に変わる。
それしそれはレーテであっても例外ではない。
触れてしまえば石になりゲームオーバーだ。
しかしそれが光である以上、明確で絶対的な弱点が存在する。
そう、"影"だ。
「……ふッ!!」
短い気合いと共にレーテは地面に拳を叩き込む。
すると氷が抉れ、レーテの前に盾のような物が出来上がった。
レーテはその影に入り、光を遮ることで事なきをえた。
「くッ、なんてやつだよ!本当に人間か!」
「残念、僕は魔王だ!」
光が止むのを確認すると、レーテは盾にしていた氷を砕き、破片を散弾のように飛ばした。
「ガアッ!?グッ……アルゴール!」
ルイオスはブーツから光の羽を出すと空へと逃げることで少し当たってしまったが何とか逃げる。
すると同時にアルゴールの光へと空へと放ち雲を石化させて落とし、自身もギフトカードから炎の弓を出現させた弾幕を張る。
「考えたね。でも、石化した雲は少し得策じゃなかったかもね!」
あまりの質量におぉっ!?と軽く驚くが、レーテにしてみればまだ生温い。
それどころかせっかく忘却結界の範囲外まで距離をとったのに、石化した雲という足場を与えてしまったのは失策だった。
「う、嘘だろ!?」
レーテは宙に舞う石雲を足場にどんどんルイオスとの距離を積める。
さすが白夜叉をして超人的な動きと言わせるだけの体捌きに、ルイオスは驚きを隠せなかった。
そしてその驚きは、決定的なまでの隙を生んでしまったのだ。
「捕まえたよ!」
残り五メートルの距離を忘却結界を使い一瞬で埋めると、ルイオスとレーテの距離はまさしく目と鼻の先だ。
「そら、御返しだ!」
レーテは再び忘却結界を使い、ルイオスの腹部に掌を当てる。
「ハッ!!」
気合いと共に大気を踏み締め、生じる衝撃の全てをルイオスの体に封じ込める。
「ガッ……ァ……」
直後、鈍い音と共にルイオスが地面へと落ちる。
ゼロ距離から繰り出される衝撃の一切を逃がすことなくダメージに変換するこの技は、いわゆる鎧通しと呼ばれる技術に酷似していた。
―――
それがこの技の名だ。
レーテが長い研鑽の元に生んだ、彼だけの技。
手加減をしたさっきでさえ、文字通り鉄をも容易く喰らう威力がある。
「グッ……ク、ソォ……」
そんな技をモロに食らったルイオスが無事であるはずもなく、すでに身体中の神経は麻痺し立ち上がることさえ困難だろう。
ルイオスが戦闘不能になったからか、アルゴールも光となって霧散し元の首飾りへと戻った。
「……さて、これで僕の勝ちだね」
レーテが着地すると同時に、虚空からギアスロールが現れる。
体が一切動かないルイオスが敗北条件の戦闘不能に当てはまったのだ。
レーテはあごに手を当てわざとらしく考えるポーズをとると、うーんと唸りだす。
「そうだなぁ。それじゃあ、ペルセウスの旗印とルイオスくんの代で稼いだ全てを貰おうかな?」
「ッ!?」
すなわちそれはペルセウスの失脚を意味する。
シンボルである旗印と、その財産のほとんどをとられるのだから。
「ク……ソ……」
ルイオスは動かない口を何とか動かし、その二言だけを呟いた。
心なしか、ルイオスの瞳が潤んでいるように見えた。
すると、レーテはゆっくりと歩き、仰向けに寝転ぶルイオスを見下せる位置までくる。
「ふむ……時にルイオスくん。君にとっての誇りとは何だい?」
唐突な問いかけ。
しかし、ルイオスの瞳は何を今さらと睨み付ける。
「そんなの……決まって……るだろ。ペルセウスが……あのコミュニティだけが……僕の誇りだッ!」
呼吸が苦しいのか、途切れ途切れになりながらも必至にに答える。
まるで、それが最後の義務だとでも言うように。
そして、その答えに満足したのかレーテは優しく微笑んだ。
「そうかい。ならいつか、君がこの旗に相応しいような男になったら……また挑戦しにくるといい」
「!?」
そう、それはつまり今のルイオスには相応しくないと言っているのだ。
ルイオスはレーテの言わんとしていることが伝わったのか、だんだんその顔に怒りが滲み出てくる。
「そう、僕はそう思ってる。なにせ、今回の君の行動はあの男が、初代ペルセウスが築いた物に傷を付けたんだから。故に、君が本当の意味でペルセウスの旗に相応しいと感じる時が来るまで、これは返さないよ。もう一度、今度は新生ペルセウスとして一から始めるといい。初代がどう思ってこのコミュニティを作ったのかわかるはずだから」
「……クソ」
レーテの話を聞き終えたルイオスはその一言だけを残して気を失った。
その時彼が何を考えていたのかはルイオス自身にしかわからないが、彼の顔は確かに笑っていたのだった。
☆☆
ギフトゲームから一刻。
レーテと白夜叉、そしてレティシアと青髪の店員の四人は白夜叉の私室で杯を傾けていた。
あの後ルイオスをペルセウスに返し、勝負しろだのレティシアを返せだの我儘を言う十六夜を何とか沈め今に至る。
「ふぅ。やっぱり一働きした後のお酒は格別だね」
レーテと店員はともかく、レティシアと白夜叉はどう見ても幼女なため、完全にNGなシーンだと思われるだろう。
しかし、二人とも人外なため見た目と年齢が一致しない。
つまり成人などとっくの昔に済ませているのだ。
そんなレーテを傍目に、白夜叉も一つ溜め息をもらす。
「それよりもおんし、結構派手にやったな。本当は少し懲らしめるだけで良かったのではないか?」
「うーん。ま、良いんじゃないかな?やり方に関しては彼は何も言わなかったし」
「まあ確かに。『もしも道を外しそうになったら止めて欲しい』とはなんともまぁ適当な。ま、あの男らしいと言えばそれまでだが」
と、白夜叉も杯を傾け一息つく。
すると、今まで黙っていたレティシアが控え目に手をあげ質問する。
「あの、すまないが二人が言う彼とはいったい……」
店員も気になるのか、二人をじっと見つめる。
すると、返答は間を置かずに帰ってきた。
「あぁ、初代ペルセウスだよ」
「なっ!?」
驚愕の事実。
どうやら二人はペルセウスの初代リーダーと知り合いだったらしい。
聞くと、自身も才能の無さに嘆き悪の道に踏み入れかけたところをレーテが止めたらしい。
そんなこんなでもしも自分の子孫が同じことをしようとしたら止めてくれと言われていたらしい。
「まあつまり、ルイオスにとってレーテという嵐は初代からの贈り物だったというわけだ」
実際は嵐どころの騒ぎではない。
だが、結果的にルイオスを止めることができたのも事実。
まあ、これで彼が改心してくれればいいのだが。
心配入らないだろう。
少なくとも、今後はゲームの中止や奴隷の景品化は無くなると思う。
そもそも経済的に余裕ないのだろうが。
「ま、そういうことだね。それじゃ、そろそろ失礼しようかな?」
「ん?もういくのか?」
「うん、さすがに遅くなりすぎた。本格的にヤバイ。というか、今帰っても
あはは、と笑いながらも気を落とすという器用なことをしながら立ち上がるとレティシアを抱え、というかお姫様だっこして出口に向かう。
「ま、またなのか!?」
「うむ、心配要らないとは思うが気をつけてな?」
「椛さんにもよろしくお願いします」
レティシアの嘆きは全面的に無視し、二人に見送られながらレーテは夜の箱庭をかけるのだった。
ーDETAー
・実は舞道家?
・初代ペルセウスと友達?
・レーテは何歳?
・そして椛とは誰ですか!?
いつもながら適当なデータですみません笑
とりあえず一巻分の内容が終わり次は二巻……と言いたいのですが、次回はレーテのコミュニティとか人間関係について紹介していこうと思います。
あ、それとコメントがログインユーザーのみ可になっていたので今日直しました。
バンバン感想やアドバイスをもらえると嬉しいです。
それではまた次回!