問題児たちが異世界から来るそうですよ?~忘却の魔王~   作:ソヨカゼ

5 / 6
遅くなってしまいました!
そしてすみません説明会です!!



五話 "今日を生きる者の楽園"

 

 

 

 

 

―――――『草木』が消える

 

 

 

 

 

―――――『建物』が消える

 

 

 

 

 

―――――『人』が消える

 

 

 

 

 

 

―――――そうしてついに……

 

 

 

 

 

 

『世界』という一つの生命が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またこの夢だ。

箱庭に来てから毎日見る夢。

目を閉じればすぐにでも見えてくる過去の出来事。

"人類最終試練"(ラスト・エンブリオ)に呑まれる世界。

嗚呼(ああ)、これこそが終末。

これこそが人類の末路。

確定された未来なのか。

ならば、なぜ人はこうも美しく生きられるのだろうか?

待っているのは死という明確な終わりだけだというのに。

いったい、この終末(オメガ)の先に何があるというのだろうか?

いつか、いつかこの僕を………

 

 

 

 

 

"     "を越えるものが現れるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

「………朝、か」

 

しつこい眠気に何とか打ち勝ち、ようやく体を起こす。

そして、自分が着替えずに寝てしまったことを思い出す。

 

「あー、そっか。たしか昨日は帰ってきてすぐにレティシアちゃんを(もみじ)に預けたんだっけ」

 

レティシアをお姫様抱っこして全力疾走で帰ってきたのだが、どうやらあまりの揺れで酔ってしまったらしい。

コミュニティにつくなり吐きそうだとか言っていたので性別が同じでしっかり者、詰まる所の椛という人物にレティシアを預けたのだ。

その後落ち着いたレティシアを部屋に案内してとりあえず今日はゆっくり休むように、といって別れたのだ。

いやまあそこまでは普通に良かったのだが、それからがヤバかった。

そのままレーテもベッドに倒れ込もうとしたのだが、椛が『いろいろと説明してください!』といって押し掛けてきたため、素直に話した結果そのまま説教三時間コースに移行してしまったのだ。

しかし疲れたレーテが真面目に聞くはずもなく、気がついたら寝落ちしていたというわけである。

と、そこまで考えたところでドアをノック音が聞こえる。

 

『レーテさーん!起きてますかー!』

 

よく通る女性の声。

少し幼さを感じるところから十七、八歳くらいの少女だろうか。

 

「うん、起きてるよ」

 

別に偽る必要もないので素直に答えると、ドアを開けてその人物が中に入ってくる。

雪のように白い髪。

紅葉を連想させる赤い瞳。

何よりも特徴的なのは犬のような耳と尻尾。

見た目の特徴でわかる通り、彼女は人間ではない。

狼の獣人だ。

そして彼女こそが件の人物、椛なのだ。

 

「おはよう、椛」

 

「おはようございます。えっと、レティシアさんには朝ご飯を食べてもらってますよ?」

 

「うん、ありがとう。僕も着替えたらすぐ行くよ。椛も先に食べてて」

 

「はい!」

 

そう言うと椛はニコリと微笑み、尻尾をワサワサと振りながら部屋を出ていく。

それを見届けてレーテはベッドから降り、今着ているのとほとんど同じ黒一色の着物を取り出す。

 

「さてさて、今日は何をしようかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

レーテと別れた椛は足早に食堂へと行き、黙々と食事をしているレティシアを見つけると笑顔で声をかけた。

 

「あ、レティシアさん。どうです家の朝御飯は?お口に合えばいいのですが……」

 

「あ、あぁ。とても美味しいよ」

 

「そうですか。それは良かったです!」

 

急に話しかけられたからか、レティシアは戸惑いながら返事を返す。

椛はその返答に満足したのか、厨房へと行きもう二人分の朝食を運んでくる。

 

「その、それは」

 

「え?あー、別に私が二人分食べる訳じゃないですよ?レーテさんの分です。もう少ししたら来るので」

 

「そ、そうか。……あの、一つ聞きたいのだが」

 

「何ですか?」

 

「なんというかその……コミュニティのメンバーは君とあの魔王だけなのか?」

 

レティシアの質問は最も。

なにせ、今この広い食堂にいるのは自身と椛だけなのだ。

時間的にもあまり早いわけではないため、寝坊というには遅すぎる。

コミュニティのメンバー全員がレーテのような寝坊常習犯なら別だが。

 

「いえいえ、そんなことはありませんよ。少なくとも五十人弱はいます。ただ皆朝の仕事をしてるから遅いんですよ。たぶん皆ももう少ししたら来るはずです」

 

「そうだったのか。その、よかったら仕事の内容を」

 

「それは僕から説明しようか」

 

突然の声にレティシアはヒャッ!?と仰け反る。

そんな彼女に声の主はオハヨーと言いながら空いた席へと座る。

 

「もうレーテさん失礼ですって!突然話しかけたら誰でも驚きますよ!」

 

「ハハッごめんごめん。レティシアちゃんの反応が面白かったからついね。あ、いただきます」

 

レーテは席にあらかじめ用意してあった朝食を何事もなかったかのように食べ出す。

ちなみにメニューはパンとニンジンと干し肉のポタージュだ。

それをレーテはパンを千切りスープに浸して頬張っている。

 

「うーん、やっぱり椛の作る料理は美味しいね。あ、そうそうこのコミュニティの仕事だったね」

 

一つ目のパンを食べ終わったレーテは二つ目にカブリ付くと、空いた手でスプーンを持ちレティシアを指す。

 

「まぁ簡単に言うなら農業だよ。種を植えて水を上げて収穫してまた種を植える。それが全てではないけどメインはそれだね」

 

レーテはパンとスープの入った皿をスプーンで軽く叩くとこれも自分達で作ったんだと説明する。

そしてまたスープを一口飲むとパンにカジリ付く。

 

「付け加えて、君の想像したような過度な労働を強いているわけでもない。彼らは自らの意思で土を耕し、作物を作っているのさ」

 

「他にも洗濯や食器洗い、風呂掃除等の家事もレーテさん以外でローテーションしておこなってますよ。あ、でもご飯を作るのは私の仕事ですけどね!」

 

エッヘン!と胸をはる椛。

その顔からは無理矢理やらされているどころか自慢気な表情が読み取れた。

 

「そ、そうだったのか。……いや待て、それではこの魔王は何をしているのだ?」

 

一瞬ホッとした顔をしたレティシアだが、すぐに新たな疑問が芽生え表情を曇らせる。

どうやら好奇心が旺盛なのだろう。

 

「レーテでいいよ。まぁ、基本的には今回みたいな事をやってるかな?」

 

「今回というと……他のコミュニティを粛清したりか?」

 

「んー……いや、今回は少し特別だったかな。ごめん、説明が難しいね。えっと、僕が基本的にやることはコミュニティのメンバーを増やすことかな。ちょうど君にしたみたいな感じで」

 

「ッ!?つまり奴隷売買や誘拐紛いの事をしているというのか!!」

 

今まで落ち着いていたレティシアが一変、さっきの一言で鬼のような形相になり勢いよく立ち上がる。

危うくスープを溢してしまいそうになったが、等の本人はまるで気づいていないようだ。

 

「まあ、半分正解かな?とりあえず落ち着きなよ、ちゃんと話すから」

 

「お、落ち着けるか!お前はそれでルイオスと戦ったのだろう!?なのに、お前自身がそれをやっているとはどういうことだ!」

 

「あー、そもそもそれが間違いだよ。僕は善意でペルセウスに手を下した訳じゃない。初代との約束がなければ歯牙にも掛けなかったし」

 

「それでも!」

 

「レティシアさん落ち着いて下さい!!スープ!スープが溢れちゃいますからっ!!」

 

と、椛の一言でようやく冷静になるレティシア。

まあ奴隷云々と難しい討論をしているときに今にも泣きそうな声でスープがぁっ!?と叫ばれたら嫌でも我に返るだろうが。

見るとレティシアの動きで落ちそうに、というかすでにテーブルから落ちたららしい皿を見事片手でキャッチした椛がいた。

どうやらすこし遅かったらしい。

 

「ふぅ、やっと落ち着いた。とりあえず今は僕の番だから、質問は全部終わってからお願いね?」

 

「……あぁ、そうだな」

 

すこしションボリしながら椛から皿を受けとると小さくありがとうと返す。

椛もどういたしましてと手渡し、とりあえず二人とも席についた。

 

「さて、続きだ。さっき半分正解と言ったけど、具体的には前者が正解だ。確かに僕は奴隷売買に一役買ってるよ」

 

「……一応聞くが、何故だ?」

 

「コミュニティに迎え入れるため。奴隷としてではなく仲間として」

 

「………」

 

「まあ、信じる信じないは任せるよ。別にどうでもいいからね。そして後者だけど……ぶっちゃけやってることにはやってる。どちらかといえば誘拐よりも窃盗に入るんだけど」

 

「……窃盗?」

 

「そう、他のコミュニティの奴隷だよ。ただし、一定量の労働を越える場合と性的な暴力が振るわれた場合の二つに限定してるけどね」

 

「要するに()のコミュニティを対象にしていると?」

 

「そういうこと。だいたいはこの二パターンかな?あと例外もちらほらあるけど」

 

「………」

 

レーテの説明を聞き終えたレティシアは目を瞑って考える。

本当に目の前の男を信用できるのか。

なぜこの男は、まだそのどちらにも当てはまらない自分を助けたのか。

 

「……レーテ」

 

「ん?」

 

レティシアの出した結論。

それは、本人に聞けばいいというものだった。

 

「お前はなぜ、私を助けたんだ?」

 

「……欲しかったからだよ」

 

「え?」

 

「君が欲しかったから。他に理由はないさ」

 

「……それだけなのか?」

 

「うん、それだけ」

 

欲しかったから手に入れた。

なんて原始的な考えなのだろうとレティシアは思う。

だが同時に、この馬鹿正直な男なら信じても良いのではないかとも思ってしまった。

 

「……そうか。では、改めてよろしく(マスター)

 

「マスターって……言ったでしょ、奴隷としてではなく、仲間として迎えるって」

 

「じゃあレーテ。これからよろしく頼む」

 

頼むと頭を下げるレティシアにレーテと椛は苦笑いを浮かべる。

どうやらレティシアはかなり律儀な性格のようだ。

 

「こっちこそよろしくね。さて、皆もそろそろ来るし紹介しないと」

 

「あ、もうすぐ来るみたいですよ?」

 

椛の言う通り、耳を澄ませば腹減ったーだの疲れたーという会話が聞こえてくる。

どうやら皆帰ってきたようだ。

 

「と、そうだ。一つ言い忘れてた」

 

「ん?」

 

ニヤリ、とレーテは大切なものを自慢する子供のように微笑む。

 

「ようこそ、コミュニティ『エデン』へ」

 

 

 

 

 

『エデン』

 

 

 

 

 

それがレーテのコミュニティの名前。

今日を生きる者たちの楽園。

 

「君を僕たちの家族として歓迎するよ」




ーーDETAーー
・レーテは寝坊常習犯
・まさかのオリヒロイン?
・子供を保護するコミュニティ?
・自給自足が基本
・欲しいから手に入れる魔王主義!?
・仲間=家族





まず始めに、椛はぶっちゃけ某シューティングゲームの犬走椛さんがモデルです。
ただし天狗ではないので悪しからず。
さて、レティシアがヒロインだと思った皆さんすみません。
まさかのオリヒロインでした。
さらに、レーテのコミュニティ『エデン』の活動方針はウィル・オ・ウィスプに似てます。
ただし、基本的にレーテの気まぐれなので一概に正義とは言えませんが。

さて、次回から誕生祭に入りますね。
なんと第二の主人公が!?
出たり出なかったりします。
それではまた次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。