術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが?   作:妄想癖のメアリー

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小さな呪術師

 

 

 

「いやーごめんねサキちゃんママ。毎日こんなウメェ飯作ってもらって!」

 

「いいのよ礼司(れいじ)君! サキだって喜んでるわ。ねえ?」

 

「ちょ、ちょっとお母さん!」

 

 時刻は午後6時をまわり、日もすっかり沈んだころ、食卓を囲む3人。子供の方は小学校中学年程度だろうか? 

 一見すると母親1人と子供2人の様にも思える彼ら。しかし礼司と呼ばれた男子と2人に、血縁関係は無かった。

 

 先ほどから笑顔で食事をしている彼。天鳳 礼司(てんほう れいじ)は、生まれつきなのか環境によってなのか、非常に要領の良い子供だった。

 人好きのする爽やかな顔に、特に年上に好かれるであろうコミュ力、成績も良い。更に彼には、人とは違う()()()()()()使う事が出来た。

 

「それにしてもその()()()? 便利よねー! 今日もゴミ出し手伝ってもらったし。遠い所にも行けるんでしょう? 私も欲しいわー」

 

「あはは……実際そんな便利なもんじゃないっすよ? 距離遠くなると疲れるし、使いこなせるまで時間かかったんですから」

 

「それでもよ! ドラえもんの()()()()()()みたいじゃない? サキも将来ハワイとかに連れてってもらいなさいよ!」

 

「じゃ、それまで頑張って鍛えておきますね!」

 

 

 

 

 

「いつもありがとうございます。じゃ、サキちゃん。また明日ね」

 

「う、うん。じゃあね」

 

「もう、遠慮せず泊って行けばいいのに」

 

 食事を終えた礼司は、皿の片づけをするなり玄関へと向かう。

 このやり取りも、もう何度もしている事だった。

 

「いえ、帰りにスーパーでお弁当買っていってあげないと行けないので……」

 

 苦笑いを浮かべながら、もう何回も使った()()()()を言う礼司。

 上機嫌に笑っていた母親だったが、それを聞いた途端笑顔も鳴りを潜めて心配そうに話す。

 

「……叔父さんだったかしら? 私が言えた義理じゃないかもしれないけど、そんな人、保護者として失格よ……辛くなったら何時でもきていいんだからね?」

 

「……ありがとうございます。お邪魔しました」

 

 そう言って扉を閉める礼司。やむを得ないとは言え、親切にしてくれた人に()()()()のは気分が良いモノではなかった。

 

(あながち間違っては無いんだけどね……)

 

 そんなモヤモヤを残しながら、川沿いの街路灯に照らされた道を歩く。日はすっかり沈んでいた。

 ふと不穏な雰囲気を感じ取った礼司は、舗装された道から横にそれ河川敷に降り立った。

 

「うわ。また沸いてるよ」

 

 そこで彼が見たのは、大きさ2メートルほどはあるカエルに似た化け物だ。

 ブヨブヨした紫の肌に、目玉も飛び出している。

 

(ここ最近頻繁に見かけるなあ)

 

 経験上放っておくと人を殺しかねないため、手に持った鞄をどこかへしまった礼司は、下に降りていく。

 

「……ゴミが。駆除してやる」

 

 内から湧き出る負の感情を認識した礼司は、それを全身に纏う様にイメージした。

 これをすると不思議と力が増すのだ。

 

 まるで消えたように見えるほど速い速度で駆けだした礼司は、すれ違いざまにカエルの腹を右手で殴る。

 それだけで、カエルの上半身は吹き飛び、紫色の血が飛び散った。

 

「うわ、ばっちい」

 

「早く風呂入りたいなー」と呟きながら、礼司は鞄をどこからともなく取り出し肩にかけ、再び帰路に就く。

 

 

 

 

 

「二級相当をワンパンか、いいね。将来有望だ」

 

 

 

 

 

 その姿を上から見ていた者に、彼が気が付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 自宅であるアパートに帰ってきた礼司は、誰もいない部屋に向かって1人呟いた。

 両親がだいぶ前に亡くなってから、1人暮らしをしている彼だが、この癖はどうも抜けないようだ。

 

「……って、誰もいないけど」

 

「その年で一人暮らししてるんだ。偉いじゃないか」

 

「!?」

 

 プライベートな空間の為、つい気が緩んで独り言をしてしまった礼司だが、突然現れた謎の男に驚いて距離を取る。

 男は胡散臭い笑みを浮かべながら、礼司に向けて語った。

 

「恐れずに距離を取ったか、ますます欲しくなるよ。どうだい? 私と家族になって偉大な目標を達成する気は無いかい?」

 

「……いや、まずあんた誰。どうやって入ってきたの?」

 

 礼司が住んでいるのはワンルームのアパート。いくら気が抜けてたとはいえ、扉を開けたら必ず音で気が付くはず。それが一切なかったことから、自分と同じ側の人間だと想像付けた礼司。まずは目の前の男から情報を取ることを選んだ。

 

「私の名前は夏油 傑(げとう すぐる)。君と同じ()()()さ」

 

「……呪術師?」

 

 聞きなれない言葉に首をかしげる礼司。そのしぐさが面白かったのか、夏油と名乗った男は上機嫌に語る。

 

「君のその能力、何処かから鞄を取り出したりしていただろう? それが術式。呪術師はそれを使って君がさっき倒した化け物、呪霊を祓う仕事をしている人たちのこと。私は少しだけ特殊な立場にいるけどね」

 

「……あんたもその超能力を使えるの?」

 

「ああ。私の術式は呪霊操術。倒した呪霊を取り込んで操ることができる。君が狩っていた呪霊は私の術式によるものだ」

 

「お前のかよあれ……ってやっぱり居るよな。俺の他にも使えるの」

 

 納得がいったと呟く礼司に対して、夏油は感心したように語り掛けた。

 

「へえ。意外と冷静だね。君くらいの年だったら自分だけの特殊能力に憧れるものだろ?」

 

「いや、あんな化け物狩れるやつ俺一人だけだったら日本終わっちゃうよ」

 

「ははは。リアリストだね」

 

 呆れたように呟く礼司が面白かったのか、笑いながら返す夏油。

 

「さて、時間稼ぎも程々にして。本題に入ろうか? まずはそのポケットのスマホを取り出してほしいな」

 

「……バレてたか」

 

「呪術師は騙し討ちが本分なんだ。年季が違うんだよ? 年季が」

 

 そう言って降参と言ったように、スマホを取り出して両手を上げる礼司。テーブルの上に置かれたスマホには、チャットアプリが開かれており『何も言わず警察を呼んでくれ』と入力中になっている。惜しくもあと一歩というところでバレてしまったようだ。

 

「で、夏油さんは俺に一体何の用。偉大な目標って何?」

 

「よくぞ聞いてくれたね。私の夢は猿ども……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()さ。今はその志を共にする家族を集めているところなんだ」

 

「……は?」

 

 余りに物騒な思想を、当然のようにサラッと言い放った夏油。

 余りに衝撃的な内容に、聞き逃してしまいそうになる礼司だったが、それを必死にこらえて目の前の男の一挙手一投足を見逃さないようにする。

 

「呪霊というのは非術師の負の感情によって発生する。呪術師は、呪霊を祓うために使い潰されているんだよ。その過程で見るも無残な死を遂げることだってある。挙句の果てには、力ある呪術師は猿どもに弾圧されることだって多々あるんだ。可笑しい話じゃないか? 力ある者が無い者のために消費されていく世界なんて、あっていいはずがない」

 

「……だから大本である非術師を皆殺しにして、呪霊が生まれないようにするって事か?」

 

「理解が早いじゃないか。どうだい? 協力してくれる気になったかな?」

 

 夏油が話す言葉には、言い知れぬ説得力があった。これが俗にいうカリスマ性というモノなのだろうか。

 確かに呪術師のことについて何も知らない礼司。年長者である彼の言う事だ。呪術師は惨たらしい死を迎えることもあるのだろう。

 実際、礼司の両親も似たようなモノだった。だがしかし、それでも譲れないものが彼にはあった。

 

 

 

()()

 

 

 

「……理由を聞いてもいいかな?」

 

「確かにあんたは嘘をついてないんだろう。何となくわかる。あいつら、呪霊は間違いなく俺たち人間の害だ。実際──俺の()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 思い出したくない過去なのだろう。力強い口調とはちぐはぐにその目には涙が浮かんでいる。

 

「じゃあどうして? 君だってそれ程力をつけるのに相当苦労しただろう。死にかけるような経験だってあって可笑しくない。だから呪霊の居ない世界を作ろうとしてるんじゃないか!」

 

「『なるべく多くの人を幸せにして、幸せに生きてくれ』……ありきたりな言葉だけど、もう長くないと悟った俺の両親が残した言葉だ……痛かったろうに、それでも子供の前で親であり続けようとした、真っ直ぐな人たちだった。()()()()()()()()()()()()()()()()()。くだらない大義に巻き込むんじゃねえ、1人でやってろクソ野郎」

 

「……そうか。物分かりの悪い子供には、躾が必要だね?」

 

 

 

 

 

 互いに譲れないモノの為に、両者は戦いを始める。

 

 

 

 

 

「場所を変えるぞ」

 

 そう言って自らの前に縦長の楕円を指で描き、そこにできたポータルへと入る礼司。

 その術式の性質を理解しているのか、迷うことなくついていく夏油。

 

「……君の術式は、呪力によってつくったポータルで現在地と別の空間を繋ぐものだね。異空間みたいなところに物を入れてたりしたけどあれはいったいどんな使い方をしたのかな?」

 

「そう自分の奥の手をぺらぺらと喋る奴がいるか、マンガじゃねえんだぞ」

 

 出てきた先は先ほど礼司が呪霊を狩っていた河川敷である。

 見渡しが良く、街灯がなく暗いため、他人の目に入りづらいから選んだのだろう。そして彼の術式を制限なく使える絶好の場所である。

 

「甘いね。呪術には縛りという概念がある。あえて術式の内容を開示し、不利な状況を作ることで術式を強化することができる。もうほとんど手の内を知ってしまってるし、言っちゃった方がお得だよ?」

 

 まるで部活の顧問が一対一で生徒に教えるかの如く語る夏油。

 

「……俺の術式は、厳密にいえばポータルで別の場所をつなぐものではない。ある空間と()()()()()()、そこの出口までの直線距離をゼロに設定することでどこでもドアみたいになる。出口を出さずに片方だけ開けば、異空間に物を出し入れすることだってできる。量に限度はあるし、入れすぎたら疲れるけど……閉じろ」

 

 そう言って両手を結び、ポータルを閉じる礼司。この年でここまで己の術式を使いこなせている呪術師も珍しいだろう。

 

「聞けば聞くほど便利だ。悪事を働くのにこれ以上便利な術式はあまりないね。言っとくけど、私は術式を使う気は無いよ。君くらいならボコボコにできるし、ちょっとムカついてるんだ。呪霊どもに任せたりしない」

 

「言ってろ!」

 

 そう啖呵を切って駆けだす礼司に、棒立ちのまま余裕そうに微笑む夏油。

 明らかに舐めているように見えるが、内心彼は礼司のことを高く評価していた。

 

(見ている限り体の動かし方がかなり洗練されている、きっとこの短い期間で随分と努力したんだろう。術式についての理解も高い。そして極めつけはこの呪力……!)

 

「私の親友に五条悟っていう自他ともに認める最強の術師が居るんだけど、君の呪力の練り方は彼にすごく似ている。鋭い刃のごとく洗練されていて、低コストで高いパフォーマンスを出している。きっと君の術式が関係あるのかな?」

 

「……俺は昔から目が良かったし、断片から全体像を想像するのが得意だった。塗り絵も絶対はみ出さなかったし、二千ピースのジグソーパズルも大体1時間くらいで完成させられる。あんたの言う呪力も同じ感覚で学んだ」

 

「そうか……じゃあこれから学ぶといい。実力を極めた術師が行きつく先は、基本的には肉弾戦だ」

 

「ただの脳筋じゃねえか!」

 

 軽口をたたきながらも、的確に夏油に拳を入れていく礼司。

 しかし、その攻撃は一撃も通らない。

 

「顎を狙ったフックに、エルボーや金的と、容赦ないね。人体の急所を重点的に狙うのは悪くない判断だが、呪術師は呪力でガードできることを忘れちゃいけないよ。ほら、一発だ」

 

「! ……っぐ!?」

 

 守りに徹していた夏油だったが、その一言と共に距離を詰めて来る。

 身長150前半の礼司と、180後半の夏油の身長差から繰り出される容赦のない膝蹴りが礼司の鼻を直撃する。

 反射的に呪力で顔面を覆う礼司だったが、防げ切れずに鼻血を出して膝をついてしまう。

 

「ッチ!」

 

 咄嗟に地面にポータルを作り、離れた場所に出口を設定する礼司。

 地面に沿うように開けられた穴から入って、後方に着地する。

 

(たった一撃でこれかよ……! くっ、頭が揺れる)

 

 ふらふらと立ち上がった礼司であったが、両者の力量の差は歴然だ。

 

「やっぱり君のその掌印はブラフか。なくても問題なく発動できるみたいだね。全く油断も隙も無い子だよ」

 

「……バレたか。アンタの言う術式の開示は、情報が断片的でも作用するんだな。ポータルが開きやすくなってる。閉じろ」

 

「さっきも言ったけど、騙し討ちが呪術の醍醐味だからね。さあ、後はどんな手を見せてくれるのかな?」

 

 そう言ってこちらに近づいてくる夏油。ブラフも意味をなさず、肉弾戦も完全に負けている。

 

「はぁ、はぁ……クソが!」

 

「お?」

 

 やけになったのか夏油の足元にポータルを開き、その出口を隣に流れている川の真ん中に設定する礼司。

 大きな川だ。中心まで行くと深さは約5メートルにも及ぶ。流石に溺れることは無いにせよ、逃げる時間くらいは稼げるはずだ。

 

「……最後にどんな手を見せてくれると思ったら、こんなもんか。まあその年にしては頑張った方だと思うよ」

 

「……化け物が、っぐ!?」

 

「呪術師と呪霊には四級から特級までの段階がある。同じ等級の呪霊、例えば一級の呪霊を確実に祓えるなら術師も一級。君が一撃で倒したのは二級の呪霊だから、よほど相性が悪くなければ一級の呪霊も難なく倒せるだろう。私の見立てでは一級と準一級の間くらいかな? 特級は日本でも3人しかいないから、君は間違いなく天才だ」

 

 礼司の胸ぐらをつかみながら、自身の立てた予想を話す夏油。

 

「じゃああんたは何級だったんだよ? 一級か?」

 

「ぶん殴る前に教えてくれよ」と言わんばかりに聞いてくる礼司に、自慢げに自身の等級を伝える夏油。

 

「特級さ」

 

「……はっ、こりゃ勝てねえわ」

 

「結構頑張ったと思うけどね?」

 

 諦めたように力を抜く礼司に、夏油はねぎらいの言葉を掛ける。間違いなく本心から出た言葉であった。

 

「これ以上服を濡らされても困るし、口を封じさせてもらおうか」

 

「っ!」

 

 そう言うとおもむろに礼司の頬を片手で掴む夏油。

 年相応に丸みを帯びた柔らかい感触に、我ながら鬼畜なことをしているなと自嘲する夏油だったが、自らに届きうる家族を手に入れた喜びもあるようだ。

 

「君は1つしかポータルを開けないんだろう? そしてそれを閉じるには口で唱える必要がある。開いている状態で口を閉じてしまえば、これ以上術式を発動することはできないね」

 

「!」

 

 今までで一番悪い笑みを浮かべる夏油に、涙を浮かべながら顔を振る礼司。

 

「そう怖がるな、悪いようにはしない。丁度君と同じくらいの子がいるんだ。君は良い子だし、きっと仲良くなれる」

 

 締め落とす気なのか、もう片方の手で細い首を絞める夏油。

 抵抗が少なくなり、ちょうど夏油が油断したタイミングにそれは起きた。

 

 

 

「は?」

 

 

 

 まず最初に夏油が感じたのは浮遊感だった。そしてその次に強烈な風が吹くのを感じる。

 そんな状態になれば自ずと手に込めた力は緩む。その隙をついて全力で顔面に前蹴りを入れる礼司。

 

()()()()()()()という、不思議な感覚を体験した夏油は清々しさまで感じていた。

 

「は、はははは! ……なるほど。最後に騙されたのは、私の方だったか」

 

 閉じかけのポータルから、中指を立てて得意げな笑みを浮かべる礼司が見える。

 

「……とりあえず。何とかしないとね」

 

 

 

 

 

 

 ────夏油傑は、上空5000mの宙を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「っはあ……はあ。何で日本で3人しかいない特級術師が、こんなガキ相手にマジになってんだよ……」

 

 勿論夏油が本気を出していたとは思っていない。実際術式ありきで本気で来られていたら、一分持ったかどうかも怪しいのだ。

2()()()のポータルが閉じたのを確認した礼司は、服が汚れるのを気にすることなくその場に寝転ぶ。

 

「何だっけ……そうだ、呪力だ。あれが足りねえ。もういいや、サキちゃんには悪いけど明日学校サボろ」

 

 

 

 

 

「あのーお取込み中申し訳ないんだけど……君、呪術師にならない?」

 

「……夏油の方がまだましな誘い方したよ?」

 

「アハハ! やっぱ傑に会ったんだ! なに。じゃあ傑って小学生に喧嘩売った挙句負けたの? ウケる」

 

 呪力切れで、体力を使い果たしている礼司を気にかけることなく、大きな声で笑い続ける、目隠しをした白髪の男。

 

「……うるさいんだけど」

 

「ああごめんごめん、面白くってさ。僕の名前は五条悟。東京都立呪術高等専門学校で教師をやってるんだ」

 

 仰向けに倒れている礼司の顔を覗き込み、自己紹介をする男。

 その名前に聞き覚えがあったのか、ため息を吐きながら礼司は語る。

 

「あんたが夏油が言ってた最強さんか。で、夏油の仲間なの?」

 

「まさか。僕と傑は親友だけど、一発ぶん殴ってやりたいってずぅーっと思ってるよ」

 

「ははは、奇遇だね。俺もぶん殴りたい」

 

「高専に来れば、いくらでもぶん殴るチャンス出来るよ? さあ、君も呪術師になろう!」

 

「才能ある子みーっけ!」とウキウキではしゃいでいる五条に、げんなりとしながら質問を投げかける礼司。

 

 

 

 

「……1つ、聞かせて」

 

「ん、なにー。どしたの改まって」

 

「呪術師になれば、いっぱい人を幸せにできるかな」

 

 齢10程度の子供から出た発言にしては重すぎる言葉に、何処か夏油の面影を感じた五条。

 

「……不幸な人は減らせるだろうね。そこから先は、君次第だよ」

 

「俺金ないけど大丈夫?」

 

「そこ気にする? まあその点においては心配ナッシング! 僕、こう見えてもチョーお金持ちだから」

 

 サムズアップしながらひょうきんに答える五条。こんな男が最強らしい。

 

「そっか……じゃあよろしくね。五条先生」

 

 そう言って意識を手放した礼司を、五条は丁寧に抱える。

 その寝顔は年相応らしい。どんな人生を歩んだらここまで強くなれるのか。その術式を()()()で確認した五条は1人ごちる。

 

「ああ、よろしく。小さな呪術師さん」

 

 

 

 

 

 この物語は、2人の『最強』に魅入られた呪術師が、沢山の人を幸せにしていく物語である────

 

 

 

 

 

「あ、この子の家分かんないや。伊地知に探してもらわないと!」

 

…どうやらその道は、前途多難のようだ。

 

 

 

 




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