術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが?   作:妄想癖のメアリー

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襲撃

 

 

 

「俺、恵たちに伝えて来る!」

 

「チョーっと待った!」

 

 急いで駆けだした俺の肩を掴む五条先生……何だよ、早く伝えてやった方がいいだろ。

 そんな不満を隠そうとしない俺だったが、先生は何か考えがあるようだ。

 

「また狙われる前に力付けといたほうがいいでしょ? だから記録上は死んだままにしとこうと思ってね」

 

「……まあ、確かに」

 

 そりゃ今生き返っても同じ結末になるだけか……

 

「交流会までには復学させるつもりだから、礼司には僕の居ない間悠仁の師匠をやってもらおうかな」

 

「マジ!? 俺五条先生と礼司に弟子入りすんの!?」

 

 俺たちの会話を横で聞いていた悠仁が驚いたように声を上げる。

 

「不満か?」

 

「いやいや逆だよ! 五条先生も礼司も滅茶苦茶強いんでしょ?」

 

「もちろん。僕はもちろん礼司も中々だよ」

 

 俺が茶化したように質問すると、両手を横に振りながら否定する悠仁。

 五条先生もこれから強くなる悠仁を想像しているのか、口角が上がっている。

 

「とりあえず見つかるとマズイから、悠仁は高専で匿うよ。僕は硝子と少し話してくるから、先行っといてー」

 

「おっけー」

 

 指定された場所にポータルを開く。高専の地下にある施設だ。これなら見つかる心配もないだろう。

 

「恵たちは今外で真希ちゃん達……2年生と特訓してるから、部屋から服とか取ってきちゃった方がいいんじゃない?」

 

 裸に手術服とか着心地最悪だろうし。

 

「おう! ありがとな」

 

 中に誰もいないことを確認し、ポータルを開く。

 部屋で荷物をまとめていた悠仁が、ポータル越しに立っている俺に話しかけてきた。

 

「特訓してるって言ってたけど、具体的にどんなことやってんの?」

 

「呪術の特訓って、基本を学んじゃえば後は1人でやるもんなんだよね。だから大体特訓ってなると近接かな」

 

 皆術式とか全然違うからね。

 

「近接かー。なんか流派とかあったりすんの?」

 

「真希ちゃんとかは多分中国拳法ベースで他も色々って感じかな。一応シン・陰流っていう平安時代から続く技術はあるけど」

 

「すげえ、なんかそれっぽい。どんな技あんの?」

 

 質問ばっかだな……まあそれだけ意欲があるんだから悪い気はしないけど。

 

「教えてあげたい所なんだけど、俺も知らないんだよね。『門外不出』っていう縛りがあるせいで、門下生にならないと誰も使えないんだ。一応見たら何となくどんな事してるか分かるから、今度の交流会で霞ちゃんの技でも受けてみなよ」

 

 近接戦のセンスは俺以上だし、ちゃんと分析すれば使えるようになると思う。知らんけど。

 

「……交流会?」

 

「あ、マジ? そっから?」

 

 やっぱ自分で言ってた通り教師向いてないぞあの人。

 

「呪術高専が東京と京都の2校あるって言うのは知ってるよね?」

 

「おう、最初の方に礼司が言ってたからな」

 

「それぞれの学長が提案した勝負方法を1日ずつ、2日間かけて行う……ってのは建前で、初日が団体戦。2日目が個人戦ってのが決まりかな」

 

 去年は憂太。今年は俺が居るけどバランス大丈夫かな……? まあどうせ何かしらのハンデはあるだろうけど、術式使っちゃダメとか。

 

「術師同士で戦うのか、なんか面白そう!」

 

「殺す以外なら何でもやっていい呪術合戦だから、簡単に伸されないように特訓するんだよ。交流会まで1か月半、みっちりしごいてやるから覚悟しとけよ?」

 

「おっす! お願いします師匠!」

 

 良い意気込みだ。

 そんな会話をして時間を潰していると家入さんとの用事が終わったのか、五条先生が階段を下りてきた。

 

「お! 気合入ってんねー」

 

「五条先生! 早く特訓してよ!」

 

「気持ちは分かるけど、お前死んだことになってんだからデカい声上げるとバレるぞ。早く荷物持って来いって」

 

 俺がそう声を掛けると、悠仁は焦ったようにポータルへと入ってきた。

 ポータルを閉じると、五条先生による呪術レクチャーが始まった。この人説明不足なところあるから、しっかり聞いて補足しないとな。

 

「よし、じゃあ始めよっか! 近接戦闘に関しては、悠仁は頭一つ抜けてると思うよ。だから、今覚えるべきは()()()()()()()()()。そして、呪術に関する最低限の知識だね」

 

「細かい知識に関しては、都度聞いてくれれば俺が答えるよ」

 

 そんな俺の小言を挟みつつ、五条先生は実演を始めた。

 

「────ではまず、あちらの缶ジュースをご覧ください」

 

 テーブルの上には2つの缶ジュースが置いてあった。悠仁が部屋から持ってきたやつを拝借したんだろう。準備の良い人だ。

 そのうち一つに呪術をもう一つに『蒼』をぶつける五条先生。

 

「おおっ!?」

 

「こっちが呪力で、こっちが術式」

 

「……なるほど、分からん」

 

 まあ初見だと何が起こったか分かるはずもないだろう。

 基本的に癖の強い術式の中で、五条先生の『無下限呪術』はその中でも難解なモノだ。

 

 ────『無下限呪術』

 五条家相伝の術式で、無限を操作する術式だ。これを術式を介して現実に持ってくる。

 さっきは無下限呪術の基本()()()()の出力を上げ、引き寄せる力を上手いこと使って雑巾を絞るようにねじったのだ。

 数学的な考え方を要するから、理系科目が苦手な悠仁に説明するのはキツそうだな。

 

「うーん……そうだね。呪力を電気、術式を家電に例えようか。電気だけじゃちょっと使い勝手悪いでしょ? だから家電に電気を流して様々な効果を得るわけ。礼司もやってみてよ」

 

「ん、いいよ」

 

 お鉢が回ってきた。さっきとは別の缶ジュースを一本立て……どうすっかな。インパクトあって分かりやすい奴……これでいいか。

 術式反転『(セキ)』によって、下敷きくらいの異空間を空き缶を切るようにして生成する。

 ガンというエグめの音を立てて、缶ジュースが真っ二つに切断された。因みに切断面を埋めるように異空間を置いているため、ジュースが漏れることは無い。

 

「これが礼司の術式。というか、また新しい技習得したの? 飽きないねホントに」

 

「す、すげえ。めちゃくちゃキレイに切れてる……ってうわ!?」

 

 あ、持ち上げると……あーあ、言わんこっちゃない。

 缶ジュースの上半分を持ち上げた悠仁の服に、ジュースが飛び散ってしまった。

 

「ほら、タオル」

 

「ありがと、すげえな……って事は、俺も2人みたいなチョベリグな術式を身に着けると!」

 

「いや、悠仁は呪術使えないよ」

 

 ……え、今初めて言ったの? 五条先生。絶対それ最初の方に言うやつだって、悠仁ショックで固まっちゃったじゃん。

 

「簡単な式神とか。結界術は別として、基本的に術式は生まれながらの物なんだよね。だから呪術師は才能8割って感じ?」

 

「そして残念だけど、悠仁にはそれは無いから……」

 

 あ、倒れちゃった。そりゃかっこいい技使えるって期待してこれだったらガッカリするよな。

 

「大丈夫?」

 

「いや俺もサンダーとかファイアーとかパワーボムとかできると思ってたから……」

 

 パワーボムはできるだろ。

 そんな意気消沈といった様子の悠仁に対して、五条先生は励ますように声を掛けた。

 

「出来ないことはガン無視してこ! 君の長所をさらに伸ばす。悠仁の体術に、呪力を上乗せするんだ! 下手な呪術よりも、こういう基礎でゴリ押しされた方が、僕は怖いよ」

 

「そうそう。悠仁の肉弾戦の才能って、マジで類を見ないくらいなんだよ?」

 

 五条先生と俺の言葉に元気を取り戻したのか、目を輝かせて勢いよく起き上がる悠仁。

 

「でもでも! それなら俺もう出来るぜ! あの時何となく、コツは掴んだ」

 

 お、それなら話は早いな。最初に自覚するのが一番難しいから、これは嬉しい誤算。

 

「じゃ、やってごらん。どうせできないから」

 

 そう言って右手を広げて前に出す五条先生。相変わらずナチュラル煽りストだな。

 

「ケガしても知んないよ?」

 

「いいから、はよはよ」

 

 そんな五条先生の挑発を受けて、結構本気で殴ったであろう悠仁。腰も入ってるし、いいパンチだ。

 だが、『呪力を込められたか』に関しては、残念ながら0点だ。

 

「こもってなかったね。呪力」

 

「なんで!?」

 

「呪力の源は負の感情。君の言うあの時は、怒りや恐怖に満ち溢れていたんだろう」

 

「……あ!」

 

 五条先生の言葉に、合点がいったと手を叩いた悠仁。

 

「呪力を使うときは常にブチ切れてなきゃいけねーのか! 確かに伏黒もキレ気味だったかも!」

 

「違ウヨ」

 

「あははははは! いいなそれ、おもろい」

 

 ちょっとツボかも。

 俺が笑っている間に説明を終えたのか、五条先生が提案した修行方法は、悠仁にとっては意外なものだっただろう。

 

「悠仁にやってもらう訓練方法は────映画鑑賞です!」

 

「……映画、鑑賞?」

 

 

 

 

 

「────呪具の持ち運びかぁ」

 

 後の説明は五条先生に任せて、恵たちの所へ合流しようとポータルを開いたら、少し先の方で何やら相談をしているようだ。

 

「おいっす。何の話してんのー?」

 

「礼司! お前またサボったな?」

 

「ちゃうわ。五条先生に呼ばれてたの」

 

 何時かの様に上半身だけ飛び出してきた俺に対して、パンダが咎めるように指を差してきた。と言っても、本気で言ってるわけじゃないだろう。

 最初の方は皆ビックリしてたのに、もう慣れてきちゃったみたいで残念だ。

 

「はぁ!? 礼司アンタどっから出てきてんのよ!」

 

 お、反応いい人発見。

 

「ヤッホー野薔薇ちゃん。俺の術式見るのは初めてだったかな?」

 

「そいつ、神出鬼没だから油断すんなよ」

 

 そんな余計な補足をする真希ちゃん。別に驚かせる気は……ちょっとあるかな。

 

「だったら覗きとかされ放題じゃない!? 風呂とか出てきたら殺すわよ!」

 

「覗かねえよ!? 俺を何だと思ってんだ!」

 

「女たらしのチャラ男」

 

 ふざけんな。誰だよそんな不名誉なあだ名流したヤツ。まだ『次代の最強』みたいな痛い2つ名の方が良いわ。

 

「つっても間違ってないじゃん。アンタが女たらしっての」

 

「うん……その上釣った魚にエサを上げないから、最低」

 

「お前らかアホ共!」

 

 会話に交じってきたのは、俺の居候2人。言い方が悪いにもほどがある。

 

「ったく。そんな話してたわけじゃねえだろ。今は恵の呪具の話だろうが」

 

 脱線していた会話を戻してくれた真希ちゃん。真希ちゃんだけだよ、俺の味方でいてくれるのは。

 とまぁ流石に恵に申し訳ないので、本題に入ることにしよう。

 

「そんなに嫌か? 礼司の恋バナ聞くの」

「おかか?」

「うっせぇ! 殺すぞ!」

 

「悪いな恵。話の腰折っちまって。で、何の相談だったんだ?」

 

「……得物で近接を補うのはいいが、どうやって持ち運ぶかって話だ。禪院先輩は2つ以上持ち歩くとかザラですよね? どうしてるんですか?」

 

 ────確かに恵の術式『十種影法術』は、式神を出すときに両手を開ける必要がある。いくら近接戦で有利に立ち回りたいからといって、それで術式が使えなくなるのは本末転倒だろう。

 俺の術式を使うっていう手もあるが、常に一緒に任務に出れるとも限らないからな。何なら恵が一級になるまでその機会は来ないだろう。

 

「前まではパンダに持たせてた。今は礼司のポータルに入れてる」

 

「(どっちも他人頼りかよ……って)礼司と任務行かないですよね、どうやって出し入れしてるんですか?」

 

「便利な呪具があってな。これを使ってる」

 

 そう言って真希ちゃんはジャージの下にかけていたネックレスを取り出す。そう、俺がつけているモノと同じ呪具だ。もう一組探すのにかなり時間がかかった覚えがある。

 因みにデザインは俺が頑張って考えた。結構喜んでくれてたから、頑張ったかいがあったってもんよ。

 

「……それ、礼司がつけてる奴と同じ呪具ですよね。ニコイチのセットで、片方に呪力を込めるともう片方が変形するっていう」

 

「そう。このスイッチを押すと、自動的に呪具がしまってある礼司の術式につながる仕組みだ」

 

 俺が持ってる奴にはポータル。真希ちゃんのには異空間を繋げており、定期的に俺の呪力を込めている。

 電池式の時計みたいな物で、燃費が良いし俺が持ってる方に充電すればいくらでも使える。ただ一つ結構なデメリットがある。

 

「でも強い呪具出し入れされると気持ち悪くなるんだよね。特級呪具の『游雲』とか、脂身多めのステーキ食ったみたいになる」

 

「……何だよその例え」

 

 もう慣れたけど、最初は酷かったからな。

 

『────真希ちゃん。これ、誕生日プレゼント』

『……は? ネックレス?』

『そうそう。ここ押してみて』

『これって……!』

『そう、これ俺の異空間つながってるから、好きな呪具収納しとけばいくらでも取り出しできる優れものなんだ! 凄いっしょ!』

『……お前が使ってる奴と同じヤツか?』

『ん? ペアルックって事? 違うよー。もう一組探して買ってきた』

『……そうかい!』

『ちょ! 游雲入れないで! ……うっ、気持ち悪い……』

 

 何でプレゼントしたのに怒られたんだよ俺、頑張ってデザイン考えたのに。泣けてきたわ。

 パンダによると毎日必ず付けているらしい。気に入ったなら怒んないでよ。

 

「1、2級相当の呪具だったら問題なく入れられるからいいんだけど……何分レアな呪具だからどこにも売ってないんだよね。真希ちゃんのヤツも1000万くらいしたからさ」

 

「お前!? そんな高かったのかよ!?」

 

「でもその分の価値あるでしょ? 好きなタイミングで好きな呪具取り出せるし、呪力少ない真希ちゃんなら、中に入って逃げれるってオマケもついてるからね」

 

「そりゃそうだけど……」

 

 珍しく真希ちゃんが言いよどんでる。

 別に10倍の値段でも買ったけどな。それで死ぬ確率が減るんだったら惜しむ金なんてない。

 

「ねえ。やっぱ真希先輩って」

「……お前の考えてる通りだよ」

「マジで女たらしじゃん……」

 

 

 

 

 

「────ったく。栃木とかっていう微妙な遠さの所に派遣しやがって。悠仁の特訓したいのによ」

 

 恵の相談に乗った日の夜。緊急で入った任務を終えた俺は、郊外の山道を歩いていた。

 帰宅するためだったら、どっかに札でも貼ればいいのだが、()()()()()()()()()()()()()ではそれもできない。

 

「出て来いよ。付いてきてるのは分かってるぞ」

 

 そんな俺の言葉が山道に響き渡る…ったく。周りに人が居ない状況で来てくれたことに感謝するか。

 それにしても今日は満月が良く見える。そう思って見上げた月には、人型の影が出来ていた。

 

「ヒャアッ!!」

 

 空中から飛び出してきたであろう呪霊は、そのままの勢いで突撃してくる。ポータルによって回避することに成功したが、衝突した地面がバラバラに砕けている。生身で食らったらひとたまりもないだろう。

 そのまま距離を取り、目の前の火山のような頭をした、人型の呪霊を睨みつける。

 

「畳みかけろ、花御! 八手(やつで)!」

 

 その合図とともに、背後から呪力を纏った風と樹木が襲ってくる。

『壁』を張ることで事なきを得たが、これはかなりまずい状況かもしれない。

 

「君たち、何者?」

 

「────答える義理は無い。貴様にはここで死んでもらう! 天鳳礼司!」

 

 

 

 

 




真希さんの誕生日は1月20日です(ファンブックより)

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