術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが? 作:妄想癖のメアリー
「────五条悟の封印には、獄門疆を使う」
男のその言葉に、興奮したように声を荒げる漏瑚。頭の火山もボツボツと音を立てている。
「持っているのか! あの忌み物を!」
「漏瑚興奮するな。暑くなる。それにこれを使ってもいいけど、条件があるよ」
「条件?」
「先に天鳳礼司を殺すこと。出来るなら死体を残した状態でね。勿論君たち全員で出動するんだ。特に八手の術式は、彼にとってかなりの弱点となる。私の想定だと、そこに花御も加えれば、まあ8割殺せるはずだ」
そう語る男だったが、漏瑚は余裕そうに笑みを浮かべている。
「フン。何もそこまで対策を練らなくてもよかろう」
「いいや駄目だ。別に減るもんじゃないだろうし、確実に殺す、最低でもどこまで強くなっているかの情報が欲しい」
「……
そう語る漏瑚だったが、夏油と呼ばれた男はいたって真剣な様子だ。
「ああ。だが現時点では此方が有利だ。頼んだよ漏瑚」
「夏油よ。儂は宿儺の指何本分の強さだ?」
「……甘く見積もって、10、11本分ってとこかな」
「十分」
そんな夏油の言葉に、漏瑚は口角を上げ語る。
「獄門疆を儂にくれ! 蒐集に加える。その代わり────天鳳礼司を殺す。五条悟はその次だ」
「ったく。道こんなボコボコにして。報告書書くのめんどいんだからな?」
一度自身の精神を落ち着かせるため、ボヤキを入れながら術式を発動させる。
正直言ってここまでの呪霊が徒党を組むとなると、是が非でも本部に報告しないとまずいことになる。
『早く済ませてしまいましょう。漏瑚』
「分かっておる! お主は喋るでない!」
「……」
そしてさっきから黙っているこの呪霊……天狗か?
漏瑚と呼ばれた火山頭の呪霊や、不思議な言葉を放つこの白い呪霊もそうだが、天狗の奴が群を抜いて強い。
「そっちから来ないのであれば俺から行くぞ!」
まずは小手調べだ。すっかりなじみとなった気圧差攻撃を仕掛ける。しかし、天狗が手に持っている扇の一振りで、ポータルが破壊されてしまった。
「でかしたぞ八手! 火礫蟲!」
火山頭の呪霊から、尖った口を持つ虫のような呪霊が10匹ほど飛び出してくる。
予め発動させていた術式により、俺から数センチ離れたところで停止するが、術式が解けることは無い。
「……これ、当たるとどうなるの?」
『イ゛……ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
俺が虫に触れたとたん、耳をつんざくほどの大きな音を出したのちに爆発する……凶悪だな。虫自体もかなり早いし、初見殺しにもほどがある。
「音と爆発か……エグイことするなぁ」
視界が煙で覆われると不味いため、一度その場から飛びのく。
しかし、莫大な呪力の気配に気が付いた時、すでに火山頭が懐に入り込んでいた……ッチ、速いな。
そのまま胸部に術式で生成したであろう炎が撃ち込まれる。
「まだまだァ!」
ダメ押しと言わんばかりに、再度頭に連撃が加えられる。たった1人でこれか。後2人もほぼ同程度の実力。これは
先ほどから空間に高い濃度の呪力が立ち込めている。恐らく天狗野郎の術式だろう。ポータルが開けない。
「……ッケ、こんなものか。初撃を防がれた時は焦ったが、蓋を開けてみれば弱者による過大評価。弱者の評価する者もまた弱者よ。帰るぞ!」
『余計な手間でしたね。彼の評価を改めた方が良いかもしれません』
「……待て、まだ死んでいない」
随分とコケにしてくれるじゃねえか。少し腹が立ってきた。
「誰が、弱者だって?」
「何!? 馬鹿な! 何故心臓と脳に食らって死んでおらん!?」
「……気を付けろ漏瑚。奴が言っていた2割の可能性が高い」
先ほどまでやる気のなさそうに突っ立っていた天狗野郎だったが、今度は警戒するように腰を落とした。
とは言っても、今の攻撃は俺を殺して余るほどの威力が込められていた。一級の上澄みの術師でも原型が残るか怪しい。俺が死ななかったのは、ひとえに五条先生の無限を参考にした技のおかげだろう。
────自身の体に膜のように薄く、俺の生得領域である異空間を展開することで、ありとあらゆる攻撃を無効化することができる。また、その形を変えることで攻撃にも転用できるこの技は、五条先生に届きうる可能性すら秘めている。
ただデメリットもかなり多い。一つは術式発動中は術式順転『聯』、つまりポータルが使用できないこと、これは俺が五条先生の様に術式順転と術式反転を同時に扱えないからだ。
そしてもう一つは呪力消費が激しいこと。
「悪いけど、あんたら強いから全力で行くよ」
1本だけ空中に『次元剣』を取り出す。警戒したように身構える呪霊たちだったが、この1本は攻撃の為に出したものではない。その1本を地面に向けて突き刺す。ガンという音と同時に、辺りには
黒閃……打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に起きる空間の歪みの事であり、この際に生じた威力は平均して通常の2.5乗になる。
狙って出せる術師は居ないのがこの黒閃だが、とある条件において俺は
「来た来た……これで準備オッケーだね。
「来るぞ! 気を付けろ八手、花御!」
まずは天狗、お前からだ。20本の『次元剣』を同時展開、雑草に5本、火山頭に5本、天狗に10本放つ。
無警戒というわけではなかったのだろう。だが呪力を絞った黒閃の威力をなめない方が良い。
「……ッガァ!?」
「まだ速度重視だと狙った所に入らないか……でも早く動いた方が良いよ? 止まってるともう1回その黒いのが来るから……な!」
「気を付けろ2人共! こいつ、込められた呪力以上の斬撃を放ってくるぞ!」
心臓を狙ったつもりだったんだけどなぁ……まあ右肩から先全部吹っ飛んだから良いとしようか。それにしてもこの天狗、中々いい勝負勘をしている。
そう。俺は黒閃のメカニズムを研究して、全く動いていない相手+『次元剣』での攻撃という条件下でなら、黒閃を必ず出すことができるようになったのだ。と言っても、当たる瞬間に刃先の長さを変えて調節するだけだから、そんな難しいことはしてないんだけどね。
「花御、八手が再生するまでの時間を稼ぐぞ!」
『了解です』
5本の次元剣を突破してきたのであろう。後ろに下がった天狗野郎の代わりに、雑草と火山頭が前に出てくる。
「どうした? 弱者相手にそんな警戒して」
「やかましい! そのニヤケ面叩き割ってやるわ!」
「────ははははは! どうした、その程度か!」
自分の中にある感情が昂っていくのを感じる。黒閃出すとこうなるからあんま好きじゃないんだよな……まあでもこの火山頭には効果抜群だからいいけど。
「ガキが調子に乗りおって……! 花御、合わせろ!」
近接で火山頭、距離を取ったと思えば雑草野郎の枝が飛んでくる。当たっても問題は無いが、もし攻撃が効かないとバレて領域を出されたら面倒なことになる。
後出しでこちらの領域を出せばいいのだが、調整が効かず祓ってしまうため、尋問を行う事が出来ない。更にきな臭いのは、こいつらの後ろにいるであろう何者かの存在だ。
このレベルの呪霊が徒党を組んでいて、尚且つ俺に対するメタ構成……ホントに偶然か?
「お前ら、誰の指示に従って動いている?」
「儂は誰の指示も受けておらん! 貴様のようなまがい物が存在するだけで反吐が出るのだ!」
「じゃあ何故俺の術式を知っていた。お前らのお仲間の天狗野郎は、明らかに俺のポータル対策で術式を放っていただろ」
足に巻き付いた枝を『次元剣』で切断し、その隙に懐に踏み込んできた火山頭に蹴りを入れる。
呪力を空間に蔓延させるなど、いくら呪力が多い呪霊でもすぐにガス欠を起こす。そのせいであの天狗野郎の回復が遅く、数十秒もかかっているのだ。
そんな呪力の無駄遣いをする理由など、俺のポータル対策以外あり得ない。
「ほう? お主の術式は、八手の呪力で制限できるのか、良いことを聞いたな」
あくまで白を切るか……剣の軌道に慣れてきたのだろう、余裕そうな表情を見せる火山頭。
「じゃあこれはどうかな?」
『これは……漏瑚! 止まりなさい!』
ッチ、雑草野郎は目が良いな。俺を取り囲むように異空間の糸を張ったのだが、寸前で止まることで火山頭は事なきを得たようだ。
この2体の呪霊との攻防から30秒ほど、天狗野郎が戻ってきた……こうなってくると益々面倒なんだよな。
「……済まなかった。俺も戦う」
そう言って凄まじい呪力と共に風を放出する天狗野郎。この密度の呪力の中だと、『次元剣』もうまく作動しない。
領域で殺すか? ……いや、駄目だ。こいつらを祓ったとして、術式がない状態で同レベルの呪霊が出てきたら一巻の終わりだ。となると……あれしかないな。
「領域展開────」
「!? 不味い。漏瑚、花御! 展延を発動しろ!」
今更何しようって遅いぜ。
「────
辺り一面が、真っ白な空間に覆われる。俺の生得領域によって埋められた空間では、必中効果として呪力が練れなくなるという効果があるが……
「……大丈夫か、2人とも」
『これが……彼の領域ですか』
「何と洗練されておる領域じゃ……!」
流石に領域対策も持ってるか。
俺の領域展開は具現化する際に、1つだけ性質を決めることができる。飲まれた相手が呪力を練れなくなるという性質がデフォになっているが、必殺の領域という判定になるため押し合いに弱い。
必中効果が発動するのであればここで殺しても良かったが、どうやら中和されているみたいだね。そしてこの三体が同時に領域を発動させた場合、恐らく俺は押し負ける。よってこの状況での最善策は1つだ。
「では皆さん、また何処かで会いましょう! さようならー」
「なっ!? 待て!」
呪霊たちと俺の間に板を生成し、その隙に自宅へとつないだポータルに入り込む。
「────うわ!? 礼司! どしたのそんな泥だらけで!」
痛ててて……リビングの天井から落ちるように倒れた俺に駆け寄ってきたのは、恐らく風呂から上がってすぐであろう菜々子だった。
ポータルが閉じてあることを確認した俺は、緊張から解放されたのか力が入らない。
「ちょ!? 礼司……? だ、大丈夫?」
「あ、ごめん……ちょっと疲れたかも」
無理に立ち上がろうとしたが、足がもつれて菜々子に倒れ込んでしまう。
……これ俺が買ってやった高いパジャマか。道理で肌触りが良い。
「……ちょっと汗臭い」
「馬鹿。匂い嗅ぐんじゃねえ。ちょっと五条先生のとこ行ってくるから、朝飯は冷蔵庫入れてるからチンして食べてな」
胸に赤い顔うずめてスースーすんじゃねえよ。俺そんな趣味ねえから。
ったく……まあでも、そんなアホな菜々子を見てたら元気が出てきた。早く寝たいけど報告行かないとな。
「って事で、また明日。早く寝ろよ」
「う、うん。おやすみ、礼司」
こいつ自分が姉っていう自覚無いんじゃねえか? まあいいや。とりあえずポータル開かないと……って、術式焼き切れてるわ。久しく領域展開してないから忘れてた。
漏れ出るため息を抑えようともせず、ソファに倒れ込んで五条先生に電話を掛ける。
『もしもーし! グレートティーチャー五条先生でっす! 礼司から電話って珍しいね。どったの?』
「宿儺の指10本レベルの呪霊三体出現。逃げてきたけど術式焼き切れてる。部屋今すぐ来て」
「『……マジ?』」
そんな片言な状況説明を終えると、少し間をおいて電話口とベランダから二重に声が聞こえて来る。
「いや来るの早えよ」
「そりゃそんな天変地異みたいなこと起きたら飛んでくるでしょ。とりあえず、無事でよかったよマジで」
五条先生がそんなねぎらいの言葉を掛けて来るだなんて、ちょっと感動しちゃうわ。
「……ごめん、ちょっと盛ってる。実際は指6本、10本、12本くらい」
「それでも大概だよ。よく怪我無しで帰ってこれたね」
「別にやろうと思えば祓えたと思うんだけど、領域使わないと行けなかったし、後続が居たら一巻の終わりだったから」
正直実力不足をひしひしと感じる……五条先生なら余裕だっただろうに。ちょっと眠くなって来たな……
「大丈夫だよ。むしろ良くその歳で頑張ったと思うよ? 今日はゆっくり休んで、報告の方は僕がやっとくから」
「撫でんな……ありがとう。おやすみ……」
風呂は明日入ろう。菜々子たちには悪いけど……zzz
「寝んの早……未登録の特級。それもあのレベルの呪霊が3体も……よく頑張ったね。礼司」
「────夏油!? あの小僧の強さは一体どういうことだ!?」
「おや。随分とボロボロだね。君たち3人でも殺せなかったのかい?」
「殺すどころか、あのまま時間をかけていれば祓われていたのは儂らの方じゃ! それに最後の領域に関しても、あれは齢15の小童が出していいものではない! 何者なのだアイツは!」
「一般家庭出身の子供だよ。因みに五条悟は彼より全然強いからね……ただまさかそこまで力を付けていたとはね……いいね。益々欲しくなってきた」
因みに後続を警戒していた礼司君ですが、真人と陀艮程度だったら術式が回復するまで逃げれました