術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが? 作:妄想癖のメアリー
「京都姉妹校交流会1日目、団体戦『チキチキ呪霊討伐猛レース!』指定された区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利となる!」
夜蛾さんが五条先生にアームロックをきめながら試合の説明をしている。五条先生もちゃんと痛そうにしてる辺り、無下限を解いているんだろうか? 解いてなかったとしたら関節技が先生の攻略法になるかも……嫌だな。関節技弱点の最強って。
「勿論妨害行為もアリなわけだが、あくまで君たちは────」
まあ、昔から観戦していた俺はルールを把握してるため、流し聞きしながら周りの生徒たちの様子をうかがった。
「……」
「ん? メカ丸。どうしたの?」
先ほどからメカ丸の様子がおかしい気がする。顔色が悪い……顔色とか分かんねえけど、それでも声色などに現れるものなのだ。
「いいヤ……何でもなイ」
「そう? ならいいんだけど」
開始時刻まで解散となった俺達東京校チームは、少し離れた家屋内でミーティングを行っていた。今頃、京都の皆も同じことをしているだろう。
「あの~これは……見方によってはとてもハードなイジメなのでは……?」
「うるせぇ。しばらくそうしてろ」
「もうちょっと頭は低くして……そう、そんな感じ」
俺と悠仁は一年ズの怒りに触れて折檻されている。悠仁は正座のまま遺影入れるアレを顔にはめられ、俺は美々子と菜々子の2人に、腕輪を壁にはめて土下座を強要されている。最初は甘んじて受けるつもりだったが、実際俺そんな悪いことしたかと聞かれれば否定するけどな。ドッキリとか知らなかったし。
何故か細かい体勢までめちゃくちゃ真面目に要求してくる美々子と、ちょっと顔を赤くしてそっぽを向く菜々子。おい後者、ガチっぽい反応すんじゃねえよ。
「……何してんだよアホ!」
「痛!? 俺じゃなくて2人に言ってよ!」
舌打ちをした真希ちゃんに頭を強く引っ叩かれる。フィジカルギフテッドの本気はマジで響く。
そんなアホなやり取りを終え、話題は作戦会議に移るようだ。
「で、どうするよ。バカ目隠しのせいで人数1人増えたけど」
「そりゃ悠仁次第だな。何ができるんだ?」
上から真希ちゃん、パンダと続く。悠仁は腕を回しながら端的に答えた。
「殴る、蹴る」
「そう言うの間に合ってんだよなぁ……」
まあ、確かに……俺術式使えないし。役割ダダ被りなんよね。しかし、そこで恵が思わぬ援護射撃をしてくれた。
「コイツが死んでる間何してたかは知りませんが、東京校、京都校全員呪力無しで戦ったら、虎杖が勝ちます」
身体能力自体は真希ちゃんより高いからな。呪力無しで50メートル3秒と言われた男は伊達じゃない。
それを聞いた真希ちゃんは、口角を上げて上機嫌に語った。
「……面白ぇ」
交流会スタートまであと1時間、俺も気合入れてかないとな。
『────開始1分前でーす。ではここで、歌姫先生にありがたーい激励の言葉を頂きます』
『はぁ!? え、えーっと』
東京校、京都校それぞれが開始地点についたタイミングで、柱に付けられたスピーカーから声が聞こえて来る。五条先生がまた歌姫さんをイジメてる……やめてくれよ。ストレスに比例して愚痴も多くなるんだから。
しどろもどろになりながらも、激励の言葉を掛ける歌姫さん。頑張れー。
『あー……ある程度のけがは仕方ないですが、その……時々は助け合い的なー『時間でーす』ちょっ、五条! アンタねぇ!』
『それでは、姉妹校交流会……スタート!』
『先輩を敬え!』
……俺はそれでも頑張る歌姫さんが大好きだよ。なるべくお酒の量減らせるように頑張ろうね。
何はともあれ、スタートの合図で皆と一斉に飛び出す。
「ボス呪霊どこにいるかな?」
「放たれたのは両校の中間地点だろうけど、まあジッとはしてないわな」
「例のタイミングで索敵に長けたパンダ班と伏黒班に分かれる。礼司はいつも通り自由にやれ」
上から悠仁、パンダ、真希ちゃんが確認をし、作戦が開始される。
よし、お許しが出たのでそろそろ行くか。まずは出方の確認と……俺は出力100%で地面を踏みしめ、空高く跳躍した。
「────お、ヤッホー桃ちゃん」
「礼司君!? ちょ、メカ丸! 頼んだわよ! 私にこの子の相手は無理!」
「うお! マジか!」
20メートルほどジャンプして、上から確認しようと思ったが、同じ高度を飛行する桃ちゃんと目が合ってしまった。
中々の風速で吹き飛ばされる。空中で踏ん張りが付かない為、甘んじてそのまま落下するしかない……結構本気で打ちやがったな。死なないって信用されてるんだろうけど、なんだかなぁ
まあ……ただ
──────────────
『こちらの負け筋としては、礼司が相手の準一級以上の奴らに囲まれて封殺されるパターンだ』
『準一級?』
『東堂、加茂、メカ丸の3人だな。礼司があいつらと交流深くて助かったぞ』
上から真希ちゃん、悠仁、パンダと続く。交流会が始まる前に作戦を立てようと話し合っているところだ。等級の情報などは、任務の話を聞いたりしていれば自ずと推測できるし、その逆もしかりだ。
『別に3人だけだったら負けはしないだろうけど、メカ丸が連れてきたもう2体が結構厄介でね。葵の術式もあるし、ハメ殺しされる可能性がちょっとある』
正直葵と他2人が完璧なコンビネーションを取れるかと言われれば微妙だが、それでも厄介なものは厄介だ。俺の術式が使えない以上、100%勝てるとは断言できない。殴る蹴る呪力飛ばすぐらいしかできないからね。
『完全近距離特化と、遠距離火力支援型か』
『俺とメカ丸が合同で考案したから、強さはお墨付き。装備がガチのヤツと仮定したら、この場で勝てるのは俺か棘+誰かのどっちかだろうね』
『逆を言えば単体でぶつけたら勝てるんだろ?』
そんな真希ちゃんの好戦的な笑みが向けられる。
『もちろん。葵が離れてくれさえすれば絶対勝てるよ』
『じゃあ東堂の相手は虎杖、お前に任せる。勝たなくていい。出来るだけ粘って時間を潰せ』
厄介な相手は俺と悠仁が引き受けると言う形で結論着いた作戦会議だったが、1つだけ皆に言わないといけないことがある。
『……あと一つ懸念事項があるんだよね────』
──────────────
「っと。上手くやれてるみたいだね。後は……」
音の方向からしてちゃんと葵と悠仁は出会えたようだ。いくら悠仁が強くなったとはいえ、葵とやりあうのは少し分が悪い。一級でも上の方だからな、あいつ。
さて……やっぱりな。予想はできていたが、いざ実際に見るとなると気分の良いものではない。
「やっぱり、
400mほど奥の方に見えるのは、全員で悠仁のことを囲む京都校の皆が居た。もう一度全身に呪力を込める。そして短距離走のスタートのようなポーズを取った俺は、強く地面を蹴り出した。
ドンッという音を立てた瞬間見えたのは、驚いた表情でこちらを見つめる彼らだった。
「悠仁、ここは俺が引き受ける。お前は引き続き葵の相手を頼む」
「嘘!? あの距離を一瞬で!」
「礼司……こいつらやっぱり」
驚いたような桃ちゃんの声を無視し、不安そうに見つめる悠仁に声を掛ける。
「ああ、お前を殺す気だ。さっきも言ったけど、京都の学長の差し金だろうな」
ーーーーその瞬間。手を叩くような音が聞こえて、憲紀君と悠仁の位置が入れ替わった。不味いな、タイミングとしては最悪だ。待機しているメカ丸他2体が合流してくると考えた場合、悠仁が居たとしても無理だ。
逃げの算段を考えていた俺だったが、その場に現れた葵の行動は、予想の斜め上を行くものだった。入れ替わった憲紀君に対して拳を打ち込む葵……え? なんで仲間割れしてるん?
「言ったよな。邪魔をすれば殺すと」
「違うな。お前は指図すれば殺すと言った」
「同じことだ、帰れ」
憲紀君と葵の応報が聞こえて来る。単に戦いを邪魔されたにしては機嫌が悪いな。
……あー、理解った。多分悠仁の女のタイプが葵好みだったんだろうな。そうじゃないとわざわざ庇ったりしないだろうし。
「クックック。それは虎杖次第だ。何せ俺は親友に手加減するような野暮な男じゃないからな。この腑抜け共はお前に任せるぞ礼司」
「……へいへい」
明らかにパシられたけどまあいっか。結果オーライだし。
そう言って葵は悠仁を連れて森の中へと姿を消した。その場残った俺達の間で気まずい沈黙が流れる。
「……まあ、しょうがないとは思うけどさ。俺、チョーっとだけ機嫌悪いよ?」
「……ごめんなさい」
霞ちゃんがめちゃくちゃ申し訳なさそうに目を逸らしている。冗談で言ったつもりだったけど、クッソ空気重いわ。ごめん皆。
流石にこの雰囲気のまま交流会は地獄なので、とりあえず滅茶苦茶やってお茶を濁そうか。
「よし! じゃあこれでお相子にしよう! 本気でやるから、ちゃんと逃げろよー?」
「!? 来るぞ、皆構えろ!」
もう一度全身に呪力を蔓延させた俺を見て、憲紀君が警戒するように呼び掛ける。いや、これで殴ったら死んじゃうって。
俺は拳を構えて────それを地面に向けて放った。地響きと共に、俺を中心として30メートルほど先まで地面が割れ始めた。
「落ちて挟まったら出られなくなるぞ! 皆気を付けろ!」
「礼司君怒りすぎじゃないですかぁぁぁ!」
そんな憲紀君と霞ちゃんの声が聞こえて来る。
皆が蜘蛛の子を散らすように去っていく中、1人……いや、
「やっぱり俺の足止め任された感じ?」
「あア。東堂は制御不能、加茂もお前とは相性が悪いからナ。お前の術式が使えないのは不幸中の幸いといったところダ」
「そんな人を疫病神みたいに扱いやがって……!」
「足止めではなク、倒すつもりで戦うゾ!」
地上に1体、空中に1体それぞれ別タイプのメカ丸が同時に構えを取った。
「望むところだ」
「
空中のメカ丸の背中から、10本の小型ナイフが出現する。別に目新しい技ではない。何せ考案者は俺だからな。逆にその技の厄介さは痛いほどわかる。
『次元剣』と銘打ってはいるが、実際は彼の傀儡躁術で操作している。だから実態はあるし、ナイフ自体もギミックがある普通のナイフだ。
「お前の技を借りるゾ、礼司!」
その声と同時に地上からメカ丸本体、空中からは10本のナイフが同時に襲ってくる。近接とその支援、俺の提案した攻撃方法を忠実に再現してやがる。オートガードや対空手段がない俺にとっては天敵もいい所だ。
しかし俺もただでやられるつもりはない。タイマンでは間違いなく俺に軍配が上がる、そのためメカ丸が避けたいのは俺が『次元剣』を無視して突撃してくること。
「クソッ、ちょっと強すぎねえか! 俺の技!」
と言っても距離を詰めるとナイフの切っ先が割り込んでくるし、距離を取ってそれの対処をしているとメカ丸本体が突っ込んでくる。
先ほどの作戦会議でも言ったが、彼と戦って勝機があるのは俺か棘ともう1人誰かが組まないと無理だ。しかし奇襲要因である棘がここで拘束されると不味いため、俺が倒すしかない。
「それだけお前のアドバイスが効いたと言う事だナ」
「そりゃどうも!」
距離を取り戦況を見直す時間すら与えてくれない、後ろから飛んでくるナイフの音を聞いて避ける。木に突き刺さり、動かなくなったと思えばまた他がすぐに飛んでくる……ジリ貧だな。呪力食うからあんま使いたくなかったけど、こればっかりはしょうがない。
俺は右手に呪力を込め、それを圧縮して発射した。勢い良く射出された呪力の塊は、空中に佇んでいたメカ丸の肩口を抉る。
「何!? ッチ、術式が無くてもここまでの遠距離攻撃ヲ!」
「呪力食うからあんま使いたくねえけどな!」
さて、俺の読みが合っていればメカ丸はここで勝負を決めてくるはずだ。ロングレンジの撃ち合いが出来ると判明した以上、長距離戦になれば形勢は俺に傾く。何せメカ丸の通常火力じゃ俺にダメージが通らないからな。
「
「勝負を焦ったんじゃないか! タイマンで勝てるほどぬるくなった覚えはねえぞ!」
メカ丸の左手を覆う様に4本の刃が出てくる。『
「あア。だから
「コイツ!? 離せ!」
メカ丸の『
「お前はこれを受けても死なんと判断しタ。
「クソッ!」
辺り一面を焦土にするほどの砲撃が飛んでくる。そして、眩い光が俺を巻き込み、轟音を立てて木々を飲み込んでいった。
「……さテ、礼司の奴を探すカ。あいつはしぶといからナ」
「誰がゴキブリみたいだって!?」
「なッ!?」
眼下にいるメカ丸に叫ぶ。傷1つない俺に驚いているだろう。しかしそのタネは単純、直前でぶっ壊してジャンプし、上に逃げたのだ。本当は横に逃げたかったが、効果範囲が広すぎて叶わなかった為仕方なくだ。
まさか上からの攻撃は予測してないだろう。落下の勢いで、このまま畳みかける!
「……やっぱりナ。保険を用意しておいて助かっタ……
────次の瞬間、落下する俺の真下には多数のナイフが……
「────ハ?」
「来ないんだよなぁ! 自分の術式でぶっ壊したら世話ないんだぜ! 俺の勝ちだ!」
そして落下の勢いのまま打撃を加える。メカ丸は地面に倒れ、そこから動くことは無かった。
「ふー、危なかった。お前強くなりすぎだろ、マジで」
「何故……俺の『次元剣』が動かなかっタ……?」
地面に倒れた状態で、メカ丸は理解できないと言ったように呟いた。
「お前が自分で焼き払ったんだよ、俺が避けることくらい想定してると、お前を信頼したのが俺の勝因だね」
「……なるほどナ。攻撃範囲が仇となったカ」
そう、仕掛けは簡単だ。俺が次元剣を避けるふりをして、小さい範囲の木の幹に全部突き刺さるように誘導していたのだ。
そして、その方向を向きながら戦っていた。打つなら俺の背後からだろうしな。
「強いよ、メカ丸は。もう1体がこっち来てたら俺も危なかった。一級でも十分通用すると思う」
ぶっちゃけ日本全土の術式範囲は特級レベルでもおかしくないと思うけど…天与呪縛で得た力だからな。ただ、たった2機で俺を追い詰めたその手腕は間違いなくこいつの努力だ。すげぇよ、ホントに。
「そう……カ」
どこか満足げにそう呟いた後、メカ丸は完全に動かなくなった。
「さーて。皆と合流するかー」
そう呟いた瞬間、俺を中心として広い範囲に高密度の呪力が蔓延する。
「────その必要は無い……お前は、ここで死ぬんだからな」
────瞬間、轟音と共に辺り一面が吹き飛んだ。
難産だった…