術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが?   作:妄想癖のメアリー

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原作に入ります!


東京都立呪術高等専門学校
呪いの子


 

 

 

 記録────2016年11月東京

 同級生による執拗な嫌がらせが誘因となり

 首謀者含む4名の男子生徒が重傷を負う

 

 

 

 

 

「完全秘匿での死刑執行? あり得ないでしょ」

 

『しかし本人が了承した』

 

「未成年……16歳の子供ですよ。逆に何人呪い殺されるか分かりません」

 

『……ではやはり』

 

「ええ

 

 

 ────乙骨憂太は、呪術高専で預かります」

 

 

 

 

 

 ────5月。春もぼちぼち終わりを迎え、日差しが強まり気温が高くなる季節だ。

 そんな中、晴れた空の下で3人……いや、2人と1匹は歩いていた。

 

「聞いたか? 今日来る転校生。同級生4人をロッカーに詰めたんだと」

 

「殺したの?」

 

「ツナマヨ」

 

 ここは東京都立呪術高等専門学校。伝統的な建築法で建てられた施設を歩く彼らは、この学校の1年生だ。

 学生らしく、どうやら今日来る転校生の話に花を咲かせているようだ。

 

「いや、重傷らしい」

 

「ふぅん。ま、生意気ならシメるまでよ」

 

「おかか」

 

 ……の割にはかなり物騒な話をしているが、ここは普通の学校ではない。

 日本にたった2校しかない、呪術を学び、呪いを祓うための学校だ。

 

 

 

 ────呪い。呪霊と呼ばれるソレは、恨みや後悔、恥辱など、人間の体から流れた負の感情が具現化し、意思を持った存在。

 ごく一部の上澄みを除き、コミュニケーションを取ることはできず、容赦なく人間を襲う。

 

 日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超えると言われており、その()()()()()()()()()()である。

 

 彼らはそんな呪いから人々を守る『呪術師』の卵なのだ。

 

 

 

「お! 居たいた。ヤッホーみんなー」

 

 突如としてポータルが開く。なんとも奇妙な光景だ。

 そこから上半身を出して現れたこの男、天鳳礼司も例外ではない。

 

「礼司……お前、また学校サボっただろ」

 

「ダメだぞ礼司。お前世間では一応()()()じゃないか」

 

「しゃけ」

 

 そう。彼が五条悟に拾われて5年。礼司は中学3年生になっていた。

 150ちょっとしかなかった身長も、170センチ近くになっている。因みにまだまだ伸び盛りらしい。

 

「えー。皆だけズルいよ。俺も例の転校生の顔見たいし」

 

「後からいくらでも見れるだろ……」

 

 そんなため息が聞こえてくるが、どうやらそれだけが理由じゃないようで、礼司はその人好きのしそうな笑みを落として語る。

 

「そういうわけにも行かないんだよね。五条先生に、『もし何かあったらヨロシクねー』って言われちゃったし」

 

「……お前が?」

 

「よっと」と言ってポータルから出て来る礼司。

 しかしそんな気軽そうな態度の彼とは裏腹に、その場には重い空気が漂っていた。

 

「お前と悟が2人で見張るって、どんなヤベエ奴なんだよそいつ……」

 

「おかか……」

 

 そう。天鳳礼司と彼らの担任、五条悟が2人揃うという状況のヤバさは、どんな術師でも分かることらしい。

 

「ま、ダイジョブだよ。いざとなったら俺が皆を守るから」

 

 そう胸を張った礼司だったが、先輩的にはあんまりよろしい発言じゃなかったようだ。

 

「バカ言うなよ。自分の身ぐらい自分で守る。先輩の前でイキってんじゃねえ」

 

「そうだぞ礼司。気張りすぎんなよ。面倒ごとは悟にやらせとけばいい」

 

「しゃけ」

 

「ええ……ちょっとカッコつけるぐらい良くない?」

 

「良くない」

 

 

 

 

 

「転校生を紹介しやす!! テンション上げてみんな!!」

 

「いよっしゃー!」

 

「「「……」」」

 

 突然扉を開けて入ってきたのは、彼らの担任の五条悟だ。

 しかし、その場には白けた雰囲気が漂っている。

 

「上げてよ」

 

「無理して合わせんなよ礼司。浮いてんぞ……随分尖った奴らしいじゃん。そんな奴の為に空気作りなんてごめんだね」

 

「しゃけ」

 

 椅子に座ったまま冷たく言い放つ生徒達に、ため息を吐く五条。

 因みに礼司の席は無いので、自分の術式で宙に座っている。傍から見たら空気椅子だ。

 

「ま、いっか。じゃあ入っといでー!」

 

(こりゃあ説明なしか。五条先生も意地悪だなホント)

 

 扉の向こうにいる転校生に言っただろう。1枚挟んでいても濃密に感じる()()()()に、自分が呼ばれた理由が何となく分かった礼司。

 

 

 

『ガラッ』と音が鳴り扉が開かれる。3人も異常な事態に気が付いたようだ。

 

「────は?」

 

「えっと……乙骨憂太です。よろしくお願いしま『ガンッ!』」

 

 自己紹介をする乙骨だったが、その言葉は自身の真横に突き刺さった薙刀によって止められる。

 

「これ、なんかの試験? おい……

 

 

 

 ────オマエ、呪われてるぞ」

 

 一瞬にして3人は戦闘態勢に入る。自分より1個下とは思えないその圧力に、乙骨は冷や汗をかきながら五条に助けを求めている。

 

「ここは呪いを学ぶ場だ。呪われてる奴がくる所じゃねーよ」

 

 険悪なムードが立っているが、礼司はその場から動いていなかった。

 もっとも、()()()()()()()()()()()()()にはしていたが。

 

 

 

「……日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。そのほとんどが、人の肉体から出た負の感情。『呪い』の被害だ。中には呪詛師による悪質な事案もあるけどね」

 

「あー! 僕の出番奪わないでよ!」

 

「あんたが教えてなかったからだろうが! バカ!」

 

(なんで教えてくれないの!?)(事前に教えなかったのかよ!?)

 

 そんな声なき叫びが聞こえるが、礼司は目の前の可哀そうな生徒に続けて語る。

 

「呪いに対抗できるのは、同じ呪いだけ。ここは呪いを祓う呪いを学ぶ。都立呪術高等専門学校。今日はこれだけ覚えて帰ってね?」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 そう語る乙骨から、苦労人の気質を感じた礼司。この2人は多分仲良くなれそうだ。

 

「あ、早く離れた方がいいよ」

 

「?」

 

 五条の言葉に疑問符を浮かべる3人。しかし、突如として()()は現れた。

 

「待って! 里香ちゃん!」

 

 

 

『ゆう゛だを────虐めるなぁぁぁあ!!』

 

「あーあ。言わんこっちゃない」

 

 

 

 

 

「ってな感じで。彼のことが大好きな里香ちゃんに呪われてる。乙骨憂太君でーす!」

 

「皆よろしく!」と明るく話す五条だったが、3人はどうやらそんなテンションじゃないらしい。

 

「お前何で知ってて何も言わなかったんだよ」

 

「え。真希ちゃん言ってたじゃん『自分の身は自分で守れる』って」

 

「……ッチ。可愛げのない奴。あと、真希ちゃんはやめろ」

 

 そんなやり取りを小声でしているうちに、五条による紹介は終わったようだ。

 

「コイツら反抗期だから、僕がちゃちゃっと紹介するね」

 

「悪いのはお前だよ」

 

 そんな皆を代表した礼司のぼやきも無視される。

 そして流れは同級生の紹介へと変わる。

 

「呪具使い、禪院真希。呪いを祓える特別な武具を扱うよ」

 

「……礼司は後でシメる」

 

 そう紹介されたが、真希はあまり乙骨に興味がないようだ。

 五条は咎めることなく次の生徒の紹介をする。

 

「呪言師、狗巻棘。おにぎりの具しか語彙がないから、会話頑張ってね」

 

「こんぶ」

 

 左手を上げて、一言語る狗巻。こちらも多くは語らない。

 そして最後は、今乙骨が一番説明を欲しがっているであろう人物、いや動物の紹介に入る。

 

「パンダ」

 

「パンダだ。よろしく頼む」

 

「もっとなんか言う事あるだろ……」

 

 乙骨の心情を、礼司は早くも理解しているようだ。そのコミュ力は伊達じゃない。

 

「とまあ、1年はそんな感じだね」

 

「……あの。そっちの彼は?」

 

 乙骨の視線が向いたのは、先ほどから空中に座っている礼司だった。

 この中で一番仲良くなれそうな生徒の説明がないと訴える乙骨だが、その説明は本人の口から語られる。

 

「俺の名前は天鳳礼司。紹介が無かったのは、俺が憂太君より1個下だからかな」

 

「(名前呼び……)え。って事は」

 

 この場において、一番大人だった彼の、まさかのカミングアウトに驚く乙骨。

 

「うん。俺中三だから後輩なんだ。って事でよろしく!」

 

「う……うん。よろしく」

 

 礼司が出した右手を握り返す乙骨。どうして彼が同級生じゃないのかと、自分の運命を呪ったらしい。

 

 

 

「さあこれで一年も4人になったね。午後の実習は、2-2のペアでやるよ。

 

 棘・パンダペアと、真希・憂太ペア「げっ」。礼司はそれまで適当に時間潰してて」

 

「ん、オッケー。伊地知さんの仕事手伝ってくるわ」

 

「(げって言った)よ……よろしくお願いします」

 

 幸先が不安になりつつも挨拶をする乙骨。しかし、その返事は良いものではなかった。

 

「お前、イジメられてたろ」

 

「……! そ、それは」

 

 初対面とは思えない発言だが、何も間違っていないため言い返せない乙骨。

 

「図星か。分かるわ、私でもイジメる」

 

 その態度が気に食わなかったのだろう。真希は気を遣うことなく言い放つ。

 

「呪いのせいか? 『善人です』ってセルフプロデュースが顔に出てるぞ。気持ち悪い何で守られてる癖に被害者ヅラしてんだよ。何の目的もなく、ずっと受け身で生きてきたんだろ

 

 ────そんなんでやっていけるほど、呪術高専は甘くねえぞ」

 

「真希。それくらいにしろ!」

 

「おかか!」

 

 そんな言葉のナイフを止めたのは、同じく同級生であるパンダ。狗巻も非難するような口ぶりで息を荒くする。

 

「わーったよ。うるせえな」

 

 言い過ぎたという自覚はあるのか、めんどくさそうに頭をポリポリとかく真希。

 乙骨の心情を理解してか、彼の肩に前足をポンと置いて謝るパンダ。

 

「すまんな。あいつは少々他人を理解した気になる所がある」

 

「昔はもっと素直で可愛かったんだけどね……」

 

「そうなんだ……ってうわぁ!?」

 

 隣から聞こえてきた礼司の声に視線を向ける乙骨だが、驚いたように腰を抜かしてしまう。

 そこにはポータルから上半身だけ出して話す礼司がいた。まるでテレビから出て来る貞子のようだ。

 

「おい礼司! てめえふざけた事言ってんじゃねえぞ!」

 

「やっべ怒ってる。じゃあ憂太君、あとはよろしくねー」

 

 そう言ってどこかへ消えていった礼司。この状態の真希を任せるという、無害そうに見えて鬼畜な男だ。

 

「おい待ちやがれ! ……っち。クソガキが」

 

 怒ったようにずんずんと歩き出す真希。

 

「あーあ。礼司の奴面倒な事しちゃって。大丈夫か? うまくやっていけそうか?」

 

「……何とか頑張ってみるよ」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫なの? あの2人。めちゃくちゃ相性悪そうだけど」

 

「んー。まっ、死にはしないでしょ」

 

 帳を下ろし終えた五条を出迎えたのは、実習についてきた礼司だった。

 午前中の2人のやり取りを思い出し不安になる彼だったが、五条は楽観的だ。

 

「死にはしないって……えっと、誰だっけ。里香ちゃんか。あいつが顕現したらどうすんの?」

 

 そう。礼司が呼び出されたのは他でもなく、『祈本里香と五条悟が戦う際、周りの被害を1人で食い止めるため』だ。

 五条の本気の戦いの余波を受け止められる術師は、彼以外居ないのだ。

 

「それはそれで良し。祈本里香の全容を把握できるからね」

 

「そうなったら俺が大変なんだけど」

 

 余りに無責任な五条の発言に、ジト目を向ける礼司。

『無理』ではなく『大変』と言っている辺り、仕事はきっちりと果すつもりのようだ。

 

「────まあ大丈夫でしょ。僕と礼司が居れば」

 

「……さいですか」

 

 礼司にとって、この発言は弱点だ。どうしようもなく、心が温まる。

 なんだかんだ言って、五条と礼司はお互いのことを信頼し合っていた。

 

 そっぽを向いて呟く礼司の頭をくしゃくしゃと撫でる五条。

 礼司が止めるように言おうとした時、2人は余りにも膨大な呪力を感じ取った。

 

「やっぱ出てきちまったじゃねえかよ!?」

 

「凄まじいね。これが特級過呪怨霊──祈本里香の全容か」

 

「女は怖いねえ」と笑う五条。礼司は印を結び、術式を発動させた後指示を仰ぐ。

 

「で。どうすんのこれ」

 

「とりあえず放置で良いよ。ポータル張ってくれた?」

 

「もうとっくに張ってるよ」

 

「さすが」

 

 それを聞いて、警戒を解く五条。礼司も大変だとは言ったがその様子は見られない。

 

「……にしてもエッグい呪力だな。こりゃあ特級もうなずけるわ」

 

「来年になれば礼司も特級だから、僕達だけで3人だね。上層部はクソだけど、こりゃあちょっとかわいそうだ」

 

「ンなこと言ってないで、ほら。そろそろ来るよ」

 

 そうこう言っている間に帳が落ちる。

 

 

 

 校門で待っていた2人が見たのは、2人の子供と、真希を背負った乙骨だった。

 

「お、憂太君意外と根性あるじゃん。ちょっと見直した」

 

「あはは……ちょっと、疲れたな」

 

 そんなねぎらいの言葉を掛ける礼司に、苦笑いで返す乙骨。しかし次の瞬間倒れてしまう。どうやら疲労により気絶してしまったようだ。

 

「おかえり。頑張ったね」

 

 

 

 

 

 ────乙骨憂太の初任務は、犠牲者0人という結果で幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 




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