術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが?   作:妄想癖のメアリー

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苦労人

 

 

 

『────特級過呪怨霊 祈本里香。422秒の完全顕現』

 

 中心に吊るされている灯篭以外、一切の光源がない部屋に老人の声が響く。

 

『このような事態を防ぐために、乙骨を君に預けたのだ。申し開きの余地はないぞ。五条悟』

 

 どうやらその声は、部屋の中心に立っている五条に向けられたものらしい。

 明かりの下に立つ五条は、頭をポリポリと掻いている。

 

「まあ、元々言い訳なんてするつもりないですし」

 

『何をふざけている! 祈本里香が暴走していれば、町1つ消えていたかもしれんのだぞ!』

 

 そんな五条のふざけた態度に、声を荒げる老人。

 そう。ここにいる者たちは皆、呪術会において一定以上の影響力を持つ者達ばかりなのだ。

 

「だから礼司を連れて行ったんですよ。彼の実力位分かるでしょう? 被害なんて出ませんよ」

 

『そういう問題ではない! 第一高専にすら所属していない一般人など儂は認め「あのね」……』

 

 一般家庭の出自で、特級相当の実力を持つ礼司は、どうやら彼らには相当嫌われているようだ。

 最も、ここまで嫌われているのは『五条悟の弟子』という理由がかなり大きいが。

 

「私たちがあの呪いについて言えることは1つだけ。『出自不明(わからない)』呪術師の家系でもない女児の呪いが、どうしてあそこまで莫大なものになったのか」

 

『……』

 

「理解できないモノをコントロールすることはできません。礼司が居れば万一のリスクも防げるんですし、暫く放っておいてくださいよ」

 

『……乙骨の秘匿死刑は、()()だと言うことを忘れるな』

 

「────そうなれば、私が乙骨側につくことも忘れずに」

 

 

 

 

 

「ったく。野暮な年寄り共。ああはなりたくないね、ホント」

 

 付けていたサングラスを外し、いつもの包帯に付け替える五条。

 

「若人から青春を取り上げるなんて、許されていないんだよ

 

 ────何人たりともね」

 

 

 

 

 

「やあやあ皆。調子はどうだい?」

 

「あっ、えーと……グァッ!?」

 

 何か返すつもりだった乙骨だが、その声は『パコンッ』という小気味良い音によってかき消される。

 

「よそ見してんじゃねえよ。さっさと構えろハゲ」

 

「はい……」

 

 乙骨を叩いたのは真希。どうやら稽古中だったようだ。

 

「私から一本とるんだろ?」

 

 そう挑発して竹刀を構える真希。意外と様になっている。

 

「はい!」

 

 乙骨も、以前の実習から気持ちを切り替えたのか、以前のような気弱な彼はもういない。

 

 

 

 結局乙骨は一撃も与えられず、額に一撃を貰ってしまった。

 

「いてて……最後のいりました?」

 

 そう非難するように言う乙骨だが、真希はまったく気にしていない。

 

「甘えんな。常に実戦のつもりでやれ。罰があるのと無いとじゃ、成長速度がダンチだからな」

 

「……! もう一本お願いします!」

 

 

 

「────憂太が高専に来て、もう三か月か……かなり動けるようになったな」

 

「しゃけ」

 

「性格も前向きになったよねえ」

 

 稽古を続ける2人を見ながら、しみじみと語るパンダ。

 この三か月という短い間で、確かに乙骨は成長しているようだ。

 

「そう言えば礼司はどうしたんだ? 最近来てないけど。あいつも憂太に稽古つけてたよな」

 

「あいついっつも学校サボってこっち来る癖に」とぼやくパンダ。

 確かにここ1週間ほどは一回も顔を見せていない。

 

「あーどうしたんだろうね。ここ2年くらいはほとんど僕の仕事やってもらってるから、長期の任務でもしてるんじゃない?」

 

「悟の任務殆どって、礼司のヤツも大変だな。ちゃんと金はやってるのか?」

 

「おかか……」

 

 呆れたように語る2人。その代わり五条が教員として皆を見る時間が増えた為、あまり強くは言えないようだが。

 

「もちろん。この前預金残高が10桁行ったーって喜んでたよ。冥さんに投資について色々教えてもらってるらしいし、金なんか使わないのによくやるよ」

 

「……今度大量に高級カルパス買ってもらお」

 

「しゃけ」

 

 年下に集る先輩2人。先輩としての威厳など、食の前には無に帰すようだ。

 

 

 

「────真希さんって、礼司君とどんな関係なの?」

 

 そんなやり取りが続けられる中、休憩中の乙骨と真希は、共通の友人について話し込んでいた。

 

「……腐れ縁みたいなもんだよ」

 

「腐れ縁……?」

 

 何とも絶妙な表現だったため、乙骨はよく分からなかったようだ。

 

「それ、礼司が聞いたら悲しむぞ」「しゃけ」

 

 いつの間にかこちらを向いていた1人と一匹がヤジを飛ばす。

 

「うるせぇ! 外野は黙ってろ……ったく。じゃあ私の番。お前はあいつのことどう思ってんだ?」

 

 質問の対象が入れ替わる。

 

「どう……って。礼司君には呪力の使い方とか教えてもらってるから、凄いありがたいなーって。戦ってるとこ見た事無いから、強さとかは分かんないけど」

 

 そう。放課後など時間のある時に、乙骨は礼司に呪力操作について教えてもらっているのだ。

 本人が「俺、五条先生の次に呪力操作上手いから、マジで任せといて!」と言っていたため、弱くはないだろうと辺りをつける乙骨。

 

「まあ。一見すりゃお調子者のクソガキだからな。そう思うのもしょうがねえか」

 

「……言いすぎじゃない?」

 

「あのバカにはこれくらいでいいんだよ」と不機嫌に石を蹴り飛ばす真希。仲が良いのか悪いのか分からなかったが、あまり触れない方が身のためだろう。

 

「だが、少し勘違いしているようだから言っとく。あいつが呪術界でなんて呼ばれてるか知ってるか?」

 

「……?」

 

 そんな話は一度も聞いたことが無いため、見当もつかないようだ。

 

「『呪術界一の天才』とか『次代の最強』だよ。チンケな二つ名だよな」

 

「そんな凄い人なの!?」

 

 あまりのネームバリューに驚く乙骨。普段の印象からは考えられない。

 

「ああ。普段の態度からは分かんねえだろうけどな……お前は、あいつが呪術師になったきっかけについて聞いてるか?」

 

 話は打って変わって礼司の過去に移る。礼司自身から経歴については教えてもらっていたため、特に気にせず話す乙骨。

 

「うん。少しだけなら……親が呪霊に……」

 

 最後まで言わない辺り、気遣いの出来る男だ。

 

「ああ。あいつが7歳の時に親が呪霊に殺されて、それから3年間。たった1人で呪霊を祓い続け、悟にスカウトされた」

 

「そんな……」

 

 聞いていた話以上の壮絶な過去に、乙骨は言葉が出ないようだ。

 

「お前も小さい頃から()()()()()()? だからあいつはお前を気にかけてんだよ。本来なら、バカ目隠しも礼司も、私らなんかに構ってていい人材じゃねえんだよ」

 

 自虐的に語る真希。しかし間違ったことは何も言っていない。

 

「……僕より2つも小さいのに。凄い子なんだね」

 

「ククク。だろ? そんな礼司がお前のこと気にかけてんだ。手抜いたりしたらただじゃ置かねえからな?」

 

「う、うん。勿論頑張るよ」

 

 そう決意表明した乙骨に。真希は先ほどとは打って変わって上機嫌に笑っている。

 

「やっぱ真希って、礼司のこと大好きだよな」「しゃけ」「昔から人たらしだったからねー。礼司は」

 

「そうなの真希さん? ……って痛い痛い!」

 

「うるせぇ! 殺すぞテメェら!」

 

 

 

 

 

 

 

「よし。これで任務完了っと」

 

 目の前で消えていく呪霊の影を見て、安心したように呟いた礼司。

 

「ったく。最近はホントに特級相当ばっかだな。階級新たに制定した方がいいんじゃねえのか?」

 

 帳を潜り抜け、現場を後にする礼司。

 

「お疲れ様です。礼司君」

 

「お疲れー伊地知さん。報告書書くからタブレット貸して」

 

 外の待っていたのはいつもお馴染みの伊地知である。

 彼の運転する車に乗り込み、受け取ったタブレットで報告書を書く。緊急の任務以外は、基本的に術式を温存しているのだ。

 

「いつもすみませんね。本当は五条さんがやる仕事なのに」

 

「いいっていいって。お金も出してもらってるし、助かってるのは俺だからね。お札も5枚まで使えるようになったとはいえ、いざという時に温存したいし」

 

 黒閃を経験したことにより、呪力量と効率が格段に上がった礼司は格段に成長していた。

 領域持ちの特級ですら危なげなく倒すその姿は、『次代の最強』と呼ぶにふさわしいだろう。

 

「それで。予定よりかなり早く任務を終えましたが、これからどうなさいますか?」

 

 往復の移動に2日、調査に2日、祓うのに1日の計5日間の任務だったが、行きと調査の計3日を省いたため、次の任務までかなり時間が余っている。

 こういう時礼司は、基本的には現地で旅行をして時間を潰す。

 

「うーん。大阪か……そうだ! 久しぶりに()()()に顔出そう。伊地知さん、()()まで車出せる?」

 

 その言葉でどこに行くのかを何となく理解した伊地知。4年間一緒に仕事をしてきた仲は伊達じゃない。

 

「分かりました。まだ朝早いので、お土産を見てから行ってはどうでしょうか?」

 

「ナイスアイデア! よしじゃあ先そっち行っちゃおう。まずはここかな……」

 

 半年ぶりの友人に会いに行けるからか、楽しそうにはしゃぐ礼司。

 最強だの何だの言われても、実際は15の子供なのだ。

 

 

 

 

 

 ────炎天下の中、グラウンドで数人の若い男女が組み手を行っている。8月の真っ昼間に、外で体を動かすのはさぞかし大変だろう。

 それを近くで見ていた女性が、手をパンと叩いた。

 

「はい! 今日の授業はおしまい! 任務もないし、今日はみんな自由にしてていいわよー」

 

 その声をきっかけに組み手を終える。どうやら彼らはどこかの学生で、女性は教師のようだ。

 

 

 

 そう。ここは呪術高専、2つしかないうちの()()()である。

 彼らも乙骨たちと同じくして、呪術師の卵なのだ。

 

「はあー……疲れたー。慣れてきたとはいえ、やっぱりキツイよ……最近ずっと暑いし」

 

 その中の一人、特徴的な青い前髪を持つ生徒が呟いた。その額には大粒の汗が流れている。

 彼女の名前は三輪霞。刀を使う術師だ。

 

『運動した後は水分を取らないと熱中症になるゾ。この気温なら猶更ダ』

 

 そんな地べたに座り込む三輪に、水を渡す一人の生徒? が居た。

 

「あ。ありがとうございます。メカ丸」

 

 そう。彼の名は究極(アルティメット)メカ丸。名前の通り、ロボットのような見た目をしている。

 実際は遠くで機体を操っている術師が居るのだが、彼の紹介は後に回そう。

 

 

 

「やっほー皆! 元気にしてた?」

 

 それぞれが各々の時間を過ごそうとしたタイミングで、グラウンドの端から声が聞こえてくる。

 

「あら? 久しぶりじゃない。礼司君」

 

「おっす真依ちゃん。髪型変えた? 似合ってるよ」

 

 歩いてきた礼司に、いの一番に声を掛けたのは禪院真依。御三家である禪院家出身で()()()()である。

 それから続々と顔なじみの面子が集まってくる。

 

「半年ぶりくらい? 背伸びたね。礼司君」

 

「まだまだ伸び盛りだよ。桃ちゃん」

 

 その次に声を掛けたのは、箒を持った特徴的な髪型の生徒。西宮桃である。

 自身の背と礼司の背を、手をピンと張って比べる彼女に微笑ましさを感じた礼司。しかし、いつもいるはずの生徒が居ない事に気が付いたようだ。

 

「あれ。葵と憲紀君は?」

 

『その2人は任務で出払っていル。今日は任務帰りカ? 礼司』

 

「お! メカ丸。調子どう? 俺特製の結界は効くだろー?」

 

『ああ。おかげさまで最近は痛みが少ない。いつもすまないナ』

 

 あまり普段から関わりのない京都校の面々だが、姿が見えた瞬間人が集まる辺り、友好的な関係を築けているようだ。

 そして礼司の視線は、へとへとになりながら此方へ歩いてくる三輪に移る。

 

「みんな~どこへ行くんですか……って! あなたは礼司君じゃないですか!」

 

「あれ?会った事あるっけ俺ら?」

 

 そう。最近一般家庭からスカウトされた生徒と聞いていたが、どうやら彼女は礼司のことを知っているようだ。

 

「当たり前じゃないですか!? あの五条悟唯一の弟子で『次代の最強』君ですよ! サイン貰ってもいいですか!?」

 

『三輪。礼司が困っている。今はいったん落ち着ケ』

 

 あんなに疲労困憊といった様子だったのに、一瞬にして変貌した彼女に驚く礼司。

 メカ丸の助けに感謝しつつ、しっかりと自己紹介をする。

 

「あはは……サインなら後で書いてあげるから。知ってると思うけど、俺の名前は天鳳礼司。今中3だから後輩になるのかな? よろしくね」

 

「み、三輪霞です! よ、よろしくお願いします! (握手しちゃったー!)」

 

 差し出された右手をぶんぶんと振る三輪。今までに無かった接され方なので、ペースが崩されて困惑する礼司であった。

 

「歌姫さんは? 今日は居ないの?」

 

「先生ならさっき戻って行ったわよ。桃が呼びに行ったからもうすぐ来るんじゃない?」

 

「わざわざ暑い中行かなくてもいいのに……」

 

 そうぼやく礼司だったが、彼が来たことを黙っていたら後で怒られるので呼びに行かない選択肢はないのだ。

 

「そうは言うけど、あなた半年も放置したじゃない。()()()()()んじゃない? いろいろと」

 

「あー……」

 

 これから起きるであろう展開に、苦笑いを浮かべる礼司。何に対してかはすぐわかるだろう。

 

 

 

「────礼司くーん!」

 

「ほら来た」

 

 物凄い勢いで飛んでくるのは、彼ら京都校の担任の庵歌姫である。その勢いのまま礼司に飛びつくと、犬が愛でられるかのように顔をうずめる。

 

「っとと、お久しぶりです。歌姫さん。任務後で汗かいてるので、抱き着くのは勘弁してくれませんか?」

 

 30近い女が半分ほどの年の男子に抱き着くという犯罪的な構図に、呆れたようにため息を吐く京都校の生徒達。

 しかし、彼女と礼司の関係性は昔からこうなのだ。主な原因は彼らの共通の知り合い、五条にあるのだが。

 

「全然気にしないわよ! 前より大分大きくなったんじゃない? 昔見た時は私の肩くらいだったのに。子供の成長って早いのねー」

 

「親戚のおばさんかっての」

 

「え? ……え? どういうご関係ですか?」

 

 呆れたように呟く真依に、初めて見たのか三輪はかなり困惑している。

 

「はあ……はあ。ホント早いんだから。見失ったと思ったらもういるし」

 

「……これ。どういう状況ですか?」

 

 汗をかきながら帰ってくる西宮に、状況の説明を求める三輪。

 息を整えた西宮は、可哀そうなものを見るように見つめながら説明を始めた。

 

「礼司君の師匠が五条悟って事は知ってる?」

 

「はい! もちろんです!」

 

「で、歌姫先生は五条悟に滅茶苦茶いじめられてるの。先輩なのに」

 

「先輩なのに……」

 

 生徒たちの目があるにも関わらず礼司に抱き着く歌姫。

 

(確かにこれじゃあ先輩の威厳なんてないようなもんだよね……)

 

「で。礼司君は呪術師にしては異常なくらい聞き上手でコミュ力があるの。酒に酔った歌姫先生の愚痴を完璧に聞けるくらい」

 

「あー……」

 

 何となく事のいきさつを理解できたらしい。

 尊敬する担任の残念な一面を発見してしまい、微妙な顔をする三輪であった。

 

 

 

「────さあ! 今日は飲むわよー!」

 

「……毎回師匠がすみませんね。お疲れ様です。歌姫さん」

 

 

 

((((多分君は悪くないと思う))))

 

 

 

 

 

 ────そんなことを思う4人であった。

 

 

 




歌姫さんは酒癖悪くあって欲しい。

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