術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが?   作:妄想癖のメアリー

9 / 24
最悪の呪詛師

 

 

 

「申し訳ございません」

 

 高専の廊下で謝罪をするのは伊地知。その内容は、先日の任務で発生した、想定外のトラブルについてだった。

 

「何者かが、私の帳の上から二重に帳を下ろしていました。加えて予定にない準一級レベルの呪いの発生」

 

 当時の状況を思い出したのか、顔を青ざめる伊地知。額には大粒の汗が流れている。

 

「すべては私の不徳の致すところ。何なりと処分を「いや、いい。相手が悪すぎた」……と、申しますと……犯人に心当たりが?」

 

 伊地知の言葉を遮ったのは五条。壁にもたれかかりながら何かを考えている。

 

 

 

「────夏油傑。4人の特級が1人、百を超える一般人を呪殺し呪術高専を追放された。最悪の呪詛師だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 場面は打って変わって10月。気温が低くなり、長袖の服が恋しくなるような木枯らしが吹く空の下、任務を終えた礼司は1人歩いていた。

 その独り言は、先日五条から連絡があった、『夏油傑による宣戦布告』についてだ。

 

「んー。百鬼夜行か……千の呪霊を放つとか言ってたけど、一体何が目的なんだ?」

 

 そうぼやきながら首をかしげる礼司。夏油の大義を含めて考えるが、いまいちピンと来ていない様子だ。

 そんな彼の頭上から、決して少なくない量の呪力が流れてきた。

 

 

 

 

 

「────そんなに気になるなら教えてあげようじゃないか」

 

 そう1人ぼやく礼司に、話しかけた人物が居た。

 その聞き覚えのある声を聞いて、あからさまに嫌そうな顔をする礼司。

 

()()()……先日は五条先生が世話になったって聞いたよ」

 

「4年ぶりかな? 礼司君。大きくなったね」

 

「お前に言われても嬉しくねえっての……」

 

 そんなやり取りをする2人だが、夏油が乗ってきたペリカンのような呪霊から、背の高い黒人の男性が降りて来る。

 

「夏油。コノ小サナ子供ガ、お前ガ言ッテイタ礼司ナノカ?」

 

 想像していた人物像とはだいぶ異なったのだろう。確認をするように尋ねる男。

 

「紹介するよ。彼はミゲル。僕の大義を手伝ってもらってるんだ。これから仲良くすると思うから、仲良くしてやってくれ」

 

「ヨロシク。ソンナニ上手ク事ガ運ブトハ思エンガナ」

 

「ああ。そっちのミゲルさんの言う通りだ。お前の仲間という事なら、仲良くする気は微塵もない」

 

 そう言って何時でも術式を発動できるよう、片手で掌印を結ぶ礼司。

 

「それもそっか。じゃああの時のリベンジマッチとしよう。ミゲル。あの縄も使うんだ」

 

「……全ク。五条用ニ、少シデモ多ク取ッテオキタカッタ」

 

 黒い縄を取り出すミゲル。何とも言えない悪い予感を感じ取った礼司は、情報を集める事に専念するようだ。

 

「一対二かよ。特級術師が呆れたもんだな?」

 

「リスクは少しでも減らしておきたいからね。それだけ君は強くなりすぎた。こっちも一年かけて対策を練ったんだ。そんなに簡単にやられるつもりもないよ」

 

「……ここじゃ場所が悪い。誰もいないところに移動するぞ」

 

「ご自由に。私は猿どものことなんか気にしないけどね」

 

 その言葉を聞いて、()()()の結界を張る礼司。一辺の大きさは約10メートルほど。

 

「おお。随分器用なことができるようになったんだね。悟の教育は間違ってないみたいだ」

 

「……入ルノカ?」

 

 何の疑いもなく入ろうとする夏油に、訝し気に問うのはミゲル。

 

「ああ。この子は情報を欲しがっている。今すぐどこかへ飛ばされるなんてことはないよ。自分が逃げればいいだけの話だしね」

 

「……ソウカ」

 

 そして結界内に3人が入ったのを確認した礼司は術式を発動させる。

 種が分かっていた夏油だが、周りの景色が急激に変わったのを見て感心したように呟く。

 

 

 

「やっぱり素晴らしい術式だ。呪力も洗練されてるし、楽しい戦いになりそうだよ」

 

「……俺は気が重いけどな」

 

 

 

 

 

「────じゃあ始めようか。ミゲル」

 

「アア」

 

 礼司を挟むようにして立つ2人。依然として夏油を睨み続ける礼司だったが、懐から何かを取り出す。

 まるでお守りのようなモノを腰にぶら下げる。よく見たらミゲルも同じものをつけていた。

 

「これを2人分作るのに1か月かかったんだ。頼むから効いてくれよ?」

 

 夏油が何かを唱えた後、礼司はそのお守りの効果を理解した。

 

「……()()()()()()か?」

 

「そう。よく分かったね。これには私の呪力を、1か月かけてコツコツと貯めてある。君のポータルは、呪力が多い場所だとうまく機能しないだろう?」

 

「なるほどね……」

 

 試しに夏油の横にポータルを開こうとするが、まるで初めて術式を使った時の様に、うまく開くことができない。

 

(恐らく2人の半径5メートルほどは、ロクに開くことすらできないだろう。もし展開できたとて、すぐ壊れるのがオチだ)

 

「それじゃあ小手調べだ。まずはこれから行こう」

 

 術式を使って取り出した呪霊に呪力を込める夏油。込められた呪力にしては、威圧感が大きすぎる。

 

「この呪霊は、呪力をエネルギーとして打ち出す術式を持っている。コスパが良くて便利なんだ」

 

『ドンッ』という音を立てて呪力が放出される。しかし、礼司は()()()()()()()()それを防いだ。

 

 

 

「────1時間だ。1時間で片を付ける」

 

 そう言うと、『何か』を握るような動作をした礼司。しかし、夏油達にはそれを認識することはできなかった。

 しかし、その『何か』の周りにまとわれた呪力の形を見て思案する。

 

(妙だな……呪力を練っただけにしては余りにも()()()()

 

 そう。基本的に呪力というのは、燃え上がる炎、あるいは流れる水のような形をしている。

 一部の例外を除いて皆、呪力自体の性質は同じなのだ。

 

(となるとあれは不可視の物体。ただの呪力の塊だと思ってうかつに触れるとマズイね)

 

「ミゲル! その呪力の塊。触れちゃだめだよ!」

 

「分カッタ」

 

 夏油の言葉にうなずくミゲル。

 

「はぁ。流石にバレるか」

 

「それは一体何かな? 君の術式にしては少し違和感があるけど」

 

 ある意味では術式開示の隙を与えてくれた夏油。「バレてるなら別にいいか」と術式を開示する。

 

「俺の術式『無次元呪術』は、俺だけが認識することが出来る異次元を、現実に接続(コネクト)する術式だ。術式順転『(レン)』は昔アンタにやった通り、異空間を経由することでポータルを繋いだりできる。そしてこの『次元剣』は、その逆。術式反転『(セキ)』によるものだ」

 

「その年で術式反転までモノにしてるとは。『六眼の無い五条悟』という呼び名も伊達じゃないみたいだね」

 

「つくづく嫉妬しちゃうな」と笑いながら語る夏油。

 

「なんか呼び名増えてねえか? ……まあいいや。術式反転『(セキ)』は読んで字のごとく、俺が認識する()()()()()()()()()()()()。その性質、形は俺の自由自在だし、俺と五条先生以外には認識すらできない」

 

(ホントはもっといろいろ制約あるけど)

 

 それをあえて言うメリットは無いだろう。

 

「さっきの攻撃を防いだのは、『剔』の応用かな?」

 

「そこまで言ってやる義理は無いよ。あまり時間がないんだ。さっさと終わらせてやる」

 

(空中に呪力反応! 一度にこれだけの数を出せるのか!)

 

 その言葉と共に、同じく鋭い呪力が15本ほど彼の周りを囲う様に存在している。

 本格的に始まる戦いのために、夏油は赤い三節棍を。ミゲルは黒い縄を構える。

 

(まともに一撃でも食らえば致命傷だ……ズルいね。本当に)

 

「合わせろ! ミゲル!」

 

「オウ!」

 

 その言葉と共に、2人は弾丸の様に礼司へと駆ける。前後から同時に呪具による攻撃を当てるが、当たる前に()()()()()()()()()()

 何とも懐かしいような感触に、夏油は不快感を隠せないようだ。

 

「悟の受け売りかい? あんまり強すぎても人生楽しくないだろう!?」

 

「やかましいわボケ! 俺じゃあの人には逆立ちしても勝てねえよ」

 

「それ以外の術師には勝てるだろうに」

 

 互いの武器による攻撃を躱しながら、軽口を叩き合う2人。

 しかし、礼司の注意は後ろから攻撃を仕掛けて来るミゲルに向かっていた。

 

(強いな……体術、身体能力共に見た事無いレベルだ。そして厄介なのはこの黒縄。俺の術式が乱される)

 

 夏油の呪具による攻撃は防げているが、この黒縄に関しては防ぐことができない。完全に気が散らされている。

 そしてその一瞬の緩みを見逃す夏油ではない。

 

「どうした! 手が止まっているぞ。そんなにミゲルの呪具が気になるのかな?」

 

「!? しまった!」

 

『バンッ』という大きな音を立てて、夏油の呪具が顔面に直撃する。

 その想像以上の衝撃に、呪力で受けることはせず、跳んで受け流す礼司。

 

「賢いね。だが跳ぶ方向をちゃんと見た方がいいんじゃないかな!」

 

「ッチ!」

 

 その先に居たのはミゲル。既にあの黒縄を振りかぶろうとしている。

 

「イイ加減大人シクシロ! ……何!?」

 

 後は飛んでくる礼司に当てるだけだったが、唐突に吹いた突風により上空に打ち上げられる。

 

「呪力の範囲外であれば、いくらでもポータルは開けるんだぜ!」

 

 上空にポータルを開き、その終点を上空一万mに設定した礼司。何時ぞやの時の様に、気圧差で物凄い風が吹き荒れる。

 吸い込まれそうになるミゲルだったが、夏油のお守りの範囲内に近づいた途端にポータルが破壊される。

 

「ッチ! インチキが!」

 

「飛べないお前が悪いんだよ!」

 

『剔』によって空中に見えない足場を生成した礼司は、同じく飛ばされてきた夏油を空中で迎え撃つ。

 15本の『次元剣』が全て向かってくるが、夏油は咄嗟に呪霊を取り出して盾にした。自らの呪力もかなり込めたのに、一瞬にして祓われてしまった夏油は、背筋に冷たいものが走る。

 

「おいおい……一級呪霊がワンパンかい? 取り込むのに苦労したんだぞ!」

 

「知るかバーカ!」

 

「まともに食らってたら手足が無くなってしまうぞ!」

 

「ん時は反転術式で直してやるよ! お札でぐるぐる巻きにした後にな!」

 

 そんな子供のようなやり取りを繰り広げる2人。

 そのまま追撃をしようと加速する礼司だったが、先ほどの砲撃呪霊の攻撃により失敗に終わる。

 

「他人に反転術式を付与できるのかい? 硝子が喜ぶね」

 

「任務が無い日はほとんど手伝わされてるよ」

 

「へぇー。あの硝子がね……」

 

 何やら意味深に笑う夏油。よほど意外な事らしい。

 

「……なんだよ。別に何も言ってねえだろ」

 

「硝子はやめといたほうが良いよ? 若く見えるかもだけど、実態はもうアラサーさ」

 

 何を思ったのか、ニヤニヤとしながら恐ろしいことを言う夏油。

 

「……お前。家入さんに殺されるぞ」

 

 その光景を想像してゾッとしたのか、背筋を震わせる礼司。高度な戦いをしている筈なのだが、あまりにも締まりがない。

 

「怖い怖い。硝子には黙っててくれよ?」

 

 肩をすくめる夏油だったが、そこに上空20メートルほど打ち上げられたミゲルが戻ってきた。

 

「何ヲ楽シソウニ話シテイル夏油。コッチハ死ニカケタンダゾ」

 

「ごめんごめん。じゃあ、続けようか」

 

「ッチ。早く帰りてえのに」

 

 ────礼司が家に帰れるのは、かなり後の話になりそうだ。

 

 

 




因みに礼司君の術式名は、五条がウキウキで付けたという裏話があります。

高評価や感想していただけると作者の励みになります!読者の方からの応援が僕のモチベーションです!
答えられると確約はできませんが、ここはどうして?という質問や本文の指摘などでも嬉しいです!よろしくお願いします!

最近ページビューが多いので気になりました。どこでこの小説を見つけていただきましたか?

  • ランキング
  • 呪術廻戦のタグ
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。