術式がドラ〇もんの道具で説明できるんだが? 作:妄想癖のメアリー
「申し訳ございません」
高専の廊下で謝罪をするのは伊地知。その内容は、先日の任務で発生した、想定外のトラブルについてだった。
「何者かが、私の帳の上から二重に帳を下ろしていました。加えて予定にない準一級レベルの呪いの発生」
当時の状況を思い出したのか、顔を青ざめる伊地知。額には大粒の汗が流れている。
「すべては私の不徳の致すところ。何なりと処分を「いや、いい。相手が悪すぎた」……と、申しますと……犯人に心当たりが?」
伊地知の言葉を遮ったのは五条。壁にもたれかかりながら何かを考えている。
「────夏油傑。4人の特級が1人、百を超える一般人を呪殺し呪術高専を追放された。最悪の呪詛師だよ」
場面は打って変わって10月。気温が低くなり、長袖の服が恋しくなるような木枯らしが吹く空の下、任務を終えた礼司は1人歩いていた。
その独り言は、先日五条から連絡があった、『夏油傑による宣戦布告』についてだ。
「んー。百鬼夜行か……千の呪霊を放つとか言ってたけど、一体何が目的なんだ?」
そうぼやきながら首をかしげる礼司。夏油の大義を含めて考えるが、いまいちピンと来ていない様子だ。
そんな彼の頭上から、決して少なくない量の呪力が流れてきた。
「────そんなに気になるなら教えてあげようじゃないか」
そう1人ぼやく礼司に、話しかけた人物が居た。
その聞き覚えのある声を聞いて、あからさまに嫌そうな顔をする礼司。
「
「4年ぶりかな? 礼司君。大きくなったね」
「お前に言われても嬉しくねえっての……」
そんなやり取りをする2人だが、夏油が乗ってきたペリカンのような呪霊から、背の高い黒人の男性が降りて来る。
「夏油。コノ小サナ子供ガ、お前ガ言ッテイタ礼司ナノカ?」
想像していた人物像とはだいぶ異なったのだろう。確認をするように尋ねる男。
「紹介するよ。彼はミゲル。僕の大義を手伝ってもらってるんだ。これから仲良くすると思うから、仲良くしてやってくれ」
「ヨロシク。ソンナニ上手ク事ガ運ブトハ思エンガナ」
「ああ。そっちのミゲルさんの言う通りだ。お前の仲間という事なら、仲良くする気は微塵もない」
そう言って何時でも術式を発動できるよう、片手で掌印を結ぶ礼司。
「それもそっか。じゃああの時のリベンジマッチとしよう。ミゲル。あの縄も使うんだ」
「……全ク。五条用ニ、少シデモ多ク取ッテオキタカッタ」
黒い縄を取り出すミゲル。何とも言えない悪い予感を感じ取った礼司は、情報を集める事に専念するようだ。
「一対二かよ。特級術師が呆れたもんだな?」
「リスクは少しでも減らしておきたいからね。それだけ君は強くなりすぎた。こっちも一年かけて対策を練ったんだ。そんなに簡単にやられるつもりもないよ」
「……ここじゃ場所が悪い。誰もいないところに移動するぞ」
「ご自由に。私は猿どものことなんか気にしないけどね」
その言葉を聞いて、
「おお。随分器用なことができるようになったんだね。悟の教育は間違ってないみたいだ」
「……入ルノカ?」
何の疑いもなく入ろうとする夏油に、訝し気に問うのはミゲル。
「ああ。この子は情報を欲しがっている。今すぐどこかへ飛ばされるなんてことはないよ。自分が逃げればいいだけの話だしね」
「……ソウカ」
そして結界内に3人が入ったのを確認した礼司は術式を発動させる。
種が分かっていた夏油だが、周りの景色が急激に変わったのを見て感心したように呟く。
「やっぱり素晴らしい術式だ。呪力も洗練されてるし、楽しい戦いになりそうだよ」
「……俺は気が重いけどな」
「────じゃあ始めようか。ミゲル」
「アア」
礼司を挟むようにして立つ2人。依然として夏油を睨み続ける礼司だったが、懐から何かを取り出す。
まるでお守りのようなモノを腰にぶら下げる。よく見たらミゲルも同じものをつけていた。
「これを2人分作るのに1か月かかったんだ。頼むから効いてくれよ?」
夏油が何かを唱えた後、礼司はそのお守りの効果を理解した。
「……
「そう。よく分かったね。これには私の呪力を、1か月かけてコツコツと貯めてある。君のポータルは、呪力が多い場所だとうまく機能しないだろう?」
「なるほどね……」
試しに夏油の横にポータルを開こうとするが、まるで初めて術式を使った時の様に、うまく開くことができない。
(恐らく2人の半径5メートルほどは、ロクに開くことすらできないだろう。もし展開できたとて、すぐ壊れるのがオチだ)
「それじゃあ小手調べだ。まずはこれから行こう」
術式を使って取り出した呪霊に呪力を込める夏油。込められた呪力にしては、威圧感が大きすぎる。
「この呪霊は、呪力をエネルギーとして打ち出す術式を持っている。コスパが良くて便利なんだ」
『ドンッ』という音を立てて呪力が放出される。しかし、礼司は
「────1時間だ。1時間で片を付ける」
そう言うと、『何か』を握るような動作をした礼司。しかし、夏油達にはそれを認識することはできなかった。
しかし、その『何か』の周りにまとわれた呪力の形を見て思案する。
(妙だな……呪力を練っただけにしては余りにも
そう。基本的に呪力というのは、燃え上がる炎、あるいは流れる水のような形をしている。
一部の例外を除いて皆、呪力自体の性質は同じなのだ。
(となるとあれは不可視の物体。ただの呪力の塊だと思ってうかつに触れるとマズイね)
「ミゲル! その呪力の塊。触れちゃだめだよ!」
「分カッタ」
夏油の言葉にうなずくミゲル。
「はぁ。流石にバレるか」
「それは一体何かな? 君の術式にしては少し違和感があるけど」
ある意味では術式開示の隙を与えてくれた夏油。「バレてるなら別にいいか」と術式を開示する。
「俺の術式『無次元呪術』は、俺だけが認識することが出来る異次元を、現実に
「その年で術式反転までモノにしてるとは。『六眼の無い五条悟』という呼び名も伊達じゃないみたいだね」
「つくづく嫉妬しちゃうな」と笑いながら語る夏油。
「なんか呼び名増えてねえか? ……まあいいや。術式反転『
(ホントはもっといろいろ制約あるけど)
それをあえて言うメリットは無いだろう。
「さっきの攻撃を防いだのは、『剔』の応用かな?」
「そこまで言ってやる義理は無いよ。あまり時間がないんだ。さっさと終わらせてやる」
(空中に呪力反応! 一度にこれだけの数を出せるのか!)
その言葉と共に、同じく鋭い呪力が15本ほど彼の周りを囲う様に存在している。
本格的に始まる戦いのために、夏油は赤い三節棍を。ミゲルは黒い縄を構える。
(まともに一撃でも食らえば致命傷だ……ズルいね。本当に)
「合わせろ! ミゲル!」
「オウ!」
その言葉と共に、2人は弾丸の様に礼司へと駆ける。前後から同時に呪具による攻撃を当てるが、当たる前に
何とも懐かしいような感触に、夏油は不快感を隠せないようだ。
「悟の受け売りかい? あんまり強すぎても人生楽しくないだろう!?」
「やかましいわボケ! 俺じゃあの人には逆立ちしても勝てねえよ」
「それ以外の術師には勝てるだろうに」
互いの武器による攻撃を躱しながら、軽口を叩き合う2人。
しかし、礼司の注意は後ろから攻撃を仕掛けて来るミゲルに向かっていた。
(強いな……体術、身体能力共に見た事無いレベルだ。そして厄介なのはこの黒縄。俺の術式が乱される)
夏油の呪具による攻撃は防げているが、この黒縄に関しては防ぐことができない。完全に気が散らされている。
そしてその一瞬の緩みを見逃す夏油ではない。
「どうした! 手が止まっているぞ。そんなにミゲルの呪具が気になるのかな?」
「!? しまった!」
『バンッ』という大きな音を立てて、夏油の呪具が顔面に直撃する。
その想像以上の衝撃に、呪力で受けることはせず、跳んで受け流す礼司。
「賢いね。だが跳ぶ方向をちゃんと見た方がいいんじゃないかな!」
「ッチ!」
その先に居たのはミゲル。既にあの黒縄を振りかぶろうとしている。
「イイ加減大人シクシロ! ……何!?」
後は飛んでくる礼司に当てるだけだったが、唐突に吹いた突風により上空に打ち上げられる。
「呪力の範囲外であれば、いくらでもポータルは開けるんだぜ!」
上空にポータルを開き、その終点を上空一万mに設定した礼司。何時ぞやの時の様に、気圧差で物凄い風が吹き荒れる。
吸い込まれそうになるミゲルだったが、夏油のお守りの範囲内に近づいた途端にポータルが破壊される。
「ッチ! インチキが!」
「飛べないお前が悪いんだよ!」
『剔』によって空中に見えない足場を生成した礼司は、同じく飛ばされてきた夏油を空中で迎え撃つ。
15本の『次元剣』が全て向かってくるが、夏油は咄嗟に呪霊を取り出して盾にした。自らの呪力もかなり込めたのに、一瞬にして祓われてしまった夏油は、背筋に冷たいものが走る。
「おいおい……一級呪霊がワンパンかい? 取り込むのに苦労したんだぞ!」
「知るかバーカ!」
「まともに食らってたら手足が無くなってしまうぞ!」
「ん時は反転術式で直してやるよ! お札でぐるぐる巻きにした後にな!」
そんな子供のようなやり取りを繰り広げる2人。
そのまま追撃をしようと加速する礼司だったが、先ほどの砲撃呪霊の攻撃により失敗に終わる。
「他人に反転術式を付与できるのかい? 硝子が喜ぶね」
「任務が無い日はほとんど手伝わされてるよ」
「へぇー。あの硝子がね……」
何やら意味深に笑う夏油。よほど意外な事らしい。
「……なんだよ。別に何も言ってねえだろ」
「硝子はやめといたほうが良いよ? 若く見えるかもだけど、実態はもうアラサーさ」
何を思ったのか、ニヤニヤとしながら恐ろしいことを言う夏油。
「……お前。家入さんに殺されるぞ」
その光景を想像してゾッとしたのか、背筋を震わせる礼司。高度な戦いをしている筈なのだが、あまりにも締まりがない。
「怖い怖い。硝子には黙っててくれよ?」
肩をすくめる夏油だったが、そこに上空20メートルほど打ち上げられたミゲルが戻ってきた。
「何ヲ楽シソウニ話シテイル夏油。コッチハ死ニカケタンダゾ」
「ごめんごめん。じゃあ、続けようか」
「ッチ。早く帰りてえのに」
────礼司が家に帰れるのは、かなり後の話になりそうだ。
因みに礼司君の術式名は、五条がウキウキで付けたという裏話があります。
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最近ページビューが多いので気になりました。どこでこの小説を見つけていただきましたか?
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