その首置いてけザフト共   作:みども

23 / 95
場面の方は再びアルテミスです。
イザークはジンアサルト、ディアッカとニコルの乗機はバルルス改装備のジンです。



アルテミス攻防戦 9

 

 

 ユーラシア連邦の誇る難攻不落の軍事要塞アルテミス。

 全方位光波防御帯による全てを拒絶する光の防壁に守られることによってその真価を発揮する、ユーラシア連邦の発明した最強の防衛システム、通称“アルテミスの傘”。

 

 一度もザフトの侵入を許さなかったこの鉄壁の防壁は、この日初めて破られることとなった。

 

 アルテミスを攻略せんと猛攻を仕掛けるのは、アークエンジェル追撃部隊として組織された、ガモフを旗艦とする4隻のローラシア級戦闘艦と、D装備に身を固めた24機のMSからなる大部隊。

 

 連続展開可能時間が尽きたことでエネルギー不足に陥ったアルテミスの傘は解かれ、要塞の持つ全戦力を持って友軍の救援到来までの時間を稼ぐために迎撃を開始したアルテミスの駐屯軍との間に、戦闘が開始される。

 

「砲台は弾幕を張り続けろ! メビウスはアルテミスに攻めてくるジンには構うな! MSはアルテミスと護衛艦に引きつけ、敵艦を狙え!」

 

「ジンは要塞に任せて突破に集中しろ! 落とそうなんて勇み足を起こすなよ、コーディネイターの操るジンにメビウスの攻撃なんぞどうせ当たらねえんだからな! 俺たちの任務は奴らの母艦に損傷を与えること、奴等の帰還先を離脱に追い込んで追い払うんだ!」

 

 単純な数の上では30機以上のメビウス、5隻のドレイク級護衛艦、要塞の砲台など、機動兵器や艦艇、火力面などではアルテミス側がガモフ率いるザフト軍に比べると多い。

 しかしながら戦力比となると、5機のメビウスでようやく1機のジンと渡り合えると言われる連合・ザフト間の兵器の質の面からくる性能差を考慮するならば、24機のジンというのは単純計算で150機近いメビウスが必要という戦力であり、ザフト側の方が圧倒的に優勢だった。

 

 傘がないアルテミスでは、この大部隊と戦闘になっても勝ち目はない。

 

 そのため、アルテミス側はまともにぶつかっても勝ちようがないMSにあえてメビウスをぶつけず、D装備で要塞攻略に真価を発揮する重武装のMSを要塞と護衛艦が引きつけて敵の主戦力であるMSを運用するための艦艇を攻撃して損傷を与えることにより、一部の敵だけ、例え一時的なものとなっても撃退することで援軍到来の時間を稼ぐ方針を取る。

 狼狽しており戦闘準備の指示以降まともな指揮が取れておらずすでに1人でシェルターに逃げ込んだ要塞司令官であるガルシアを放置して、傘で限界まで時間稼ぎを行い要塞戦力の出撃体制を整えて始まった戦闘を副官であるビダルフ大佐とMA部隊の指揮官であるジャン・ピエール中佐が行っていた。

 

 一方でアルテミスを攻撃するザフトは。

 圧倒的戦力を揃えたとはいえ、アークエンジェルの索敵をこの数日間デブリベルトで続けていたところをいきなりゼルマンの独断でアルテミス攻略に切り替えられたことで始まった戦闘により、普段の精彩ぶりが欠けている部隊もいた。

 

 何しろザフトの英雄であるラウ・ル・クルーゼと、ザフトのトップである国防委員長パトリック・ザラからの指示とはいえ、デブリベルト内に潜んでいるという連合の新型艦艇をクルーゼの勘で作られた索敵網に従いゼルマンの指揮下でその数日探してきた。

 戦況を覆す連合の新兵器を載せている新型艦艇という必要最低限の情報だけ教えられ、どうせクルーゼの手柄になる任務。

 元々クルーゼ隊に属するガモフの部隊を除く急遽かき集められたザフトの各部隊は納得いかないところがあったこともあり、士気が低かった。

 

 地球に降下した友軍が今も最前線で戦っている中、自分たちはいつ見つかるかもわからない連合の未知の艦艇をこの航行するだけでも神経を使うデブリベルトの中で探すという地味で疲れる任務。

 数日間探し続けるが、目標はおろか手がかりも見つからずに疲れがたまっている中でもたらされた、アルテミスに対する総攻撃を行うという突然の方針転換の指示。

 アルテミスへの攻撃はゼルマンへの不満がたまっている者たちにとって憂さ晴らしにもなる戦いだったが、それでもアークエンジェルの捜索とこの突然の方針転換などによるストレスで疲労している者も少なくない。

 

 もちろんそれでもメビウスの攻撃をまともに喰らうような間抜けをやらかす者などザフトにはいないが、しかし傘が解けると同時に要塞や護衛艦の弾幕が展開され準備万端で迎撃に出撃してきた敵部隊の攻撃に対応しきれず、メビウスに抜かれる部隊の姿はあった。

 

 アルテミスの傘の突破と要塞攻略に固執しメビウスの存在を軽視したことでMSのほとんどをD装備に揃えて前線に展開させたゼルマンの判断もあり、MS部隊の突破だけに集中して出撃してきたピエールの率いるメビウス編隊はMS部隊の突破に成功する。

 

「母艦を狙うぞ! まずはA並びにB目標の敵ローラシア級戦闘艦だ、全機対艦戦闘開始!」

 

 ザフトから見れば奇襲に近い形でアルテミスより出撃し、ジンに勝るメビウス自慢のその最高速度を活かしてMS部隊の突破に成功した編隊。

 ピエールは35機からなるメビウスの編隊を二手に分け、それぞれA目標とB目標として定めたMSを全て攻撃につぎ込み直掩を展開させていなかった2隻のローラシア級戦闘艦に狙いを絞り向かっていく。

 

「対MA戦闘急げ!」

 

「ダメです、間に合いません!」

 

 ピエール率いる主力のメビウス編隊からの対艦ミサイル攻撃。

 ストレスのたまるデブリベルトの地味な索敵作業に辟易としていたMSのパイロットたちが勇んで要塞攻略に乗り出したおかげで直掩を展開させるのを怠っていたローラシア級戦闘艦“アモントン”は、このピエールのメビウス編隊からの攻撃をまともに受けてしまう。

 対艦ミサイルによってブリッジ、主砲、MS出撃後に開きっぱなしに収容すらしていなかった格納庫から伸びるカタパルト。

 連日のデブリベルトという環境で操艦と索敵を続けていた乗組員たちの疲労もあり、対応が遅れそこに撃ち込まれたミサイルによって破壊されてしまった。

 

 特に右側の主砲に撃ち込まれた数発の対艦ミサイルが致命的であり、被弾した右舷の主砲はそのまま砲撃のエネルギーを供給する動力機関まで艦体を貫通。

 そのまま艦体は瞬く間に炎に飲まれ、誘爆した動力機関によりアモントンは乗組員たち諸共宇宙のチリに変えられてしまった。

 

「よしッ! 1隻沈めたぞ、次はC目標だ! ジンが戻ってくる前に損傷を与えて離脱するぞ!」

 

 そのままピエールはほとんど被害を受けていない編隊を率いて、止まることなくC目標として定めたマルピーギに向かう。

 母艦に損害を与えていけば、MS部隊の方もアルテミスの攻撃にかまけてばかりはいられなくなるはず。

 最初の攻撃は幸運もあり大きな戦果を上げることができたメビウスの編隊は、要塞が大半のジンを引きつけている間に次の目標へ向けて飛行していく。

 

 だが、ピエール率いるメビウス編隊の本隊は敵のローラシア級の1隻であるアモントンを撃沈に追い込むという大戦果を上げ優勢だった一方で、B目標として定めたガモフを狙った別働隊は苦戦を強いられていた。

 

 

 

 傘が解けるなりジンには目もくれず見方によっては逃げるように出撃してきた多数のメビウス。

 その様子に異変を察知したニコルとマシューは、独自の判断で要塞の攻撃を切り上げて弾幕をかいくぐりガモフの元へすぐさま引き返してきたことで、躱されたメビウスの編隊に追いつくことに成功し激しい戦闘になっていた。

 

「ゼルマン艦長、援護します!」

 

「ニコル! マシューもきてくれたのか! 助かる!」

 

「要塞の方はイザーク達に任せてきました。傘に隠れているだけの敵じゃないって事です、ねッ!」

 

 ガモフに攻撃を仕掛けようとしたメビウスの編隊にそれぞれバルルス改を発射し、重突撃機銃も抜いて近接戦に移行する2機のジン。

 しかしガモフに群がる別働隊のメビウスは14機。

 メビウスとの戦力比は1対5で互角と言われるジンだが、さすがのクルーゼ隊の精兵でも2機で相手にするには数が多い。

 

「ガモフまでやらせるわけには、いかないんです!」

 

「珍しく燃えてるなニコル! 俺も負けて──いっつ!?」

 

 仲間を大切に思う心優しくも強い面のあるニコルはガモフを守るために普段の穏やかな気性から一転、闘志をみなぎらせて奮起しメビウスに立ち向かう。

 それに促され、マシューの方も数の劣勢と被弾を恐れず積極的にメビウス編隊に向かって攻撃を仕掛ける。

 

 リニアガンやミサイルといったジンの装甲を破壊出来る攻撃も躱しきれず被弾するが、それでもガモフまで沈めさせるわけにはいかないと奮起する2人は数の劣勢を連携で埋め、次々とメビウスを落としその数を削っていった。

 

「うっ!? 右脚が──!」

 

「ニコル背中だ!」

 

「──ッ! 助かりました、マシュー!」

 

 ニコルのジンが隙を突かれ、右足をリニアガンで落とされる。

 すかさず背後からコクピットを狙ってきた別のメビウスを、すでにバルルス改を撃ち尽くしていたマシューのジンがとっさに重突撃機銃で援護して撃破した。

 

「だ、ダメだ……ピエール隊長と合流するぞ! ヤツら手強い、全機一時離脱!」

 

 そしてニコル機の撃破に失敗したこの時点で、別働隊はこの2機の奮戦で10機ものメビウスを撃ち落とされ、被害の拡大を重く見た副長の判断でガモフ撃破を断念。

 ピエールの本隊に合流するために離脱する。

 

「離脱していく……やりましたね、マシュー!」

 

「ニコルの心配している場合じゃねえダメージだな……あと2、3機多かったらって思うと、今回は本気でヤバかった……」

 

 ニコルのジンは右脚を失い、マシューのジンはモノアイを割られ視界を半分奪われた上にバルルス改放棄後に重斬刀を振るっていた左腕まで破壊され重突撃機銃を撃ち尽くせば武装がなくなるところだったとかなりの被害を受けていたが、それでもメビウスの編隊を撃退しガモフへの攻撃を阻止することに成功した。

 

「2人とも、本当に助かった……! ひとまず収容しよう」

 

 損害の大きさから要塞攻撃部隊に復帰するのは困難と判断したゼルマンにより、ニコルとマシューは一時ガモフへ撤退する。

 

 

 

 一方でイザークたちは、要塞の砲台を自慢の機動力を生かしたMSの巧みな操縦で次々に破壊し、さらには出撃してきたドレイク級も1隻撃沈に追い込んでいた。

 

「グゥレイト! 数だけは多いぜ!」

 

「ナチュラルの下手くそな固定砲台なんぞ物の数ではないわ!」

 

 アークエンジェルの索敵任務の疲れもあり動きが鈍く弾幕に被弾するジンもいる中、ガモフ所属のクルーゼ隊──特にイザークとディアッカの2人の赤服が操るジンはアルテミスから放たれる大量の弾幕を要塞攻略用装備で重くなっている機体にもかかわらず無傷でくぐり抜け、逆に次々と砲台やついでに光波防御帯の発生器を撃破していた。

 

 ドレイク級や要塞を攻撃するMS部隊に、そんな中でメビウス編隊からの攻撃を受ける母艦からの救援要請が入る。

 その前にメビウス編隊の目的を察知したニコルとマシューが援護に向かったことでイザークたちの母艦であるガモフは無事だったが、4隻のローラシア級の1隻であるアモントンがピエール率いる編隊の攻撃にさらされ撃沈に追い込まれてしまった。

 

「イザーク、アモントンがやられた! ガモフとマルピーギにもメビウスどもが集って、救援要請が来た!」

 

「アモントンがやられただと!? 直掩は何をしている!」

 

「アモントンのやつら、俺たちと同じでMSを全部要塞攻略につき込んだせいで護衛がいなかったみたいだな」

 

「馬鹿かあいつら! ──って、ガモフも丸裸ではないか! クソッ、なんで全員こっちに来たんだ!」

 

「一応お前の指示だぞ、イザーク」

 

「やかましいわ! ガモフの援護に戻るぞ! ──というか、ニコル達はどこだ!?」

 

 悪態つきながら、イザークたちはガモフの援護に戻ろうとする。

 ガモフの方も艦の直掩を展開しておらず、6機のジンは全て要塞に突撃していたので他人事ではなかった。

 

「ん……? いや、待てイザーク! ニコルとマシューが戻ってガモフに群がるハエを追い払ったから、ゼルマン艦長達は無事だ!」

 

「何ィ!? 道理でいないと思ったら──ッ!」

 

「いや、あいつらの機転で命拾いしたんだから素直に感謝しとけよ」

 

「五月蝿い! 全機アルテミスの攻撃に集中しろという俺の指示を無視して何をしていたかと思えば──」

 

「グオッ!? やっべ、被弾した!」

 

「何をしているんだ馬鹿者!」

 

「ガモフに戻るか?」

 

「戻るか馬鹿者!」

 

 イザークの喉が心配になるやり取りをしながら、4機のジンはガモフの脅威がなくなったことをみて要塞攻撃に意識を戻す。

 

「グゥレイト! これで2隻目!」

 

「要塞の攻撃に集中しろ!」

 

「マルピーギの救援要請はどうするんだよ、イザーク?」

 

「それはマルピーギの奴らの仕事だ! 知ったことか!」

 

「グレイトな野郎、勝手に3隻目を沈めに行ったぞ」

 

「勝手な行動をするなディアッカ!」

 

「流れる用に突っ込むとは流石だぜ!」

 

「五月蝿い! 好きでやっているわけじゃない、貴様らがふざけているからだろうが!」

 

「俺たちの任務って新型戦艦の撃破だろ?」

 

「だから要塞の攻略を優先しろと言っているだろうが! 隔壁を突破するのに火力を集中しろ! 何のためのD装備だ!」

 

「えーと……すまんイザーク、もうキャニスの残弾が0だ」

 

「どこで撃ち尽くしているんだ貴様は! もういい、さっさと突撃機銃に持ち替えて援護に徹しろ!」

 

「これで3隻目だぜ! 次はどいつだ?」

 

「貴様はいい加減戻ってこいディアッカ!!」

 

 仲間達からの野次・苦情などの諸々に対して全て律儀に応じながら、ニコルとマシューを除くガモフ所属のジン部隊を率いてアルテミスに攻撃するイザーク。

 D装備を全て撃ち尽くすこととなったが、表層の岩盤部、そしてその奥の隔壁の破壊に成功し、アルテミス内部への侵入に成功した。

 

「足つきを探せ!」

 

「艦艇もMAもねえぞ! この要塞は空だ!」

 

「何だとぉ!?」

 

 だが、そこにあったのは護衛艦もMAも全て出し尽くした何も無い格納庫。

 

 この時に至って、彼らはようやくアルテミスが空振りだったこと、すなわちこの要塞への攻撃は1隻のローラシア級をはじめとした無駄な損害を出しただけで全くの徒労だったことを知る。

 

 

 

 それは同時に、このアルテミスを攻撃する間デブリベルトの捜索網を外してしまったことも意味する。

 

 難攻不落の要塞を陥落に追い込んだが、本命のアークエンジェルはこの間にクルーゼが読み当てて作られた包囲網から逃れることに成功したのであった。

 

 アルテミスが空だったことを知り、ゼルマンは己の失態に気づかされ顔面蒼白となった。

 

 ──このままではクルーゼ隊長が立てた包囲網から自分のミスによって足つきに逃げられてしまう。

 その最悪の予想が浮かび、アルテミスの攻撃で疲れていることも考慮せずに残存戦力に対してすぐにデブリベルトへの転進を指示した。

 

「ば、バカな……ッ!? いかん、足つきに逃げられる! 全艦、直ちにデブリベルトに転進せよ! アルテミスには制圧維持の戦力のみを残し速やかに包囲網を──」

 

「ゼルマン艦長、マルピーギから入電! “デブリベルトにて熱源探知、高速で航行する足つきに酷似する艦艇を確認。一時解除した予定包囲網を既に抜けられており、ローラシア級の速度では追跡困難と推定される”とのことです」

 

「やられた……!」

 

 しかし転進命令を出したところで、ピエール率いるメビウス編隊の攻撃にさらされるのを避けるために後退していたマルピーギがデブリベルトを航行するアークエンジェルを確認した。

 ガルシアからの救援要請からアルテミスの戦闘を察知していたアークエンジェルが、ガモフ達がアルテミスに攻めている間に一時的に解かれていたデブリベルトの包囲網を全速で抜けていったのである。

 

「マルピーギに打電! 急いで足つきを追撃しろと!」

 

「ハッ! ……マルピーギより返答が。“デブリベルトにおける長時間の索敵及びアルテミス攻略により消耗しており、また所属MS部隊が未だに帰還していない状態にあるため、当艦単独による追撃任務を受諾することは困難である。またザラ国防委員長及びラウ・ル・クルーゼ隊長の要請に基づき参戦したが、ゼルマン殿の命令全てを受諾して動く歯車になったつもりはないため、その命令は拒否させてもらう”とのことです……」

 

「…………」

 

 ゼルマンは言葉を失う。

 ガモフを除く3隻のローラシア級の戦力は、クルーゼが自分の作った包囲網を完成させるためにパトリック・ザラに働きかけゼルマンに貸されたものであり、アークエンジェルがいるかどうか不明瞭な段階でアルテミスを攻め落とすためのものではない。

 ゼルマンの懸念も可能性はゼロではなかったとはいえ、彼は彼自身の独断で包囲網形成のために貸された戦力も勝手に動かして、クルーゼの作った包囲網を崩し、その結果無関係な戦闘で多くの損害を出した上にアークエンジェルを取り逃がしたのである。

 

 パトリックからの命令で、クルーゼの作った敵新型戦艦を見つけ沈めるための包囲網形成に駆り出されたというのに、ゼルマンの独断でアルテミス攻略に作戦が切り替えられたガモフ以外のザフトたちは、すでにゼルマンに対して不満が溜まりまくっていた。

 結果、目標の新型艦艇を取り逃がす。

 我慢の限界を迎えていたマルピーギは、ゼルマンの指示に拒否を突き返した。

 

 そして、マルピーギが動かなければ、距離もある状態であの高速艦を捉えるのはローラシア級には極めて困難である。

 要塞を沈黙させたとはいえ、アルテミスの戦力もまだ残っており、すべてのMSを収容しすぐに追撃に移行するというのも危険なため、取れる選択肢ではない。

 何より、彼らは連日の索敵と急な方針転換で行われたアルテミス攻略戦により、疲労困憊だった。

 

 結果は、クルーゼとのかくれんぼを粘り勝ちしたアークエンジェルの勝利であり、包囲網から取り逃がすというものとなった。

 

 クルーゼの期待を二度も裏切ったことに、ゼルマンは己のやってしまった結果を突きつけられ、顔を真っ青にして思わず膝をついた。

 

 

 

 ──こうして、アルテミスに対するゼルマン率いる部隊はアモントンなどの損失という犠牲を引き換えに、ユーラシア連邦の誇る難攻不落の要塞アルテミスの攻略を成し遂げた。

 守備隊をほぼ壊滅に追い込み、シェルターに隠れていた要塞司令官である地球連合軍少将ジェラード・ガルシアの捕縛にも成功する。

 しかしこの戦闘の隙に本来の任務である足つきことアークエンジェルの離脱を許し、取り逃がすこととなってしまった。

 

 後日、ガモフからの報告を受けプラントを急いで出立したクルーゼは、直ちにアークエンジェルの追撃に向けて動き出す。

 

 一方でデブリベルト内の我慢比べの結果、ガモフを出し抜くことに成功したアークエンジェルだが、クルーゼの指揮する高速艦ヴェサリウスの参戦によりそこから状況が変わることとなる。

 

 

 

 ──そして、アルテミスの救援要請を受けて動いていた第9航宙機動艦隊は。

 

 救援は間に合わず、アルテミスは陥落。

 要塞陥落の際に戦域からの離脱に成功していたアルテミスの生き残り、ピエール率いるメビウス編隊及びビダルフの指揮するドレイク級宇宙護衛艦“ダウン”と合流したことで、彼らからザフトの大部隊からの攻撃を受けたことと要塞の陥落という事態を知ることとなる。

 

 立地上戦略的価値が低いとはいえ、ユーラシア連邦の誇る技術である光波防御帯を用いた軍事要塞であるアルテミスは、ザフトの手に落としたままにできるものではない。

 ビダルフ達としても、このままアルテミスを失陥した状態でおめおめと帰国などできない。

 何より、フェルナンドたちの弔合戦もできていない第9航宙機動艦隊は、復讐の矛先をぶつける、撃破するべきザフトの存在を求めていた。

 

「グスタフを卑劣な手段で沈めたザフト共に、その首を持って贖わせてやる! 目標、アルテミス! ザフトを駆逐し要塞を取り戻すぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

 こうしてアルテミスの生き残りを吸収した第9航宙機動艦隊は、ヴェサリウスとともにアークエンジェル追撃に向かったガモフを除く、ローラシア級2隻と17機のMSが守る要塞に向けて進撃を開始する。

 

 アルテミスを巡る戦いは、まだ終わっていなかった──




クルーゼの期待をこれだけ裏切ったゼルマンは、もはや特攻しろという命令が出ても拒否できなくなるほど追い詰められてます。
(当のクルーゼはプラント本国の熱狂ぶりを見れたし、アークエンジェルに逃げ込まれればそれこそ厄介極まりない難攻不落のアルテミスを制圧したという手柄も立ててくれたので、今回の失態くらいなら許容できるくらいには割と機嫌は良くなっているのですが)

連日のデブリベルトの索敵に付き合わされ、アルテミスの攻略に付き合わされ、まだ疲れの抜けていない状態でアルテミスの維持戦力としてつかの間の休息に入ったマルピーギとクーロン、そしてアモントンの生き残りたち。
そこに要塞の奪還を目指し燃えるアルテミスの生き残りを仲間に加えた、クルーゼの所業にはらわたの煮えくりかえる激おこぷんぷん丸状態の首狩り妖怪集団こと第9航宙機動艦隊が迫る……!
(アルテミスにまたもとばっちりが……)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。