その首置いてけザフト共   作:みども

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標準を合わせて撃つんじゃない、命中する場所と回避される場所を予測してノロくさいロックオンよりも早く撃て。
ロックオンを外す回避をするんじゃない、狙える射線と相手が予測してくる回避先を狙う射線から外れる回避をしろ。
このくらいできなければ、そいつは二流のMSパイロットだ。
(妖怪首置いてけ基準値)


アルテミス攻防戦 10

 

 

 ユーラシア連邦が誇る難攻不落の軍事要塞アルテミス。

 戦略的に重要でない場所にあるため、攻略の難しさも相成り、ザフトおよび連合双方から半ば無視されていたが、それでも攻略不可能という肩書きは伊達ではなかった。

 

 だが、そのアルテミスは陥落した。

 最大の防衛機構であるアルテミスの傘の展開可能時間、消耗エネルギーの限界から、そこを攻めたザフトの大部隊によって攻略されてしまった。

 

 不落のアルテミスを落としたという事態は、戦略的価値の薄いものであっても、ザフトの戦意を盛り上げユーラシア連邦に衝撃を与えるという意味ではとても大きな意義を持つ。

 ザフトの手に落ちたアルテミスでは、内部の連合兵士たちを突入したアモントンとクーロンの部隊が制圧。特に母艦を沈められたアモントンの部隊の怒りは凄まじく、それをぶつけるように非戦闘要員に至るまで要塞内にいた人員を1人残らず殺害した。

 

 その後、ガモフは単独でアークエンジェル追撃に向かい、制圧したアルテミスにマルピーギが入港。

 生き残りの護衛艦1隻とメビウスの編隊はアルテミスの奪還を断念してデブリベルトへ逃げて行き、アルテミス内部では要塞司令官であるジェラード・ガルシア少将が1人シェルターに隠れているところを発見された。

 

「離せ貴様ら! ぐっ……!」

 

 引っ立てられたガルシアは、要塞の職員を皆殺しにしてもまだ怒りの収まらないアモントン所属の部隊の前に縛られた状態で放り出される。

 

「ヒィッ……!? う、うわああぁぁぁ!?」

 

 鬼の形相を浮かべるアモントン所属のザフトたちに囲まれ、それまでの威勢は引っこみガルシアは芋虫のように這って逃げ出し始めた。

 

 しかし、コーディネイターの兵士たちに囲まれてそんな無様な逃げ方で逃げ切れるはずもなく。

 すぐに捕まり、集団からタコ殴りを受ける。

 

「テメエのせいで、艦長たちが死んだ! ふざけんじゃねえよナチュラル!」

「アルテミスの司令官だろうが! なら、部下のやった罪の責任とれよな!」

 

「ま、待て……! 私は、知らん! あいつらが勝手にやったこと──」

 

「黙れぇ!」

 

「ブホッ!?」

 

 それは部下が勝手にやったことだと言い訳を並べ立てようとしたガルシアだが、まともに聞くつもりのないザフトたちにとっては不愉快でしかなく、芋虫のように転がるその腹を蹴りつけられた。

 

「た、頼む……命だけは……」

 

「うるせえ!」

 

「ギャアアァァァ!?」

 

 よだれを垂らしながら無様な姿で命乞いをするガルシアに、怒りの収まらないアモントンの生き残りが銃で足を撃ち抜き、ガルシアの悲鳴が響き渡った。

 

「あ、足が……! 私の、足がぁぁぁあああ!?」

 

 血と激痛が止まることなく流れる足を見て悲鳴をあげるガルシア。

 こんな無様な奴が指揮をとる敵にアモントンを沈められたと思うと、アモントンの生き残りたちは腸が煮え繰り返る思いである。

 

「おい、相手は地球連合の高官だぞ。情報をできるだけ引き抜くためにも殺すんじゃない」

 

「チッ……!」

 

 このままでは殺しかねないアモントンの生き残りたちを、他のザフト兵が止める。

 

 こんな奴でも、ガルシアは連合の少将である。拷問にかけて情報を引き抜くためにも、死んでもらっては困る。

 

 逃げ延びたアルテミスの生き残りを除き要塞に残ったナチュラルたちはガルシア以外一切の例外なく全員殺したので、アモントンの生き残りはもう怒りをぶつける矛先がない。

 舌打ちをしながらも、しぶしぶガルシアまで殺すことはやめたアモントンの生き残りが下がり、床には顔面から汗と涙と鼻汁を流すガルシアとマルピーギ所属のザフト兵たちが残された。

 

「い、痛い……死んで、しまう……! た、頼む……何でも、話す! だから、止血を……!」

 

「……拷問の必要すらなさそうだな」

 

 ガルシアの姿に、こんな奴が将官にたつ連合の人材不足が哀れに感じる。

 拷問にかけるまでもなく、ガルシアは自分の知る連合の情報をベラベラと喋るが、辺境に追放された男の持つ情報には大した内容はなかった。

 

「チッ……もう不愉快だ。大した情報も得られそうにないし、こいつも殺してしまおう」

 

「そうだな」

 

「ま、待ってくれ! 頼む! 金か? 地位か? なんでもやるから、命だけは助けてくれぇ!」

 

 これ以上生かしていても不愉快なだけ。

 もう殺そうと、必死で命乞いするガルシアの眉間に銃を突きつける。

 

 ──その時だった。

 

『総員戦闘配置! 連合の艦隊が接近中、MS部隊は直ちに迎撃に発進せよ! 繰り返す、直ちに迎撃に発進せよ!』

 

 アルテミスの内部に警報が響き渡る。

 地球連合の一個艦隊が接近中とのことであり、MS部隊に出撃命令が出された。

 

「疲れも抜けてないが、このむしゃくしゃした気分を晴らすにはうってつけだな!」

「ククク……血祭りに上げてやるよ、ナチュラル共……!」

 

「行くぞ野郎ども! マルピーギ隊、総員搭乗せよ!」

 

 マルピーギ所属のMS部隊を率いるヴァルター・ケルステンの指示に基づき、マルピーギ所属のMSパイロット達がそれぞれの愛機のジンに乗り込む。

 

 他の部隊のMSパイロット達も、疲れの溜まる体に鞭を打って出撃態勢を整えていく。

 

「絶対皆殺しにしてやるナチュラルども!」

「死ぬだけで楽になると思うなよ……生き残ったらとっ捕まえて散々に嬲り殺してやるからな!」

「1人も生かしてやらねえ! 全員殺す!」

「ナチュラル共に死を!」

「コーディネイターの、ザフトの正義の鉄槌を!」

 

 アモントンの部隊は母艦を失った怒りがやはり収まっておらず、戦意をみなぎらせて1番手として出撃していった。

 

「遅れをとるな!」

「行くぞお前ら!」

「血祭りだナチュラルども!」

「手柄がなくなるぞ! ナチュラル狩りだ!」

「狩りなんて言ってやるなよ。あいつら動く雑草だ、駆除って呼べよ! ギャハハハハ!」

「おうおう雑草駆除だ。生きる価値もねえクソどもを沈めてやるぜ!」

 

 続けてケルステンの率いるマルピーギの部隊も出撃する。

 こちらはむしろナチュラルを露骨に見下し、狩りだの駆除のおよそ人を相手にする言葉とは思えない、どこかこれからの一方的な殺戮を想像して楽しむかのように出撃していく。

 

「チッ……少しは休ませろっての」

「まあいいんじゃねえの? 憂さ晴らしにはちょうどいい」

「寝る前にもう一仕事だな」

「女でもいれば寝る前に捕虜にして回そうぜ」

「ゴミみたいなナチュラルのメス使うのかよ」

「無駄口叩いている暇があるならさっさと動け。オストヴァルド隊、出るぞ!」

 

 最後にヘルマン・オストヴァルドが率いるクーロン所属のMS部隊が発進する。

 疲労が抜けきっていない不満を垂らしながらも、最初から勝利するのが当たり前であるかのように戦後の戦利品に意識を割きながら、不眠のストレスも相成りコーディネイターの自由と正義という大義のもとに集ったザフトの兵士とは思えない欲望を隠しもしない下品な言葉を並べながら飛び立っていく。

 

「敵は一個艦隊だ、気をぬくな! マルピーギ、発進!」

 

「オストヴァルド隊長を援護するぞ! クーロン、発進!」

 

 最後に、MSに続くように2隻のローラシア級もアルテミスから発進する。

 

 その様子は、要塞に備えられているカメラを通してガルシアの転がる格納庫のモニターにも映し出されている。

 

「今更ノコノコと……!」

 

「はっ! おめでたい奴だな」

 

 ガルシアの監視に残された2人のザフト兵が、アルテミスはすでに陥落した頃になってようやく到来した援軍に苛立ちを募らせるガルシアをあざ笑うように見下す。

 

「こっちはMSが17機にローラシア級が2隻という戦力だ。あんな艦隊でどうにかできると思っているのかよ?」

「あいつらが殲滅されたら、次はお前を殺す番だ。ナチュラルどもが俺たちに蹴散らされ壊滅していく様をその特等席で眺めてろよ」

 

「ヒィ!?」

 

 一個艦隊を前にも余裕を崩さないザフト兵の言葉に、ガルシアは殺されるしかない未来に絶望する。

 

 

 

 だが、ザフトたちもガルシアも知らない。

 その艦隊が、彼らの想像する能力的に劣る上にMSもないハエ呼ばわりしているメビウス頼みのナチュラル共とは違う、彼らの知る質で劣るのを数で補う普通の地球連合軍のそれとは全く違う者達であることを。

 

 17機のMSは、確かに戦い方によっては艦隊を沈めることも可能なほどの大戦力である。

 ただし、それは大前提として対する連合側の艦隊が質で劣るメビウスしか配備されていない場合である。

 

 仮にMSという兵器を同程度の戦力保有する敵であった場合、その戦力差は容易に埋められることができる。

 

 マルピーギらザフト達は知らなかった。

 アルテミスに攻めてきたその艦隊が、MSを配備されており、またメビウスなどの格下の兵器を相手取るばかりのザフトと違い、ザフト達の知らない対MS戦闘の修羅場を幾度もくくり抜けてきた猛者達が多数在籍していることを。

 何より、多くのコーディネイターを擁しながら、ザフトに対して並々ならぬ敵意を抱く者達であることを。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 アルテミスから迎撃のためにザフトの大部隊が出撃してきた様子は、第9航宙機動艦隊の放った斥候だけでなく、各艦の各種索敵システムやカメラによる目視からも確認された。

 

「アルテミスより敵部隊が出撃してきました。MS兵器17機、機種はシグー3機、ジン14機の約6個小隊。また、母艦と思われる艦艇が2隻、艦種は両方ともローラシア級戦闘艦です!」

 

「迎撃に出るぞ! MS・MA混成機動連隊、出撃!」

 

 敵の出撃を受け、艦隊旗艦であるヴィラールにいる第9航宙機動艦隊の機動兵器部隊を指揮するアルトリアが号令し、第9航宙機動艦隊からもメビウスとジンらMSの混成機動兵器部隊が出撃する。

 

 数は隊長機であるアルトリアの扱うシグーが1機、各々の装備を揃えたジンが6機、ピエール中佐の率いるアルテミスの生き残りを含めたメビウスが30機である。

 ジン1機に対しメビウスは5機でようやく互角という戦力比。MSが1機ずつを相手取るとしても、戦力的にはアルトリア率いる連隊の方が劣勢である。

 

 だが、彼らの目に恐れの色は一切ない。

 

「フェルナンドたちの仇だ! ザフトどもを殲滅しろ、容赦するな! 奴らが積み重ねた悪行を清算させろ! 首を取れ! 白旗を上げない者は逃げる背中を撃ち落せ!」

 

「艦長の、ユウの仇だ……あいつらの首全て落とす!」

 

「ケイニーさんを、マティアスさんを、ユーさんをよくも……あなた達は、絶対に許しません。首を寄越せエエエェェェェ!!」

 

「「「その首よこせザフト共!!」」」

 

 グスタフを卑劣な手段で沈められ、クルーゼ隊に怒り心頭となっている彼らにとって、アルテミスを攻め落としたザフトの駐屯軍はその怒りをぶつけるにもってこいの敵である。

 特に恋人であるフェルナンドを殺されたアルトリアと、グスタフを守れずフェルナンド達の遺体を乗せた脱出艇を破壊しなければならなかったミハエル、フェルナンドに助けられ1人だけ生き残りさらには兄のような存在であったユウを殺されたミランダの怒りは凄まじく、他の者達と比較して一層敵意を漲らせて、迎撃に出てきたジン部隊に突っ込んでいった。

 

「バカな、なんでナチュラルどもがMSを!?」

「鹵獲されたジンに連合に与した裏切り者が乗っているんだろ! ぶち殺してやれ!」

 

 ザフトの兵器であるはずのMSが出てきたことに、驚くザフトのパイロット達。

 だが連合に与して鹵獲されたジンを操りザフトに刃向かう裏切り者のコーディネイター達の存在はザフトでも知られているので、すぐにそいつらだろうと判断する。

 戦力的にも連合側が少ないこと、アカデミー時代からMSに慣れ親しんだ自分たちの方が技量で上回っているという自信があったことで、彼らは余裕を取り戻しもろとも潰してやると勇んで襲いかかる。

 

「──其処だ、落ちろ!」

 

「MSを扱うくらいで俺たちザフトに──ギャアアァァァ!?」

 

「ハアッ!?」

「嘘だろ!?」

 

 だが、接敵前に。

 射程に入るなりロックオンする暇すら与えず放たれてきたキャットゥスの砲撃がアモントン隊の1機のジンを撃ち抜き、宇宙の藻屑へと変えた。

 

「ぼさっとするな──ぐああぁぁ!?」

 

「隊長!」

 

 隊員達に気をぬくなと怒鳴りつけ、ロックオンされないように回避行動をとりながら飛行していた隊長機のシグー。

 しかしその機動を読み切るように、アルトリアのシグーが放つ機銃がコクピットを容易く撃ち抜き撃破する。

 

「なんでこいつらこんなに正確に──うぎゃあああぁぁぁ!?」

「くそ、この──ぐああぁぁ!?」

 

 他のジンも、次々に撃破されていく。

 反撃する暇さえ与えてもらえない機動で翻弄し、こちらの回避先を予知するかのように正確に撃ち込まれる攻撃は、コーディネイターの操るMSがまるでジンに落とされるメビウスの群れのように次々と破壊されていく。

 

 アカデミーよりMSに慣れ親しんできたから、MSの扱いならば圧倒的に経験がある。

 確かに、彼らの思う通りザフトの兵士に比べればアルトリア達はMSを扱う機会は少ない。

 操作に慣れ親しんでいる技量ならば、ザフトの兵士達の方がはるかに経験が多いだろう。

 

 だが、ザフトの兵士達は本気でコーディネイターの扱うMSを相手に高機動戦を行うという経験値は、圧倒的に不足している。

 ずっと、ザフトの扱うMSを相手に実戦で殺し合いをし続けてきたアルトリア達第9航宙機動艦隊のMSパイロット達は、対MS戦闘ならばザフトの兵士達とは比べ物にならない修羅場をくぐり抜けてきた。

 

「馬鹿が。コーディネイターの扱うMSが相手だ、ご丁寧に照準を合わせてロックオンなんぞしてる暇があれば回避されるに決まっているだろ」

 

「敵の機動と回避先を予測してそこに銃撃を撃ち込み、攻撃を当てる。相手の攻撃をロックオン警告などではなく機体の動きや銃口、モノアイの方向から推測し回避する」

 

「コーディネイターのMS戦は、機動力がモノを言う。数秒先の戦闘の展開を見据えるくらいしなければ死ぬだろうが!」

 

 MSの火砲の照準を敵に向けた時、正確にその標的を撃破できるようにロックオン照準機能がついている場合がほとんどである。

 それにより自分が相手を狙えていること、また逆に相手から狙われていることを知り、引き金を引いたりとっさに回避したりする。

 

 しかし、戦力的に劣る戦場を多く経験してきた第9航宙機動艦隊のMSパイロット達にとって、コーディネイターの扱う機動力の優れたMS兵器はのんきにロックオンなんぞしていてはすぐに回避されてしまうし、ロックオン警報が出てから回避するなど当ててくださいと言っているようなものである。

 

 だから、そんなものに頼るのは二流のパイロット。

 照準を向けた時点で敵の回避先の方向まで予測してこそ攻撃は当たるものであり、ロックオンなんぞされる前に銃を向けられた時点でその銃口や機体のカメラシステムであるモノアイの方向などからどこに照準を合わせているのかを瞬時に見極め回避行動をとる。

 それこそ数秒先の戦況まで予測して攻撃と回避を行う。

 視界に一瞬入った敵影から動きを予測して、死角に回りこまれようとも奇襲も予測して逆に攻撃を撃ち込み対応する。

 そういった戦い方ができなければ、ザフトの扱うMS相手に数の劣勢を覆して渡り合うことなどできない。

 

 アルトリア達第9航宙機動艦隊のMSパイロットは、もはや端から見れば一種の未来予知に近いそういった戦い方を習熟させており、MS同士の高機動戦闘に慣れ親しんだ兵達であった。

 

 メビウス相手にハエたたきと称してのんきにロックオンして、のんきにロックオンされたら避けて、そんな戦い方ばかりしてきたようなザフトの兵士達が、ましてや疲れのたまっている彼らが相手になる敵ではなかった。

 

「うわぁぁぁ!?」

「え、援護を──ギャアアァァァ!?」

「あ、当たらない……! なんで──うぎゃあああぁぁぁ!?」

「ば、化け物──!?」

「くそ、調子にのるな裏切り者──ぐああぁぁ!?」

「当たれ当たれ当たれ──ギいやぁあああ!?」

「なんで、避けたはず──うぎゃあああぁぁぁ!?」

 

「お前達は私を怒らせた……! 首で贖え貴様ら!」

「首くびクビクビィ! 全然足りないんですヨォ! ユーさんの供養にならないじゃないですかぁぁぁあああ!」

「フェルナンド艦長をよくもだまし討ちしやがって……くたばりやがれザフト共が!」

「その首よこせゴラァ!」

 

 アルトリア達のMSに次々と落とされていくザフトのMS部隊。

 たった7機のMSが、シグー3機を含む17機のMS部隊をほぼ一方的に蹂躙していく。

 

 その光景に、マルピーギとクーロンの乗組員達が戦慄する。

 

「な、なんなんだあいつら……!?」

 

「艦長! 敵のメビウスが!」

 

 だが、当然彼らもまた標的。

 フェルナンドの仇を叫びザフトの首を欲する彼らの猛威から逃れられるわけがない。

 

 もはやアルトリア達に蹴散らされるしかないMS部隊をすり抜けてきた対艦ミサイルを満載しているメビウスの編隊が、僚機のいないマルピーギとクーロンに向かってきた。

 

「た、対空戦闘──」

 

「遅い! 堕ちろザフト!」

 

 まず犠牲になったのは、乗組員達がほとんど眠れておらず反応が見るからに遅いクーロンである。

 メビウスから発射される多数の対艦ミサイルが迎撃行動をとる前にクーロンを捉え、大量のミサイルによって蜂の巣にされたクーロンが何もできずに沈められた。

 

「クーロン撃沈!」

「え、MS部隊沈黙! 全滅です!」

 

「な、なんなんだこいつらは!? 化け物めエエエェェェェ!!」

 

「落ちろ!」

「首よこせ!」

「首置いてけ!」

「地獄に沈め!」

 

 そしてマルピーギの方も、すぐにメビウスの攻撃を受ける。

 マルピーギの艦長にできたのは、自分たちの知らない化物のような強さを見せる第9航宙機動艦隊へそんな捨て台詞を吐いて爆沈する艦の炎に包まれることだけだった。

 

「な、なんなんだよ、これ……?」

「嘘だろ……?」

 

 その光景は、モニター越しにアルテミスに残る2人のザフト兵とガルシアにも映る。

 

 本来ならば、ガルシアを人質にとり第9航宙機動艦隊の動きを封じるべきだったのだが、あまりにも一方的な蹂躙に、短時間の殲滅に2人のザフト兵はその行動をとる思考が浮かばなかった。

 

「「「その首置いてけザフト!」」」

 

「ぐあ!?」

「ぎゃあ!?」

 

 故に、外の敵を殲滅するなり素早く内部の制圧に乗り込んできた連合の兵士が来るまで何もできず。

 そして真っ先に撃ち殺されたことでガルシアを殺すことも、反撃もできないまま、多数の銃撃によって蜂の巣にされ、アルテミス駐留軍の最後の一兵に至るまでザフトは殲滅された。

 

「ご無事ですか!?」

 

「た、助けてください! どうか命だけはァ!」

 

「は、はい。もう大丈夫ですよ」

 

 そして、命拾いしたガルシアは、本来ならばここまで遅い救援に対して文句を並べ立てるつもりが、先ほどのザフト兵を殺す時の鬼の形相を浮かべた友軍の兵士たちに恐怖し、普段のプライド高い様子は見る影もなく怯えてしまうのだった。

 

 

 

 こうして、アルテミスの奪還はなされた。

 アルテミスの傘こそ破壊されており再使用は不可能、要塞の唯一の価値すら失ってしまっていたが、不落のアルテミスの奪還という功績はユーラシア連邦にとって大きな意義を持つ勝利であった。

 

「我らの勝利だ!」

 

「「「オオオオォォォォ!!」」」

 

 勝どきを上げるアルトリア達。

 彼らが歓喜の声を上げる中、1人隅でちぢこまるガルシア。

 

「コワイ……コーディネイター、コワイ……」

 

「ガルシア少将? あ、首元に血が──」

 

「やめてくれぇぇぇえええ! 首だけは、首だけはご容赦を!」

 

 その様子を心配した兵士が声をかけると、彼は負傷をものともしないというような軽快な動きで、泣きながら走り去っていったという。




ガルシア少将、本当は陰険な野心家で保身に走るずる賢い方なんですが、何故かただの小物になってしまった……。
(ドウシテコウナッタ?)

……ま、まあ、絶体絶命の中生き残れた、命あるだけ良しとしましょう。



今話がアルテミス攻防戦の最終話になります。
次回からアークエンジェルとクルーゼ隊の戦いの方に移ります。
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