その首置いてけザフト共 作:みども
イージスに向かって重斬刀とバルルス改をそれぞれ装備したジンで突撃するユウ。
イージスがビームライフルを構えるも、銃口から射線を予測してくるユウはロックオンすらさせない。
「この……!」
当たる以前に照準すら定められない敵に苛立ちと戦慄を覚えながら、ロックオンできないならばとアスランは2丁目のビームライフルを取り出し、ジンめがけて適当な照準で連射を仕掛ける。
命中精度の悪さは数でカバーし、ジンが飛んでいる方向に手当たり次第にビームライフルを撃ちまくった。
イージスのビームライフルの威力ならば、一撃でも掠めればジンの装甲には甚大なダメージとなる。
下手な鉄砲も数撃てば当たるという、ライフルなのに散弾銃のように扱う攻撃。
狙って当てられる敵でないことを短い攻防で嫌というほど思い知らされたアスランは、こうでもしなければ捉えることすらできない敵だと戦い方を変えてきた。
「弾幕はライフルで張るものではない。貴様らのディンが扱う機銃と散弾銃の連射に比べれば薄いんだよ!」
『いやあそこまでくると見て躱せるレベルじゃねえだろ!』
だが、無数に撃たれるビームライフルの光線も、ユウのジンはすべて躱してくる。
銃口という射線のヒントが出ているならば、回避する方向は予測できる。
機銃やミサイルポッドの連射すら回避できるユウにとって、2丁のビームライフルの狙いを定めない連射で仕掛ける手数では、まだまだ薄い弾幕である。
ムウのツッコミがアークエンジェルに響く中、イージスの2丁のビームライフルが繰り出す乱射をくぐり抜け、距離を詰めたユウはバルルス改を撃ち込んだ。
「くっ──!」
とっさに回避しようとしたイージスだが、そこにさらにもう1発バルルス改が撃ち込まれ、逃げた先の回避不可能なところへ投げつけられた重斬刀にイージスは被弾してしまった。
ビームライフルが1丁イージスの手から落ちる。
不利を察したアスランは、即座にMA形態に移行。ユウのジンから距離を取るためにバーニアを吹かしMA形態時の機動力を生かして急いで離れた。
フェイズシフト装甲が守ったが、ビームライフルの連射に一方的な被弾でイージスはかなりバッテリーを消耗してしまっている。
「チッ──!」
ユウの方は、いつもの癖で銃撃により牽制し逃げ道に重斬刀を投げつけて撃破する手順をフェイズシフト装甲を考慮せずしてしまったことで、イージス撃破の好機を逸したことに思わず舌打ちをした。
バルルス改の残弾は残り4。
デュエルとバスターを敵が繰り出してくる可能性を考慮すると、イージスを相手に3発も消耗してまともなダメージを与えられていない状況が芳しくない。
補給のアテにしていたバルルス改を持っているジンが戦闘に入っていないため、これ以上の無駄撃ちは避けるべく一度トリガーをロックして機体を軽くする為にも一時的に手放し、代わりに重突撃機銃と重斬刀を装備して距離を取ったイージスに向け突撃を開始した。
誰であれ、ザフトは全員首を取る。
イージスのパイロットの技量は切り結んで把握した。MSの扱いは才能もあり高度なものだが、お行儀のいい戦い方しかできない典型的な実戦経験の少ないザフトならば一騎打ちで負ける道理はない。
フェイズシフト装甲はバッテリーを消耗して実体兵器の攻撃を軽減する特殊装甲とのことであり、限られたバッテリーを使ってほぼ全身の装甲を覆っているならば、ジンと比較し大容量のバッテリーを有するとしても関節部なども強固で防御性が高い反面、燃費も悪く継戦能力は決して長くはないはず。
ジンを追い払い余裕も出てきたので、弾数の多い重突撃機銃でフェイズシフト装甲を消耗させ、バッテリー切れを誘発するかコクピット内のパイロットをニコル同様に制圧して機体を奪還する方針に切り替えた。
なお、ニコルにぶつけられなかった恨みもあり、パイロットを気遣う気はない。最悪衝撃に負けてコクピットの中でグロッキーになるかミンチになっても構わない、何なら好機があればバルルス改で容赦無く殺す気満々なので、敵パイロットの安否は一切考慮しない攻撃を仕掛ける。
「その首寄越せ!」
イージスの構えたビームライフルの銃口からすぐに射線を推測し、そこから外れるとともに重突撃機銃を放ちながら接近する。
狙いはコクピットで、シールドを構えたイージスにフェイズシフト装甲を削る銃撃を撃ち込みながら距離を詰め、シールドを蹴り飛ばして強引に射線を開ける。
「かかった──なっ!?」
アスランはその瞬間を狙いシールドの後ろに隠していたビームライフルを発射しようとして、ユウが振りかぶり叩きつけてきた重突撃機銃にそれを妨害された。
重突撃機銃を叩きつけられたことで、衝撃により下に向いたビームライフルからかすりもしない方向に光線が飛ぶ。
一方のユウが操るジンはシールドもビームライフルも弾いて空いた胴体に向けもう片方の腕に持つ武装である重斬刀を振り下ろし、フェイズシフト装甲に守られるイージスの胴体部の中にあるコクピットへ両断こそできなかったが内部に大きな衝撃を与えた。
「うゥッ──!?」
「脅威となるビームライフルをシールドに隠していることに気づかなかったと思ったのか? 二番煎じは二流のすることだ馬鹿が!」
アスランの狙った、シールドの後ろに隠したビームライフルでジンを狙うことなど、ユウはアスランがビームライフルを隠している時点に既に気づいていた。
戦闘機動を行いながらも、敵の武装がどこにあるかというのは銃身や砲身の向きから射線の予測を組み立てるユウにとって重要な事項である。
常に敵の武装の狙う向きを把握しておくよう努めているユウが、それを隠している時点でイージスからの奇襲を察知しないはずがない。
シールドを蹴りつけるというのも、意表を突くには十分な効果があるかもしれないが2度も同じものを受ければ対策をされることとなる。
シールドを蹴りつけて強引に守りの態勢を崩す攻撃を仕掛けた時点で、ユウはアスランのビームライフルを隠して奇襲するという狙いも看破しており、その射線もシールドに隠れていない機体の姿勢からこちらのコクピットを狙っている低い位置に構えていることを察知していたので、狙われる時点で予測できた。
予測ができれば回避するのは容易である。
見えないライフルを機体の姿勢から予測するというのが普通のMSパイロットには困難なのだが、そこはお行儀よく戦うのは二流とされる第9航宙機動艦隊で戦ってきたユウである。
平然と見えないはずのライフルの射線を予測し、シールドを蹴りつけると同時に重突撃機銃を鈍器代わりに来た攻撃をどの角度で振り下ろせばそのライフルを叩き落とすことができるかまで用意した上で、アスランの罠にあえて飛び込みそしてそれを打ち破った。
当然それで済ませるつもりはない。
カウンターとして同時にビームライフルを重突撃機銃で殴りつけて射線を強引にずらして回避するとともに、シールドもビームライフルも退けられたイージスに対してカウンターとなる重斬刀による攻撃を叩き込んだのである。
フェイズシフト装甲が守っていようとも、コクピットの直上の装甲に叩きつけられた重斬刀の衝撃は内部のアスランを激しく襲った。
ジンだった場合には機体諸共コクピットを両断していただろう攻撃。
フェイズシフト装甲のおかげで何度目かの命の危険を免れたアスランだが、この攻撃がコクピットを襲った衝撃は非常に大きく、機体の制御がナチュラルから見てもわかるほどに揺らぐ。
「ぐゥ──!」
ニコルは気を失ったコクピットを襲う衝撃を受けても、それでも牽制する為にイージスのイーゲルシュテルンを撃ってきたのは、天才であるアスランだからこそできた芸当だろう。
だが、イージスの反撃はそれが限界だった。
「──堕ちろザフト」
そんな当てずっぽうなバルカンの弾丸に被弾するユウではない。
撃たれる前に射線から外れた位置に動き、コクピットめがけて重突撃機銃を撃ちまくる。
「うああアァァァァ!?」
重突撃機銃から放たれる絶え間ない銃撃が、コクピットに激しい衝撃を与え、フェイズシフト装甲のにバッテリーがみるみる削られていった。
だが、アスランに立て直す余裕はない。
警報が鳴り響き、衝撃に振り回されるコクピットで、同期のイザークたちも士官学校時代から一度も聞いたことがないような、天才が本気で追い詰められていることが伝わる悲鳴を上げる。
「アスラン! ──って危ねぇ!?」
アスランの悲鳴を聞き、オロールが急いでバルルス改にて援護しようと振り向くが、そこにユウのジンが蹴り飛ばしたイージスのシールドが飛んできた。
間一髪のところで機体への直撃は免れたオロールだが、構えようとしたバルルス改にシールドが直撃した衝撃でオロールのジンの手から離れてしまう。
オロールの援護射撃も妨害されたことで、イージスを助ける者がいなくなり、そこにユウのジンがイージスのコクピットの装甲めがけてジンによる体当たりを敢行。
「ぐぅ……!?」
このひときわ大きな衝撃により、アスランはコクピットの中でついに気を失ってしまった。
イージスの動きが止まる。
『す、すごい……』
機体性能と数の劣勢。
ユウにとってはシベリアから何度も経験してきた類の戦いとはいえ、ジンを圧倒するはずのイージスを制圧して見せたその技量はアークエンジェルで戦闘の様子を見ていたクルーたちを驚かせる。
だが、イージスを含める敵のMS1個小隊を制圧・撃退したユウ自身は、その勝利の余韻に浸ることはなかった。
『──新手が来てるぞ、気を付けろ坊主!』
アークエンジェルから聞き覚えのあるエンデュミオンの鷹の緊迫した様子の声が聞こえてくる。
ムウが警告してきた、ユウも感じ取っていた新手の気配。
アスランが仕掛けたビームライフルを隠してコクピットを狙う必殺の一撃すら容易に打ち砕かれた時点で、アスランの手に負える相手ではないと確信したクルーゼの扱うシグーがヴェサリウスから出撃しており、それが戦闘区域内に侵入してきたのである。
「私の部下をあまりいじめないでもらいたいものだ、招かれざる客人よ!」
クルーゼの駆使するシグーが重突撃機銃を撃ちながら、イージスの奪還を阻止する為にユウのジンへ向かってくる。
『気をつけろ、そいつは──』
「貴様も首を落とされたいのか! 拒否は認めない、首を寄越せザフト!」
『お前は本当にブレねえな!!』
クルーゼが乗る機体であることをアークエンジェルから察知し、ユウに注意を促そうとしたムウだが、全く聞いておらずしかもクルーゼ相手にも全くぶれない首置いてけ宣告をするその姿に思わずツッコんでしまった。
無力化したイージスから、即座に新たな脅威であるクルーゼのシグーに標的を変えるユウ。
フェイズシフト装甲が流れ弾からアスランを守ってくれることをイージスの装甲の色から確認しているクルーゼは、迷いなく重突撃機銃を連射してくる。
「私もお行儀良くはないのでね!」
いくらフェイズシフト装甲があろうとも、いつバッテリー切れを起こすかわからないし、衝撃は気絶したパイロットも襲う。
一見すると急いで部下を助けようとする隊長の鏡のような攻撃だが、その実戦争を煽る火種になり得るからとアスランの生死をまるで考慮しない非情な銃撃を仕掛けるクルーゼ。
「プレゼントだ、受け取れぇ!」
「何ッ──!?」
だが、ユウはそんなクルーゼですら驚愕する行動に出る。
重斬刀をバット代わりにして、バッディングセンターでストレス発散とでもいうかのような乱暴なフルスイングで、イージスをシグーめがけてかっ飛ばしたのである。
『はあ!?』
最悪落としても構わない。
そう言ったが、さすがにこの扱いにはアークエンジェルの面々も度肝を抜かれる。
「くっ……野蛮な戦いだな、イレギュラー!」
「お行儀良い戦いが望みなら、首を置いて他所へ失せろ!」
もはやお行儀云々のレベルではない。そして首に対する執念が強すぎる。
クルーゼですら驚きを隠せないイージスを使った攻撃(?)を仕掛けると、シグーめがけて飛ばされるその哀れな赤い機体を盾代わりにユウは一気に接近していった。
アスランは意識があればクルーゼ隊長の自分に当たることを考慮しない攻撃と、直後のお行儀の悪い妖怪の攻撃に晒されていたので、気を失っていてよかったかもしれない……
種割れもしていない、育ちの良さからお行儀のいい戦い方しか出来ない段階のアスランでは、ザフトへの憎悪から野蛮で残虐な戦い方も平気でする妖怪との一騎打ちは荷が重い相手でしたが……