その首置いてけザフト共   作:みども

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G兵器 8

 

 

 復旧後、ヴェサリウスにローエングリンを直撃させ、クルーゼ隊の追撃の足を封じた状態で離脱に成功したアークエンジェル。

 その時間を稼いでくれたジンは撃破されてしまったが、辛うじてその機体の回収にムウが成功し、MAの最高速度を活かしてシグーを出し抜きアークエンジェルへ帰投を果たす。

 

 ハッチに飛び込んだメビウス・ゼロが運んできた、破壊されたジンが降ろされるとともに、すぐに整備班と衛生兵が駆けつけた。

 

「すぐにコクピットを開け! 破損している、中はえらいことになっているはずだ!」

「ハッチを──熱っ!?」

 

 マードックらアークエンジェルの整備士たちが急いで外部からの緊急脱出装置を使い、ジンのコクピットを開こうとする。

 ハッチの歪みは開閉に支障がない程度だが、突き立てられたシグーの重斬刀が作った傷とバーニアの暴走で爆発した際の破壊の跡がコクピットを直撃しており、中のパイロットはただでは済まないかなりのダメージを負っている。

 

 いくらコーディネイターといえど、その破損は致命傷を負ってもおかしくない。

 すぐにハッチを開こうと試みるが、新たな問題が発生した。

 

 被弾した際に爆発の影響でコクピット内の生命維持機能と温度調節機能も破壊されたことにより、バーニア破損により発生した爆風が重斬刀につけられて開かれた傷口からコクピットを焼き、その熱が排出されることがなかったことで、ハッチが異常な熱を帯びていたのである。

 

「一刻を争う、急いで助けないとマジでパイロットがもたねえぞ!」

「重斬刀のつけた傷からアプローチしよう! 時間がない!」

 

 ただでさえ破損具合からコクピットの損傷は重大だというのに、加えてこの高熱で焼いている。

 どちらか一方の要因ですらパイロットの命に関わるというのに、それが2つも重なるという極めて悪い状況だった。

 

 これほどの損傷ともなれば、パイロットの生存は常識的に考えれば絶望的である。

 しかし本来彼の立場からすれば守る義務のないアークエンジェルの危機を命がけで救い、技術部にとって我が子のような存在であったG兵器の強奪を阻止してくれた恩人を何もできず見捨てることはできないと、整備士たちはあきらめずに救助を試みた。

 

 ハッチを火傷も恐れず強引に開き、また同時にシグーのつけた重斬刀の傷からもアプローチをかけて救出を試みる。

 

 そこで彼らは、コクピット内の惨状とともにその中で戦っていたユーラシアのコーディネイターの無茶を押し通した姿を見て、二重の意味で驚愕する。

 

「よし、ハッチが開いた! うっ……!?」

「──嘘だろ!? こいつ、パイロットスーツを着てねえぞ!」

 

 破片が飛び散る灼熱のコクピットの中で、力なくうなだれている左半身に大火傷を負ったパイロット。

 彼は、あろうことか機動兵器のパイロットを損傷やG、宇宙空間であれば窒息などの危機から守る最後の砦であるパイロットスーツを着用しておらず、支給されていた連合軍兵士の軍服でMSに乗り込んでいた。

 

「シートベルトを切れ! 担架もってこい! あと氷だ!」

「すぐに集中治療室に運ぶぞ!」

「ひ、ひどい……!? いえ、まだ息がある!」

 

 整備士たちの手で灼熱のコクピットから焼け爛れ、多数の破片が突き刺さった、血と煤にまみれたユウが運び出される。

 すぐに担架に固定され、氷を火傷箇所に当てられながら集中治療室に向かって運搬された。

 

 目を覆いたくなるような、生きているのが奇跡のような大怪我。

 すぐに集中治療室にて軍医ら衛生部が最優先で救命処置を開始した。

 

「──坊主は!?」

 

「今、衛生部の方々が集中治療室に。息はあるそうです」

 

 そこへ、メビウス・ゼロから降りてきたムウが駆けつけ、残った整備士たちに声をかける。

 整備班の1人、G兵器の開発にも携わっていた技術士官であるマリュー・ラミアス大尉が、ユウが運ばれていった扉を見ながら答える。

 ひとまず息はあったことを聞き、ムウは大きく息を吐いた。

 

「そうか……いや、まだ予断を許さないんだよな」

 

「ええ……ですが、私たちにできるのは彼の無事を祈ることだけ。先生たちを信じましょう」

 

「そうだな……」

 

 この時点で、彼らにできるのはもはや軍医を信じ無事を祈ることだけだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ヴェサリウスに対してのローエングリンによる狙撃に成功し、母艦を叩くことでクルーゼ隊を振り切ることに成功したアークエンジェル。

 進路を月に向け航行するブリッジにて、クルーゼ隊が散布したニューロトンジャマーの影響圏からの脱出にも成功し、ついにプトレマイオス基地との通信が可能な場所に到達した。

 

『そうか……』

 

 ヘリオポリス出航後のクルーゼ隊の待ち伏せ、デブリベルトにおける包囲網と偶然拾うことになったユーラシア軍の士官、ガモフとヴェサリウスによる挟撃とG兵器の損失。

 それらの報告をフッカーから受けたG兵器開発計画の責任者である第8艦隊提督のデュエイン・ハルバートンは、アークエンジェルの航跡を一度も遮ることなく聞くと、一言そうかとだけ言葉を漏らす。

 

 G兵器開発計画がヘリオポリスで進められていたことは、おそらくオーブに避難民として紛れ込んでいるプラントのスパイが情報を流したと推測される。

 両勢力とわず難民を受け入れているオーブは、中立国である一方スパイの流入も多く、ある意味諜報の世界で両勢力が激しくしのぎを削りあう戦場となっている。

 

 特にG兵器開発は、地球連合に協力してくれるコーディネイターの力が必要不可欠だった。

 そういった人員はオーブ側が確保してくれていたのだが、やはり永世中立を謳い大戦を外のせかいの出来事と認識している面があった部分は否めない。平和ボケの弊害か、工作員を排除する能力が不足していたとしてもおかしくはなかった。

 

『失ったのは、デュエル、バスター、イージスの3機か』

 

「はい。データはすべてアークエンジェルにありますが、機体に関しては現状ストライクとブリッツの2機のみとなっており……加えて侵入を許したザフトレッドにより、これら2機のG兵器もナチュラル用OSが書き換えられておりもはやテストパイロットたちでは立ち上がらせることすらできない状態となっています」

 

『ナチュラル用OSについては、モルゲンレーテ本社にてまだ開発が進行している、あとは彼らの完成を待つほかないだろう。ともかく、2機が無事なのは幸いだな。フッカー、そしてアークエンジェルの諸君。よく守り抜いてくれた』

 

「ありがとうございます」

 

 フッカーたちの独断に近い形で未完成のG兵器を搭載しヘリオポリスを出航したアークエンジェル。

 航路上にてザフトの襲撃に遭いながらも、ストライクとブリッツの2機を守りここまでたどり着いた。

 そのことに感謝を告げるハルバートンに、ブリッジの一同が敬礼をする。

 

『第8艦隊の一部を護衛として派遣する。あと少しの辛抱だ、君たちの無事を祈る』

 

「はっ! 必ず、G兵器を提督の元までお届けします!」

 

 第8艦隊から援軍が派遣されることを聞き、これまで単艦で戦い続けてきたアークエンジェルの一同に安堵の色が浮かぶ。

 第8艦隊との合流が叶えば、ザフトも容易には手を出せなくなるはず。

 ヴェサリウスを叩いた現状、追い風となる情報が続けざまに入ることでアークエンジェルのクルーたちにも余裕が生まれ始めた。

 

 アークエンジェルとの通信後、ハルバートンはすぐにモントゴメリ、ロー、バーナードの3隻からなる先見艦隊を出航させ、第8艦隊もプトレマイオス基地を立ちアークエンジェルと合流するために動き出した。

 

「艦長、少しよろしいですか?」

 

「……彼らのことか」

 

「はい」

 

 張り詰めた空気が緩和されたアークエンジェルのブリッジにて、艦長席に腰を下ろしようやく一息ついたフッカーに、バジルールが2つ胸中に抱えている不安について尋ねる。

 

 フッカーの彼らという言葉が指すのは、それぞれ異なる経緯でこの艦に乗っている正規のアークエンジェルのクルーではない3名のコーディネイターである。

 

「ザフトレッドの2名は、確か──」

 

「どちらも父親がプラント最高評議会の議員だとのことです」

 

「ユーリ・アマルフィとジェレミー・マクスウェルだったな。……彼らは普通の捕虜とは違う、私の手に負える存在ではない。ハルバートン提督に預けることにする。閣下ならば、非道な扱いはなさらないはずだ」

 

「了解いたしました」

 

 ザフトの投降した2人、ニコル・アマルフィとラスティ・マッケンジーに関しては、処遇はハルバートン提督らに任せることとなるだろう。

 彼らはユーリ・アマルフィ、ジェレミー・マクスウェルというプラントの最高評議会議員を親に持つ重要人物。

 アークエンジェルの艦長に過ぎないフッカーの手には負えない存在である。外交面に関しては、上層部に任せるしかない。

 

「「…………」」

 

 問題は、もう1人。

 偶然からアークエンジェルが保護し、そしてG兵器強奪の阻止とクルーゼ隊撃退に尽力してくれたユーラシア連邦所属の少尉の方であった。

 

「彼の容体は?」

 

「集中治療室にて手術中とのことです。いまだに予断を許さない状況が続いていると」

 

「そうか……」

 

 フッカー個人としては、彼には感謝してもしきれない大きな恩義がある。

 人道的観点から宇宙空間で漂うユウを保護したアークエンジェルだが、機密情報が満載されたこの艦で行動の自由を許すわけにはいかず、当初は医務室に治療という名の下に通信手段などをシャットアウトした軟禁状態を強要し、G兵器の強奪阻止をしてくれた際には有無を言わさず独房に拘束した。

 

 しかしユウは命を救われた恩義があるからと、大西洋連邦のために戦う義務は本来ない立場であるというのに冷遇を気にもせず従順に協力し、ガモフ特攻の際には負傷者の身を押してジンを強奪しアークエンジェル内部に侵入した敵の迎撃のために活躍してくれた上に、ブリッツとストライクを守り抜いてくれた。

 その際の戦闘でも、G兵器とアークエンジェルの損傷も可能な限り少なくするように気遣い立ち回り制圧してくれた。

 

 さらには続くヴェサリウスからの攻撃に対しても、アークエンジェルが動けるようになる時間を稼ぐためにたった1機でジン2機、イージス、シグーに立ち向かい命懸けでその時間を稼いでくれた。

 今のアークエンジェルがあるのは、彼の尽力が極めて大きかった。

 

 アークエンジェル、G兵器、そしてこの艦にいる乗組員たち。

 全てを命がけで守り抜いてきてくれたユウは、フッカーたちにとって救世主といえる存在となっている。

 

 ──だが、同時に。

 アークエンジェルの艦長としてのフッカーから見たユウという人物は、このまま負傷が元で死んでくれるのが後腐れもなく都合がいいという、危険人物でもあった。

 

 彼の活躍でG兵器の強奪は一部阻止され、アークエンジェルは守られ、ザフトの撃退にも成功した。

 

 確かに彼のおかげでアークエンジェルはここまでこれたが、第8艦隊と合流が叶えばザフトの襲撃にも対抗できるようになる。つまり、ムウたちに代わりアークエンジェルを守ってくれているユウという護衛の存在は必要なくなるのである。

 

 ヴェサリウスを叩いた今、艦隊との合流前のクルーゼ隊の襲来の可能性は極めて低くなっている。

 用済みとなったユウという存在は、逆にG兵器という大西洋連邦の機密の存在を知り、そしてそれを操縦できる能力をこの艦内でただ1人持っている危険な存在である。

 

 同盟国とはいえ、ユウの属するユーラシア連邦はアークエンジェルが属する大西洋連邦の潜在敵国である。

 そのユーラシアにG兵器を持ち出すために動かれれば、MA部隊も無力でありテストパイロットたちももう動かせないMSしかないアークエンジェルにはそれを阻止するすべがない。

 結果的にアークエンジェルの窮地を救ったが、ユウはガモフ襲撃時に医務室における監視の目からアークエンジェルが気づかない間に脱出したのだ。独房に閉じ込めても、同じように脱出されないとはかぎらない。

 ユーラシア連邦にまでG兵器が強奪されるというのは、ザフトの脅威が薄れた現状最も危惧するべき事態だった。

 

 アークエンジェルの艦長であり大西洋連邦としてのフッカーとしては、ユウはもはや用済みでありむしろ存在が脅威となる危険人物なのである。

 ユウ個人のこれまでの協力的な対応などから信用できる人柄だと判断できないこともないが、冷酷だがこのままシグーにやられた負傷で死んでくれるのが都合が良かった。

 

 むしろ艦長として艦と乗組員たちの安全を最優先するならば、軍医に今すぐユウの治療を取りやめて生死に関わるものではないとはいえまだ数多くいるアークエンジェルの負傷者の治療をするよう指示するのが正しい。

 

 だが、さすがにコーディネイター相手といえどもそこまで割り切れるものではない。

 これだけ恩がある相手に対してそのような対応をすれば、フッカーは自分の中で壊してはいけない大事なものが戦争の狂気で粉々に砕け散りそうな恐怖があり、艦長としての最善よりも個人的な感謝の念を優先して軍医たちをユウの治療に当たらせていた。

 

「……艦長という立場として、大西洋連邦の軍人の立場としては、用済みとなった現状ではこのまま死んでもらうのが最善だと思っている。一層の事、緊急手術を中止させて見殺ししてしまうのが確実であり、外聞的にも問題が少なくて済むとな」

 

「なっ──! 艦長、それはあまりにも──」

 

「分かっている! 私もそこまで割り切れるものじゃない。これだけ助けられ、それをあだで返すような待遇を強いて、その末に用済みとあれば見殺しにするなどできない!」

 

 ナタルも絶句する冷酷な言葉。

 フッカーもそれをすぐに否定したが、立場からくるものとはいえその選択肢が浮かんだ時点で我ながらこの戦争の狂気に毒されていると戦慄を覚えたほどである。

 

「……生きてプトレマイオス基地に到着したとしても、やはりユーラシア連邦への返還には時間がかかることになるだろう。彼は機密情報を知りすぎている。G兵器の存在、そのスペック、開発計画そのもの、そしてモルゲンレーテ社の協力の元に作られた大西洋連邦の開発した多くの新技術」

 

「では、プトレマイオス基地到着後の彼の行動の自由は──」

 

「しばらくは、監禁同然の生活を強要することになるだろう」

 

「…………」

 

 アークエンジェルのために命がけで戦い、その末に生死の境をさまよっている。

 出撃を依頼した身として、この恩ある相手の負傷の原因が自分にあると感じているナタルは、生きてプトレマイオス基地にたどり着いたとしてもその後の境遇が明るいものではないだろうとの予測を聞かされ、表情が陰りを帯びた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一方、アークエンジェルにしてやられたヴェサリウスの方では。

 アスランの乗るイージスを無事回収したオロールのジン、そしてユウとの戦闘で損害を受けたクルーゼのシグーが帰還し、ヴェサリウスの修理が進められていた。

 

 ヴェサリウスの方で死傷者が出なかったのは幸いだが、大破した艦は戦闘は当然ながら航行することすら不可能な状態であり、アークエンジェルの追撃は断念せざるを得ない状況である。

 

 結果的にイージスまで動員した戦いは、たった1機のジンに足止めをくらい、アークエンジェルを制圧するどころかミゲルが負傷、ジン1機とイージスが小破、シグーが中破、ヴェサリウスが大破という損害を受けた。

 イージスは機体こそフェイズシフト装甲のおかげで無事だったが、ビームライフルを1丁とシールドを無くしている。機体を強奪してきたので、当然ヴェサリウスにG兵器の予備パーツや武装の類はない。

 

 たが、当然クルーゼは諦めていなかった。

 ヴェサリウスが追撃に動けないのであれば、友軍を使うほかない。

 パトリックに働きかけ、月に繋がれた通信から位置を補足したアークエンジェルに対し、第8艦隊の増援との合流前に沈めるべく部隊を派遣させた。

 

 同時にヴェサリウスからも部隊を派遣することを決定し、MA形態のイージスが牽引するバスターとデュエルで接近し攻撃を仕掛けるというG兵器3機による強襲作戦を立てた。

 

 イージスの修繕とバッテリーの充電が完了次第、ヴェサリウスからも出撃する。

 いよいよ俺たちの出番だと意気込むイザークとディアッカに対し、疲労を鑑みて今回は待機を命じられたアスランは2人から少し離れてアークエンジェルがいる──すなわち2人の親友が今もナチュラルに囚われの身となっている方向を眺め、クルーゼに無理を言ってまで参加させてもらった前回の戦いで助けることができなかったことを悔やんでいた。

 

(ニコル、ラスティ……どうか無事でいてほしい。2人は必ず俺が助ける。だからそれまで──)

 

「何黄昏てんだよアスラン」

 

「ミゲル……」

 

 そこに上半身を包帯で巻かれミイラ状態となっている黄昏の魔弾ことミゲルが声をかけてきた。

 一命は取り留めたものの、地球の重力下であれば歩くこともままならないほどの重傷である。イージスの修復を優先しているため、当面の出撃許可は出ないだろう。

 

「傷は、大丈夫か?」

 

「これくらい大した事ない──って言いたいところだが、当面はMSに乗れそうにないな。だがまあ、一端の戦士の顔になった後輩がいるから安心して託せるさ」

 

「……すまないミゲル。俺がもっと──」

 

「そういうのは言いっこなしだ! 戦場だぞ、死ななかっただけでも儲けもんさ。お前のせいだなんて俺も、オロールも、誰も思ってねえよ」

 

 安心させるようにアスランの肩を叩き、イザークたちを横目に励ますミゲル。

 

「今回はあいつらに任せて仲良く留守番組だ。仲間を信じて待つって事もお前は知るべきだな。そうじゃねえと、前線に向かう俺たちを見送ってくれる連中の気苦労が分からねえ」

 

「…………」

 

「そう凹むなよアスラン。イザークもディアッカも頼れるお前のライバルであり仲間だろ、1番切磋琢磨してこうして背中を預けあう間柄になった同期のお前が信じなくてどうすんだよ!」

 

「あ、ああ……そうだな……」

 

「あいつらだって口は悪いが、ニコルやラスティの事を本気で助けたいって思っているんだ。根っこが仲間思いなのはお前も知ってるだろ?」

 

「……ああ。ありがとう、ミゲル。少し、楽になった気がする」

 

「気にするな」

 

 怪我を感じさせない笑顔を見せたミゲルに、その心遣いと言葉に、アスランの胸中の不安は少しだけ和らぎ、イザークたちを信じようという気持ちが強くなる。

 

 戦場の狂気は人の心を蝕む。

 アスランたちよりも戦場に立つ日が早かった分、そうして壊れた仲間たちの存在を見る機会も多かったミゲルは、後輩たちにまでそうなってほしくないと、怪我をして戦えない身でもできることをするために後輩たちを気にかけていた。

 

 

 

 そして、クルーゼの要請した増援と、第8艦隊の先遣艦隊がアークエンジェルを捉えた頃。

 修繕を終えたイージス、イザークの乗るデュエル、ディアッカの乗るバスターの3機のG兵器が出撃する。

 

 今回イージスは2機の牽引と輸送が主任務のため、機体の軽量化のためにもビームライフルはヴェサリウスに置いている。

 

「牽引ワイヤーセット完了!」

 

「いつでもいいぞオロール」

 

「さっさと連れて行け。足つきは俺が沈める」

 

「あいよ。まったく相変わらずな奴だぜ……オロール・クーデンブルグ、イージス、出撃する!」

 

「うるさいわ、あいつらと一緒にするな! イザーク・ジュール、デュエル、出るぞ!」

 

「お前の事だぞイザーク。ディアッカ・エルスマン、バスター、出撃する!」

 

「舌噛むぞ、少し静かにしろよ。形態変更、牽引ワイヤー異常なしっと……行くぞ!」

 

 イージスがデュエルと牽引する形で、ヴェサリウスから3機のG兵器が本来味方であるはずの艦艇を潰すべく出撃していった。

 

 機動兵器の戦力をほぼ喪失しているアークエンジェルに、クルーゼの放つ新たな脅威が牙をむくこととなる。




アスラン、君は留守番です。
それからさりげなくミゲルも生存してます。
……本編よりも戦力的に劣勢(アークエンジェルは避難民を抱えておらず正規クルーがほぼ健在に対し、クルーゼ隊はニコルとブリッツ無し)のクルーゼ隊ですが、ネームドキャラの死亡率は少なめであります。
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