その首置いてけザフト共   作:みども

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月軌道会戦 2

 

 

 地球連合宇宙軍の本拠地である、月面基地プトレマイオス。

 G兵器開発の責任者であるデュエイン・ハルバートン准将率いる第8艦隊との合流、そしてこのプトレマイオス基地を目指していたアークエンジェル。

 

 クルーゼ隊からの度重なる襲撃を躱し続け、少し前にプトレマイオス基地との通信にも成功し、第8艦隊が派遣してくれた援軍の先遣艦隊との合流があともう少しで叶う所にて。

 ヴェサリウスを叩かれたクルーゼがなおも諦めずに出した最後の追撃の手である、プラント国防委員会パトリック・ザラに働きかけて出した援軍である2隻のナスカ級からなるザフト部隊によって、その合流を分断されてしまい、さらには後方からイージスによって牽引されてきたG兵器の襲撃を受けた。

 

 ザフトは1隻のナスカ級を先遣艦隊の牽制に展開させているため、アークエンジェルの攻撃に展開している戦力はナスカ級が1隻と偵察機とG兵器を含めてMSが5機。

 偵察型ジンは第8艦隊の先遣艦隊がアークエンジェル援護とザフトの索敵網撹乱のために出したニュートロンジャマーの影響下で正確な戦況を把握するための偵察に徹しており戦闘に加わっておらず、アークエンジェルに向かうナスカ級ヴァレットはまだ射程圏に入っていないため、実質的な敵戦力は現状バスター、イージス、デュエル、シグーの4機のMSのみである。

 

 だが、4機のMSの中で特にバスターとイージスがアークエンジェルにとって極めて大きな脅威であり、一撃で艦を撃沈に追い込める強力な武装を有している。

 ラミネート装甲により対艦武装を持たずビーム兵器主体のデュエルはともかく、D装備ほどではないがキャットゥスを装備しているシグーも決して無視できる脅威ではない。

 

 何より問題なのが、アークエンジェルには護衛として展開できる機動兵器がなかった。

 

 MAは大破して飛ぶことすら困難なメビウスが1機と、ガンバレルを2機喪失した上リニアガンが曲がりMS相手に有効的な攻撃手段の残っていないボロボロのメビウス・ゼロが1機と戦える機体がない。

 MSはブリッツ、ストライクと2機のG兵器、そして無傷の偵察型ジンが1機と機体はあるのだが、いずれもOSがコーディネイター用のものでありナチュラルのパイロットの手に負えるものではなく、出撃はおろか動かすことすらできない状態にあった。

 一応、MSを操縦できるコーディネイターの友軍兵士がこの艦には1人だけいるのだが、現在その人物は一命を取り留めたものの先の戦闘の負傷により未だに意識が戻っていない状態にあった。意識を取り戻したとしても、とてもMSに乗って戦わせられる体ではない。

 

 護衛の機動兵器がない中で、尚且つ不十分な対空装備でコーディネイターの扱うMSと戦うのは極めて困難であり、アークエンジェルは一方的な被弾を受け続け、バスターとイージスへの目標を絞った対空ミサイルの集中運用によりこの2機が攻勢に出ないよう牽制することで凌ぐのが精一杯の状態にあった。

 

「エルスマン君とグーデンブルク君は足つきの目を引きミサイルを誘引してくれ。その間にジュール君は機銃を潰して回りミサイルが尽きた時の友軍機の攻撃路を確保。私は推進器を潰す。キャットゥスは推進器をある程度潰せば弾切れとなるだろう。その後は、君たち3機で決めるんだ」

 

「「「了解!」」」

 

 アークエンジェルがイージスとバスターに対して集中的に牽制を仕掛けてくることから、アークエンジェルがその2機に対して強い警戒をしている──つまりはアークエンジェルを沈める決定打を持つ存在であることを見抜いたツヴァイは、あえてこの2機を囮として迎撃をひきつける間に、撃沈の決定打にはならないが足を潰したり迎撃の手を削ったりする事ができる自身のシグーとイザークのデュエルで攻める作戦を立てた。

 

 囮としてG兵器を用いる一方で、あくまでもアークエンジェルにとどめを刺す本命となる攻撃はG兵器であり、自身のシグーはその隙を作るための支援に回る。

 

 ペストマスクという不気味なことこの上ない外見を除けば、指示は的確であり、親への配慮もあるのだろうが他部隊の将兵に活躍の場を作るために動くことも厭わないなど、己の功績よりも勝利を考える合理的な思考を持つツヴァイ。

 それが最善ならば他部隊の者を指揮官とすることも認める柔軟な考えを持つクルーゼ隊の若者たちもまた、ツヴァイの指揮に従い、アークエンジェルを追い詰めていく。

 

 ほぼミサイルの標的にされず自由に動けているイザークのデュエルがイーゲルシュテルンを潰して回り、ツヴァイのシグーが推進器を狙いアークエンジェルの後方をとる。

 

「──捉えたぞ」

 

 ガモフの衝突にて特に損害の大きかった後方の迎撃能力は即応性に優れるイーゲルシュテルンの砲台は破壊されてしまっていたことで、イージスとバスターの牽制のために使う対空ミサイル以外のほぼすべての対空装備を失っており後方を取られればアークエンジェルにはほとんど迎撃能力がなかった。

 

「艦長、シグーに背後を取られました! 推進器を狙われています!」

 

「くっ……! ヘルダートで迎撃を──」

 

 オペレーターがシグーの動きから狙いを見抜くが、背後を取られた時点で既に手遅れ。

 ツヴァイのシグーが放つキャットゥスにより推進器を破壊され、その速力を大きく削られた。

 

「足は潰した。ミサイルも尽きる頃だろう。奴の進路はこちらの母艦で塞ぐ、後は君たちが決めろ!」

 

 速力が落ち、デュエルによりほとんどのイーゲルシュテルンが潰されたアークエンジェルに、ミサイルの数も減ってきたことでようやく攻撃に回れるようになったバスターが攻勢に出る。

 

「グゥレイト! 待たせたなイザーク、後はこいつで決めるぜ!」

 

「チッ! 癪だが、貴様の機体が最も決定打にふさわしい。ゼルマン艦長やマシュー達の仇を撃て!」

 

「なら俺は艦橋を──」

 

 すかさずスキュラを持つオロールの乗るイージスもアークエンジェルの艦橋に狙いを定め、MA形態でアークエンジェルの艦橋前に出る。

 

「艦長! イージスが!」

 

「うっ──!?」

 

 いくらラミネート装甲のアークエンジェルといえど、スキュラの一撃はそれを容易に貫く破壊力を持つ。

 もはや取れる手段はなく、直後に吹き飛ばされるだろうことに、CICの面々に恐怖と緊張が走る。

 

 そんな中、アークエンジェルの艦橋に狙いを定めたイージスは、スキュラを放つ直前に──フェイズシフト装甲がダウンした。

 

「……バッテリー不足でスキュラ発射不能だな」

 

「何をしているんだ貴様はぁ!」

 

「仕方無えだろ! お前ら運んで、ミサイルから逃げ回りで、もうスカスカなんだよ! だいたい俺はこの機体に乗り慣れてねえし、お前ら赤服見たくホイホイかわせねえんだよ!」

 

 デュエルとバスターを牽引しての飛行。オロールにとっては初めて乗る機体でバスター共々集中的に狙われることによる度重なる被弾。

 それらの要因が積み重なり、3機のG兵器で最も多くの消耗をしていたイージスのバッテリー不足。

 

 フェイズシフト装甲も維持できなくなるほどのバッテリーの消耗により、イージスはスキュラ発射のためのパワーも残っておらず、間一髪のところでアークエンジェルのCICは破壊を免れた。

 

「ふざけるなオロール! 俺たちがこれだけお膳立てしておいて、どれだけ被弾しているんだ!」

 

「堕とされたくないから離脱するわ」

 

「そうしておけよ。撃沈の手柄は俺だけのものになるから、むしろ好都合だ!」

 

「勝手に帰すなディアッカ!」

 

「ヴァレットへの着艦は私が許可しよう」

 

 フェイズシフト装甲がダウンしたイージスは、いつ撃墜されてもおかしくない。

 憎たらしい言葉とは裏腹に仲間への思いやりのあるディアッカにも後押しされる形でオロールはイージスをヴァレットへと引き上げていく。

 

「安心してる暇は無いぜ!」

 

「まずい、バスターが──!」

 

 しかしイージスの離脱は間一髪のところの延命に過ぎず、アークエンジェルの危機が去ったわけでは無い。

 艦橋を吹き飛ばされるという最悪の事態は避けられたものの、直後にディアッカのバスターから発射された超高インパルス長射程狙撃ライフルの放つビームにより、白い艦体の片方のカタパルトの根元が左舷側より貫かれた。

 

 アークエンジェルを走る大きな衝撃。

 緊急事態を知らせるアラートがCICに鳴り響く。

 

「被害状況を報告しろ!」

 

「左舷側カタパルトに被弾!」

 

「ダメージコントロール! 隔壁閉鎖! 整備班の救援急げ!」

 

 左側のカタパルトが根元から折れ落ち、艦体に穴ができる。

 フッカーが急いで指示が出すが、あの中にいただろう整備兵たちに大きな被害が出ていることは明確だった。

 

 そして、アークエンジェルのカタパルトを狙ったのは、艦を沈めるよりも重要な目的を果たすためでもある。

 

「狙い通り、これで足つきに突入できる、ニコルとラスティも助けられるしあいつらの機体も奪えるって寸法さ!」

 

 ディアッカの狙いは、アークエンジェルの装甲に突入口を開きニコル達を助けあわよくば今度こそすべてのG兵器を奪取することにあった。

 

 そして、そのタイミングでイージスを回収していたヴァレットが到着する。

 

「行くぞディアッカ! 俺たちの手でニコルとラスティを取り戻す!」

 

「オーケー! 悪いなゲラート隊長、1番やりは俺たちクルーゼ隊が貰う!」

 

「遠慮するな。君たちの手柄だ、好きに暴れるといい」

 

 デュエルとバスターが先頭となりアークエンジェルへ突入し、ダメージコントロールでもたつくCICの隙をつきゴッドフリートの狙いを定める暇もなく接近したナスカ級ヴァレットが続くように接舷し、多数のザフト兵がアークエンジェルに突入してくる。

 

「敵兵侵入!」

 

「保安部、総力を持って迎撃しろ! 絶対に艦を渡すな!」

 

 前回はジンを使ったユウがいたから、艦の奪還を免れることができた。

 しかし今回、彼はいない。

 

 再度の、しかも前回を上回る劣勢での、艦内での白兵戦がアークエンジェルにて展開されることとなる。

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