その首置いてけザフト共   作:みども

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ウランバートル攻略期限の3日目です。


ウランバートル攻防戦 6

 

 

 ウランバートル攻防戦の3日目。

 主戦力を喪失し、もはや師団の攻撃でも防衛が可能かどうかというレベルにまで戦力が低下したウランバートルは、この日──

 

「ウランバートルは我々ユーラシア軍によって取り戻す! 第13師団、突撃!」

 

 前日まで無謀な攻略を命令していた27機甲連隊を突然後方支援に下げ、2日間の戦闘に一切出ず戦力を温存していた第13師団が攻略のためにウランバートルへの攻撃を開始することで戦いの火蓋が切られた。

 

 ディンやヘリなどの航空戦力、主力となるMSの戦力を失し、人員も不足しているウランバートルからの迎撃の砲火は、1日目に27機甲連隊が挑んだ時と比較して明らかに弱い。

 対して攻撃を仕掛けるユーラシア軍の戦力は1個師団。3万からなる兵力、クマネズミを超える装甲と主砲を持つリニア・ガンタンクを主力とする戦車150両、装甲車250両、対MS兵器ミサイルを搭載した戦闘車両であるブルドック500台を擁するという、27機甲連隊をはるかに上回る規模である。

 

 対してウランバートルの守備隊は、主力となるMSはバクゥ2機とプラントにて開発されたバクゥの発展改良型4足歩行MSの先行開発試作機が1機のみである。

 残るは要塞化したウランバートルにMSの武装の予備パーツを流用するなどして多数設置した砲台など。

 2日目の戦いで機動兵器や兵員を大きく損耗したことにより都市の防衛戦力は大幅に低下しており、ハリネズミのように築いたこの要塞の砲台の稼働率も人員不足により低下していた。

 

「ここで師団を動かしてくるか……数に任せて突っ込んでくるナチュラル共に嫌という程砲撃を浴びせろ! ウランバートルが落とされれば、ユーラシアと東アジアの大規模な支援ルートが確立され、カオシュン攻略計画が困難となる! 絶対に抜かせるなよ!」

 

 ウランバートル守備隊長は残った戦力を総動員し、突撃してくるユーラシア連邦の大軍を相手に近づかせまいと、限られた兵力で使える全ての砲台を使い弾幕を張る。

 しかし、やはり2日目の戦闘で殆どの戦力を蹴散らされたことによる人員不足の影響は大きく、その弾幕は初日に比べてかなり少ない。

 

「やはり、ウランバートルに詰めるコーディネイター共は前日の戦いで戦力を大きく損耗していたな。敵の弾幕は薄いぞ! 数で押し込め! 都市への道を開け!」

 

 2日目の戦闘で戦力の多くを損失していたウランバートルの防衛能力は大きく低下していることを見抜いた第13師団の師団長は、師団の戦力を持ってすれば今のウランバートルは攻略可能と判断した。

 そしてウランバートルの攻略を27機甲連隊ではなく、自分たちの師団で成し遂げるために、27機甲連隊を後方に下げ本来連隊の監視を任務としウランバートルへの攻撃を予定していなかった師団を動員して攻撃を開始した。

 

 ウランバートルへの攻撃を想定していないとはいえ、場合によっては27機甲連隊の粛清も行うためにオスマンド・ユベールによって用意された師団である。

 航空戦力こそないが、本来は8,000〜1万の兵力で構成される他の地上軍の師団に比較して、実に3倍もの兵力を有するという大きく増強された特別編成の師団となっている。

 

 砲火にさらされながらもモンゴル高原を突き進む大量の車両と歩兵はその数の力を持って着実にウランバートルへの距離を詰めていた。

 

「数が多すぎる……砲撃戦じゃ時間稼ぎにしかならないかなやっぱり。こうなったら、ジリ貧になる前に打って出て幾つか部隊を潰し敵の出鼻を挫く。MS部隊を出すぞ、小隊出撃準備! そういうわけで、私も本国自慢の新型機で出ることにしますかね」

 

 弾幕が不足している現状では、いずれウランバートルに到達されるだろうと判断したザフトの守備隊長は、残った3機のMSを動員して出陣し敵に打撃を与えることで撹乱し時間を稼ぐことを決断。

 ウランバートルに残された2機のバクゥ、そして本国から送られたバクゥの発展改良型MS“ラゴゥ”の先行試作機からなるMS小隊を自ら率いて出撃した。

 

「敵側面の3部隊を潰して突破口を開いたら、横腹を荒らし撹乱してから即座に引き上げる。足を止めたり私の機体から離れたりしないようにね、勇んで突出すればすぐ包囲されるからな」

 

『『ハイッ!』』

 

「よーし、それじゃいきますか。副官、砲手よろしく」

 

「了解。制限時間は10分とします」

 

「はいはい。それでは、MS部隊出撃!」

 

 ウランバートルより3機のMSが出撃する。

 都市の南側より出撃した3機は、北と東より主力を展開し攻勢を行う師団の側面に向かうと右側面より攻撃を仕掛け幾つかの部隊を蹴散らす。

 

 バクゥがその機動力を最も発揮する地理的条件の揃うモンゴル高原の戦場では、疾走するバクゥやラゴゥに師団の車両部隊は迎撃が追いつかず、特にバクゥをはるかに上回る火力を持つラゴゥの攻撃がその猛威を振るい、ウランバートルの東を攻撃する部隊はいいように食い破られた。

 

 それにより師団に混乱が起こり攻勢が鈍化すると、すぐにMS部隊は機動力を活かして撤退。

 多少の損害と混乱による足止めを果たすと、戦果を欲張らず、落ち着きを取り戻し包囲網を展開する前にウランバートルへと引き上げていった。

 

 そしてウランバートルの西から再度出撃すると、西側を攻める部隊を難なく突破。

 今度は北に攻勢をかける部隊の側面をつき、同様に損害と混乱を与えて即座に撤退していった。

 

「ネズミのように鬱陶しい奴らだな……! MSを確認した戦線は攻勢の足を止めて迎撃に徹しろ! その間に他の戦線を押し上げる!」

 

 ラゴゥとバクゥの攻撃により攻勢の足が鈍化したことに苛立ちを覚えながらも、第13師団長は攻勢の手を緩めずに進撃を指示する。

 MS部隊が奇襲を仕掛けた方面は前進を一度止めて迎撃態勢を整え包囲網にはめ、その間に他の戦線を押し上げることで対応するよう指示を出した。

 

 両軍ともに航空戦力がないため平面的な戦場が展開する。

 それでも戦力の劣勢は否めず、MS部隊も時間稼ぎが精一杯でウランバートルに群がる連合軍の進撃の足を止めることはできずにいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そんなウランバートルの攻防戦が展開されている光景を、この日突然後方に回された27機甲連隊の面々は、砲火から離れた安全圏から見ていた。

 

「ユベールの野郎……! 本当にムカつくやつだなあいつ!」

 

 27機甲連隊の副長、アルトー・ピサロが腹に抱える苛立ちを隠すことなく怒鳴り声を上げる。

 

 3日でウランバートルを攻略しろ。

 この無謀な命令を遂行するため、2日間の戦闘に27機甲連隊は挑み、多くの犠牲を出しながらも敵戦力を削り、状況を攻略不可能ではないところまで持ってきていた。

 

 しかし、勝負の3日目になっていきなり前線に出ることを禁止され第13師団からの命令により後方へ回されることとなった。

 

「オスマンド・ユベール大佐より、第27機甲連隊には本日後方待機を命じられました。2日間の戦闘でお疲れでしょうから、あとは我々第13師団に任せてお仲間共の捕虜のお世話でもしていてください。ああ、何でしたらそのテロリスト共も我々にお任せしてもらっても構いませんよ。()()()()()()()()をお約束しますのでね。要するに、今日は黙ってウランバートルの攻略を我が師団が成功させることを黙って見ていたまえ」

 

 今朝、ユベールからの命令を届けにきたユベールの側近でもある伝令将校の言葉を思い出すだけで、アルトー・ピサロは腸が煮え繰り返る思いだった。

 

 27機甲連隊の活躍により正面からの攻略が可能となるほどに、ウランバートルにおけるザフトの守備隊の戦力は削られた。

 そのウランバートルの現状を見て、第13師団はウランバートルの攻略という功績を27機甲連隊ではなく自分たちのものにするために、ここに来て連隊はもう用済みだと言わんばかりにウランバートルの攻略にしゃしゃり出てきたのである。

 

 27機甲連隊にしてみれば、仲間たちの犠牲とアルトリアの策により無謀だった攻略が無謀ではなくなる段階まで持ってこれたところで、いきなり横から手柄をかっ攫われたようなものであり、到底納得できるものではなかった。

 

 しかし、命令された以上連隊に拒否権はない。

 2日目の戦闘で出た連隊の兵員を超える4,000人以上のザフトの捕虜の世話などを全て押し付けられ、後方に押し込められた。

 

 イルクーツクの大量虐殺の話を聞いたこともあり、ザフトの捕虜は暴れ出す気配はないため落ち着いている。

 とはいえこれだけの捕虜を抱えた状態でウランバートルの攻略に挑むというのは大きなリスクもあったので、アルトリアはたまには後方で自分たちを馬鹿にする友軍が戦う姿を観戦するものいいだろうと部下たちを宥め、連隊は後方待機を受け入れた。

 

 しかし、連隊の面々の多くはアルトー・ピサロと同意見で納得しがたい様子である。

 無謀な命令を突きつけておきながら、いざ攻略が可能となったら美味しいところだけ掻っさらうやり口に怒りを覚えるなという方が無理があるだろう。

 連隊の兵士たちにとっては、この2日間の戦闘で命を落とした仲間たちの犠牲を踏みにじられた様な気分である。

 

 ウランバートルから繰り出される砲火は、明らかに連隊が挑んだ初日に比較して少ない。

 2日目の戦闘で出撃した部隊は多くが殲滅されるか捕虜となり、生き残りも逃げ散った現状、ウランバートルを守備する残るザフトの戦力は著しく低下していることを示す証拠でもあった。

 

 ザフト側は残るMSであるバクゥ3機を出撃させ、連隊の側面を突くなどして撹乱し時間を稼いでいるが、第13師団は通常編成の師団と比較して3倍もの兵力を有する。

 数に任せて前進する攻撃は着実にウランバートルに到達する道を進んでおり、ザフト側はその前進を抑えきれていなかった。

 

 あのまま行けば、ウランバートルに師団が到達し都市の制圧戦に移行するだろう。

 そうなれば兵力で圧倒する第13師団の勝利は確実なものとなる。

 

 正面からの数に任せた攻勢は被害を拡大させているが、師団の足を止めるほどの被害は与えられていない。

 

 このままいけば、想定外の事態でも起こらなければ順当に第13師団がウランバートルに到達する。

 その想定外の事態として考えられるのは、昨日の戦いで逃げ散ったザフトの生き残りが結集するか、あるいはどこからか援軍が派遣されてきて、攻撃中の師団の側背を突くなどの奇襲だが、さすがに第13師団もその可能性は考慮しながらの攻撃をしているだろう。

 

 ウランバートルを奪還すれば、それは敵戦力を削った第27機甲連隊の手柄ではなく、都市を制圧した第13師団の手柄となる。

 当然27機甲連隊の面々としては気に入らない展開だが、だからと言ってさすがに味方である第13師団に潰れろと怨念を送るような者はいない。

 オスマンド・ユベールのようなあからさまな嫌がらせを仕掛けてくる輩でも、ユーラシアの故郷を同じくする仲間である。

 彼らが憎悪を向ける対象はザフトのみ。怒りは覚えど恨みは抱かない。

 

 やがて、大きな被害を出しながらも師団がウランバートルへと到達し、バリケードを踏み潰して都市内に多数の歩兵を乗せたトラックを突っ込ませ、制圧戦へと移行した。

 ザフト側は守備を諦めたのか、包囲の不十分な南側をバクゥによって切りひらき退路を確保し、随時撤退を開始している。

 通常のバクゥとは違う大型の4足歩行MSをはじめとする殿部隊がウランバートルにて抗戦する中で、ザフトはウランバートルを放棄していった。

 

「……決着か」

 

「連隊長、ウランバートルの奪還に成功したとのこと」

 

 やがて全てのザフトが撤退し、ウランバートルは第13師団によって奪還された。

 

「連隊長、第13師団より通達です。“第27機甲連隊は都市外にて待機を命じる”とのことです」

 

「寒空の下にいろと吐かす気か。チッ、どこまでも嫌がらせしてくるなあいつら」

 

「命令は命令だ。すまないが、今夜も駐屯地で過ごすことになる」

 

 ウランバートル攻略に成功した第13師団は、都市内に27機甲連隊が入ることを禁止する命令を出してきた。

 12月のモンゴル高原はシベリアにも劣らぬ寒冷の世界であり、仮設の駐屯地と都市の中では大きく違う。

 相変わらずの冷遇だが、慣れたものだと寒さのひどくなる夜に備えて準備を整え始める連隊だったが。

 

「ん……? 何だあの光──」

 

 ふと、ウランバートルを包み込むように虹色の光がパチパチと爆ぜるように浮き出てくきた。

 その光に連隊の面々が各々反応する中、光はウランバートルを──

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 かつて、グリマルディ戦役において地球連合はレアメタルを含む氷を融解させる掘削装備として作られた設備を軍事転用したことがある。

 サイクロプスと名付けられたその兵器は、効果範囲に敷設した装置を用いることで範囲内に強力なマイクロ波を放射させることで一帯を加熱することで、効果範囲内に存在する水分を沸騰させる巨大電子レンジである。

 

 エンデュミオン・クレーターにおける戦いで大損害を受けたザフトは、跡地に残された残骸を独自に調査し、地球連合がこの設備を軍事転用した基地自爆用兵器を知った。

 

 国防委員長パトリック・ザラは、このサイクロプスを解析するとザフト軍側の兵器としても使用することを決定し、カオシュン攻略後には放棄する予定だったシベリア・蒙古戦線の拠点に配備を進めていた。

 

 時間と予算の関係で設置ができたのはウランバートルのみであったが、その都市の陥落をもってエンデュミオン・クレーターの戦いの報復の絶好の機会が訪れたのである。

 

 この日、ウランバートルという都市は、地球上から消え去った。

 

 ザフト撤退後に起動したサイクロプスは、ウランバートル攻略を成し遂げた地球連合地上軍ユーラシア連邦第5方面軍第13師団3万人および、ウランバートルに残されていた民間人約110万人の殆どを、都市もろとも灼熱のクレーターに沈めてしまった。

 

 モンゴル・ハイウェイの中心地であるウランバートルの崩壊は、ユーラシア連邦と東アジア共和国間の支援ルートの1つを物理的に潰すことにもつながり、ウランバートルの戦略的価値も消してしまった。

 

 ただ、その時都市の外で灼熱のクレーターに都市1つが沈む姿を見ていた者たちにとって、その光景は決して忘れられないものとなった。

 

 氷が張り白い化粧で覆われるモンゴル高原の大地は、その日……赤い地獄が広がる灼熱の世界に変貌することとなった。

 

 




リーニは結末を察していました。
ザフトはサイクロプスを使い、報復の矛先は自分たち捕虜に向くだろう、と。
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