その首置いてけザフト共   作:みども

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北アフリカ戦線 3

 

 

 トリポリに入港したレセップスの行方は、偵察部隊を通じてベニグセンに届けられた。

 アークエンジェルと合流した後、レセップスの行方を監視するミハエルを隊長とする偵察部隊を北アフリカに残して南アフリカ統一機構の勢力圏であるザンジバル島に移動したベニグセンは、そこで明けの砂漠との接触手段を探すとともに、ビクトリア基地の戦況を確認していた。

 

 北アフリカを荒らしまわるバルトフェルド隊との戦いによる敗北により今や最前線となったビクトリアだが、一方でザフトもイベリア戦線で半月前に勃発したアラゴンの戦いにおいて、フリードリヒ・ハイドリヒ率いる第3方面軍の仕掛けた毒ガス攻撃により多数の死者を出す敗北を喫したジブラルタルからの十分な支援を受けられず、ビクトリアを前にしてバルトフェルド隊の進撃も実質的に停止しており前線が停滞しているとのことだった。

 

 前年のビクトリア攻略の失敗、そして年初のカオシュン攻略の失敗により、オペレーション・ウロボロスの進捗が芳しくないことによりそれを裁可・発動したクライン政権に対しプラント内で反発が強まっているという。

 政治面でも不安定な時期を迎えているプラントはビクトリア攻略が半ば凍結しつつある状況であり、そして台湾戦線とイベリア戦線の勝利により余裕の出てきたユーラシア連邦本国からの大規模な援軍が派遣されたビクトリア基地は現在バルトフェルド隊の主力を大幅に上回る戦力が配備され、むしろアフリカ戦線のザフトが守勢の構えを見せる状況になりつつあるという。

 

 ユーラシア連邦と南アフリカ統一機構の連合軍もこれを好機と見ているらしく、明けの砂漠への支援を活発化させてバルトフェルド隊の後方を撹乱し、ジブルタルのザフトが動けない隙を見て攻勢を仕掛ける計画を進めているという。

 

 そして、確認したところ砂漠の虎本人は旗艦であるレセップスとともに活発化している明けの砂漠の対応のためにリビアに赴いていたが、バルトフェルド隊の主力はビクトリアの前線に展開していた。

 おそらくビクトリアに展開する地球連合が攻勢に出たときに対応するための備えと思われる。

 

 つまり、現状の北アフリカに展開しているザフトはかなり小規模な戦力である可能性が高かった。

 

 偵察部隊からの情報により、レセップスはトリポリに入港して以降動いていない。

 ジブラルタルからの援軍も頼れない可能性が高い現在の北アフリカのバルトフェルド隊の戦力は小規模であり、ベニグセンとアークエンジェルの戦力でもG兵器の奪還を成し遂げる勝算は十分にある。

 

「すぐに動くぞ。今夜休んだら、ベニグセンはザンジバル島を出港しリビアを目指す」

 

 南アフリカ統一機構から明けの砂漠との接触の手立てに関する情報を得ることに成功したアルトリアは、すぐに動くことを決断。

 アークエンジェルもこれに応じ、高速艦艇2隻による合同部隊はG兵器を目指しバルトフェルド隊に挑むべく、翌日ザンジバル島を出港しリビアを目指して飛行を開始した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一方、地球降下後早々にマシューから奪って乗機として利用していた偵察型ジンを撃破されたユウは、アルトリアにその件で再度殴られてから、連絡要員としてアークエンジェルに搭乗していた。

 彼の役目はアークエンジェルとベニグセンの円滑なやりとりのための連絡要員であるとともに、ナチュラルが操縦可能なMSの戦闘機動用として作り上げた、ストライクのOSの改良などをアークエンジェルの技術班に混じって行っている。

 

 現在はジンの脱出装置とともに持ち出すことができたサハラ砂漠の戦場に適応させたOSのデータをストライクに搭載しているMS操縦サポート用AIに読み込ませ、地球圏での戦闘も可能なようにOSの改良を進めていたところである。

 軍服もいつの間にかツナギに着替えており、もはやMSパイロットというよりも技術者である。

 

 物資も人員も乏しく偵察任務などをこなすため乗機とともに単独行動をすることも多かったユウは、自前でMSの整備をすることも多く、ザフトのパイロット達の個人毎にカスタムがなされていることが多い鹵獲した機体の改造や修理もこなしてきたため、MSに関してはそこらの技術者よりもよほど詳しい。

 

 今はストライクの地上戦闘用に向けた改良を行っているが、昨晩などアークエンジェルの光線兵器を大気圏用、それもサハラ砂漠の環境に最適化した調整をするなど、コーディネイターの持つ能力を遺憾なく発揮してアークエンジェルの整備まで行っていたほどである。

 

 G兵器に関しても、ブラックボックスであるフェイズシフト装甲に関してはさすがにチンプンカンプンでここだけは何も手出しできなかったが、ビーム兵器の調整や機体操作のOSの改良などに関しては製作陣であるアークエンジェルの技術班が驚くほどの仕事ぶりを見せつけた。

 

 ザンジバル島ではユウが改良を重ねたAIサポート付きのOSにより、ムウ以外にもG兵器のパイロット候補達でも問題なく操縦できることが確認できている。

 それはすなわち、ナチュラルが操縦可能なMSがついに完成したことを示していた。

 

 そんな大発明をしてくれたユウだが、本人は自分が成し遂げた快挙をさほど深く考えていないらしい。

 持ち前のコーディネイターらしい回復力により火傷も傷跡が残る程度に回復し、隻眼ミイラから隻眼になってからも、リビアに向かい飛行するアークエンジェルの中で大気圏内における戦闘用動作パターンの追加作業などを進めていた。

 

「少尉殿、あまり根詰めすぎるのもよろしくないですよ」

「そうそう。適度にサボるくらいが丁度いいぜ」

 

「マードック軍曹、フラガ大尉。これはありがたい、頂きます」

 

 1人作業に没頭していたユウに、水の入ったペットボトルが差し出される。

 それを差し出してきた相手であるマードックと、その後ろについてきた軍服を暑いからと着崩しているムウを見て、ユウは一度作業の手を止めてペットボトルを受け取った。

 

 マードックやムウらアークエンジェルのクルー達は、コーディネイターであり潜在敵国のユーラシア連邦であるユウに隔てなく接してくれる人達であり、この共同戦線を通じてかなり打ち解けていた。

 もちろんアークエンジェルのクルーも命の恩人であるユウだからこそ友好的に接してくれているというのもあるが、そもそもコーディネイターというだけで命の恩人だろうが石を投げつけられるのも日常茶飯事だったユウにとっては、彼らは差別思想が少ない希有な人たちである。

 仲良くなるのに時間はかからなかった。

 

 ストライクを見ながら、コンテナに背中を預けて男3人が並んでいる。

 何とも華のないむさ苦しい光景だが、軍人である彼らにとっては慣れたものである。

 ちなみに技術班のトップでありマドンナでもあるマリューは現在ブリッジに出向いており、格納庫にいるのはもれなく全員男である。

 

「今度はまたリビアに戻るんだって?」

 

 3人並んでいる真ん中に立つムウが、マリューらアークエンジェルの女性クルー達と比較してもなお小柄なユウに、アークエンジェルとベニグセンの目的地について話題を振る。

 

「はい。敵はアンドリュー・バルトフェルド。砂漠の虎の異名を持つ、スエズを落としアフリカ戦線をビクトリアまで後退させた名将です」

 

 アルトリアから今後の方針について聞いているユウは頷き、G兵器奪還を果たす上で避けて通れないだろう戦うこととなるユーラシア連邦にもその武名を響かせる敵の名を口にした。

 

「一筋縄じゃいかねえよな、流石に」

 

「我々は実際に相対したことはありませんが、ユーラシア連邦は幾度も彼の部隊に敗退を喫してきました。連隊長は彼がアフリカ駐屯部隊の隊長ではなく、ジブラルタルにおける総司令官の地位にいたとすれば、欧州とアフリカはすでにザフトによって落ちていただろうと評しています」

 

「あの姉ちゃんがそんなに強く警戒してんのかよ……」

 

 アルトリアもその能力を高く評価し強く警戒している敵。

 もっとも砂漠の虎の被害を受けているユーラシア連邦の軍人からの声を聞き、ムウは目を見開いた。

 

「バルトフェルド隊の主力はビクトリアに展開している現在、リビアのザフト戦力は小規模と推測されますが、しかし決して油断していい相手ではないことは確かです」

 

「まあ、こっちには不可能を可能にする男が付いている! 大船に乗ったつもりでいろよ坊主!」

 

「……坊主と呼ばれる年齢ではないのですが」

 

 相対することになる強敵に向け気を引き締めつつも、仲間の緊張をほぐすべくユウの背中を叩くムウ。

 坊主呼ばわりに相変わらず年齢を誤解していると苦い顔をしながら、ユウはペットポトルのキャップを開いた。

 

 水を一口含み飲み込んだユウを見下ろしながら、ふとマードックは先の戦闘でジンを撃破された現状、乗機のないこの外見詐欺師が先頭になったらどこに行くのか気になり、尋ねた。

 

「そういや、少尉殿は戦闘になったらどうするつもりで? ジンは昨日やられちまったみたいですが」

 

「ああ、それでしたら──」

 

 マードックの質問に、ユウは3人が背中を預けているコンテナを指して答えた。

 

「ザンジバル島で得たブルドックで出撃する予定です」

 

「マジかよ……」

 

 まさかのミサイルを装備したトラックで出るという。

 地球連合に多数配備されている軍用車両だが、MS相手には無力に等しくいいように蹴散らされている兵器である。

 一応ミサイルはMSの装甲を貫けるのだが、もっぱら数で圧倒する戦術が採用されており、一台でホイホイ出て行くような使い方をする車ではない。

 

 特に砂漠の戦場ともなればバクゥの格好の的となることが多い上に、目標であるG兵器相手に有効なビーム兵装も持っていない。

 無謀もいいところだが、何故か彼らが乗ると普通に活躍してしまいそうに思えるのは自分たちの感覚が麻痺してきているからかもしれないと遠い目になるムウだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 アークエンジェルとベニグセンがリビアを目指して北上している頃。

 2隻の合同部隊が向かう先であるトリポリでは、一晩の休息で回復したイザーク達が再びバルトフェルドと対面し、G兵器の強奪作戦からリビアに落ちたまでの経緯についてバルトフェルドに説明していた。

 

 オーブのスパイからもたらされた、資源衛星ヘリオポリスで秘密裏に製造されたG兵器。

 それを奪取しようとした矢先に起きた、ユニウスセブン追悼慰霊団を乗せた民間シャトルの襲撃事件。

 ヴェサリウスが慰霊団引き渡しのために離脱した間にヘリオポリスから出港した足つき。

 アルテミスへの攻撃と、ユーラシア連邦の誇る難攻不落の要塞の陥落。

 ヴェサリウスと合流し追撃を仕掛け、G兵器のうち3機の強奪に成功した代わりに2人の仲間を囚われガモフが沈んだデブリベルト近郊の戦い。

 G兵器3機を出撃し追撃を仕掛けた先で、地球連合の派遣した援軍とぶつかった月軌道会戦。

 援軍であるゲラート隊に守られ地球まで撤退した低軌道会戦。

 そしてゲルガー達を犠牲にリビアに降下し、なおも追撃してきた敵の攻撃からバルトフェルド隊に救われた昨日の出来事。

 

 思い出すだけでも悔しさと悲しさがこみ上げてくる戦いの数々だった。

 

 アルテミスでは勝利に酔いしれたが、その後のデブリベルト近郊の戦闘ではガモフの仲間達が敵の謎のMSに翻弄され、ニコルとラスティを囚われマシューら多くの戦友を失った。

 

 足つきに対する追撃を仕掛けるも、イージスを駆るアスランでも歯が立たず、尊敬する隊長であるクルーゼが出てもなお追い詰められ、かろうじてその敵は撃破されたが足つきにヴェサリウスを叩かれ逃げられた。

 

 勇んで出撃した月軌道会戦では、横槍を入れてきた敵の援軍に自分たちがどれだけ高慢になっていたのかを突きつけられる敗北を叩きつけられ、命をかけて逃がしてくれたゲラート隊長を失った。

 

 そこから執拗に追撃してくる敵に挑むも負け、ゲルガー艦長以下ゲラート隊の生き残りが命をかけて地球に逃がしてくれるのを安全なG兵器の中に閉じこもって見ているしかできなかった。

 

 戦場の理不尽をこれでもかというほどにぶつけられ、打ちのめされ、多くのものを犠牲にして、自分たちがいかに若く何も知らない、士官学校の成績と遺伝子に与えられた能力で粋がっていた子供だったのかを知った。

 

 彼らの犠牲を無意味なもので終わらせたくない。

 自分たちの無知を正しただけで終わらせたくない。

 命をかけて守ってくれたプラントの未来を担う若者としての身命と、このG兵器を本国に必ず持ち帰る。

 

 昨晩、疲れ果てた心のままに涙を流して新たに抱いた決意。

 それを果たすためにも、ジブラルタルへの撤退を手助けしてほしい。

 

 経緯を話した後、イザークたちは他部隊の力を借りるという恥を承知の上で、それでも己の無力さと為すべきとこを知った今、バルトフェルドにジブラルタル撤退の護衛を頼むために頭を下げた。

 

 口を挟むことなく一通りの話を聞き終えたバルトフェルドは、コーヒーを一口飲むと、若者たちに歩み寄り肩に手をかけ3人の頭を上げさせた。

 

「全く……わざわざそんな風に頼まなくても、当然引き受けるさ。話を聞く限りそのG兵器とかいうのは必ずプラント本国に届ける必要がある機体だし、君たちの身柄も同じく本国に無事に届ける必要があるものだからね」

 

 そしてダコスタを呼びつけると、レセップスの出航用意を進めるように指示を出した。

 

「そうと決まれば出発は早いほうがいい。ダコスタ、レセップスの出航用意だ! ジブラルタルにも援軍要請を出せ! それからビクトリアの方に展開している主力を除く近隣の部隊も直ちに招集しろ!」

 

「はっ!」

 

 それまでの陽気で軍人らしからぬ飄々とした態度から一変、真剣な表情となり指示を飛ばすバルトフェルドの姿は、砂漠の虎の異名にふさわしい。

 

「明けの砂漠の対応はどうしますか?」

 

「彼らの対応については策を立ててある、今は一時放置しても構わないだろう」

 

 バルトフェルドがビクトリアの前線からこの北アフリカにレセップスできていたのは、親プラント国であるアフリカ共同体の要請を受け、最近動きが活発化している反プラント組織のレジスタンス“明けの砂漠”に対応するためである。

 

 しかし、イザークたちをジブラルタルに届けるのは明けの砂漠の対応よりも優先するべき案件であり、また彼らの話に出てきたMSを保有し運用する敵という存在にバルトフェルドは心当たりがあった。

 

 もしも、その予想が的中しているとすれば、その敵はユーラシア連邦を主敵として戦ってきた彼にとっていずれぶつかることになると、そして最大の強敵となるだろうと見ていた相手である。

 

「彼らの話に出てきたMSを運用する宇宙用の軽母艦といったら、それはベニグセン級しかない。つまり、敵は──」

 

「……凍土の魔女。あの鷲の首を落とした奴らですか」

 

「そういうことだ」

 

 バルトフェルドの言葉に、ダコスタも気を引き締める。

 

 イルクーツクの攻略を始め、数でも質でも勝るザフトを相手に勝利を重ねてきたユーラシア連邦最強と噂される“凍土の魔女”の異名を持つ女がいる艦隊。

 もはや人外のような噂もあるが、登場以来無敗を誇るその上げてきた戦果は尋常ならざる強さを持つ部隊であることを示している。

 

(凍土の魔女? そういえば、ゲルガー艦長も言っていたような……)

 

 ダコスタの言葉を聞いたディアッカは、大気圏突入の最中にヴァレットにてフランツがつぶやいていたのと同じ名前が出たことに、フランツからは結局聞けなかったその魔女という名に関して知っているらしいバルトフェルドに訊いた。

 

「バルトフェルド隊長、ゲルガー艦長も言っていたのですが、その魔女というのは何者ですか?」

 

「ん、君たちは知らないのか?」

 

 ディアッカの言葉に振り向いたバルトフェルドは、凍土の魔女を知らない彼らに驚いたような表情となり、そして溜息を零した。

 

「全く、君たちの隊長はなんで教えていないのかね〜……まあ、今はとりあえず出港準備が先だ。レセップスに向かおうか」

 

「……了解しました」

 

 バルトフェルドに促され、イザークたちもレセップスに向かう。

 

「レセップス、出港準備完了!」

 

「よし。ではこれより、レセップスはジブラルタルへ向かう。目的は連合から鹵獲した新型MSであるG兵器とそのパイロットをジブラルタル、そしてプラント本国に届けるための護衛だ。なお、先日アフリカに降下してきた連合の新型艦艇アークエンジェル及びMS運用母艦のベニグセンからの襲撃が予想される。各員、警戒を怠らないように」

 

「了解!」

 

「では、レセップス出港だ!」

 

 トリポリより、ジブラルタルへ向けレセップスとバルトフェルドが招集した部隊が出撃する。

 

 その姿はトリポリ近くに潜むミハエルら偵察部隊が観測しており、早速その情報がジブラルタルへの進路上に待ち構えているベニグセンにもたらされることとなる。

 

 




オリキャラたちの身長です

ユウ→148cm
ミハエル→193cm
ミランダ→172cm
アルトリア→181cm
フッカー→180cm
フェルナンド→185cm
カリオン→178cm
ツヴァイ→181cm



(参考までに)

ムウ→183cm
イザーク→175cm
アスラン→170cm
ディアッカ→176cm
ニコル→165cm
ラクス→158cm
マリュー→170cm
ナタル→174cm
クルーゼ→183cm
バルトフェルド→181cm

こうして並べてみると、C.Eの人たちかなり長身が多い……
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