その首置いてけザフト共   作:みども

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北アフリカ戦線 5

 

 

 ミハエル率いる偵察部隊からの情報により、ガベスにて補給をするレセップスを捕捉したベニグセンとアークエンジェルの合同部隊。

 そこからジブラルタルへ向かうと推測されるレセップスのとる進路を砂漠の中を突き進むルートと読んだアルトリアは、その進路を塞ぐようにベニグセンとアークエンジェルを布陣させ、MSや戦闘機、ブルドックら地上部隊を次々におろして展開させた。

 

 追跡を受けていることに気付いていなかったバルトフェルド隊は、2隻が身を隠すために偵察部隊の援護で発生させた砂嵐による視界不良も相成り、MSや戦闘機などを展開されるまで合同部隊の発見が遅れてしまった。

 

 MSが展開され距離を詰められた現状、レセップスは完全にジブラルタルに向かうためのルートを塞がれてしまっている。

 身を隠す場所のほとんどない砂漠地帯では、速度に劣るレセップスに合同部隊を振り切ることは困難であり、ルート変更も難しい。

 この時点でバルトフェルド隊にできる選択肢は、ガベスの街を利用した防御重視の戦闘による撃退か、ガベスから打って出て合同部隊に強行突破を仕掛ける攻撃に絞られた。

 

 とはいえ、アフリカ共同体の領土であるガベスの街を巻き込む戦闘を行えば、プラントとアフリカ共同体の外交問題に発展する可能性もある。

 地球連合に南アフリカ統一機構がいるので敵対関係になるという可能性は低いが、それでもアフリカ共同体が親プラント体制を転換しザフトへの支援を打ち切ることも考えられる。

 そうなればビクトリアに展開しているバルトフェルド隊の主力は孤立無援の中に陥り、アフリカ大陸のど真ん中で物資の欠乏に陥る可能性が高い。

 バルトフェルドにガベスの街に籠もるという選択肢は取れなかった。

 

 逃げることも籠もることもできないのであれば、打って出るしかない。

 戦力的には強行突破も十分に可能である。

 ……あくまでもMSパイロットの技量などは考慮しない、機動兵器や艦艇の武装などを考慮した上での推測だが。

 

 そしてレセップスが合同部隊を確認してから、補給を終えてガベスから打って出てくる構えを見せていることは、街に潜入している偵察部隊からベニグセンに届けられた。

 

「打って出てくる気か」

 

「アフリカ共同体は親プラント国の一角ではありますが、実態は南アフリカ統一機構という共通の敵を相手に繋がっている多数の中小国家の集合体に過ぎません。中には地球連合に接近したりプラントに反発を抱いたりしている勢力もあるなど一枚岩ではないので、民間人をザフトの戦闘に巻き込めば親プラント国から離脱される恐れがあるのでしょう」

 

「政治的配慮っていうやつか。まあ、民間人を巻き込まない戦闘を仕掛けてくれるならこちらとしても遠慮なしで行けるから好都合だな」

 

 ミハエルから報告を受けたベニグセンの艦長アルトー・ピサロが、アークエンジェルとブリッツに乗るアルトリアにそれぞれ通信をつなげ、ミハエルからの報告を伝える。

 

「フッカー艦長、連隊長、読み通り奴らは強行突破を仕掛けてくるつもりのようです!」

 

「わかった。ガベスから出てきたところで仕掛ける。周囲に民間人は残っていないな?」

 

「ベニグセンの観測では安全を確認しています!」

「アークエンジェルの方でも確認しましたが、無人の砂漠があるだけです。存分に行けます!」

 

「よし、では作戦を開始する。予定通りクズネツォフはシグーに搭乗し工作部隊とともに合図があるまで待機だ。アークエンジェルは予定通りスカイグラスパーを展開してください」

 

「此方、クズネツォフ。了解しました!」

 

「此方も了解しました。スカイグラスパー1号機並びに2号機に通達。作戦開始だ!」

 

「「スカイグラスパー、了解!」」

 

 アルトリアとフッカーから指示が飛ばされ、合同部隊が動く。

 

 彼らももちろん出てくるレセップスをただ待ち構えているだけではない。

 アルトリアの立てた作戦に基づき、ミハエルは砂嵐を起こした工作部隊とともに出番までレセップスに見つからないように姿を隠して待機。

 そしてガベスから打って出てきたレセップスに対し先手を打って仕掛けるべく、ストライクらに先行して2機の大気圏内用戦闘機“スカイグラスパー”が飛行していった。

 

 ユウのデータ入力と改良もあり、ストライクは地上戦闘用の、それもサハラ砂漠の砂質にあったナチュラルでも操縦できる人工知能サポート付きのOSとして仕上がっている。

 現在は機動性重視のエールパックを装備しており、本来のパイロットであるトーマス・フロイドが搭乗している。

 ムウの方は本来の戦闘機乗りとしての任務に戻り、デブリベルト近郊の戦いで受けた負傷から復帰を果たした部下のルークと共にスカイグラスパーで出撃していた。

 

「援護頼みます、ナガト少尉」

 

「お任せください、フロイド少尉」

 

「ナガト、貴様はストライクの援護だ。G兵器を此方が繰り出したならば、敵も必ずフェイズシフト装甲を持つ機体を出す」

 

「了解。ブルドック、前進します」

 

 ユウの方は地球に降りて早々にレセップスによって乗機としていたジンを撃破されたため、現在はザンジバル島にて搬入された対MSミサイルを装備している装甲トラック“ブルドック”に乗車している。

 レセップスからG兵器が出てきた際に対峙することとなるストライクの援護が主な役目である。

 スカイグラスパーに続き砂漠の大地を駆け出したストライクに並走し、ユウの操縦するブルドックもアルトリアの命令に従いレセップスに向けて加速した。

 

「ゲイルの分も行くぞ。今回は俺もしっかりサポートしてやるからな、好きなだけかましてやれルーク!」

 

「はい! 頼りにしてますよ、フラガ大尉!」

 

 デブリベルト近郊の戦いでクルーゼ隊によりメビウスを撃墜され帰らぬ人となったもう1人の仲間の分も戦い抜くべく、2機のスカイグラスパーからなるフラガ隊がレセップスに向かっていく。

 迎撃するべくレセップスが対空砲火を発射してくる中をかいくぐり、フラガたちが操縦するスカイグラスパーがその陸上艦艇を射線に捉えた。

 

「ミサイル発射!」

「くらえよ!」

 

 スカイグラスパー2機から、それぞれ4発ずつ発射されたミサイル。

 レセップスも対空砲火を激しくしてそのミサイルの半数を撃破したが、残る半分のミサイルが左上部の装甲と右舷主砲、艦体後部などに次々と着弾して爆発を起こした。

 

「メビウスと同じ、戦闘機は一撃離脱が基本だ!」

「はい!」

 

 先手を仕掛けたスカイグラスパー2機は、ミサイル攻撃を1度仕掛けてから即座に離脱。

 レセップスより距離を取り、対空砲火より逃れた。

 

 レセップスが受けたダメージはそれほど大きくはないが、しかしゼロではない。

 功を焦って無闇な連続攻撃を仕掛けることで弾幕に捕まるリスクを犯さず、最高速度に優れる戦闘機の利点を生存に活かした一撃離脱戦法である。

 その撃ったら迷いなくすぐ離脱という即断は、バルトフェルドも思わず待機中のMSのコクピットで口笛を吹いてしまうほどだった。

 

「ヒュ〜、1度当てたら惜しみなくすぐ離脱とはやるねえ」

 

「追撃しますか?」

 

「いや、イザーク君たちが確保する予定だった敵の新型が接近している。まずはそちらの迎撃を優先だ」

 

 スカイグラスパーは安全な距離を取ってから、再攻撃のために旋回。

 一方のレセップスには、トーマスの操縦するエールストライクとそれに並走するユウの操縦するブルドックがスカイグラスパーの先制攻撃を受けた所に攻撃を仕掛けるべく接近してきたことで、ひとまず一時的にとはいえ離脱したスカイグラスパーよりもストライクらを優先するべきとその迎撃の意識もユウたちに向けられた。

 

「このまま一方的に殴られるというのは面白くない。此方もMSを展開するぞ、ハッチを開け!」

 

 バルトフェルドの指示により、レセップスのハッチが開かれる。

 そこからバルトフェルドの操縦する隊長機のミサイルポッドを装備したバクゥを先頭に、3機のバクゥと2機のザウート、そして2機のG兵器──イージスとデュエルが姿を現した。

 

「作戦どおり、ハダトとカークウッド、そして僕のバクゥ小隊が先陣を切り艦への道を進む。ニコラス達は敵MSの攻撃を迎撃しレセップスを護衛、オロール君もここに加わり艦を守りつつ、イザーク君の援護もしてくれ。イザーク君は要望通りストライクの迎撃を頼もう。ダコスタ、レセップスは任せるぞ」

 

「「「了解!」」」

 

「それでは行こうか。その熱烈な歓迎に応えよう、凍土の魔女!」

 

 バルトフェルドの指示により、出撃したバルトフェルド隊が展開する。

 バルトフェルドの操縦するG兵器の解析により獲得したビームサーベルを搭載した改良型バクゥ3機からなる小隊が先陣を切り、レセップスの砲撃による援護もありストライクを難なく突破してベニグセンとアークエンジェルに向かって砂漠の大地を疾走する。

 突破のためにはこの2隻の高速艦に損傷を与えることが必須であり、互いの艦の距離が詰められた時に撃ち合いを有利にするためMSで攻撃を仕掛けて撹乱するのがバルトフェルド達の役目である。

 

「速い……!」

 

 サハラ砂漠の大地を走り回ることに慣れ親しんだバルトフェルド達の操縦するバクゥの機動にトーマスはまるでついていけず、1発もビームライフルを撃つことなく突破を許してしまった。

 

「想定内です、フロイド少尉。此方は予定通りG兵器の奪還を行いましょう」

 

「は、はい!」

 

「敵機接近、援護します」

 

 もとよりストライクの役目はフェイズシフト装甲を持つ機体同士、G兵器の対応である。

 ベニグセンとアークエンジェルの方には護衛の部隊がついているため、突破されても問題ない。

 ユウに促され、トーマスは前方のレセップス、そこから出撃してきた敵機に意識を集中させた。

 

「イザーク、ストライクが来るぞ! こっちの守りは任せておけ!」

 

 G兵器の方は、イージスがレセップスの上に乗り、対空砲火に混じってスカイグラスパーなどの迎撃・牽制に参加しレセップスの防衛に努める。

 艦からケーブルをつながれてバッテリー供給を受けているため、イージスの持ち味である機動性は活かしきれないが、残弾やバッテリーを気にせず砲台代わりにライフルを存分に撃ちまくれる状況である。

 

「ダコスタさん、ストライクが来ました! 戦闘機の方も旋回し此方に急速に接近中! 第二波攻撃が間も無くきます!」

 

「デュエルはストライクを迎撃! イージスはデュエルの援護に集中、戦闘機は此方で引き受ける!」

 

「了解! 頼むぜイザーク!」

 

 指揮官機を想定されて作られているイージスはその通信機能を駆使して戦況を確認しつつ、レセップスの防衛とデュエルの援護など状況に応じて作戦指揮の補助と支援攻撃、バルトフェルド隊の直掩に混じってのレセップスの防衛が今回の役目となる。

 

「この時を待っていたぞ、ストライク!」

 

 そして、デュエルの役目はストライクを迎撃。

 低軌道会戦で受けた顔の傷の借りとヴァレットの仇を討つべく、イザークは戦意を漲らせ接近してきたストライクへと砂漠の環境に合わせて調整を終えているビームライフルを撃ちながら突撃した。

 

「くっ──!」

 

 トーマスは対ビーム兵器シールドを構え、ロックオン方向の逆探知から射線を推測しシールドの方向を制御するAIのサポートを受けながらデュエルのビームライフルを受けつつ、ストライクのビームライフルをデュエルに向けて照準を合わせる。

 

「遅い!」

 

 しかしイザークはロックオン警報からストライクがビームライフルの照準を合わせようとしているのを察すると持ち前のコーディネイターの反射神経ですぐにデュエルを回避させ、照準から外した。

 

「は、速い! くそ、照準がッ……!」

 

 AIのサポートを受けていると言っても、所詮機械の域を出ず、ナチュラルの能力もコーディネイターの反射神経には及ばない。

 ストライクのビームライフルは構えるばかりでデュエルを捉えられず、防戦一方となる。

 

 だが、ここにいるのはストライクだけではない。

 

「こんなものかストライク──ぐあっ!?」

 

 ストライクのビームライフルはロックオンを検知し警報が出るなり撃たれる前に回避することで一方的に攻撃を仕掛けるデュエルに、背中から飛来してきた対MSミサイルが直撃した。

 

 フェイズシフト装甲により損傷はないが、着弾の爆発による衝撃は機体を揺らす。

 回避機動の最中という不安定な体勢の時に受けた被弾ということもあり、デュエルは体勢を崩し砂漠の大地に倒れこんだ。

 

「イザーク!」

 

「問題ない! ……おのれ、誰だ邪魔をする奴は!」

 

 オロールがすぐにビームライフルで援護射撃を行いストライクを牽制したことで、転倒という致命的な隙に撃破されるという最悪の事態は防ぐことができた。

 すぐにデュエルを起こしたイザークは、ストライクとの勝負に水を差した敵──対MSミサイルを撃ち込んできた相手を探しミサイルの飛んできた方向にデュエルのカメラを向ける。

 だがそこには砂漠の大地が広がるだけで何もなく──

 

「これは──ぐっ!?」

 

 再び、ロックオン警報も鳴っていない──つまりロックオンされていない状態の中で飛んできたミサイルがデュエルの背中に直撃しその衝撃に揺らされて姿勢が崩された。

 

「おのれ、魔女の手先か! どこにいる!?」

 

 ロックオンもせずに攻撃を当ててくる敵。

 そのことに気づいたイザークの頭には、月機動会戦、そして低軌道会戦にて圧倒され、ゲラート隊を殲滅され、上には上があるということを散々に思い知らされたあの乱入してきた連合のMS部隊──凍土の魔女たちが浮かんだ。

 

 フェイズシフト装甲を突破できる武装を持つとはいえ所詮その技量は大したことが無いストライクなんぞよりも、たとえフェイズシフト装甲を突破できる武装がなくともG兵器を無力化するほど追い詰めることができる技量を持つ魔女達の方がよほど大きな脅威である。

 ビームライフルで相変わらず動きの鈍いストライクを牽制しつつ、イザークはデュエルのレーダーでミサイルを撃ってくる敵を探した。

 

「見つけた──なっ、ブルドックだと!?」

 

 デュエルのレーダーは、その敵を感知していた。

 そしてそのもう1つの敵影を見て、イザークは驚愕する。

 そこにいたのは、連合の対MSミサイルを装備している車両──MSですら無い“ブルドック”の通称で呼ばれる装甲トラックがいた。

 

「ふ、ふざけるなぁ! ブルドックだと、馬鹿にするのも大概にしろ!」

 

 戦車よりも矮小な、ゴキブリのような蹴散らされるだけのトラック。

 そんなもので出てきた敵を見て、イザークは舐められていると、貴様などこの程度で十分だと言われているように受け取ってしまい、怒り心頭となってそのトラックにビームライフルを構えた。

 

「そんなもの──ぐあッ!?」

 

 しかし、ユウの操縦するブルドックはデュエルがカメラを向けた時点で狙われることを察知して走り出し、ロックオンされる前にその照準から外れる。

 そして照準を合わせようとビームライフルを構えるデュエルに向け、ロックオンなどせずにマニュアルで──しかしデュエルを捉えて発射されたミサイルが途中で炸裂。

 弾頭が閃光弾となっているミサイルはデュエルの照準をブルドックに合わせようとモニターに集中していたイザークの視界を塞ぐ閃光を放ちその目をくらませた。

 

「目が……目がぁ……!」

 

「デュエルを──何ッ!?」

 

 パイロットの視界をやられたデュエルの動きが止まる。

 その瞬間を狙いデュエルに取り付こうとしたユウだが、レセップスの護衛についているニコラスの操縦するザウートからブルドックを狙い多数の砲撃が飛んできたことで、デュエル制圧を断念せざるを得ずブルドックを走らせた。

 

「MSを奪うのは君らの常套手段だろう? 閃光弾などには特に気をつけるように周知しているのでね」

 

「読まれていたということか……!」

 

 彼らの常套手段と言える、MSの奪取。

 シベリア・蒙古戦線でこれにより機体を大量に鹵獲されていたことを調べていたバルトフェルドは特にこのMSの強奪を警戒しており、閃光弾などが使用された際にはその友軍機を援護するように隊員達に周知させていた。

 

 ザウートからの妨害によりデュエル制圧に失敗したユウ。

 そこに視界が回復したイザークがビームライフルを乱射してくる。

 

「貴様ァ!」

 

「…………」

 

 デュエルの動きからビームライフルの射線を見切り、ブルドックを走らせながら回避し続けるユウ。

 巧みに回避するブルドックに攻撃が当たらず苛立ちの募るイザークは、シールドを捨ててビームサーベルを抜きより攻勢を強めようとする。

 

 その時、デュエルのコクピットにロックオン警報がなる。

 

「ストライクか──!」

 

 魔女達はロックオンを使わない。

 ストライクが此方に狙いを定めたと思ったイザークは、警報ですぐに冷静さを取り戻し一瞬ストライクに意識を向けるが、当のストライクはイージスからの攻撃を防いでおりデュエルから引き離されビームライフルも構えていなかった。

 

「愚か者が!」

 

「しまっ──ぐあっ!?」

 

 魔女の部下はロックオンを使わない。

 それがすでにイザークの中で固定観念として定着してしまっていた。

 だからこそ、ロックオンされればそれが目の前のブルドックではなく、ロックオンを使い照準を合わせてくる当たった時には装甲を貫いてくるビーム兵器を装備しているストライクの仕業だと思い込んでしまう。

 

 たかが一瞬だが、しかしそれが命取りとなる。

 ロックオンを使わないことで敵に作られた固定観念で生み出した隙をつき、普段は照準を合わせる僅かな時間だけでも隙になるからと使わないロックオンを使用したブルドックのミサイルを一斉にデュエルのコクピット上に向けて発射した。

 

 至近距離で2門の発射口から次々に放たれたミサイルは、デュエルのコクピット上の装甲に連続で着弾し内部に衝撃を与える。

 砂の大地にデュエルは転倒し、コクピットに襲いかかる衝撃に、イザークはヘルメット越しにシートに何度も後頭部を叩きつけられ激しく揺らされ半分意識を失ってしまった。

 

「イザーク!」

 

「ぐっ……! こ、このてい、ど……」

 

 何度も脳を揺さぶられ、頭を打ち付けられ、イザークの意識は視界がちらつき焦点が定まらず音も濁るほどに削られている。

 そんな朦朧とした中でMSの操縦などできるはずもなく、デュエルは動かない。

 

「イザーク待ってろすぐに──」

 

「待て! ストライクに加え敵戦闘機が接近している、イージスは持ち場を離れるな!」

 

「……ッ!」

 

 オロールがイージスを飛ばそうとしたが、ユウの操縦するブルドックに誘われデュエルはレセップスからかなり距離が離れてしまっていた。

 イージスがライフルの撃ち合いをしているストライクは健在であり、その上ムウたちスカイグラスパーが再度攻撃を仕掛けてきたため、その迎撃のためにもダコスタの命令によりイージスはデュエル救出のための出撃を禁止される。

 

「ハダト!」

 

「任せてください!」

 

 すかさずベニグセンが展開した艦の護衛の地上部隊やアークエンジェルと交戦しているバルトフェルドが、僚機のバクゥの一機に命令しデュエル奪還に向かわせる。

 

「…………」

 

 ミサイルを撃ち尽くしたユウのブルドックにはそれに対抗できる武装がすでに無いため、レールガンを撃ちながら向かってくるハダトのバクゥから逃れるために制圧したデュエルを残し、ブルドックを走らせて撤退する。

 

 デュエルは主戦場から離れたことで孤立してしまったが、それは敵のブルドックも同じ。

 その場にはユウのブルドックしか姿がなく、それが撤退したならばデュエルを奪われずに済む。

 釣り出しの可能性もあるので深追いはせずにデュエルの回収だけ済まそうとしたハダトだが──

 

「──今度は此方が読み勝ったな、砂漠の虎」

 

 デュエルのところにたどり着いた時、突如として何も無いところにその機体は姿を現した。

 

 ミラージュコロイドを解除したブリッツは、トリケロスのビームサーベルを振り抜きハダト機の右前足を切り飛ばして機体をデュエルの上に転倒させると、流れるように二の太刀を繰り出しレールガンを切断。

 更にモノアイを蹴りつけてカメラを破壊、視界を潰して瞬く間にハダト機を無力化した。

 

「…………」

 

 ハダト機が無力化されるとともに、バクゥがデュエルの上に落ちた際の衝撃が止めとなりイザークも意識を完全に失ってしまう。

 

「ナガト」

 

「了解!」

 

 そしてブルドックから降りたユウはすかさずデュエルの上に落ちたバクゥに取り付き、機外からのハッチ解放装置を使いハダト機のコクピットを開くと、フェイズシフト装甲に守られたデュエルは最悪無傷で済むからとバクゥを自爆させようとしていたハダトに拳銃を突きつけた。

 

「直ちに降伏しろ。バクゥの下にある機体のパイロットをどうするか、貴様の選択次第だ」

 

「……ッ」

 

 ユウの言葉にハダトは自爆装置の起動をしようとしていた手を止め、その手を上げて降伏の意を示す。

 

 ストライク、ブリッツに続き3機目。

 デュエルの奪還がここに成った。





次回はレセップス対アークエンジェル&ベニグセンです。
お互いまだ隠している戦力が残っています。
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