その首置いてけザフト共   作:みども

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一騎打ちはロマンです!


北アフリカ戦線 7

 

 

 レセップスはイージスとバスターという2機のG兵器を保持して突破に成功し、合同部隊はアークエンジェルをやられたもののデュエルの奪還に成功した。

 魔女と虎の砂漠を舞台にした戦いは、ドロー。

 お互い相手の裏をかき、戦力を削りあいそれぞれ一定の目的を果たしたが損害も受けたという結果となる。

 

 アークエンジェルをやられた現状、バルトフェルド隊の主力はビクトリアにいるとはいえこのアフリカ共同体の領土の中で戦力を分ける愚を犯すわけにはいかず、レセップスの追撃は断念せざるを得ない。

 

 スカイグラスパーとストライク、ベニグセンから降りて艦の護衛についていた地上部隊はレセップス追撃を断念し、アークエンジェルの救援に向かっている。

 その間にレセップスは砂漠の大地を西に向かって疾走していった。

 

 そして、レセップスと別れたバルトフェルドは。

 自身の操縦するバクゥをデュエル奪還に動かし、それを阻止するべく向かってきたアルトリアの操縦するブリッツとMS同士の一騎打ちを展開していた。

 

 アルトリアは敢えてバルトフェルドの誘いに応じ、制圧したデュエルとバクゥのパイロットを人質とせず、戦闘に巻き込まれないように距離をとって砂漠の大地を進んできた。

 

 横槍を入れる敵も、邪魔な障害物もない、何の気兼ねもなくただ目の前の相手に培ってきたMSの操縦技量と戦闘技術を駆使してぶつかり合うことができる一騎打ち。

 

 バルトフェルドもアルトリアも、この一騎打ちを楽しむようにコクピットの中で笑みを浮かべ、それぞれ抜刀したビームサーベルを相手の機体に向けて振り回す。

 

 それぞれ斬撃と回避を同時に行ったことで、最初の一撃はビームサーベルがお互いに機体の右肩と右側面を掠め傷をつけるだけで終わる。

 

「まだまだ!」

 

 そのままバルトフェルドはバクゥを前方へと抜けるように走らせ、ミサイルポッドを回転。

 バーニアをブレーキ代わりに減速してすぐさま機体の向きを変え背中をとらえたブリッツに向けてミサイルを次々と発射する。

 

「デュエルのバッテリーを吸い上げていたのも見えていた。稼働時間はそう長くはないだろう?」

 

 実態兵器であるミサイルはフェイズシフト装甲を突破できないが、装甲表面で炸裂する爆風の衝撃はコクピットにも響くし、フェイズシフト装甲は使い続ける毎にバッテリーを消耗する。

 

 最大の特徴と言える装備“ミラージュコロイド・ステルス”の他、トリケロスのビームサーベルやビームライフルなど、ブリッツガンダムの装備はバッテリーを使用するものが多い。

 デュエルの残存バッテリーを吸い上げてある程度補充したとはいえ、その残量は決して多くはないはず。

 トリポリでのフェイズシフト装甲の解析からフル充電からフェイズシフトダウンを起こすまでに撃ち込むのに必要なミサイル数も調べ上げているバルトフェルドは、ミサイルでブリッツを沈黙まで追い込むことも不可能ではないと見ていた。

 

「フェイズシフトダウンに持ち込む気か。だが──」

 

 バルトフェルドの狙いがバクゥの機動性を生かしつつミサイル攻撃でフェイズシフトダウンを狙ってくると察知したアルトリアは、迫り来る無数のミサイルに対してトリケロスのビームサーベルを振り回し、機体のバーニアを吹かして滑るように砂漠の上を走り出す。

 接近するミサイルを回避し、ビームサーベルで斬りはらい、ビームライフルで撃ち抜き、1発もブリッツの装甲に届かせることなく全てしのぎ切った。

 

「──単機のバクゥから放たれるミサイル程度で装甲に届くと思ったら大間違えだぞ」

 

「やるじゃないか、魔女……!」

 

 バクゥから放たれるミサイルが全て落とされた光景に、バルトフェルドの額に一滴の冷や汗が浮かぶ。

 

 宇宙戦闘用に作られた機体と聞いていたが、バーニアを駆使することで砂漠の大地をまるでスケートリンクの上のように動くブリッツの動きは、バクゥの機動性能にも劣らない。

 

「──いや、パイロットの技能か。実に恐ろしいね!」

 

 しかし、同じ機体で同じ動きを取れるかと問われれば、バルトフェルドは否と答えるだろう。

 

 あの動きは繊細な姿勢制御とバーニアの操作がなせる技であり、わずかでも狂えば砂の大地にひっくり返る操縦である。

 その上、あの速さで動くブリッツの内部にかかるGは相当なものとなる。強靭なコーディネイターの肉体でも、骨折してもおかしくないほどに。

 それに耐えて繊細な操作を途切れることなくミサイルが飛来する中で行う。バルトフェルドの目から見ても、その操縦技術は人間の領域を超えるものがあった。

 

 お返しと言わんばかりに、背中をとらえたバクゥに向けてトリケロスのビームライフルが光線を放つ。

 ロックオン警報もない、トリケロスを構えるなり狙いも定めずに発射してくるのに正確に機体を貫く直撃コースを走るビーム。

 

 それを3発。

 後方から貫く直撃する射線、左に回避した先でミサイルポッドを撃ち抜く武装を破壊する射線、右に回避した場合にモノアイとビームサーベルを奪う首を撃ち落とす射線と、回避した場合も直撃するコースに乗せて放たれてきた。

 

「くっ──!」

 

 普通に回避しては左右どちらに逃れようとも武装が視界を失う。

 直撃なんぞ以ての外。

 ならばとバルトフェルドは一瞬で回避方法を判断し、機体を支える4本の足とバーニアを使ってその場で跳躍、3つ目の回避方向である上に逃れてトリケロスのビームライフルを交わして見せた。

 

 ロックオンなど必要ないと言わんばかりの早撃ちに加え、回避先すら予測して放たれる攻撃。

 機体制御と回避だけでなく、攻撃面の技量も今まで相対した者たちすべてを置いてけぼりにするアルトリアに、バルトフェルドは同じ人間の操縦する機体と戦っているか疑わしくなってしまう。

 

「ハハ……魔女とは言い得て妙だ。だからこそ──」

 

 しかし、砂漠の虎は人間離れした技量を持つ敵であっても命を散らす前から負けを認めるような男ではない。

 

 逆立ちしても勝てない相手? 

 上等! そんな敵こそ、虎の牙を首に立て自ら狩るに相応しい至高の獲物である。

 技量で劣ろうとも、砂漠の戦闘においてバクゥの性能はG兵器を上回るし、砂漠の大地は虎の庭である。

 技量で圧倒されているならば、地の利とそれを知る経験でその差を埋めてみせる。

 

「僕の異名は“砂漠の虎”! 砂漠の戦闘は得意分野、この地で負けるわけにはいかないのさ!」

 

 砂の大地に降りたバクゥからミサイルがブリッツに向けて放たれる。

 それをビームサーベルで迎え撃ち、再度砂漠を滑るように回避するブリッツだが、今度のミサイルはブリッツ自身ではなくその周囲の砂の大地に降り注いだ。

 

「なっ──!?」

 

 爆風に巻き上げられた砂が視界を塞ぎ、無数に出来たクレーターが地形を狂わせる。

 人間離れした技量で繊細な姿勢制御をしているブリッツだが、灘らだった砂の大地をボコボコにされたことでブリッツが躓いてしまった。

 

「其処だ!」

 

 千載一遇の好機。

 バクゥと違い、二足歩行で重心の高いブリッツはその構造上、一度バランスを崩すと転倒しやすい脆さがある。

 足をとらわれやすい砂の大地ならばなおのこと。

 

 またとない好機に、ビームサーベルを構えたバクゥが砂塵に紛れて一気に肉薄し機体を両断せんとビームサーベルを横一文字に振るう。

 

「──私も諦めは悪いぞ、何しろ異名が“凍土の魔女”だからな!」

 

「──ッ!?」

 

 しかし、バクゥはトドメを刺す前に転倒してしまう。

 転びながらもアルトリアが発射した有線式ロケットアンカー“グレイプニール”が、砂に隠れたはずのバクゥを捉えてその左前脚に絡まりこちらの機体の制御も狂わせたのである。

 

「その程度──!」

 

 キャタピラごと左前脚を掴み取ったグレイプニールにバランスを崩されるが、其処は砂漠の虎の異名を持つ男。

 すかさず機体を操作して姿勢を持ちこたえさせ、並の腕のパイロットならそのまま転げまわるところを踏みとどまってみせる。

 

 数歩走る距離で、ビームサーベルはブリッツに届く。

 まだブリッツの方は転倒状態から立ち上がれていない。

 退く場ではないと、バルトフェルドはバクゥを直接四本の足で走らせてグレイプニールに捕まったままミサイルを撃ちビームサーベルをブリッツに突き立てようと前進する。

 

「僕の勝ちだ、魔女!」

 

「まだ負けてないぞ、虎!」

 

 しかし、至近距離で飛んでくるミサイルをアルトリアはブリッツを立ち直させず手足を使って横に機体を転がして回避。

 さらにトドメを刺そうと振るわれるビームサーベルに対して、その光の刃がシールドの上を滑るようにしてトリケロスで機体を守ったことで凌いで見せた。

 

「そのまま寝転べ!」

 

 バクゥのビームサーベルを凌ぐとともに、すかさずトリケロスをビームサーベルを振り回した頭部に顎から押し当ててバクゥを持ち上げると、ブリッツを起こしてバクゥを力技でひっくり返した。

 

「うおわ!?」

 

 これにはバルトフェルドも上下が反転し振り回されるコクピットの中で、悲鳴混じりの驚きを隠せない。

 いくら敵のMSとはいえ、よく見れば愛嬌も感じられるこの四足獣を模した機体に対してこのような暴力的な対応を取られたのは初めてだった。

 

「君は動物を虐待するタイプだ! 間違えない──ぐうっ!?」

 

 コクピットの中で文句を言いながらも立て直そうとするバルトフェルドだが、もがくバクゥにアルトリアの無慈悲な攻撃が襲いかかる。

 バクゥの右後ろ足を蹴りつけ膝間接駆動部をイカれさせると、トリケロスのビームサーベルで首を切り落としビームサーベルを無力化するとともにモノアイに搭載されているカメラとの接続を物理的に破壊。

 コクピットのモニターが真っ暗になったバクゥに対して、今度は腹部を踏みつけるようにして蹴りつけた。

 

 MSなので虐待とは言えないかもしれないが、絵面的には動物虐待をしているように見える。

 

 しかし、ひっくり返された際にミサイルで耕したことで柔らかくなった砂質の中に7割方くらい沈んでいたミサイルポッドが、踏みつけ攻撃でほぼ完全に埋められてしまった。

 頭部も切り落とされビームサーベルも失ったことで、バクゥは武装を無力化されてしまった。

 

 そのバクゥに、踏みつけたままトリケロスのビームライフルの銃口を突きつけてアルトリアが呼びかける。

 

「決着だ、砂漠の虎。バクゥの機能を停止して投降しろ。こちらもアークエンジェルを落とされているからレセップスは当面追撃できない。意地を張る理由はすでに無いはずだ。捕虜としての待遇はコルシカ条約に基づき保証する」

 

「……わかった、投降するよ」

 

 レセップスの離脱を果たした以上、フェイズシフト装甲が守るブリッツくらいしか巻き込まない自爆をしてももはや意味はない。

 

 アルトリアの呼びかけに応じ、バルトフェルドはバクゥの機能をすべて停止させて投降の意を示した。

 

 

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