その首置いてけザフト共   作:みども

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明けの砂漠とのコンタクト回です。



明けの砂漠 6

 

 

 連合の兵士に混じっていたブルーコスモスの襲撃犯たちを制圧したユウは、民間人などに出た負傷者の手当をミランダたちに任せ、バルトフェルドとケバブのソースのこだわりに関する主張をぶつけ合っていた金髪の少女一行の方に近づく。

 金髪の少女がバルトフェルドとどうでもいい言い争いをしていた時に全力で他人のフリをしていた彼らの中に、バナディーヤに来た目的の1つである人物の姿があったからだ。

 

 お互い正体を知らない段階だったとはいえ、砂漠の虎にブルーコスモスの襲撃犯から助けられた心境は複雑なのだろう。

 その人物はけが人の手当を手伝いながらも、複雑な表情を浮かべていた。

 

「少し、よろしいですか?」

 

「お前は、さっき砂漠の虎と一緒にいた……」

 

「確認したい。貴方が明けの砂漠のリーダー、サイーブ・アシュマンですか?」

 

「ッ!?」

 

 その彼──北アフリカで活動する反プラント武装勢力“明けの砂漠”のリーダー、サイーブ・アシュマンに確信をもって声をかけたユウ。

 

 ユウが口にした名前に、明けの砂漠のリーダーであるサイーブ・アシュマンが顔を上げる。

 地球連合軍の制服に身を包みながらも先ほどバルトフェルドと共にケバブを楽しみそしてブルーコスモスの襲撃犯に狙われたユウは、アフメドにとって不審人物にしか映らない。

 警戒心をむき出しにして睨みつけてくるアフメドに、ユウは己の身分を開示した。

 

「失礼。私は地球連合宇宙軍ユーラシア連邦第9航宙機動艦隊所属、ユウ・ナガトといいます」

 

「──!」

 

「第9艦隊──って、魔女の手先!?」

 

 第9艦隊。

 地球連合にありながら、コーディネイターが多く在籍しザフトの兵器であるMSを運用する艦隊。

 それはプラントのコーディネイターで構成されるザフトと戦う者達にとって、ザフトと同じ人種であるコーディネイター、すなわち味方ではなく敵でなければならないはずの存在である。

 

「バカ止せアフメド──」

 

「お前、やっぱりコーディネイターじゃねえか!」

 

 驚きの表情となるアシュマン。

 その隣にいた明けの砂漠の仲間と思われるアフメドと呼ばれた若者はそれ以上に過敏に反応し、ユウを指してコーディネイターと叫んだ。

 

 先ほど連行されたとはいえ、直前まで彼らにとっての主敵であった砂漠の虎と一緒にケバブを楽しんでいたこともあり、特に若者──アフメドの目にユウは協力関係にある連合の軍人ではなく、倒すべきコーディネイター()として見えたようである。

 

 コーディネイター。

 その言葉にユウに対して外套に隠していた拳銃を向けたアフメドだけでなく、周囲の人々も反応する。

 占領軍の連合の兵士達はもちろん、先日までバルトフェルドの融和的な占領下で暮らしていたバナディーヤの民間人も先ほどのブルーコスモスが起こした銃撃事件の元凶となったコーディネイターに対する敵意が強くなっていたこともあり、その反応の多くは敵意を含める目だった。

 

「……銃を下げていただきたい」

 

「黙れよコーディネイター! 何が目的かは知らないが、俺達は確かにお前らが砂漠の虎とケバブ片手に話しているのを見たぞ! どうせザフトのスパイなんだろお前ら!」

 

「連合の兵士に見つかるぞ! 銃を隠せ!」

 

 拳銃を取り出して叫んだアフメドの言葉に、周囲の人々が騒めく。

 すぐにアシュマンがアフメドの手を押さえて拳銃を隠したが、連合の兵士達にコーディネイターと叫んだ声を聞かれたらしい。

 面倒ごとを増やす事態となったことで眉間にしわを寄せたユウに、近くで聞き耳を立てていた連合の兵士達が銃を向けながら近づいてきた。

 

「今の言葉、どういう意味か聞かせてもらおうか? なあ、プラントを捨てた裏切り者さんよ」

 

「…………」

 

 たちまちまともな教育が行き届いているとは思えない兵士達に取り囲まれるユウ。

 ブルーコスモスのテロリストが暴れた現場にいた連中とは別の部隊の所属らしく、先ほどの騒ぎの詳細を知らない様子である。

 

 相手は一般の兵士達。

 階級では兵士達よりも少尉であるユウの方が上だが、コーディネイターに対する差別思想が強いユーラシア連邦の本国で志願してきた兵士たちにはそんなことなど関係ないだろう。

 

 先ほどスパイ疑惑ともとれる発言をアフメドが吐いた。

 証拠も何もない暴論なのだが、職務上彼らはスパイ呼ばわりを受けたユウを無視するわけにはいかない。

 コーディネイターであることを分かっているのか、嫌々というよりも言いがかりをつけることができる好機を得たと言わんばかりに嬉々とした様子で銃を向けてきているが。

 

 所属の上では同じ地球連合に所属する友軍だが、コーディネイターであるユウにとっては慣れた待遇である。

 この場で無用な抵抗をして民間人のいる中で銃撃を起こすような事態が発生すれば、何の罪もない人々に危害が及ぶ危険がある。

 謂れない容疑で拘束を受けることと、無駄な抵抗をして民間人に被害が出る危険性を鑑みたユウは、おとなしく拘束を受けるために拳銃のおさまっているホルスターを地面に落として両手を挙げた。

 

「チッ、抵抗してくれれば銃殺してもお咎めなしだったのによ……」

 

 ユウが射殺で終わらせられる抵抗ではなく、縛る側も面倒が多い拘束を無抵抗で受け入れたことに愚痴をこぼしながら、連合の兵士達が後ろに組んだユウの手首に拘束具をかける。

 

 スパイ疑惑とはいえ証拠もなければ無抵抗である。

 目撃者も多いこの場でそんな相手を銃殺などしようものなら、魔女のバックにいるカリオン・ウェイブが動くだろう。

 さすがにその程度の判断を下せる脳はあったらしく、文句を言いながらも兵士達はユウを捕縛した。

 

「抵抗するそぶりくらい見せてみろよコーディネイター」

 

「…………」

 

「チッ、せめてなんか言えよ化物が……」

 

 監視の目がある尋問室に向かう道中で数発殴られ蹴られる程度のことはあるだろうが、全くの冤罪なので余計なことをせず大人しくしていれば解放されるはず。むしろ個人的には帰還後の鉄拳制裁の方がはるかに怖い。

 明けの砂漠のリーダーの心証を悪化させてしまったが、次に来るメッセンジャーはナチュラルの同僚が向かうことになるだろうし、バルトフェルドを拘束したのも彼らは見ていたはずなので誤解も解けるだろう。

 この場で自分1人が離脱する羽目になっても大きな障害はないはずだと、民間人の安全のために冤罪の拘束を受け入れたユウ。

 

「待て!」

 

 ところが、穏やかな事態を収束させようとしたユウの思惑に反し、アフメドの仲間と思われるバルトフェルドとケバブのソース論争を繰り広げていた金髪の少女がいきなりしゃしゃり出てきた。

 

 先ほどの兵士達の愚痴と、憂さ晴らしに見えないところで暴力を加えようとしている思惑が薄汚い笑みで溢れているのを見逃さなかった少女は、命の恩人でもあるユウを助けようといらぬ正義感を振りかざしてきた。

 

「そいつはスパイなんかじゃない! コーディネイターだからって、お前ら地球連合の仲間同士だろうが! そいつを拘束する権限なんか──ムゴゴ!?」

 

「何しでかしてくれんだよお前は──!」

 

 すかさずアシュマンが少女の口を抑え込んだが、言いがかりと暴論によるスパイ容疑の拘束という理不尽なものとはいえ、正式な公務に従事している連合の兵士の行動に彼女は異議を申し立ててしまった。

 途端に2人の兵士の表情が変わる。

 

「ほう……スパイ容疑のコーディネイターを庇うのかねお嬢さん」

「やはり砂漠の虎が占領していた町もザフトと繋がっていたらしいな」

 

 バナディーヤはザフトがすぐに引き上げたこと、無抵抗で街を明け渡したことで、ザフトの支配からの解放を掲げる連合も融和的、平和的な占領を行った。

 しかし、連合のそんな温和な占領政策にすらも刃向かう現地の人間がいるとすれば……公務執行妨害などを大義名分とした蛮行を許すことになる。

 

 殲滅するべきザフトの残党もいなかったことで、バナディーヤを占領する連合の兵士の中には戦場のストレスでたまった碌でもない欲望の捌け口を探しているような輩もいる。

 残念ながらユウを捕まえた兵士達はその類いだったらしい。

 相手が年端もいかない女であることも相成り、ユウの拘束という面倒ごとに鬱屈となっていた兵士達の表情が変わった。

 

「お前たちもザフトのスパイかもしれないな。尋問する、おとなしくしてもらおう」

「特にお嬢さん、君は先の発言に対してしっかりと聴取しなければいけないな。しっかりと、ね……」

 

「ンンー!!」

「クソ、あのコーディネイターのせいで……!」

「こんな時にどこ行きやがったキサカの野郎……!」

 

 アフメドは最悪の事態になったと顔をしかめユウに恨みのこもった目を向け、アシュマンは少女を余計なことを言わないように口を押さえながら守ろうと焦った表情となる。

 

「…………」

 

 冤罪をふっかけた挙句、ユウは事態を小さく収束させようとしていたのにお仲間の暴走する正義感の結果でこうなった現状である。

 恨みをぶつけたいのはむしろこちらだと、謂れない非難の目線を向けれたユウはアフメドに対して無言の抗議を込めた呆れた目線を返した。

 

「テメエはおとなしくしていろ、薄汚いミュータント野郎!」

 

 さて、明けの砂漠が起こしたいざこざをどう収拾するべきか。

 乱暴に砂の地面に組み伏せられながら、現状を民間人の安全を第一としてどう解決するべきか思案するユウ。

 

「その子に近づくな!」

 

「こ、こいつ……武装しているぞ!」

 

 一方、明けの砂漠の面々は銃を構えた連合兵士達に取り囲まれ、アフメドが拳銃を取り出したことで一触即発の空気となる。

 

「……やむを得ないか」

 

 銃撃戦が起これば、民間人に被害が出かねない。

 流石に放置できない状況となったため、ユウは下手な押さえつけから抜け出すと逆に抑え込んできていた兵士を組み伏せて銃を奪い、その銃口を空に向けて発砲した。

 

「本性を現したなコーディネイター!」

「テメエ何しやがる!」

 

「それはこちらのセリフだ!」

 

 もう1発威嚇発砲を行い、銃を向けてきた連合の兵士達を黙らせる。

 

「確固たる証拠もなく、根拠なき憶測のみで民間人に銃を向けるなど、貴様らそれでもユーラシア連邦の軍人か! 恥を知れ!」

 

「コーディネイターの分際で──」

 

「口を慎め雑兵。私は少尉──すなわち士官だ。軍規違反または国際法違反を行う兵士をその場の判断・裁量において拘束、場合によっては銃殺することも可能な権限を持っている。二度は言わない。下手くそなナチュラルの銃弾が当たると思うな、額に風穴を開けられたくなければその銃を直ちに下せ」

 

「チッ……!」

 

 ユウの脅迫めいた命令を受け、兵士たちが銃を下げる。

 流石に銃撃戦ですでに銃を手にしているコーディネイターを相手取るのは、死人が出る危険なことだという判断くらいはできたらしい。

 はたまた、所属する部隊は違えど少尉が相手ではさすがにコーディネイターだとしても分が悪いと思ったのか。

 いずれにせよ、強引であり後ほどこの兵士達の上官から連隊長や提督に苦情がくるだろうから使いたくない手ではあったが、民間人の安全を考慮し力づくで事態を収めた。

 

 兵士たちが銃を下ろしたのを確認してから、アフメドにも銃を向ける。

 

「其方も銃を下ろしなさい。民間人がいる中でそんなものを持ち出すな。拒絶するならば拘束する」

 

「……下ろせアフメド」

 

「……クソ!」

 

 悪態つきながらも、アシュマンが肩に手を置き説得してくれたことでアフメドも銃をその場に落とした。

 

「絶対に後悔させてやるからな、コーディネイター……!」

 

 さっさと持ち場に戻れとユウに追い払われることとなった連合の兵士たちは、恨みのこもった目をぶつけながら立ち去っていく。

 確実に何らかの嫌がらせを仕掛けてくるだろう、そんな様子だ。

 

 自分が多少理不尽にあえば、仲間たちが危険にさらされる可能性も出てこなくて済んだ。

 だからこそ余計な恨みをかうこの手段は使いたくなかったのだが……カサブランカに向けて出発すれば会うこともないだろうし、その間自分の方で監視すればいいと判断するユウ。

 

 一方、そんなユウの心境など知らない様子の元凶たる小娘──ではなく少女が、アシュマンから解放されるなり顔を赤くしてこちらに向かってきた。

 

「お前──こんなことできるならなんで最初から抵抗しなかったんだ! 理不尽だろ、あんな仕打ち!」

 

 民間人の安全のためであるなどと見知らぬガキ──ではなく、明けの砂漠のメンバーと思われる少女にいちいち懇切丁寧に説明しているほど余裕はない。

 騒ぎを起こしてしまったこともあり注目されている現状では、またバカな行動を起こすような不届き者が出てきてもおかしくない。

 まずはこの無関係な民間人が多数いる場所から離れるために、ユウは少女をスルーしてアシュマンに声をかけた。

 

「このような注目を集める場に止まれば、厄介ごとが寄ってくるでしょう。場所を変えたい、ご同行願えますか?」

「おい無視するな!」

 

「……ああ。先ほどは連れが迷惑をかけたみてえだな、悪い」

「待ってくれサイーブ! 私の話がまだ終わってない!」

 

「怪我人がいないならば結構です」

「お前……! いい度胸だな、年長者を無視するとは!」

 

「アフメド、お前は戻っていろ」

「いい加減にしろよな──いてて! 何すんだよ!」

 

「サイーブ!? で、でもよ──」

「おい放せって! この……お前みたいな子供──痛い痛い! さっきより強くなってる!」

 

「冷静な話もできないやつを同席させるわけにはいかねえ。お転婆娘を連れてアジトへ戻るんだ」

「誰がお転婆だ!」

 

「……分かった」

「わかった謝るからまず放せ! というか、お前たちも少しくらい助けようとしろよ!」

 

 コーディネイターに敵意を向けるアフメドに少女を連れてアジトへ戻るように指示を出すアシュマン。

 そして先ほどから少女につっかかられているユウの方を振り向くと、そこには手首をつかまれて抑えられている少女と、女相手とはいえ自分より身長の高い相手をやすやすと制圧してアシュマンのことを待っているユウの姿があった。

 

「……何してんだよカガリ」

 

 少女のことをよく知っているのか。

 その光景を見たアシュマンは少女を助けることはせず、疲れた様子の溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




タッシルは焼かれずに済みました。
アイシャさんは生存してます。彼女自身はザフトじゃないので、虎が檻にいるなら死亡フラグは立たないはず。
ちなみにバルトフェルドがバナディーヤでアークエンジェルからこっそり降りたのは、恋人が敵討ちとかに走ったりしないよう接触と説得をするためだったりします。ケバブはあくまでついでであって……ついでですよね?
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