その首置いてけザフト共   作:みども

65 / 95
火ぶたを切ったジブラルタル攻防戦の1日目です。
以下の順に各地の戦線に視点が変わります。

①ジブラルタルのザフトと、包囲する地球連合の各部隊

②大西洋連邦海軍&ユーラシア連邦海軍VSオロールが配属されているジブラルタル守備隊

③ハイドリヒ率いるユーラシア連邦陸軍VSバルトフェルド隊&アラゴンで負けた生き残りのザフト部隊

④アークエンジェルとベニグセン


ジブラルタル攻防戦 2

 

 

 ザフトの地球における二大拠点の一角、ジブラルタル基地。

 地中海と大西洋を隔てる海峡を塞ぐジブラルタル海峡に聳えるその要塞は、建設以来初めてとなる地球連合の大規模な侵攻を受けていた。

 

 攻め寄せる地球連合は、大西洋連邦の北大西洋方面を取り仕切るブリテン島を拠点とするブリタニア海軍、ユーラシア連邦の地中海を担当する地中海艦隊、西ヨーロッパ方面を担当する陸軍第3方面軍、宇宙から降りてきた第8艦隊のアークエンジェル以下3隻と第9艦隊のベニグセンという、大西洋連邦とユーラシア連邦の海軍・陸軍・宇宙軍が集まって構成される大軍である。

 属する国家こそ異なるものの、その戦力は非常に多く、地球連合がこのジブラルタル攻略に本腰を入れて取り掛かっていることを物語っていた。

 

 対して守るザフト軍は、ジブラルタルという拠点を守るだけありアフリカの生き残りも多く吸収し相応の戦力を揃えている。

 ユーラシア連邦と大西洋連邦──どちらかの勢力単独の攻勢だったならば防衛も十分可能な戦力だった。

 

 だが、今回のジブラルタルを包囲する軍勢は、地球連合を構成するといっても潜在敵国同士であり反目し合うはずの勢力をまとめた大軍だった。

 

 足並みなど揃えないはずの2つの勢力が轡を並べて集めた大軍は、その実情は寄せ集めで稼働可能な戦力も十全ではないジブラルタル守備隊の想定をはるかに上回るものであり、現有戦力での防衛は困難であるという予測が立てられた。

 

 援軍もない。

 守り切れる可能性も薄い。

 そんな戦況で──いやそんな戦況だからこそ開戦した、ジブラルタルをめぐる攻防戦。

 

「時間だ。始めるぞ」

「了解! 司令部より通達、第一、第二自走砲大隊、対地ミサイル部隊、ジブラルタルに向け攻撃開始!」

 

「対要塞攻勢開始だ! 戦闘機部隊、爆撃機部隊は発艦せよ! イージス艦隊、対地攻撃開始だ!」

「了解! 対地ミサイル発射!」

 

 ユーラシア連邦の第3方面軍の自走砲部隊、ミサイル部隊、大西洋連邦の艦隊からの航空戦力とイージス艦からのミサイル攻撃を引き金に、決戦の火蓋は切られた。

 

 戦力的に圧倒的に劣るジブラルタルだが、降伏は当然のように拒絶する。

 ジブラルタルを指揮するスコルツェニーは、前線にバルトフェルド隊の生き残りやジン・ハイマニューバを駆るオロール、アラゴンの戦いで敗北した残党らをあえて配備し、彼らに命令を出した。

 

「ザフトの恥さらしの敗残兵の諸君と、裏切り者のグーデンブルグ君……自らの、仲間たちの汚名を注ぎたければ、死ぬ気で戦い身の潔白を証明しろ。名誉を取り戻してみせろ。逃げ出したり投降したりでもしてみろ、ナチュラルの前にジブラルタルの砲撃が貴様らを撃ち抜く。よくよく覚えて戦うように」

 

 命令の内容は、負け戦の不名誉や謂れない罪をこの戦いで勝利して晴らせ、というもの。

 要するに、降伏など許されない、圧倒的不利なこの戦場において勝利か死かの2択を突きつける命令である。

 

「言われずとも!」

「やつらは全て潰す!」

「我らが受けた屈辱と苦痛!」

「百倍にして返してやるからなハイドリヒ!」

 

 ジブラルタルの軍勢は、アラゴンの戦いで敗北を決定付けた毒ガス攻撃の後遺症を引きずる者も多く、卑劣な手段で大損害を与えたフリードリヒ・ハイドリヒの率いる第3方面軍が来ていることもあり、借りを返す好機だと自らこの死地となる戦いに飛び込んでいった。

 

「G兵器は本国で詳しく解析する必要があるからな。ディアッカ君のバスターとともに、私の方で本国にしっかり届ける。オロール・グーデンブルグ、己が裏切り者でないことをこの戦いで証明しろ」

 

「……了解!」

 

 ニコル共々スパイ容疑をかけられているオロールには、乗り手が毒で死亡し倉庫に眠っていたジン・ハイマニューバが貸し与えられ、スパイ容疑を晴らすために戦果で潔白を示せと命令が下される。

 イージスはディアッカの乗るバスター共々ジブラルタルからプラント本国に移送するために打ち上げられる予定だと聞かされ、オロールは代理だったとはいえイージスのパイロットを下された。

 

「ダコスタ君。戦線崩壊、オペレーション・ウロボロスの破綻につながるビクトリアからの撤退……貴様らがこの戦いで活躍すれば、こんな無法を晒して捕虜に落ちぶれた砂地の猫の評価も改まるかもしれないぞ。いいか、死ぬ気で戦え。貴様らの部隊が冠する名前に刻まれる名誉を、貴様ら自身の手で取り戻してみせろ。それができなければ、アンドリュー・バルトフェルドは無能として歴史に名を残すこととなる」

 

「……了解。バルトフェルド隊、出撃する!」

 

 バルトフェルド隊は、アフリカ戦線崩壊の全責任を押し付けられている状況にある。

 アンドリュー・バルトフェルドの名を、ザフト屈指の無能指揮官として残したくなければ、この戦いで部下であったバルトフェルド隊が晴らして見せろとスコルツェニーは告げ、虎の名誉を取り戻すべくバルトフェルド隊の生き残りたちもまた死力を尽くして戦いに挑んだ。

 

 結果、寄せ集めで数で圧倒的に劣る孤立無援という状況ながら、スコルツェニーの脅迫を受けてジブラルタルにおけるザフトの士気は大いに高まり、連合の想定を覆す奮戦ぶりを見せ付ける。

 

「落ちろ!」

「ナチュラルどもが!」

「ジブラルタルは渡さねえ!」

 

「卑劣なナチュラルどもが!」

「同胞の苦しみ、無念、その身で味わえ!」

「ハイドリヒを許すな!」

 

「ニコル……お前の潔白も、俺が晴らしてやるから待ってろよな! 行くぞナチュラルども! うおりゃアアアァァァ!」

 

「バルトフェルド隊長の名誉を取り戻す!」

「アフリカ戦線を支えてきたのは俺たちだってこと、ジブラルタルに見せつけるぞ!」

「怯むな! 砂漠の虎が率いた部隊の恐ろしさ、ナチュラル共に思い知らせてやれ!」

「敵は雑多な寄せ集めだ! 片っ端から食い荒らせ!」

 

 各々が取り戻す名誉、潔白、そして晴らさんとする仲間の無念や冤罪。

 それを証明するため、怒りを力に変えてジブラルタルを攻め立てる地球連合の大軍に向けて勇んで挑みかかっていった。

 

「オクラホマ、ヒューストン、フィリップ轟沈!」

「第4戦闘機部隊全滅! まずい、奴ら母艦に来る! ウェリントン被弾、沈没します!」

「突出してきたMSを包囲しろ! じ、ジン・ハイマニューバだと!? ぐわアアァァァ!?」

 

「……思ったより粘るな」

 

 ザフトの死ぬ気で抵抗してくる奮戦により次々上がってくる被害報告を聞き、ジブラルタル攻略軍の大西洋連邦北大西洋方面艦隊──通称ブリタニア艦隊を指揮する提督、アーネスト・スプルーアンスは顎に手を当てる。

 

「ジブラルタル基地の戦力はイベリア戦線やアフリカ戦線の生き残りをかき集めた雑多な寄せ集めと聞いていたが、どうやら違うらしい。戦力の想定を見直す必要がありそうだ」

 

 カオシュン宇宙港の防衛成功とアフリカ戦線の崩壊によりオペレーション・ウロボロスの進捗が上手くいかず、被害の拡大と戦局が悪化に伴いプラントにおける政治が不安定化しているという情報は地球連合にも入っている。

 ジブラルタルへの宇宙からの援軍がないことから今回のジブラルタル攻略作戦が発動したのだが、敗残兵の寄せ集めという情報のジブラルタルの抵抗が想定よりもはるかに激しいことに、スプルーアンスは作戦を頭の中で練り直す。

 

「マールバラとカニンガムに打電だ! 制空権の制圧を優先する。爆撃機部隊は1度撤退し、砲撃とミサイルを支援攻撃とさせ航空戦力には戦闘機部隊を大々的に投入する、第3、第7機動分艦隊に航空戦力の出撃を命令! 戦線を整理し直す。ユーラシア連邦の地中海艦隊が前に出る空間を開けてやれ」

 

「了解! 北大西洋方面艦隊旗艦ジェファーソンより、第3、第7機動分艦隊へ。直ちに航空戦力の出撃を要請──」

 

 スプルーアンスの指示により、ブリタニア海軍が動く。

 中衛の空母艦隊から次々と航空機を出撃させて空の戦場を乱戦に持ち込むと、一度爆撃部隊を下げてから戦闘機部隊を大々的に投入する。

 制空権を確保してから基地に対する空対地攻撃を仕掛けるべく、ディンをすべて落とすために航空戦力から基地攻撃用の爆撃機部隊を撤退させ、戦闘機を投入した。

 

 また、海の前線を大西洋連邦の海軍で埋め尽くしていた一部の戦線に空間を開けて、ユーラシア連邦の地中海艦隊が入るための空間を作る。

 

 それはジブラルタルの制圧のための上陸部隊を大西洋連邦で固めてユーラシアに足を踏み入れさせないための布陣を崩すことにつながる。

 友軍にスプルーアンスの命令通りに打電しながらも、本国の方針に逆らうことになるのではと問う部下。

 

「しかし提督閣下、よろしいのですか? 前衛を大西洋連邦(我々)の艦隊で固めなければ、ジブラルタルへの上陸にユーラシア連邦(連中)の部隊を入れることになりますよ?」

 

「ザフトの抵抗が予想をはるかに上回る。ユーラシアの連中の盾にされて、肝心の上陸時の戦力が不足するなどという事態は避けたい。かまわん、責任は私がとる」

 

 確かに大西洋連邦の北大西洋方面艦隊はユーラシアの地中海艦隊の三倍以上の戦力があるので、多少被害が出ても支援攻撃があればジブラルタルを大西洋連邦の艦隊で制圧することも不可能ではない。

 しかしジブラルタルの抵抗が予想を上回る奮戦ぶりを見せたことで、このままではユーラシア連邦の海軍の盾にされて被害がかさむばかりであり、それはよろしくないと判断したスプルーアンスがユーラシア連邦の地中海艦隊も前衛に出る──すなわちジブラルタルに乗り込む権利を持つ場を譲った。

 

 そういうことならばと、上官の命令に従い大西洋連邦の海軍が戦線を整理して空間を作る。

 

「ほう……てっきりジブラルタルへの上陸を仕掛けるのは独占するかと思ったのだが、ワスプ共にも存外物分かりのいい奴がいるじゃないか」

 

 大西洋連邦の艦隊が明けた空間。

 それを見て、一部とはいえジブラルタルに上陸の一番槍を仕掛ける可能性がある前衛の椅子を譲ってくれた意思表示として受け取ったユーラシア連邦地中海艦隊の提督、ジョシュアン・ヴァレリはその好機をものにするべく動く。

 

「では遠慮なく使わせてもらおう。大西洋連邦海軍の開けた穴を塞ぐぞ、カスティヨンとシュペーを前衛に展開!」

 

 大西洋連邦海軍の開けた穴を塞ぐように、ユーラシア連邦海軍の対地攻撃用巡洋艦2隻を前衛とし、上陸用の揚陸艇を備える母艦が配置に着く。

 制空権を制圧し爆撃で要塞の迎撃の手を沈黙させ隙を作れば、大西洋連邦に遅れをとらずにジブラルタルへ制圧用の上陸部隊を派遣できるルートを確保した。

 

 一方、ザフト側も黙っていない。

 スピアヘッドや対MSヘリコプターが飛び交う空の戦場をディンやグゥルに乗るジン部隊が制空権を取られまいと空中戦を展開し、ミサイル攻撃を掻い潜る地上部隊が艦隊やユーラシアの地上部隊に応戦している。

 そんな中、前衛を担う大西洋連邦海軍の戦列に崩れたわけでもないのに穴が空いたのを見たジブラルタル部隊の一部が、その間隙を見逃さなかった。

 

「おい、敵の艦隊の戦列に穴が出来てるぞ!」

「好機だ、突撃してこじ開けてやれ!」

 

「待て罠かもしれないんだ!」

 

「戦況を打開するにはこちらも仕掛けるしかない!」

「奴らも寄せ集めなんだ! 指揮系統に混乱が出ているんだろう、こんなチャンスまたとないぞ!」

 

 制止する者もいたが、聞かずにディンとグーンが構成する一部隊が突出する。

 

「沈めナチュラル!」

 

「なっ──!?」

 

 その敵部隊の攻撃にさらされたのは、開けた穴をふさぐために出てきたユーラシア連邦の艦隊である。

 グーンが放つ魚雷が巡洋艦の艦底に穴を開け、前衛の2隻が瞬く間に何もできず撃沈した。

 

「何をしているんだユーラシアの奴らは! 突出してきた敵部隊を包囲殲滅しろ!」

 

 すかさずスプルーアンスが指揮をとり、後方の揚陸艇を抱える母艦を沈められないように左右から挟み込んで大西洋連邦の艦隊の指揮をとり、挟撃で突出してきたザフトの部隊を壊滅に追い込む。

 

「ヤベェ! 罠だ──ぐああぁぁぁ!?」

 

「チッ……だから言わんこっちゃないんだ!」

 

 実際には返り討ちにあったもののザフトの奇襲は見事に成功する形となったのだが、この被害を受けたのがユーラシア連邦の地中海艦隊だった事からヴァレリは囮に使われたのだと思い込み激怒した。

 

「クソがぁ! 大西洋のやつらめ、我々を囮にしやがったのか!」

 

 誤解だが被害を受けた地中海艦隊としてはそう受け取ってもおかしくはない状況。

 怒りに身を任せスプルーアンスに対してヴァレリから抗議が送られたが、戦闘中ということもありスプルーアンスは受け付けなかった。

 

「さっきの文句ならばジブラルタルを落としてからいくらでも受けてやると返答しろ! 今はジブラルタルの攻略の真っ只中なのだぞ! いちいち下らん抗議を受けていられるか!」

 

 やはりというべきか、大西洋連邦とユーラシア連邦、お互い数多くの摩擦を抱える潜在敵国同士、同じ戦場に友軍としてたっても足並みはなかなか揃わなかった。

 

「退けワスプ共が!」

「なんだお前は割り込んでくるな!」

 

 戦力差がありすぎる余裕もあり、軍艦同士の陣取りの奪い合いなどというバカバカしい小競り合い間で発生する始末。

 そんな混乱している前線に、自分だけでなくニコルとその家族たちの嫌疑を命がけで晴らそうと奮戦するジン・ハイマニューバを駆るオロール・グーデンブルグが突撃してきた。

 

「沈めナチュラル共ォ!」

 

「「う、うわあアアァァァ!?」」

 

「サンソンがやられた!」

「敵ジン・ハイマニューバの攻撃です! ハルゼーのブリッジが大破、通信途絶!」

 

「敵ジン・ハイマニューバに対して火力を集中! うるさいハエを叩き落とせ!」

 

「大西洋連邦艦隊が射線上に!」

 

「知るか! 我らを囮に用いるワスプ共何ぞもろとも沈めてしまえ!」

 

 挙句の果てにはオロールに撹乱され同士討ちまで発生するなど、ユーラシア連邦の地中海艦隊が前衛に出しゃばる機会を与えてしまったことでむしろ混乱が発生し、一部の戦線には大混乱が生じることとなる。

 

「ハァ……ハァ……俺が……俺がなんとかしねえと!」

 

 その混乱を利用し、大西洋連邦とユーラシアの海軍が入り乱れて混乱する前線を舞台に、オロールは名をはせるクルーゼ隊の一員の意地を見せるように、今まで犠牲にしてしまった友軍たちの無念を晴らすように、獅子奮迅の働きを見せた。

 

「……見直さなければならなかったのは、こちらの陣営のようだな」

 

 無様としか言いようのない被害を出す前線を見て、スプルーアンスは呆れた溜息を零した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一方、バルトフェルド隊とイベリア戦線の生き残りが担当するジブラルタル北方の戦線では、アラゴンの戦いで毒ガスを用いた攻撃により罪のないスペイン人とザフトに今も後遺症に苦しむ者もいる大損害を与え勝利した“金髪の毒蛇”の異名を持つフリードリヒ・ハイドリヒの率いる第3方面軍が攻め寄せてきていた。

 

 アフリカ戦線でユーラシア連邦や南アフリカを相手に暴れてきた、バルトフェルド仕込みのバクゥによる高機動戦闘を得意とするバルトフェルド隊の精鋭と、ハイドリヒに屈辱と毒の苦痛を与えられたことから激しい怒りを覚えるイベリア戦線の生き残りが、ジブラルタルのザフトの中でも一等強い戦意を胸に戦いに挑んでいた。

 

「ハイドリヒぃぃいいい! テメエの死に様拝むまで、死んでやらねえぞ俺たちは!」

 

 ザウートやジンを先頭にした部隊と、無数の戦車や対MSヘリ部隊を有するユーラシア連邦軍が激しい砲撃戦を繰り広げる。

 機体の破壊や戦死も厭わず、ハイドリヒに対する怒りを力に変えて死に物狂いで前進し続けるイベリア戦線の生き残りで構成されるザフト。

 

「砂漠の大地で鍛え抜いたバクゥの機動戦、見せつけてやれ!」

 

「「「了解!」」」

 

 第3方面軍の前衛はこの死に物狂いの前進をしながら仕掛けてくる砲撃戦ですでに押し負けていたが、そこにバルトフェルド隊のバクゥが走り回って側面から猛烈な攻撃を加えてくることで次々と前線が崩されていた。

 

「バクゥだ!」

「クソこいつらちょこまかと……!」

「ぐああぁぁぁ!?」

 

「ヘリ部隊、対地戦闘!」

 

 対MS戦闘ヘリが編隊を組んでミサイルを降らせてくる。

 それにザウートなどの鈍足なMSは次々に被弾し、足を止められたところに後ろから無尽蔵とも思えるほど送り込まれる地上部隊の増援により集中砲火を受けて撃破された。

 

「ぐああぁぁぁ!」

「おのれハイドリヒ!」

「くっそォォォォォ!」

 

「ダコスタ隊長、味方が!」

 

「援護する! メイラム、カークウッド、仕掛けるぞ!」

 

「了解!」

 

 バルトフェルド隊の隊長代理マーチン・ダコスタは、スコルツェニーからこのジブラルタルは放棄することを告げられていたが、それを知らず──いや知ったとしても戦い続けるだろう味方と、謂れなき汚名を受けたバルトフェルドと隊員たちのために、すでに守る価値などないジブラルタルを守り抜くために、本来バルトフェルドが乗るはずだったラゴゥを駆使して戦い続けた。

 

「レセップスとピートリーは対空支援砲撃! こちらもヘリ部隊を出し、敵ヘリ部隊を落とせ! バクゥ隊は側面攻撃で敵地上部隊を撹乱し、レセップスは混乱した前線に主砲を撃ち込め!」

 

 レセップスとピートリーの支援砲撃とザフトのヘリ部隊でユーラシア連邦のヘリ部隊を抑え、地上は機動力を生かしたバクゥによる側面攻撃で敵の増援の足を止め混乱させ、そこにレセップスの主砲を撃ち込み損害を与える。

 ダコスタの指揮は見事にはまり、第3方面軍の前線は損害を受け、ヘリ部隊と増援により被害を受けて足が止められたイベリア戦線の友軍が立て直す時間を稼ぐことができた。

 

「さすが、砂漠の虎の副官だな。助かったぞ」

 

「お気遣いなく。今は目の前の敵に集中を!」

 

「ああ! 俺たちも負けてられねえぞ、ハイドリヒのやつをぶち殺すまでくたばってられねえ、立てお前ら!」

 

「「「了解!」」」

 

 ザフト側の奮戦により戦況は拮抗している。

 ジブラルタルの堅牢さも相成り、攻略軍は思わぬ苦戦を強いられることとなる。

 

「前衛のシュトラハビッツより援軍要請が来ています。奴ら予想より粘っているようで……」

 

「……56、57、58機甲大隊、第38機械化歩兵師団を送れ。この数の差だ。ククク……気炎を吐いたところで大局は変えられませんよ」

 

 しかし、そんなザフトの奮戦をあざ笑うように。

 第3方面軍司令官であるハイドリヒは、圧倒的に勝る物量に物を言わせ前衛に次々と無尽蔵ともいえる地上部隊の増援を送り込み、奮戦するダコスタたちの抵抗を押しつぶしにかかる。

 

 地上も、空も、海も。

 ジブラルタルの戦場は砲弾とミサイルが飛び交い、人物問わずの残骸とそれを燃料に燃える炎が撒き散らされる戦場の惨劇が広がっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そして、その戦火の燃え広がるジブラルタルの戦況を包囲する地球連合の後方から眺める、数隻の宇宙艦艇で構成される部隊の姿があった。

 

「予想していたけど、上層部に嫌われる厄介者に重要な戦場は任せられないというわけか……」

 

 アークエンジェルを中心とする、アフリカ戦線を勝利に導いた最大の功労者と言っていい第8・第9艦隊の合同部隊と、カサブランカへの道案内と攻略戦で轡を並べ協力関係となっているレジスタンス“明けの砂漠”で構成される部隊である。

 

 大西洋連邦とユーラシア連邦の大軍が集った、地球連合の威信にかけて落とすと銘打って発動してジブラルタル攻略戦。

 予想通りとはいえ、アラスカの上層部から厄介者だの厄病神だのとして見られている合同部隊にそんな大事な戦いの前線を任せるなどという役回りが来るはずもなく、彼らはほとんど最後尾に配属されていた。

 

 ブリッツ、ストライク、デュエル……

 今まで3機のG兵器の奪還を成し遂げてきた合同部隊。

 彼らの共闘の目的である、残る2機のG兵器がジブラルタルに入ったことは確認している。

 可能ならば機体の損壊は少ない状態で、そして本来地球連合のために作られたこの兵器が友軍である地球連合を撃つ前に、何とかして取り戻したいと思っているが、前線に出られなければそれも叶わない。

 

 命令とはいえ、後方で見ているしかできない現状は、合同部隊の彼らにとっては歯がゆいものがあった。

 

「焦ったって仕方ねえよフッカー艦長」

 

「フラガ大尉……君はもう少し上官に対する態度をだな」

 

「おっとこれは失礼しました、フッカー艦長どの!」

 

「……全然反省していないじゃないか」

 

 ジブラルタルの前線で戦っている北大西洋方面艦隊の旗艦“ジェファーソン”から送られている戦闘の映像を見ながら、歯がゆい思いをしているフッカーをなだめるように声をかけるムウ。

 フッカーは彼の気遣いに感謝しながらも、軍人として上官に対する口の利き方がなっていないことを注意したが、あまり効果はないようである。

 

「まあ、戦力差は圧倒的とはいえジブラルタルは一朝一夕で落ちるような拠点じゃない。被害がデカくなれば俺たちにだって出番が回ってくることあるかもしれないですって。気長に待ちましょうや」

 

「…………」

 

 大西洋連邦とユーラシア連邦の足並みに乱れがあり、ザフトの抵抗が想定よりもかなり激しいという状況だが、戦力は地球連合の方が圧倒的に上である。

 戦況はザフトの奮戦と前線の混乱で拮抗しているが、いずれジリ貧でジブラルタルは陥落するだろう。この調子ならば。

 

 だが、アークエンジェルと同じく戦況を見守るベニグセンの方には不安があった。

 

(ジブラルタルの司令官はヘルマン・スコルツェニーだ。奴は、ウランバートルでサイクロプスを使い民間人もろともユーラシア連邦の師団を消し飛ばすという暴挙もやった男……このままジリ貧で押し込まれるような事態を黙って見ているようなやつじゃない)

 

 地球連合の大部隊が目の前のモニターの先で攻撃しているジブラルタルの司令官、ヘルマン・スコルツェニー。

 その男はかつて、27機甲連隊時代にシベリア・蒙古戦線でアルトリアたちが戦ったことのある敵である。

 

 その戦場は、ウランバートル。

 未だにクレーターだけが残り復興の目処が立っていない、あの110万人の民間人の命と3万人の師団を丸ごと焼きつくした悲劇の舞台、ウランバートルにてサイクロプスを起動し都市を消し去った男である。

 

 どう考えても負け戦となるこの戦い。

 しかし、ウランバートルでの記憶が、スコルツェニーがタダで負けてやるようなやつではない、何かしでかしてくるだろう危険な敵だという警鐘を鳴らしていた。

 

「…………」

 

 静かにモニターの先で繰り広げられるジブラルタルの攻防戦を見守るアルトリアと、その隣でかつての苦い記憶を思い出し顔を俯かせるアルトー・ピサロ。

 

 その不安が現実のものとなるのは──




スカイリムの世界観でいうならば、
勝利か、ソブンガルデか!
でしょうか。
……この二択だと大抵は後者になりますが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。