その首置いてけザフト共   作:みども

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ジブラルタル攻防戦1日目の合同部隊視点になります。


ジブラルタル攻防戦 3

 

 

 ジブラルタルにて大規模な攻防戦が幕を開けた1日目。

 カサブランカ制圧後の3日間を利用して奪還したデュエルにAIサポートによるナチュラルでも操縦可能なOSを組み込んだユウは、現在アークエンジェルにて新たに機体の蓄積するデータとAIの動作サポートの各戦場に適したパターンを集積するサーバーと、各機体にデータを収拾するための子機を連動させた新たなシステムの構築を行っていた。

 これにより、デュエルやブリッツ、ストライクなど、操縦支援用AIの子機を搭載したMSが集めたデータを親機であるサーバーコンピューターに集積し、別の機体のAIのサポートパターン用のデータとしてフィードバックする、すなわち戦闘データの共有を行うことによりより効率的なデータ集積と機体制御システムの発展に繋げられるという代物である。

 

 例えば、ブリッツで砂漠の戦闘を行った際、ブリッツに搭載されている子機が集積した砂漠の戦場データを親機であるコンピューターに取り込むことにより、砂漠の戦場に立っていないデュエルやストライクにもそのデータを反映することで、サポートAIの子機がデータをもとに自動で砂漠に合わせた仕様に修正することができるようになる。

 データの集積と活用を、各機体に搭載したAIそれぞれ独自で行うのではなく、親機と接続できる子機を搭載した機体全てで共有させることができるのである。

 これにより地球や宇宙の多様な戦場のデータをより効率よく集積することが可能となり、グーンやバクゥのような地上戦特化型機や水中戦闘用機となる後継機の開発にも大きく寄与することができるようになる。

 

 モントゴメリが持ち帰ったG兵器の開発データを用いて、月本部にて開発された初の地球連合製量産型MSのプロトタイプモデルである“ストライクダガー”1号機。

 早期完成と量産化のしやすさを優先しG兵器に搭載されていた多くの機能が簡略化されたが、ナチュラルでも操縦できるサポートAIによりスペック上はジンを相手に互角以上に戦える性能を獲得した機体である。

 量産機としては必要なスペックは確保しながらも、まだまだ発展改良の余地を残しているという、第1号の完成系にふさわしい機体。

 ユウの手でそちらにもサーバーコンピューターと連動した地上戦闘のデータをすでに獲得しているサポートAIの子機が搭載されており、実戦配備は可能な状態にある。

 

 もはやアークエンジェルの整備班が、むしろこっちが教わる側になっていると言ってしまうほどに彼らを驚かせるユウだが、これでも本職はMSパイロットであり機体整備や設計ではない。

 

 さらに今後はMS自身だけでなく、スカイグラスパーやアークエンジェルのセンサーやカメラにも子機を利用したデータ集積機能を連動させ、対峙する敵のMSの動作パターンすらもこのMS操縦サポートAIに集積するデータとして解析し学習させるシステムを構築するつもりだという。

 ユウとしてはこうしたMSの操作に関する情報を友軍だけでなく敵軍からまで集めに集めて集積していけば、コーディネイターが操縦するMSの操作パターンまでも学習したAIを用いることにより最終的には操縦サポートだけにとどまらず戦闘における瞬時の状況判断までパターン化して学習させたAIの操縦により、独自に戦闘をこなせる自律操縦システム──すなわち遠隔操作や自動操縦の機体の完成にこぎつけられると考えていた。

 

 最近は技術班との交流も増え、今は捕虜となっているハダトの乗っていた鹵獲バクゥの修理が終わってからはベニグセンよりもアークエンジェルに入り浸ることが多くなりつつあるほどである。

 おそらく近日中にアルトリアに殴られることになりそうだが、マードックたちと交流しながら新たな技術に触れそれを吸収し新しいものを作り出す楽しさに目覚めたユウはどっぷりはまっていた。

 

 そんな感じでユーラシア連邦の軍属でありながら、アークエンジェルとの連絡要員を大義名分にベニグセンよりも此方の艦艇に入り浸ることが多くなっていたユウだが、彼にはもう1つの任務があった。

 

 AI用のデータを蓄積しているコンピューターにてデータの入力を進めていたユウの元に、彼の姿を探し回っていた若者たちが集まってきた。

 

「見つけたぞ! お前、やっぱりここにいたなユウ・ナガト!」

「ユーさん見つけましたよ! ケバブ買ってきてください!」

「待てよカガリ──って、ガキみたいなおっさんコーディネイターじゃねえか!」

 

「……何の用だ、カガリ・ユラ。言っておくがケバブはないぞ」

 

 ユウを見つけて駆け寄ってきた、明けの砂漠に所属する金髪の小娘とそれについて回る失礼なガキ、そして図体だけ大きくなって相変わらず中身は子供のままのクソガキの3人組である。

 

 ユウの任務、それはカサブランカ制圧後、ジブラルタルでも後方に配属されたことでもはや同行して協力してもらう必要の無くなったのにわがままを言ってこのアークエンジェルに毎日のように乗り込んできている明けの砂漠の若者──カガリ・ユラと、アフメド・ホズンの付き人というか保護者というか、要するに世話役である。

 ちなみにミランダはベニグセンだと仕事がないからと勝手についてきているだけである。間違えなくブリッジ要員が平時には足引っ張ってくるからと追い出して世話を押し付けてきたのだろう。

 

 ……要するに、子供のお守りである。

 見た目だけならユウが1番子供なのだが、これでも外見若しくは中身がもれなくガキンチョばかりのこの面々の中では彼が実年齢でも精神年齢でも最年長である。

 

 見た目で年下と判断し突っかかってきたバナディーヤにおける一件以降、本当の年齢を伝えて驚愕したカガリとアフメドだが(ついでにアシュマンも)、何を気に入ったのかそれとも気に食わなかったのか、カサブランカを発って以降やたらとユウに付きまとうようになってきたのである。

 結果、子守りの役目はユウに押し付けられることとなった。

 ……アフメドの方はカガリについて回っているだけで、彼女がユウから離れればいなくなってくれるのだろうが。

 

 ユウのことを言動からして嫌っているアフメドはともかく、カガリはG兵器の魔改造を進めるユウにやたらと突っかかることが多い。

 カガリに好意を向けているアフメドがそれを誤解してさらにユウを毛嫌いして、こっちも突っかかるという悪循環である。

 ユウとしては勘弁してくれと言いたいところなのだが、カガリはG兵器を弄り回すために格納庫にいると犬のように嗅ぎつけてこうして突っかかってきている。

 

「お前……あのMSに今度は何をしようとしているんだよ!?」

 

「……今回はMSではなく操縦サポート用AIの親機であるコンピューターの方にデータを入力しているだけだ」

 

「デュエルにもそのAIを積んだって聞いたぞ! ユーラシア連邦のお前がナチュラルも操縦できるMSを完成させて、何企んでいるんだよ!」

「そうだぞ! ……なあカガリ、AIって何?」

 

「……ナチュラルでも操縦できるMSはG兵器のコンセプトの1つだろう。それの完成例の1つを実現しただけだ。デュエルへのAIの取り付けにしても、大西洋連邦の許可を得た上で行ったこと。文句を言われる筋合いはない」

 

「あれは……G兵器は、オーブが……! それを、なんでユーラシアなんかが! なんでコーディネイターのお前が! くっそぉ!」

「よし、加勢するぞカガリ!」

「ユーさんそんなことよりケバブ買ってきてくださいよケバブ!」

 

「重い! 止めろ! 突っかかってくるなガキどもが!」

 

「お、重いとか乙女に向かって言うな!」

「テメエ、カガリはこれでも女だぞ! 言い方考えろ!」

「ガキじゃないもん!」

 

「言い方考えるのはお前の方だぞアフメド・ホズン」

 

「おう坊主! 今日も賑やかだな、モテ期ってやつか?」

 

「羨ましいなら遠慮はいらない、代わってくれ」

 

「「「そいつはお断りだ」」」

 

「…………」

 

 難癖つけてきたカガリ、それに加勢するアフメド、ケバブが欲しいと駄々をこねるミランダにのしかかられて、その様子を見ていたマードックらアークエンジェルの整備班たちに茶化され、この子守を代わって欲しいと頼むが拒否されるユウ。

 モテ期というよりも、ユウの見た目が幼いせいで上の兄弟姉妹に絡まれる末っ子に見える絵面である。

 コーディネイターの身体能力ゆえに自身より体格の優る人間3人にのしかかられても平然とそれを支えて作業できているのだが、これがナチュラルの子供に対して行われていたとしたら潰れていただろう。虐待である。

 

「ところで、ユーさん何してるんですか?」

 

「サポートAIの親機にタクラマカン砂漠の地形情報を入力している。いちいちMSに搭載されている子機のAIに入力せずとも、この親機にデータを集積させればこのデータが全ての子機のAIにフィードバックされ、データを共有してAIが進化を続けるのさ」

 

「……つまりどういうことだ?」

「……何言ってるのかさっぱりなのです!」

「……何言ってるのかさっぱりだ!」

 

 後ろの2人は詳しく説明しても理解してくれなさそうである。

 ため息まじりにユウはわかりやすい例を持ってカガリにこの親機と子機を用いたデータ共有の利点を説明する。

 

「つまり、砂漠にブリッツが出撃してその地形データを集めれば、デュエルのAIもそれを共有することができ、でていない砂漠の地形データに対応できるようになる。巡ってそのデータがいつか作るかもしれない地上戦特化型の後継機の開発に寄与するようになる」

 

「な、なるほどな……」

「ちんぷんかんぷんなのです!」

「ちんぷんかんぷんだよ!」

 

 カガリは何となく理解できているかもしれない様子である。

 後ろの2人は最初から期待していない。

 無視して続ける。

 

「他には戦闘状況と被弾率の高い箇所を計測すれば、フェイズシフト装甲の展開箇所をある程度限定させ、バッテリーの消耗を抑えたり、生産時のコストや工程を縮小することができてより効率的な量産型の開発・発展にも寄与するだろう。この手のデータも子機のAIは収集できるようにしている」

 

 AIの集めるMS戦闘のデータは多ければ多いほどいい。

 この集積するデータは戦闘サポートAIの発展だけでなく、様々な面で利用価値がある。

 こいつらが理解できるかどうかはともかく、今後の地球連合の急速に発展するだろうMS開発に向けてこのAIが集めるデータが多く活用されるだろう展望の想像を口にすると、アークエンジェルの整備班の面々までこちらにやってきた。

 

「マジかよ坊主! 確かにデータの集積と反映なら親機と子機を利用した共有が効率的だが、そんなところまで考えてこれを作ったのか!?」

「確かに、装甲全体ではなくある程度フェイズシフト装甲を限定させればバッテリーの消耗も抑えられるな!」

「コクピットとかの重要区画と、被弾箇所のデータを考慮した場所に限定させるフェイズシフト装甲か! そのデータもAIで集積できるのか!?」

 

「ちなみに、砂漠などの特定の戦場ごとに被弾率が高い箇所も違うので、戦況・戦場毎に選定したデータをまとめれば、局地戦特化型の後継機に搭載されるフェイズシフト装甲の搭載箇所の選定も容易に行えるようになりますよ」

 

「そりゃ後継機の開発も捗るな!」

「なら被弾箇所の選定のためのセンサーも搭載しよう! 映像データだけじゃ得られるデータにも限界があるし!」

「よっしゃあ! G兵器に被弾箇所選定のためのセンサー内蔵させるぞ!」

「ちょっ、軍曹まさか今からですか!?」

 

「「…………」」

 

 先ほどまで3人を鬱陶しがっていたというのに、MS談義に花を咲かせ整備班とともに盛り上がりもはや彼らを見ていないユウに、ミランダとアフメドは「お前も十分子供じゃないか」と目で訴えるのだった。

 

 カガリたちを子供扱いするユウだが、もはや趣味と化しているMSに関することとなると彼もまた見た目相応の子どもになるのである。

 

「…………」

 

 一方、整備班の熱気に引いたのか珍しくおとなしくなっているカガリは、ユウが先ほどタクラマカン砂漠のデータを入力していたMS操縦・戦闘サポートAIの親機であるコンピューターを黙って見ていた。

 

 ──ちなみに、ユウはこの談義が落ち着いた頃にミランダを迎えにやってきたアルトリアに見つかり、カガリたちがドン引きするほどボッコボコにされた上でベニグセンに連行されジブラルタル攻防戦の1日目を終えることとなる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ジブラルタル攻防戦の1日目は、一進一退の戦況が続いた。

 

 戦力面では圧倒的に地球連合が優勢な海上では、大西洋連邦北大西洋艦隊とユーラシア連邦地中海艦隊が下らないいざこざを起こし始めてから、その混乱を利用したザフトの奮戦に被害が拡大し、上陸の想定を大幅に遅れることとなり、ついにはジブラルタルへの揚陸を果たせぬままに夜を迎えることとなる。

 大西洋連邦とユーラシア連邦にある溝がこの苦戦の最大の要因だが、単機で艦艇計11隻を撃沈に追い込む活躍ぶりを見せたオロール・グーデンブルグをはじめとするザフト側の奮戦も被害を拡大させた大きな要因だった。

 

 北方の地上における戦線では、アフリカ戦線で猛威を振るったバルトフェルド隊とハイドリヒに復讐を誓うイベリア戦線の生き残りが奮戦。

 1日目の戦いでは主力を投入しなかったとはいえ、それでも数の上で圧倒的に優るユーラシア連邦の第3方面軍の攻勢を押しとどめることに成功した。

 こちらも地球連合側が圧倒的に被害が大きく、橋頭堡の確保に失敗した時点で撃退されたと言ってもいい結果だった。

 とはいえ、第3方面軍も主力部隊やアラゴンの戦いで大損害をザフトに与えた毒兵器部隊を投入していないので、様子見か消耗を待つ段階の戦闘だったともいえるが。

 

 第8・第9艦隊の合同部隊だが、奪還に成功したデュエルや月本部からツィーテンが運んできたストライクダガーの出撃を果たすこともなく、後方待機のままこの1日目を終えることとなった。

 レセップスの追撃戦以降、カサブランカでも戦闘らしい戦闘はなかったことで、最前線にいながらも戦闘から離れ落ち着く日々が続いていた。

 

 一方、これまでの合同部隊との戦闘で捕虜となったイザークらクルーゼ隊とバルトフェルド隊のザフトたちは、逆に緊張が高まっていた。

 

 アークエンジェルのクルーたちの声から、すでにアフリカ戦線が放棄されアフリカ共同体が降伏、ついには孤立無援となったジブラルタルに対する攻勢が行われているということはイザークたちも知るところとなっている。

 地球におけるザフトの二大拠点の一角が陥落の危機に瀕する戦いがすぐ近くで勃発しているというのは、戦況が確実にザフトの劣勢に傾いていることを彼らにも感じさせる内容だった。

 

 現状、捕虜への尋問は基本的にバルトフェルドに対してのみ行われている。

 ニコルもラスティもイザークも尋問となれば誰がナチュラルに情報を渡すものかと口を噤んでおり、アークエンジェルの方もコルシカ条約を遵守して拷問や恐喝といった手段に出なかったこと、バルトフェルドは比較的尋問に協力的であり他のメンバーに対して行う必要性が薄れていること、何よりジブラルタル攻略に向けて多忙な日々が続いたことから、居房に閉じ込められるだけの日々が続いていた。

 

 そんな中でジブラルタルの戦闘が発生しており、自分たちは何もできずに独房にいるだけというのは不安とストレスがたまる。

 イザークとの再会に喜んでいたニコルとラスティも、どこか思いつめた表情で静かに過ごしているイザークの姿に、より不安が募る日々が続いていた。

 

 ジブラルタル攻防戦の1日目となったこの日、そんな日々を過ごす彼らの元にアークエンジェルではなく第9艦隊──ベニグセンの方に所属している、コーディネイターでありながら地球連合に与することを選んだミハエル・クズネツォフが訪れた。




キサカさんですか?彼ならアフメドも加わり負担倍増となった子守は外見詐欺師に任せて、影から見守ってますよ。
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