その首置いてけザフト共   作:みども

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ジブラルタル攻防戦2日目、3日目です。


ジブラルタル攻防戦 5

 

 

 C.E71年3月上旬。

 

 1日目の地球連合の仕掛けてきた、圧倒的な数の暴力を活かした攻勢。

 海戦ではユーラシア連邦と大西洋連邦の連携の不備や混乱の隙をつき、北方の地上戦では各部隊の地球連合側だけでなくジブラルタルの予想をも上回る奮戦ぶりを見せつけ、ジブラルタルのザフトはその攻勢を防ぎきった。

 

 ザフトの抵抗により予想をはるかに上回る損害を受け、1日目の攻勢をほとんど戦果を上げられずに撃退される形となった地球連合は、損害を受けた各部隊の再編を進めることに半日以上を費やし、攻勢準備が整う頃には太陽が中天に差し掛かっていた。

 

 しかし、戦力的に連合側が圧倒的に優勢であり、且つジブラルタルが孤立無援にある状況は変わっていない。

 無駄な戦力の消耗を防ぐためにも反撃に出られないジブラルタルを囲みながら悠々と再編を終えた地球連合は、午後になってから2日目の戦闘を開始した。

 

「各艦、ミサイル攻撃準備完了!」

 

「……攻撃開始! ジブラルタルを瓦礫の山に変えろ!」

 

 ジブラルタルを取り囲む大西洋連邦の艦隊からの大量のミサイル攻撃により、2日目の戦闘は幕をあける。

 

 2日目の戦闘。

 スプルーアンスは1日目の戦闘の被害を鑑みて、ジブラルタルの征圧をめざす艦隊や航空戦力の攻撃を仕掛けつつ強襲上陸を狙う方針を転換。

 2日目の攻勢は周囲の制海権、制空権を固めた地球連合は、南アフリカ統一機構やユーラシア連邦、大西洋連邦から陸路、海路を用いて続々と前線に運び込まれてきたミサイルを用いてのジブラルタルに対する破壊を目的とする飽和攻撃を仕掛けてきた。

 

「迎撃しろ! 全て叩き落とせ!」

 

 弾薬やエネルギー、兵器や兵員といった戦力に限りがあるためむやみに反転攻勢にも出られないジブラルタルのザフトにとって、この飽和攻撃は対応に苦慮するところがある。

 雨あられのごとく飛来するミサイルに対して、要塞の砲台だけでなくMSや戦闘ヘリ部隊も迎撃に加わったが、地球連合が撃ち込んでくるミサイルや砲弾、爆弾の数々は捌ききれるものではなく、ジブラルタルは多くのミサイル攻撃を受けて損害を増やした。

 

「地球連合の奴ら、ジブラルタルをぶっ壊す気かよ……!?」

 

 瓦礫に隠れながら機銃でミサイルや爆撃機の落とす爆弾を撃ち落とすオロールは、物量に物を言わせた地球連合の攻撃に冷や汗を流す。

 

 イージスとバスター、そしてディアッカを回収する予定の味方がジブラルタルの宙に到達するのは明日の予定である。

 しかしこのままでは基地はもちろん、ジブラルタルのマスドライバーも破壊されかねない。

 そう感じるほどに地球連合の攻撃は苛烈であり、そしてザフトの反撃を警戒して徹底し距離を取っていた。

 

「クソッ……砲火が激しすぎるからジブラルタルを守るためには動けねえけど、この砲火をどうにかしないとジリ貧だ……!」

 

 敵の激しい攻撃をただ受け続けてはジブラルタルが破壊される。

 しかし、攻勢を崩すために打って出ようものならたちまち蜂の巣だし、ミサイルの迎撃の手が全然足りていない中で持ち場を離れることはできない。

 それに、スコルツェニーからは、多少の被害はやむを得ないがマスドライバーだけは何を犠牲にしても明日まで守り抜けという命令が下されている。

 

 反撃しなければ勝機はないが、ジブラルタルを守るために反撃に移れないという現状。

 オロールはミサイルを必死に捌きながらも、ニコルの冤罪を晴らすためにも動きたいが、しかしこの何もできないジリ貧の戦況に焦りを感じていた。

 

 弾薬を一切惜しまない、ジブラルタルを瓦礫の山に変えるつもりで行われる圧倒的な物量を用いた砲撃は、夕方になればユーラシア連邦がその役目を引き継ぐ形となり、反撃に出られないジブラルタルに対して日が沈み日付が変わっても容赦なく続けられた。

 

 ザフトの戦力やジブラルタルの防衛能力、弾薬類を消耗させだが、この二日目の飽和攻撃で与えた最も大きな被害はジブラルタル守備隊のザフトたちに対する精神的・身体的な疲労である。

 

 一昼夜ぶっ通しで続いた爆撃、砲撃はザフト兵たちに休息の暇を一切与えず、マスドライバーは守り抜いたもののジブラルタルは最悪のコンディションで3日目の日の出を迎えることとなる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 3月12日。

 ジブラルタル攻防戦の3日目となるこの日、結局日の出まで延々と砲撃を繰り返したユーラシア連邦が下がり、一晩の休息と昼間の砲撃で撃ち尽くした分の弾薬などの補給を終えた大西洋連邦海軍と、2日間の戦闘に参加していなかった後方の戦力が投入され、疲労困憊のザフトが守るジブラルタルへの本格的な攻勢が開始されることとなる。

 

「……時は満ちた。先日の攻撃により、ジブラルタルの守備隊は疲弊し消耗しきっている! ザフトが地球に降り立ち築いた二大拠点の一角、それを落とす機は満ちた! 各艦、攻勢を開始せよ!」

 

 スプルーアンスの号令により、大西洋連邦の艦隊が精神も弾薬も消耗しているザフトのジブラルタルに対して、本格的な揚陸を目的とする攻勢を開始した。

 

「く、くるぞ!」

 

 ザフト側はMSの武装も昨日の迎撃戦で多くの機銃類の銃身がオーバーヒートしており、またほんの30分ほど前までユーラシア連邦が仕掛ける大量のミサイル類の攻撃にさらされていたことで、弾薬やバッテリーなどの補充もできていない。

 

 一息つく暇すら与えられず開始された本格的な攻勢に、精神的にも身体的にも補給面でも消耗しきっていたザフトは対応できず、目に見えて対応が遅れていた。

 

「2日前とは雲泥の差だな……このまま数の有利を用いて押し込め! 航空隊は上陸部隊の援護を!」

 

「了解!」

 

 ザフトの消耗による反応の遅れをスプルーアンスは見逃さない。

 1日目の戦闘では共闘どころか邪魔立てしてきたユーラシア連邦の艦隊も補給と休息のために下がっているので、前線の海軍戦力は大西洋連邦の艦隊が固めており余計な混乱も起きていない。

 

 昼夜問わずで撃ち込まれてきた攻撃に対応するため一日中飛び回り続け、それにより推進剤やバッテリーの消耗により制空権を明け渡すしかなかったザフトの姿は空にはない。

 代わって制空権を戦わずに抑えた大西洋連邦の艦隊から出撃した航空戦力が揚陸支援の爆撃を行い地上部隊に被害を与えつつ、艦隊に護衛された揚陸艇が続々とジブラルタルに上がってきた。

 

 消耗が激しく対応できる戦力の限られるザフト側に、それを全て食い止める力はない。

 一部の部隊はそれでも抗戦したが、穴を埋めることはできず続々登場ジブラルタルへの上陸を許すこととなる。

 

 その様子をジブラルタル基地から眺めていたスコルツェニー。

 1人思案するように顎に手を当てて神妙な顔をしながら戦況を見据える彼の元に、宇宙の友軍から待っていた通信が届く。

 

「スコルツェニー隊長、クルーゼ隊副官“ヴェサリウス”艦長フレデリック・アデスより通信です」

 

「やっと来た!?」

 

「はい。衛星軌道ジブラルタル上空にてヴェサリウスが待機しているとのこと。連合の目を誤魔化せるのは10分ほどです」

 

 それは、スコルツェニーが待ちに待っていた報告である、バスターらG兵器をプラント本国に持ち帰るための迎えの部隊の到着だった。

 すぐさま捨て駒扱いしているザフト部隊が命がけで守ることに成功したジブラルタルのマスドライバーを利用し、揚陸のために基地への砲火が薄くなったこのタイミングを利用して打ち上げを指示する。

 

「充分充分! ディアッカ君とバスター、イージスの打ち上げを始めてください! 副官たちも付いて行ってあげて」

 

「了解しました。ご冥福を」

 

「死ねという気ですか!?」

 

 副官との相変わらず上下関係を気にしないやりとりをしつつ、残る仕事を済ませるためにスコルツェニーは地球に残り、副官を含める他のスコルツェニー隊にはディアッカらと共に宇宙に上がるように指示を出す。

 

 地球で活動するスコルツェニーに代わり、プラント本国の方の政変に向けた準備は副官に一任している。

 穏健派を一掃し、ユーリ・アマルフィが開発を進めるニュートロンジャマーの効果を無効化し核エネルギーを復活させる新技術“ニュートロンジャマー・キャンセラー”略して“NJC”の確保の為の準備も整いつつある。

 後はニコル・アマルフィとオロール・グーデンブルグにかけたスパイ容疑の証拠を切り口に穏健派を糾弾し政権と技術を接収する予定である。

 

「私は予定通り南アメリカの方に向かうから、プラント本国の方は任せたよ副官。このジブラルタルの陥落を持って、最高評議会から穏健派を一掃して国防委員長率いる継戦派でプラントを固めるのだ!」

 

「そちらの方は万事準備は整いつつあります。ニコル・アマルフィとオロール・グーデンブルグのスパイ容疑の証拠も用意しているので」

 

「万事よろしく。核兵器というジョーカーと、こっちの切り崩しがうまくいけば、この大戦はプラントの勝利となり半世紀は劣等人種のナチュラルたちを日陰に追いやれるようになれるだろう。プラント勝利の未来は我々の手にかかっていると言っても過言ではないのだよ副官」

 

「了解いたしました」

 

「素直でよろしい」

 

「永遠にさようなら」

 

「最期の挨拶とかひどい!」

 

 副官らスコルツェニー隊がディアッカと2機のG兵器を伴い、マスドライバーを利用して宇宙に飛び立つ。

 それを見送ったスコルツェニーは、基地司令官のみに使用権限があるジブラルタル基地のマスドライバー自爆システムを起動した。

 

「では、行きますか」

 

 捨て駒扱いを受けながらも死に物狂いで戦う守備隊の背後で、彼らをあざ笑うようにジブラルタルのマスドライバーにて飛び立っていったナスカ級と、そのわずか10分後に自爆したマスドライバー。

 その光景は疲労困憊で潰えそうな中でも戦ってきたダコスタらの奮戦をつないでいた最後の糸をプツリと切ってしまう音を鳴らす。

 

 スコルツェニー隊の離脱とジブラルタル基地マスドライバーの破壊は、司令官たちが兵士を見捨てたことを示すと共に、彼らにとって最後の勝利の望みである宇宙からの援軍が来るルートをザフト自ら潰す光景だった。

 士気が砕け散るのも無理はないだろう。

 

「スコルツェニー……! もう付き合ってられるか、撤退を──」

 

 ジブラルタルにもはや守る価値はない。

 袋の鼠とはいえ、突破を目的に動けばまだ生き残れる道はある。

 そう判断した一部の部隊が戦線の放棄を行おうとしたが、その瞬間敵前逃亡の指示を出そうとしたザフトの乗るジンが撃ち抜かれた。

 

「言ったよな? 逃げたりしたらナチュラルの前にこちらが撃ち抜くと」

 

 持ち場を放棄したジンを破壊したのは、マスドライバーの破壊されたジブラルタルから放たれた不可視の一撃である。

 

 隊長を撃破されたザフトたちが見たのは、ジブラルタルより出撃するなり敵前逃亡を図るジンに対してフォノンメーザーを撃ち込んだ、スコルツェニーの駆使するゾノの姿だった。

 

「な、何で……!?」

 

「マスドライバーは吹っ飛んだが、ジブラルタルは落ちてないだろうが。私は命じたはずだぞ、ジブラルタルを守るために死ぬ気で戦えと。逃げることも投降することも許さないと」

 

 先ほどマスドライバーを用いて宇宙に逃げたとばかり思っていた、自分たちを捨てたと思っていたジブラルタルの司令官。

 ヘルマン・スコルツェニーの声が、通信を通してジブラルタルの残るザフトのMS部隊全てに向けて発せられた。

 

「何をぼさっとしているの? ザフトの戦士ならば、戦え。囲んでミサイル撃ち込んでマスドライバーが自爆しただけですでに勝利したと驕っているナチュラルを1人でも多く、冷たい海に沈めるために戦え!」

 

「「「りょ、了解!」」」

 

 圧倒的なパワーを有する、ザフトの新型水中戦闘用MS“ゾノ”。

 それを駆使し、背中から怖気付いたり逃げ出したりする友軍を潰して出てきたスコルツェニーによって、崩壊しかかっていた士気は恐怖により再び立て直された。

 

 スコルツェニーのゾノは友軍に発破をかけたのち、海に飛び込むとフォノンメーザーと魚雷を駆使し、爆撃機や戦艦、揚陸艦艇を次々に潰していく。

 彼の言葉通り、スコルツェニー隊の宇宙への撤退とマスドライバーの自爆でもはやザフトに抵抗の意思は失せたと思い込んでいた大西洋連邦の艦隊は油断していた。

 

 その油断をつき、スコルツェニーはゾノの性能を活かして次々に敵艦を沈める。

 

 逃げる味方を容赦なく背中から撃ちぬき恐怖で縛り上げる一方、死地に残り前線に自ら出て奮戦するスコルツェニーの姿は、挫けかけていたザフトの戦意に再び火をつける。

 

「スコルツェニー隊長に続け!」

「ナチュラル共、1人でも多く地獄に道連れだ!」

「敵は油断してるぞ! いける!」

 

「こ、こいつら……!」

 

 ジブラルタルを放棄するという意思表示にしか見えなかったマスドライバーの自爆。

 それを見てすでに大勢は決したとみていたスプルーアンスたち大西洋連邦の艦隊にとってその反撃は予想外であり、ザフトの再び燃え上がった戦意に押され被害が拡大した。

 

「落ち着け! 最後の悪あがきだ、戦列を組み直す! 航空支援だ、各空母は発進可能な戦闘機隊を繰り出し上空より支援攻撃! 数の優位を活かし、前に出てくる敵を囲い込んで蜂の巣にしろ! 奥にこもる臆病な敵にはミサイルをお見舞いしてやれ!」

 

 しかし、スプルーアンスもすぐに対応する。

 混乱する艦隊に指示を次々と飛ばし、完全に掌握している制空権を活かして航空支援攻撃で敵の攻勢を挫き、そのすきに戦列を建て直して、さらには数の優勢を生かす突出してきた敵に対する包囲を仕掛け反撃に対応した。

 

 これにより海戦の方は再び両軍が激しい砲火を交わす、激しい戦闘に発展することとなる。

 

「まだ諦めねえぞ! 制空権を取り返せば──!」

 

 ミサイルの迎撃によって銃身が溶けて使えなくなった機銃を捨て、パイロット共々残骸になった友軍のディンから対空散弾銃を拝借したオロールのジン・ハイマニューバが、大量に飛来した戦闘機部隊に突撃を仕掛ける。

 

 しかし、多勢に無勢。

 ジン・ハイマニューバはバッテリーが底をつき、多数のスピアヘッドから放たれた無数のミサイルに撃ち抜かれた。

 

「悪いニコル……お前の冤罪、晴らせなくて──」

 

 脱出装置を使っても、これだけの戦闘機に囲まれた戦場では機銃によって肉片にされるしかない。

 

 ジンの装甲が砕け散り、コクピットが炎に包まれる。

 

 オロールが最後に思ったのは、自分の力不足で冤罪を晴らすことさえしてやれなかった後輩の赤服への謝罪だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 海戦の戦況が持ち直し、大西洋連邦と激しい戦闘が展開されたことを見届けたスコルツェニーは、ゾノを乱戦の中静かにその戦場から離し、北方に向かう。

 

 その戦場ではバルトフェルド隊らアフリカ戦線から逃げ延びた部隊と、ハイドリヒへの復讐を誓うイベリア戦線の敗残兵で構成される地上部隊が、こちらも夜の攻撃を終えて引き下がったユーラシア連邦に変わり前線に出てきた大西洋連邦の1軍と交戦していた。

 

 しかしマスドライバーの自爆を見てバルトフェルド隊は勝手に離脱を行っており、レセップスとピートリーは戦場から離れている。

 ゾノでも狙えない場所に既に逃げられており、こちらは懲罰を行えなかった。

 

「あーもう、あの勘の鋭い猫は退場してもらいたかったのによ……仕方ない、あれはハイドリヒに始末してもらうとしようか。残っているのはアラゴンで毒食らった負け犬どもか」

 

 どうやらハイドリヒに一矢報いたいという憎悪が勝ったイベリア戦線の敗残兵たちが死地に残ることを決め、死に物狂いでダコスタらを逃す道を切り開いたようである。

 大西洋連邦はやはりこちらもマスドライバーの自爆を見て勝負は決したとみたらしく、油断したところを見事に窮鼠猫を噛むの攻撃で突破されたようである。

 

 勘の鋭いダコスタを仕留められなかったのは不愉快な出来事となったが、どうせ彼らに逃げる場所などない。

 始末はユーラシア連邦に任せることにして、もはや守るものも無い、ハイドリヒへ一矢報いる以外に後腐れは何もないと死兵と化して暴れている部隊に最後の後押しとなる発破をかける。

 

「毒蛇に一矢報いることもできなければ、アラゴンでくたばった雑魚どもも浮かばれないと思うけど?」

 

「何だと!」

「俺たちの仲間を侮辱するな!」

「見ていろ、今すぐ奴の首を落としてやる!」

 

 ゾノでイージス艦を3隻ほど沈めて大西洋連邦の艦隊に間隙を入れると、すっかり油断しているユーラシア連邦第3方面軍が見えるように作ったその間隙を刺す。

 そして通信によりイベリア戦線の敗残兵たちの怒りを煽り、士気をさらに上げた。

 

 死を恐れぬ彼らはスコルツェニーの侮辱に怒ると、ハイドリヒの指揮する第3方面軍の地上部隊の姿を確認し、その間隙に向かって最後の突撃を敢行していく。

 死兵と化した彼らの放つ気迫に当たるのを嫌がった大西洋連邦の艦隊は、むしろ道を開きユーラシア連邦第3方面軍の前衛への奇襲を妨害するどころか助ける行動に出た。

 

「うわ、さすが連合。足並み揃える気全くねえじゃん」

 

 そんな様子をあざ笑いながら、ゾノを海中に沈めるスコルツェニー。

 

 直後、ハイドリヒが仕掛けていた地雷原が一斉に爆発。

 釣りのために前衛に置いていたシュトラハビッツ率いる部隊もろとも、死兵となって突撃してきたイベリア戦線の敗残兵で構成されるザフト部隊を一矢報いることもさせずに爆炎の中に葬り去った。

 

「うひぃ〜、さすが金髪の毒蛇というだけある。えげつないことしてくれるねぇ」

 

 スコルツェニーは単機、ジブラルタルから離れていく。

 

 そして、後方で待機していた第8・第9艦隊の増援が前線に到達し、大西洋連邦の海軍を支援する形で抵抗を続けるザフトの残存部隊の側面をつきこれを殲滅。

 

 その後、ジブラルタルに大西洋連邦の艦隊が入り、瓦礫の山と化したこの基地の制圧を成し遂げる。

 これにより、三日間に渡って続いたジブラルタル攻防戦は、地球連合の勝利で幕を降ろすこととなった。

 

 ザフトのジブラルタル守備隊は、宇宙へ飛び立ったスコルツェニー隊と、脱出に成功したバルトフェルド隊を除き、1人として降伏せずに最後まで戦い抜き、総玉砕という凄惨な最期を遂げることとなった。

 

 

 

 

 ──だが、ジブラルタルの攻防戦は決着がついたが、この戦いには続きがあった。

 

 ジブラルタル制圧後、目的であるG兵器を取り逃がしてしまった合同部隊は、もう1つの目標であるクルーゼ隊のヴェサリウスと合流を果たしプラント本国に向けて宇宙に出て行ったスコルツェニー隊の追撃に移ることを決める。

 

 ジブラルタルには入らず、最低限の補給を終えると休む間も惜しんでビクトリアから宇宙を目指すべく、移動を開始した。

 

 冷酷な指揮でザフトの殲滅に貢献したユーラシア連邦第3方面軍の司令官であるフリードリヒ・ハイドリヒ中将は、ジブラルタルを大西洋連邦が制圧下に置くことをあっさりと了承すると、バルトフェルド隊の生き残りを追撃するためにこちらもほとんど休むことなくヨーロッパへと引き上げていく。

 またユーラシア連邦地中海艦隊の方は、ジブラルタルの駐留に関して1番大西洋連邦に対する文句を言いそうだったハイドリヒがむしろ外交問題を起こす時ではないと強く説得したことで、ジブラルタルの戦力に関して大西洋連邦海軍に譲る形となりシチリアへと撤退して行った。

 

 これにより、マスドライバーこそ自爆されたものの地球におけるザフトの重要な拠点であるジブラルタル基地は、大西洋連邦の占領下に置かれることとなった。

 

 大西洋連邦の大規模な艦隊が残る形となった、ジブラルタル。

 

 それを1人、ほくそ笑んで見つめる男の姿があった。

 

「いやぁ、ここは使いどきでしょ。使うことになるとは思わなかったけど、作っといて正解だったな!」

 

 スコルツェニーが秘密裏にジブラルタル基地の下に建設した、無数のマイクロ波発生装置からなる基地自爆用システム。

 かつてグリマルディ戦役、エンデュミオン・クレーターの戦いにて地球連合によって使用され、そしてウランバートルにてそれを解析し自軍の軍事兵器として取り入れたザフトによって使用された、大量破壊兵器が三度その猛威を振るうこととなる。

 

「サイクロプス、起動っと。ほれ、カチッとな」

 

 地獄への入り口が、開かれる──

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