その首置いてけザフト共 作:みども
ならばモラシムさんだってきっと本編以上に活躍してくれるはず!
なんたってモラシムさんだぞ!……ディン落とされたけど。
いやしかし、モラシムさんの真骨頂は海戦だぞ!魔女がなんぼのもんじゃい、モラシムさんは鯱って呼ばれてるダゾ!
……というわけで、続いてはブリッツによる海中戦闘になります。
ビームライフル、ビームサーベル、ミラージュコロイドは使用不能という制限付きですが。
ランサーダートを装備し、海中に降りたブリッツ。
それに対し、モラシム隊に所属する2機のグーンが狙いを定めて接近していく。
ザフトの水中戦闘用MS“グーン”。
装備している魚雷は地上戦でも使用可能なので戦えないことは無いが、ザウート並みに遅い──履帯による走行能力や砲撃戦仕様機である土俵を考慮すればむしろ火力も機動力もザウートにすら劣る。
しかし、一度水に沈めば水中においてあらゆるMSや潜水艦を置いていく機動力を発揮し、そのフォノンメーザーや魚雷で多くの艦艇を葬ってきた、海を知らずに生まれ育ったはずのザフトが作り上げた海戦の王者と言えるMSである。
グーンに海の戦を挑むのは、自殺行為である。
機動性能において、魚雷よりも早く泳ぎまわるグーンと渡り合える兵器を持たない地球連合は、水中戦闘ではザフトへのまともな対抗手段がない。
それがこの大戦における海戦の常識だったのだが、しかしそのMSはグーンの独壇場である水中に降りてきた。
ブリッツは宇宙戦闘における運用を主目的として製造された機体である。
確かに、大気圏内においては地球の重力に晒され機動性能に大幅な制限を受ける地上戦よりも、水中の方が多少動きはマシになるだろう。
だが、それ以上に水中戦闘において受ける制約が大きい。
その最大の武器と言えるミラージュコロイド・ステルス、攻盾システムトリケロスに装備されている主力兵器であるビームライフルやビームサーベルといった武装は、水中では使えない。
ランサーダートやグレイプニールも水中では水の抵抗により速度が大きく下がるため、通常空間と同じようには使えない。
そして地上よりは多少動けるとはいえ、水中機動に特化したグーンが相手ではその機動性能に大きな差がある。
ソードパックを実体剣として使用できるストライクや、換装によりバズーカなど水中戦闘用兵器を使えるデュエルなどと比較し、ブリッツは明らかに水中戦に適していない機体だった。
そんなMSでグーンに海の戦を挑む。
正気の沙汰とは思えない決断だが、アルトリアはためらわなかった。
「このグーンを相手に海に潜るなど、身の程を知れナチュラル!」
「海の藻屑にしてくれるわ、裏切り者が!」
艦隊からノコノコとグーンの土俵に降りてきた愚かなMSへと目標を変更するグーン隊。
まるで貴様にはできまいと言わんばかりに、水中を縦横無尽に泳ぎまわりながら接近し、ブリッツへ魚雷を発射する。
グーン2機から発射された魚雷は全部で4本。
ロックオンしているため、多少動き回ろうとも命中する軌道は変えられない。
それがブリッツを挟み込むように接近してくる。
「……二流か」
ロックオン警報とともに接近してくる魚雷、見せつけように無駄な動きを水中でとる機動。
アルトリアはグーンのパイロットの技量をそれだけで海の戦場でグーンの性能にかまけて高めてこなかった二流だと推測すると、海底に降りたブリッツをゆっくりと歩かせ始めた。
グーンから発射された魚雷は、機動を修正しブリッツを追尾してくる。
その射線はブリッツのコクピット部に狙いを定めており、挟み込むように迫ってきていることから着弾地点で4本全てが重なるように飛んできている。
「ホーエンハイム機よりツィーテンへ。グレイプニールを飛ばす、高度を維持しておけ」
『此方ツィーテン、了解しました』
回避されたり対応された場合の事態を考えていないのか、単なる様子見つもりなのか。
次弾の攻撃を仕掛けず、泳ぎまわるばかりのグーン隊を尻目に、魚雷の軌道と速度を読み取ったアルトリアは上空で待機するツィーテンに向けてグレイプニールを発射する。
海面から飛び上がったアンカーが、ツィーテンの艦体と接続される。
彼我の距離から魚雷が軌道を修正できないところを見極め、グレイプニールを引きブリッツの機体を急速に浮上させる。
上に向かって急速に浮上していくブリッツの動きに、接近していた魚雷はついていけずそのままブリッツが先ほどいた場所で激突し爆発した。
「なんだと!?」
「アンカーか……生意気なぁ!」
魚雷を躱されたことに驚くグーン隊。
しかしアンカーを使った機動であることをすぐに見抜くと、やはりグーン相手にはグレイプニールのような特別な手段を用いなければ水中の機動性能が劣っているMSであるということを看破しすかさず第二射の攻撃態勢に入った。
「今度こそ沈めてやるわ!」
「海の藻屑となれ裏切り者!」
第二射の魚雷攻撃。
今度はそれぞれ4本ずつ、計8本の魚雷を二波に分けて発射してきた。
「グレイプニールの接続を解除する。バランスを崩すなよ」
『宇宙艦艇でもその程度のバランス維持はしてみせます。ツィーテン了解、いつでもどうぞ!』
その攻撃に対して、アルトリアはツィーテンに繋いでいたグレイプニールを外して引き戻し、ブリッツを水中に浮かんだ状態にする。
ツィーテンの操艦担当へ警告していたこともあり、グレイプニールを離した際の重心の変化にツィーテンは即座に対応しバランスを維持する。
艦隊の方は護衛についているユウがミランダのストライクダガーの援護も担っており、また航空部隊にはムウが指揮するアークエンジェルのスカイグラスパー隊とミハエルのシグーが対応して艦隊の安全を確保しているため、各艦は座礁したカサンドロスの援護などに集中できているので問題ない。
グーンはブリッツの撃破に執着しており、艦隊への攻撃がなければ十分単機で対応可能である。
「さて……海の戦は泳げれば勝てるものではないということを教えてやる、ザフト共」
迫り来る4本の魚雷。
それに対し水中に浮いていることで回避も困難な体勢となっているアルトリアは、しかし慌てることなくランサーダートを投げる。
同時に投げたランサーダートにグレイプニールを飛ばして繋ぎ、そのままランサーダートを追うようにブリッツを前進させた。
ランサーダートは投擲した直後に推進器を機動しているため、水中で加速している。
グレイプニールを繋げることでランサーダートを推進器代わりにグーンに負けないほどの速度で水中を前進するブリッツ。
その機動はグーン隊の意表をつくとともに、タイミングを見切った第1波の魚雷攻撃を躱してグーン隊との距離を一気に詰めていく。
「……ッ」
コクピットにかかるGは相当なものだが、軟弱なナチュラルならばともかく最前線で高機動戦闘に慣れ親しんできたアルトリアにとっては障害にならない。
少し歯をくいしばる程度で耐え、そのまま第二波で接近してくる魚雷に対応するべくランサーダートに引かれて水中を進むブリッツを操作する。
「槍ではなかったのか!?」
「だからどうした! まだ魚雷はあるわ!」
第1波の魚雷は確かに躱された。
しかし第2波の魚雷は射線に捉えている。
ランサーダートを推進器代わりに使っているあの無茶な機動は簡単に方向を変えられないため、この第二波の魚雷は躱せないだろう。
そう思っていたハンスたちだが、第二波の4本の魚雷に対しアルトリアはランサーダートからグレイプニールを離してトリケロスを使い対応した。
まずはランサーダートから離したグレイプニールを使って1本の魚雷を迎撃、アンカーの先端にぶつけて爆発させる。
2本目、3本目にはトリケロスを構えて魚雷の射線に対し斜めにそらすように盾を当てることで、フェイズシフト装甲の防御性能とともに爆発の衝撃を最小限に抑えて凌ぎ、最後の一本はその際の爆発の衝撃を利用して機体を動かし、加えてブリッツの姿勢をそらすことにより紙一重で直撃を回避した。
「なんという──」
「う、うわあアアアァァァ!?」
「なんだと!?」
4本の魚雷攻撃を、1本を迎撃、1本を回避し、さらに2本を最小限のダメージで凌ぎ切った。
その動きにハンスが驚くなか、投げ飛ばされグレイプニールが外れたランサーダートがグーンの片方を捉え直撃する。
ロックオン警報もなく、ブリッツの流れるような回避と対応に目を奪われていたことで反応が遅れたハンスの僚機のグーンはコクピットを捉えたランサーダートに貫かれ、そのまま海の藻屑に変えられた。
「ぐ、グーンに攻撃を当てるだと……!? なぜ回避しなかったんだ、この役立たずが!」
ロックオンされていない投げ飛ばされてきた槍が、水中を泳ぎまわるグーンに当たるわけない。
根拠のないその驕りは破られ、魚雷に対応しながらも泳ぎまわるグーンの機動からパイロットの操縦のクセを見抜き動きを予測してランサーダートを投げたアルトリアの一撃によって撃破に追い込まれた。
端から見たら、飛んできたランサーダートに自ら突っ込んで撃破されたようにも見える一撃。
ハンスは僚機のパイロットの当時の状況を理解できず、討たれた仲間に対してその奮闘を讃えるどころか使えないやつだと悪態つき、グーンのフォノンメーザーの発射態勢をとる。
「海の王者はグーンなんだよ! 海の藻屑と消えろ、ナチュラル!」
槍はすでにない。
もはや武装がなければどうしようもないだろうと、魚雷ならばともかくこの不可視のフォノンメーザーは回避しようがないだろうと、ブリッツのパイロットの技量には目を向けずに攻撃する。
そんなハンスに対し、グーンの武装を熟知しているアルトリアは冷静にトリケロスを構え、フォノンメーザーを防ぐ。
「クソッ! そんなまぐれ──」
ロックオンをしている上に、カラクリさえ知っていれば不可視のメーザーでもその砲口から射線は推測できる。
それをまぐれだと思い込み、再度フォノンメーザーを撃ち込むハンス。
「芸のないことだ」
それを易々と防ぐアルトリア。
そしてフォノンメーザーを防ぎつつ、密かにグレイプニールを飛ばして撃破したグーンの残骸から魚雷の残る片腕を拾い上げて投げつけた。
「クソ! クソクソクソ! なんで当たらねえんだよ、ナチュラルの分際で!」
MSなのだから、彼らザフトが裏切り者と呼ぶ連合に与するコーディネイターが操縦している。
そんなことも判断できず、泳ぎながらフォノンメーザーを撃ち込み続けるハンス。
その視界には、ロックオンなど当然ない魚雷の残るグーンの残骸が飛んできている様子は見えていない。
「……二流の上に視野が狭いとは、その驕りでは海の王者も形無しだぞ」
「なんだ──!?」
直撃するグーンの残骸。
側面に食らったその残骸に残る魚雷が誘爆を起こし、ハンスのグーンもまた海の藻屑と消える。
ブリッツを海の藻屑に変えようとしたグーンを逆に海の藻屑に変え、海戦の王者に対し相手の土俵で勝利を収めたアルトリアが、ベニグセンに向けて通信を飛ばす。
「……此方、ホーエンハイム。グーン隊の掃討を完了した。引き続き海中の索敵を行う」
最低限の被弾で済ませたことで、ブリッツのバッテリーもまだ十二分に余力はある状況。
パイロットの技量がグーンの性能に驕っておりかつ対MS戦闘に慣れていない二流だった事もあるが、しかしグーンを海中戦闘で撃破したことは事実。
得意の海中戦闘をしかけたグーン隊が壊滅したというその事実は、モラシムを驚愕させ、ブリッツの性能を警戒させ一時撤退を決断させるほどだった。
ボズゴロフ級の撤退を確認したアルトリアは、ブリッツをベニグセンに引き上げさせる。
こうしてアデン湾の戦いは、紅海の鯱が操縦するディンを落とすというストライグダガーの初陣として華々しい戦果を上げるとともに、海中戦でグーンを圧倒するというG兵器の性能の優秀さを見せつけ、連合が勝利する結果で終わる。
奇襲を仕掛けてきたモラシム隊を返り討ちにし撤退に追い込んだ合同部隊は、カサンドロスの修復を終え翌日にはスエズ戦線の援軍に向かうべく紅海へと進出する。
目標はスエズ。
エジプトとアラブをつなぐ運河に海から奇襲を仕掛け占領することで、アフリカに進撃したザフトの補給を途切れさせ孤立化させるのが狙いである。
しかし、紅海を進むその合同部隊の背後を奇襲を弾かれ一度は撃退されたモラシム隊が再攻撃の機会を伺い追尾してきた。
「フン! 今度こそ仕留めてくれるわ足つきめ! 紅海の鯱の、このゾノの真骨頂を見せてくれる! ディン隊出撃準備だ!」
C.E71年3月21日──
スエズを前にして、紅海を舞台に合同部隊は2度目のモラシム隊との戦闘を繰り広げることとなる。
モラシムさんのゾノお披露目はお預け……
だがしかし!だからこそ!モラシムさんの期待が高まるというものです!(作者はモラシムさん推しです)