その首置いてけザフト共 作:みども
モラシムさんといえば、やはりゾノ!
……ツヴァイと同じ勘違いされてボコられる?いや、モラシムさんだぞ!そう簡単にはやられないはず!(推しなのにやられる前提)
モラシム隊の襲撃を撃退した合同部隊。
ストライグダガーの初陣もユウのバクゥによる援護があったとはいえディン1機の撃破という戦果をあげ、この簡易的装備でもザフトの現行主力機であるディンやジンに対抗可能であるということが証明された。
その後はユウの方が製作した操縦サポートAIを用いた応用として、充電ケーブルとともに繋いだコネクターを通じ、セレコウスの方から行う半自動遠隔操縦を利用し、ボズゴロフ級の奇襲により座礁したカサンドロス、被弾したアークエンジェルの修復作業にストライクとともに参加。
ストライクはナチュラルのパイロットが直接乗り込み、そしてストライグダガーの方は母艦からの遠隔操作にて、AIの操縦サポートにより一部を機体自身にも判断させて動く半自動操縦モードを拡張し、これら艦艇の復旧作業において実績を積み上げた。
完全な自動化、そしてそれを用いての戦闘機動というならばまだまだデータも足りないので道半ばではあるが、ストライグダガーを用いた遠隔操縦システムは艦艇の修理補助、物資運搬作業などにおいては実用基準を満たす完成度となった。
パイロットが直接乗らなくていいMSという新たなステージの第一歩に到達した機体を見上げ、その新技術を確立した張本人であるユウは最近技術屋に傾倒してきたせいか軍人らしからぬ発言がこぼれた。
「戦争がなければこれで十分なところですが……」
「まあ、やっぱり兵器として作られた機体だしな。けど、お前本当にすげえよ!」
「そうそう、自信持てって!」
遠隔操作、半自動操縦のMS。
パイロットの戦死率低下の他に、人が入れない環境下における──例えば危険な大気下にある星における採掘作業など──作業をこなすための用途としても使用できるだろう。
MSの未来に期待を抱くとともに、結局最初に戦争に利用されることを憂うユウを励ますように、両隣にいるマードックとムウが小柄な方を同時に叩いた。
整備と調整のために、一旦バクゥとともにアークエンジェルに置かれたストライクダガー。
それを見上げながら語り合うおっさん3人の元に、ストライクの方の整備を指揮していたアークエンジェルの技術クルーのリーダーであるマリュー・ラミアスが近づいてきた。
「ちょっと、マードック軍曹、フラガ大尉も。あまり彼をいじめないでもらえますか?」
自分たちが心血を注いで開発を試みたが完成に至らなかったナチュラル用のMSのOSを完成させたコーディネイター。
G兵器の開発に最前線で携わっていたマリューは、そんなユウに対して多少の妬みは抱いたものの、それ以上に技術者としての能力を認めており、最近アークエンジェルに入り浸ることも少なくないユウとG兵器の発展に向けて関わることが多い1人である。
いつものじゃれ合いであることはマリューも理解しているが、それはそれ。明確には所属の違う士官に不埒な真似をする同僚や部下を叱責するのが彼女の責務である。
それに、軍の技術部門とは男臭い環境である。
そんな中にあって、見た目だけは子供でありかつムウのようにセクハラなどとは縁遠くメカニックに対して真剣に取り組んでいるユウのことを個人的に気に入っていることもあり、マリューはこうしてマードックらに絡まれているところに割って入ることがあった。
「いやあの、大尉……ちょっとしたじゃれ合いっすよ」
「そーだよ大尉。むしろ坊主のこと褒めてるんですよ」
「言い訳しない」
「「はい……」」
「これでも自分26歳……いえ、もういいです」
親にいたずらが見つかった悪ガキのようにしどろもどろになるマードックと、平常運転のおちゃらけた態度でごまかそうとするムウ。
しかしそんなことで誤魔化せるわけもなく、腰に手を当てたマリューから軽い叱責をもらうこととなった。
一方、2人から相変わらず坊主呼ばわりされることに諦めたようなため息をこぼすユウ。
そして去り際にマリューの尻を触っていくムウと、顔を赤くして「セクハラですよ!」と叫ぶマリューを見て、お似合いかもしれないが確実にムウが尻に敷かれそうでマリューは浮気に悩まされたりしそうだな、などとくだらないことを思いつつ先ほどまで戦闘があったとは思えない空気に頬が緩んだ。
マードックとムウは去ったが、マリューは残っている。
ということは自分に用があるのかと思ったユウの予想はあたり、ムウの背中に苦情を飛ばしてから気を取り直して振り向いたマリューがストライクダガーを見上げた。
「半自動操縦と遠隔操作による艦艇復旧補助作業……貴方の技術には目を見張るばかりです」
「このストライグダガーだからこそ、という面もありますよ。ブリッツのような機体に同じことをさせようとする場合には、まだまだデータが足りません」
今回ユウが完成させた、半自動操縦と遠隔操作の併用によるストライグダガーの運用。
それに対してまっすぐな賞賛を送るマリューに、ユウはまだまだ完成には程遠いという実情をこぼす。
実際、今回の半自動操縦と遠隔操作システムはストライクダガーという量産機の出発点にふさわしいシンプルな機体だからこそ実現したことである。ブリッツのような複雑な機構を多く持つ機体にも反映しようとする場合には、まだまだデータが足りない。
それを集めていくのも今後の課題なので、スエズではストライグダガーも有人操縦で戦闘を行うことになるだろうが。
とはいえ、完成の道筋は見えているので遠い未来ではないだろう。
「自動操縦のMS……完成した暁には、戦死者を大きく減らすことができるはずです」
「私たちの技術が戦場で散る命を少しでも減らせるなら、技術者冥利に尽きます」
「はい」
ワチャワチャされながら褒め称えられるマードックたちとのやり取りも楽しいが、こうして機体を見上げて技術者の誇りを穏やかに称え合うマリューとのやりとりも楽しいものがある。
そんなことを思うから、アークエンジェルに懲りずに入り浸るのだろうユウに、マリューがそういえばとユウのところを訪ねてきた要件を思い出して手元の資料を出した。
「そうだわ。失礼しました、ナガト少尉。ストライクカーパックの件で、相談したいことがあって……」
「ストライカーパックですか?」
ストライクの各種装備であり、第二のバッテリーを担う機能、ストライカーパック。
マリューが持ち込んだ相談というのは、そのストライカーパックの装備が可能なスカイグラスパーを利用し、戦場にてバッテリー消耗などの事態に陥ったストライクへストライカーパックを輸送し直接換装を行えないかというものであった。
「アークエンジェルが近くにいない時にフェイズシフトダウンのような事態になった時の対抗策として、コンセプトにはあったのだけど……今のナチュラル用のOSだと、特に空中と海上を想定した換装がうまくいかなくて……」
「わかりました。早速取り掛かります」
「……申し訳ありません。本来、ストライクの調整はアークエンジェルの私たちの仕事なのに、貴方の手を煩わせてしまって」
「いえ、お構いなく。アークエンジェルは私にとって果てるはずだった命を救って頂いた大恩があります。気にやむ必要はありません、存分に利用していただきたい」
「ありがとう。一息つけたら、食事でもご馳走するわ」
「それは楽しみです」
マリューからの依頼を受け、ストライクの元に向かうユウ。
そしてその日のうちにユウは、空中における換装と海上における換装に関する姿勢制御、およびスカイグラスパーとの連動プログラムを構築し、一時的に戦闘を離脱し安全を確保した条件下で行うことが必須だが、自動化された短時間のスカイグラスパーを利用したストライカーパックの換装モーションのシステムをOSに組み込み完成させた。
今後は戦闘状態でも換装できるバリエーションの製作を予定するつもりだとのこと。
応用すれば、設計の簡略化により最低限の装備しか有していないストライグダガーへ外付けのストライカーパックオプションを搭載し、スカイグラスパーだけでなくMS同士のストライカーパックの換装を行うなんてことも実現できるかもしれないという。
機体本体の損傷が大きい場合、バッテリーが不足する友軍機にパックを託したり、複数のパックを装備した機体から換装を受け取ることでバッテリーを戦場で補充したり、といったことも可能となるだろう。
自動操縦の機体が完成し普及すれば、有人機に対して優先的にバッテリーの補充をするための予備機としての運用、なんてビジョン浮かぶ。
「一層の事、母艦から直接光線化させたエネルギーを照射してストライカーパックにバッテリーを充電する、なんて手法もありかもしれないな……まあ、先の話になるだろうが」
ストライカーパックの換装。
そこからヒントを得て、技術者としてのユウのMSの構想はさらなる広がりを見せようとしていた。
8時間ほどで復旧作業は終了し、カサンドロスは再び空へと飛び上がった。
翌朝、アデン湾から紅海に入った合同部隊は、スエズを目指して海上を飛行する。
その最中、先日アデン湾にて奇襲を仕掛けてきたボズゴロフ級が合同部隊の背中に対して再攻撃を仕掛けてきた。
「敵襲! ツィーテンより打電、後方、ボズゴロフ級1! すでにディン1機とグーン1機の発艦を確認しています!」
「艦長! 前方、敵MS部隊を確認! スエズ方面よりグゥル5、ディン4、D装備を含むジン5機からなるMS3個小隊が接近中!」
「スエズの奴らに見つかったのか……直ちに戦闘体制に入れ! MS部隊を発進させろ!」
モラシム隊からすでにスエズのザフトに合同部隊が紅海に入ったことが伝わっており、スエズへの奇襲作戦は失敗に終わる。
その上前方をスエズからのザフトに、後方をモラシム隊に塞がれ、合同部隊は挟撃を受けることとなった。
敵はスエズ方面から来るジン5機とディン4機からなるMS3個小隊。
ジンは対要塞装備──通称D装備と呼ばれる極めて強力な火力を持つ兵器を携えている機体も見受けられ、各機が重力圏内においても機動性能を確保するべくグゥルを擁している。
また、4機のディンの中には指揮官機と思われる白いディンの姿があった。
一方、後方から迫るモラシム隊は、旗艦であるボズゴロフ級の他、残るMSを全て発艦させてきた。
ディン1機とグーン1機が先行して襲撃し、最後尾のツィーテンに狙いを定めている。
そして、先行する2機のMSに遅れ、隊長機であるモラシムが操るゾノが出撃してきた。
「なんだと……!? ツィーテンより打電! 後方ボズゴロフ級より、ゾノの出撃を確認したとのこと!」
「!」
ゾノを確認した。
その報告に、合同部隊が真っ先に思い浮かべたのはジブラルタルでサイクロプスを起動した男の搭乗していたMSである。
「ヘルマン・スコルツェニー……ていったか。ジブラルタルの落とし前、つけさせてもらう!」
それを聞いて、最初に飛び出したのはサイクロプスに苦い記憶があるムウである。
あの大量破壊兵器をためらいなく使う男の存在を許すわけにはいかないと、ゾノに挑むべくムウはストライクに乗り込んだ。
「悪いなヒヨッコ、今回だけ譲ってくれ」
『え、フラガ少佐!?』
「ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!」
ソードパックを装備して海に出撃していったストライク。
それを追いかけるようにスカイグラスパーが空へと飛び立ち、カサンドロスのスピアヘッド隊がそれに続いて出撃する。
そして最後尾のツィーテンから、整備班の方が急ごしらえで作った水中戦闘補助の外部オプションとバズーカを装備したストライクダガーが海に飛び込んだ。
「ミランダ・トゥハエフスカヤ、ストライグダガー、行きますよ!」
「援護頼むぜ、お嬢ちゃん」
「へへん、任せてくださいなのです!」
ミランダの操縦するストライクダガーの出撃後、ユウの操縦するバクゥが出撃する。
本来は陸戦仕様の機体だが、こちらも急ごしらえの改造でひとまず潜って戦うことはできるように整えてきた。
「ユウ・ナガト、バクゥ、出撃します」
ちなみにレールガンではなく、先日の戦闘でアルトリアに見事に撃破されたグーンの残骸を回収し改造して取り付けた魚雷ポッドを取り付けている。
外付けのスクリューと海底を走り回れる無限軌道の履帯により、ある程度の機動性も確保している。
急造なのでさすがに陸地の戦闘のようにはいかないが、それでも及第点の性能は確保している。
「自分がグーンを抑えます」
「オーケー、なら航空隊はディンを仕留めてから反転して前方のベニグセンの援護に向かえ! お嬢ちゃんは俺と一緒にゾノを撃つぞ!」
『了解です!』
「はいです! 了解しました!」
「アークエンジェルとツィーテンは母艦が浮上してきたら叩いてくれ! 頼むぜフッカー艦長!」
『任せろ! あと、上官に対する口の利き方に気をつけろ! 佐官としては新米だろうが!』
『カサンドロスも異存はない』
『此方ツィーテン、了解!』
後方の戦場を担うアークエンジェルとツィーテン、カサンドロスは、ユウがグーンを、航空隊がディンを、ムウとミランダがゾノを、艦隊はボズゴロフ級を担当することで方針を固める。
数の多い航空隊はディンを可能な限り早く仕留めてから、前方のベニグセンとセレコウスの援護に向かうことに。
ムウとしては先日の戦いぶりから、今のルークならばディン1機に遅れをとることはないだろうという信頼があった。
そして、前方を担うベニグセンとセレコウスでも、接近するMS部隊の迎撃準備が進められる。
アークエンジェルからの援軍であるデュエルと、ミハエルの搭乗するシグー、アルトリアの搭乗するブリッツが出撃し、ベニグセンを中衛に下げセレコウスが支援砲撃を担うために先頭に立った。
『ミハエル・クズネツォフ、シグー、出撃する!』
「アルトリア・ホーエンハイム、ブリッツ、出るぞ!」
ブースターを全開にして出撃したアルトリアは、接敵するなりミサイルを次々に交わしてジンの1機を蹴落とすと、グゥルを強奪。
ベニグセンの上に立ってビームライフルを撃ちながら迎撃するデュエルとディン部隊と空中の銃撃戦を繰り広げるシグーに艦隊の護衛を任せ、数で圧倒するMS部隊のほとんどをひきつけて縦横無尽に暴れはじめた。
「ミハエル! 艦隊は任せる、デュエルの援護も怠るな!」
『了解です! くう、やるね連隊長! 俺も負けてられねえってな!』
アルトリアの奮戦に促されるように、ミハエルも操縦桿を握りなおし白いディンとの空中戦を展開する。
ロックオンなど必要ない、ロックオンすらさせてくれないシグーの機動に、隊長機のディンも翻弄され被弾を重ねる。
そして意識を取られたところをデュエルのビームライフルで撃ち抜かれ、早々に隊長機が撃墜されるのいう事態がザフトのMS部隊に混乱を広げた。
「畳み掛けるぞ!」
『了解! 援護します!』
その混乱を見逃さず、アルトリアは攻勢を強める。
セレコウスの支援砲撃もあり、数で劣勢ながら前方の戦況は有利に傾きつつあった。
一方、後方のモラシム隊と対峙するムウは。
グーンをユウに、ディンをルークたちに任せ、ミランダとともにスコルツェニーが乗っていると誤解している紅海の鯱のゾノと対峙した。
「フン! 今日こそ沈めてやるぞ、足つき! そして、ナチュラルのMS! このモラシムが、このゾノがなぁ!」
「よくもサイクロプスを……お前はこの海に沈める! 行くぞ!」
「もう絶対に許してやらないんですから! 首よこせやオラァ!」
こうしてスエズからの援軍を得て挟撃を仕掛けたモラシム隊と、第8・第9艦隊の合同部隊が激突する戦闘、紅海海戦の火ぶたが切られた。