その首置いてけザフト共   作:みども

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①バクゥVSグーン

②スカイグラスパー、スピアヘッド隊VSディン

③ブリッツ、シグー、デュエルVSザフトMS部隊

以上の順で場面が回ります。


紅海の鯱 4

 

 

 海中に降りたストライクとストライクダガーを狙い、先行して艦隊に迫ってきているグーンから魚雷が発射される。

 ミランダに続く形でバクゥにて海に降りたユウは、すぐに魚雷ポッドから短距離魚雷を発射。

 グーンから放たれた魚雷がストライクに届く前に迎撃し、魚雷がストライクに直撃することを妨害した。

 

『サンキュー坊主!』

 

「グーンは此方で請け負います。ミランダ、フラガ少佐とストライクを頼む」

 

『任せとけ! きっちりケリつけてきてやる!』

『了解なのです!』

 

 ストライクとストライクダガーは、そのままグーンを無視して前進。

 行かせるかとストライクの追撃を行おうとしたグーンだが、そこにバクゥが発射した短距離魚雷が直撃する。

 水中用推進器が搭載されている片足が破壊されたことにより推進力が大きく損なわれたグーンでは既にゾノに向かって進んでいったストライクとストライクダガーを追撃することは叶わず、やむなくグーンはバクゥに振り向いた。

 

「貴様の相手は此方だザフト。その首置いてけ!」

 

「おのれ……バクゥで海に飛び込むとは、身の程知らずのナチュラルが! 足を潰された程度でいい気になるなよ、海の王者はグーンなんだよ!」

 

 無限軌道の履帯を駆使し海底を疾走するバクゥと、海を自在に泳ぎまわるグーン。

 陸戦の王者たるMSが、海戦の王者であるMSに対して海の戦場を土俵に挑む。

 

 グーンの照準がバクゥを捉える。

 ロックオン警報と、腕ではなく機体頭部の前面を向けていることから、フォノンメーザーで狙っていることを察知。

 4足歩行MSであるバクゥの利点を生かす横への跳躍でそれを交わした直後に、不可視のフォノンメーザーが海底の砂を撒き散らした。

 

「なんだと!? チッ、そんなまぐれで──!」

 

 そのまま履帯を駆使して海底を走り、グーンのロックオンから外れるバクゥ。

 それを追いグーンは魚雷を構えるが、しかし4本の足を駆使した跳躍と無限軌道の疾走を駆使して、ユウのバクゥはグーンにロックオンをさせない。

 

「こいつ、ちょこまかと動き回って! 鬱陶しいんだよ、ナチュラルがMSなんぞ!」

 

 なかなか照準を捉えられないことに苛立ちを見せるグーンのパイロット。

 照準に捉えさせない機動でグーンを翻弄しながら、魚雷のフォノンメーザーも撃ってこないことからロックオンしなければ攻撃できない程度の技量であることを確認したユウは、バクゥの背中に備える魚雷ポッドを後方に回しロックオンする間も惜しいと言わんばかりに無誘導で射線を捉えた魚雷を発射した。

 

「紅海にその首晒せ!」

 

「なっ──!?」

 

 無誘導ながら、確実に直撃を捉えた射線。

 いきなり飛んできた魚雷にグーンのパイロットは驚愕し、慌ててフォノンメーザーを撃ちまくってなんとかこの魚雷の迎撃に成功した。

 

「チッ……レールガンのようにはいかないか」

 

 海中からの奇襲にこそ真価を発揮する加速に時間のかかる魚雷と、慣れ親しんだ高機動戦で駆使するレールガンとの違い。

 地上で放つレールガンならば、二流のザフトには回避も迎撃もできなかっただろう攻撃だが、初動の遅い魚雷は対応が間に合ったことに陸戦と海戦の違いというものを思い知らされ、思わず舌打ちをする。

 

 魚雷の爆発によって生まれた気泡や破片、砂が巻き起こした煙幕をくぐり抜けた先。

 そこでグーンは直進する横に跳躍するなどして回避を繰り返し射線に捉えさせない動きを繰り返してきたバクゥが、直進しているところをついに捉えた。

 

「捉えたぞ、くたばれナチュラル!」

 

 ロックオン警報。

 バクゥの動きをとらえたグーンが魚雷を発射してくる。

 魚雷を迎撃されたことに気を取られて回避をおろそかにしたところを突かれ、射線に捉えられてしまった。

 

「…………」

 

 ──客観的に見れば、そういう風に見えただろう。

 しかし、ユウはロックオンされ魚雷を発射されながらも冷静に対応する。

 

「下らない誘いに乗ったか、愚か者が!」

 

 それはユウの誘い。

 数的劣勢の中でコーディネイターの操るMSを相手に鹵獲機体で戦闘を繰り返すユウたちにとって、ロックオンを必要としない、ロックオンを許さないという高機動戦闘というのは生き残るために死に物狂いで身につけた技術だ。

 それを疎かにした瞬間、撃墜──そして死を迎えることは百も承知のこと。

 そんなユウが、魚雷を迎撃された程度で動揺するはずもない。

 

 それは、誘い。

 単機の敵だからこそ仕掛けた、ロックオンを誘う動きである。

 

 それにまんまと乗せられたグーンのパイロットは、バクゥをロックオンし、そして魚雷を撃ち込んできた。

 

 ──ザフトでありながら、バクゥが走り回るだけでなく4本の足を使った機動までとれるという利点を忘れて。

 

 魚雷の爆発が海底付近で起きれば、爆炎とともに海底の砂も巻き上げられその視界は塞がれる。

 特に海の中ともなれば、もともと地上戦に比べて太陽の光が届きにくい事もあって暗いことに加え、舞い上がった砂や泡、煙の漂う時間はより長い。

 短い攻防戦で繰り返された魚雷の爆発によって起こる視界を塞ぐ現象に利用価値を見出したユウは、あえてロックオンもさせない機動で苛立ちを募らせるグーンを誘ってきた。

 

 遅い魚雷では、ロックオンすらしない奇襲攻撃でもグーンに迎撃されてしまう。

 それを許さずにグーンを捉えるには、死角から攻撃を撃ち込むのが有効と判断したから行った誘い。

 それにまんまと乗せられたグーンは魚雷を発射し、そしてバクゥを捉えた。

 

「これで終わりだ!」

 

 グーンの魚雷がバクゥに直撃する──

 

 その直前、バクゥはポッドから短距離魚雷を発射して至近距離でその攻撃の一部を迎撃すると、間髪入れずにスクリューと4本の足を使って跳躍し上に回避。

 魚雷同士の激突と、その後に回避され海底に直撃した魚雷が巻き起こす煙幕によりグーンは完全に視界をふさがれ、またバクゥはその爆発によって生じた衝撃も推進力に利用して急速浮上し、煙幕の中に突っ込んで直進するグーンの背中を捉えた。

 

 グーンのスクリューが見せる軌跡が、舞い上がる砂塵に隠れようともその位置を知らせてくれる。

 あのヒントがあるならば、その機動を予測した先に魚雷を撃ち込むなどユウの腕ならば容易なこと。ロックオンすら必要ない。

 

「首置いてけザフト!」

 

 背後をとったユウのバクゥから、魚雷が無誘導で発射される。

 それは砂塵で自らの視界をふさがれその中を直進しているグーンの軌道を完璧に予測しており、ロックオン警報すら鳴ってない中でグーンの背中に直撃した。

 

「へへっざまあみろナチュラル──」

 

 一方、グーンのパイロットはその時バクゥを仕留めたと思い込んでいた。

 その無警戒で砂塵の中を進むグーンは、バクゥからの魚雷攻撃に一切対応できず、自分が狙われていることも撃たれたことも気付かぬままに直撃を受け──

 

「な、何で──!?」

 

 グーンのパイロットは何が起きたのか理解する間もなく、紅海の底に散って行った。

 

 グーンの撃破を確認したユウは、ゆっくりとバクゥを海底に下ろす。

 一対一であること、敵のパイロットがグーンの性能を活かしきれずまたバクゥの機能をしっかりと把握していなかったこと、それとグーンならば海戦で負けるはずがないという驕りが垣間見えたからこそ苦戦せずに勝利できたが、不慣れな海戦はユウにとって課題がいくつか見える戦いだった。

 

「敵グーンの撃破を確認。……海戦に関してはまだ改善すべきところが多くあるか」

 

 今後攻略するスエズは、海から仕掛けてくる敵もいるだろう。

 想定外で発生した戦闘とはいえ、今回の戦いを通じて本戦のスエズ攻略戦の前に海戦における課題が見えたことは一つの収穫だったかもしれない。

 そう思いながら、ユウはバクゥを歩かせてベニグセンへの帰路についた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一方、グーンとともに先行して艦隊に襲撃を仕掛けてきたモラシム隊のディン。

 それを迎撃するべく空に上がったルークのスカイグラスパーと、カサンドロスから発艦したスピアヘッド部隊。

 数の優勢とムウから教わった通りの最高速度の優勢を活かした一撃離脱による戦闘を繰り広げていたが、しかしディンの機動力と強力な攻撃範囲を持つ対空散弾銃によりスピアヘッド隊が半数の3機を落とされ、スカイグラスパーを含め4機にまで戦力を削られていた。

 

『ま、まずい──』

 

『ルーク! どうするんだよ、こっちはもう4機だぞ──ぐあああ!?』

 

『クロード! クソッ、やっぱりコーディネイターのディン相手だと……』

 

 スピアヘッドが更に1機撃墜され、スカイグラスパーを含めその数は3機にまで削られる。

 コーディネイターの駆使するディン1機を相手に必要な戦闘機は5機で互角とされている。3機では戦力不足は否めず、またディンが巧みに距離を取らせない機動をとることで一撃離脱も困難であり、ルークたちの方が劣勢だった。

 

『大気圏の戦闘は不慣れなんですよ少佐殿!』

 

『弱音吐いてる暇あるなら戦えよ!』

 

『うるさい分かってるって!』

 

 ディン1機を相手に劣勢を強いられる航空部隊。

 このままではディンを撃墜して前方のセレコウスの援護に向かうどころか、全滅して艦隊をディンの攻撃にさらしてしまうことになりかねない。

 ムウに恨み言を叫びながらも何とかしなければとスカイグラスパーを飛ばすルークだが、その背中をディンに取られる。

 

『ルーク!』

 

『やばい──!?』

 

 やられる──

 そう思った時、スカイグラスパーに向けられるディンの対空散弾銃をキャノン砲が貫いた。

 

『誰だ──!?』

 

 その砲撃は、スカイグラスパーのキャノン砲によるもの。

 しかしムウがストライクで出ている現状、スカイグラスパーを駆使するパイロットなどいないはずなのに。

 

 そう思ったルークのスカイグラスパーのモニターに、ムウが残した1号機のコクピットが映される。

 そこにいたのは、レジスタンス“明けの砂漠”にいたはずの金髪の少女──カガリだった。

 

「大丈夫か!」

 

『あ、え? な、何でレジスタンスの君がそれに乗って──!?』

 

「別にいいだろそんなこと! 今はあいつを落とすぞ!」

 

 混乱するルークを尻目に、カガリは初めて駆使するとは思えない操縦でスカイグラスパーを操りディンを引きつけると、機銃の攻撃を交わしながら華麗な宙返りでディンの背後を取り、ミサイルを撃ち込む。

 

「今だ!」

 

『これでも食らえ!』

 

 ミサイルで翼を砕かれ空中の制御が大きく損なわれるディン。

 その隙を見逃さず、カガリの声とともにルークとスピアヘッド隊がミサイルとキャノン砲を撃ち込む。

 2機のスカイグラスパーとスピアヘッドの攻撃機晒され、ディンはその薄い装甲に受けたミサイルの総攻撃により機体を炎に包み紅海の空に散った。

 

「やったな!」

 

『──ッ!』

 

 スカイグラスパーに乗り込んだカガリにも、その発進を許したアークエンジェルにも文句を言いたくなったルークだが、ディンの撃破にモニター越しにカガリが見せた笑顔に思わずドキッとする。

 結局、命の恩人ということもあり何も言えず、今まで関わることが少なかったので気づかなかったが言動はともかく容姿は整っているカガリに当てられたこともあり、ルークは口に出なかった文句を収めて帰投するのだった。

 

 被害は出たものの、カガリの思わぬ才能が開花してルークを救い、航空隊は見事にディンの撃破に成功する。

 ディン撃破後に一応スピアヘッド隊はセレコウスの援護に向かおうとしたが、その時にはすでに3個小隊のMSを相手にブリッツ、シグー、デュエルが奮闘しこれらを壊滅させていたことで、そのままスピアヘッド隊も帰投することとなった。

 

 航空隊が囲んで1機のディンを相手にそれでも苦戦していたとに対して、数の劣勢を当たり前のように跳ね返しMS部隊を撃破したアルトリアたちに、彼らはG兵器やMSの優勢を見るとともに凍土の魔女と怖れられる彼女の強さに戦慄するのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そして、そのスエズから南下してきたMS部隊を迎撃するべく空に上がったアルトリアたちの方は。

 

「落ちろザフト!」

 

 第9艦隊ではもはやお馴染みとなった、敵からの装備の強奪。

 出撃直後にブースターを全開にして空にあがったブリッツは、ジンから放たれるミサイルをビームサーベルで切り払いながら突き進み上昇すると、グレイプニールを飛ばして1機のグゥルに取り付く。

 そしてそのままジンを蹴落としてグゥルの1機を占領し、落下するジンへ容赦無くビームライフルを打ち込んで撃墜。

 その後グゥルという空中の足場を確保すると、そのままMS部隊に突撃しブリッツの性能とザフトの精鋭から見ても頭のネジが飛んでいる操縦技術で次々にジンやディンを相手に暴れ始めた。

 

『相変わらず無茶苦茶な……』

 

『無茶苦茶じゃなければあの人にはついていけないですよっと!』

 

 ロックオンすらさせない無茶な機動で飛び回り、ロックオンすらせずに発射するビームライフルでジンやグゥル、セレコウスを狙うミサイルまで撃ち抜き、迫る攻撃はことごとく回避して避けきれない機銃もビームサーベルで切り払い、バルルス改はトリケロスで防御する。

 敵をほぼ一方的に駆逐するその姿に唖然とするデュエルのパイロットに、このくらいの無茶できなきゃあの人についていくこともできないぞと言いながらミハエルがシグーを空に飛ばして加勢しに向かった。

 

『隊長機は俺が!』

 

「任せたぞ。首置いてけザフト共!」

 

 シグーが指揮官用機である、隊長機と思われる白いディンに向かっていく。

 そちらはミハエルに任せ、アルトリアはブリッツのミラージュコロイドを発動し、同時にグレイプニールをグゥルに繋ぎながらその足場から降りた。

 

 そこに飛来する、バルルス改の光線。

 しかし突如として幻のように姿を消したブリッツのいた場所を通り抜けて空振りで終わった攻撃は、ザフトのパイロットたちを混乱に追い込む。

 

「隙だらけだぞ、ザフト!」

 

 そこへグレイプニールを飛ばし、バルルス改を撃ってきたジンが乗るグゥルに取り付くブリッツ。

 ミラージュコロイドを解除したブリッツは、ジンのパイロットから見ればまるで瞬間移動を繰り返す幽霊を相手にしているような心境だろう。

 理解できない現象にコクピットの中で悲鳴を上げるばかりのパイロットにより抵抗しなかったジンは紅海に放り出され、2機目のグゥルを占領したアルトリアがまだブリッツの行方を追えていないMS部隊の背後からビームライフルを撃ち込みさらに撃墜する。

 

 ミラージュコロイドを巧みに駆使し、グレイプニールでバンジージャンプなどというこれまた頭のネジが飛んだ動きを駆使しながら、MS部隊を翻弄して数の劣勢を物ともせずに次々に撃破していくアルトリア。

 ブリッツという新たなMSであるG兵器の性能が遺憾なく発揮され、ジンやディンが落とされていく姿は、MSという兵器は既に新たなステージが幕を開けていることを示しているような光景だった。

 

「こ、この化け物め──」

 

「その首置いてけザフト共!」

 

「ぐああぁぁぁ!?」

 

 シグーとデュエルによって隊長機である白いディンが落とされ、指揮系統が混乱したザフトに、ブリッツで暴れる魔女を抑え込むことなどできず、結局MS部隊は大きな被害を出して壊滅に追い込まれる。

 ジン5機とディン4機からなる戦力が、わずか3機のMSとドレイク級1隻に圧倒され、1機の破壊も出来ぬままに殲滅されるという事態はスエズ方面のザフト軍本隊に衝撃を与えることとなった。

 

『片付きましたね。さすがです、連隊長』

 

「……誇るほどの手柄でもない。本命はあくまでスエズだ、気を引き締めろ」

 

『了解!』

 

 大きな戦果であったが、しかしアルトリアとしてはブリッツの性能あってこその戦果であり自分が誇るものではないと、所詮前哨となる戦いでしかない今回の戦闘は気を緩められるようなものではないとする。

 アルトリアの叱責を受け、ミハエルもこの先の本命の戦いとなるスエズの攻略戦に向けて気を引き締めながらシグーをベニグセンへと帰投させた。

 




モラシムさん……出番お預け……
いえ、次回はモラシムさんのゾノが主役です。今度こそ、ストライクとストライクダガーを相手に紅海の鯱の実力を見せつけてくれるはず!

最近戦士であることを忘れ技術屋に転向しかけているオリ主がようやく戦闘で活躍できました……
バクゥは陸戦仕様です。海に潜るのはやめましょう。(まともな人は潜らないよ!)
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