その首置いてけザフト共 作:みども
ストライクダガーという新手がいるものの、ストライクのパイロットはキラ君ではなく兄貴。
何れにせよ、ゾノを駆使するモラシムさんでは歯が立たないことに変わりはないのです!(……あれ?)
海中を進むモラシム隊の隊長機であるゾノ。
水陸両用MSとしてグーンの発展型機としてザフトが開発した新型機であり、水中戦闘に特化したグーンと異なり陸上戦でも十分な運用が可能な機体である。
先行するグーンを追う形で目標である足つきの艦隊に向け出撃したモラシムのゾノの前に出てきたのは、アデン湾での初戦の後にカーペンタリア基地から齎された情報にあった、足つきの艦載機である地球連合製新型MS、通称“G兵器”の1機である“ストライク”と、アデン湾の戦いでモラシムのディンを撃墜してくれた新型のMS“ストライクダガー”だった。
先行しているグーンの方は、後続で艦隊から出てきた鹵獲バクゥと交戦に入っている。
ストライクダガーに苦杯を舐めさせられたアデン湾での戦闘において、そのきっかけを作っただろうその鹵獲バクゥは、レールガンに代わりグーンの武装を回収して転用したとみられる魚雷ポッドを搭載するなど、水中戦に適した改造が施されておりグーンを相手に大地を疾走するように海底を走り回り翻弄していた。
「フン! 忌々しいバクゥの盗人が、待っておれ! 貴様への返礼も、ナチュラル共を片付けてからすぐに行くからな!」
ストライクは宇宙戦闘を主目的として製造されたG兵器の1機であり、ストライクダガーもまた武装や外観などから同系統の機体であると推測される。
しかしストライクは外付けの装備を搭載することにより、機動性、火力、格闘戦に特化した武装を装備することができ、これらの外部パーツは補助推進器の機能も持ち大気圏でも十分な機動性能を確保できるという特徴があるという。
今回は格闘戦に特化した近接戦闘装備を搭載して出撃してきたらしい。
情報によればビームサーベルとのことだが、ビーム兵器が使えない水中戦闘のためにビームを展開せず実体剣として持ち出してきたらしい。
また、ストライクダガーの方も水中戦闘のためにディンを迎撃してきたときのビームライフルではなく、バズーカを装備していた。
だが、宇宙戦闘用MSだろうが、水中戦に付け焼き刃で対応する装備を持ち出してこようが、所詮ナチュラルのMSである。
アデン湾の戦闘ではブリッツとかいうMSにグーン隊が撃破されるという敗北を喫したが、ゾノの装甲と火力はグーンの比ではない。
そして、ゾノの地上における弱点となる機動力も、水中戦となれば大幅に上がる。武装は水中戦に対応してきたが、MSの最大の武器となる機動性能に関しては、水中となればゾノの敵ではない。
モラシムにはG兵器とかいうMSに対し水中戦の土俵ならば全てにおいて上回るゾノが圧倒的優位にあるという確信があった。
「フン! 武装だけは水中戦に慣らしてきたようだが、所詮は付け焼き刃だ! 足つきとあの忌々しいバクゥの前に、まずは貴様らを沈めてくれる! このゾノでな!」
遠距離戦闘装備を持たない格闘戦闘用武装のストライクをロックオンし、まずは魚雷を発射しようとする。
その時、ストライクダガーからロックオンもなしにバズーカが発射されてきた。
「フン! そんなこけ脅し──なんだと!?」
ロックオンもしていない砲撃。
距離もあるし、当たるわけもない。
牽制だろうと思ったモラシムだが、その判断に反しバズーカの砲弾は間違えなくゾノのコクピットを捉える射線をとっており、それに気づいたモラシムは慌ててゾノを左方向に回避させた。
「フン! そんなまぐれでいい気になるなよナチュラル!」
バズーカを回避したモラシムが、ゾノの右腕を操作してフォノンメーザーの発射態勢に移行する。
標的はストライクダガー。
照準を合わせロックオンをしようとしたが、しかしストライクダガーはゾノの動きから狙われていることを察知したらしくすぐにその照準から外れそしてバズーカを発射してきた。
「フン! ちょこざいな!」
フォノンメーザーでバズーカの砲弾を迎撃する。
爆発により発生した泡と煙が視界を塞ぐ中、移動しようとしたゾノだが、そこに視界を塞ぐ煙の中からもう1発のバズーカの砲弾が移動しようとした矢先をかすめるように飛んできた。
「なあ!? い、いったい何が起きた!」
ロックオン警報のない、つまりロックオンを使っていない砲撃。
しかしその一撃は、ちょこざいなと通信などつながっていないので相手に届くわけもない罵声をわざわざ口にしてから動いたゾノの寸前を通過した。
すなわち、余計な無駄口を叩かずさっさと動いていれば、あと少し動くのが早ければ命中していた砲撃だった。
まるで動く先を読んでいたかのような砲撃。
流石に肝が冷えたその攻撃に驚くモラシムの耳に、コクピットに鳴り響くロックオン警報が鳴る。
「どこから──!?」
狙われている。
警報で現実に引き戻されたモラシムは、とっさに背後を振り向く。
そこにはいつの間にかゾノの背中に回り込み、ロックオンをして剣を振りかぶるストライクの姿があった。
「フン!」
しかし、そこは紅海の鯱。
ゾノの左手を用いて自慢の装甲を活かしその剣を受け止め、右手のフォノンメーザーを向ける。
「このゾノに格闘戦を挑むとは! フン、パワーが違うわナチュラル──グオッ!?」
剣を掴んで拘束し、フォノンメーザーを撃ち込もうとしたモラシムだが、その直前に衝撃が走る。
バズーカを撃ってきていたストライクダガーが煙の中を突っ切り、機体の重量を活かしたシールドタックルを繰り出してきたのである。
「フン! そんなもので、何を──ぬぅ!?」
ストライクダガーによって体勢を崩され、フォノンメーザーが空振りとなったゾノ。
しかしすぐにモラシムは機体を立て直し、今度はお前の番だとストライクダガーを捕まえようとしたが、ストライクダガーは機体前面の推進器を使って後方へ機体を回転させてそのゾノの手を躱し、逆にゾノの伸ばした腕を掴んできたのである。
「フン! ゾノのパワーがそんな機体で──なんだと!?」
そんな貧弱な機体で、パワー自慢のゾノを拘束しようなど。
モラシムはストライクダガーを振り払おうとしたが、そのストライクダガーの掴んだ腕を、今度はストライクダガーへの対応のために拘束を解いていたストライクの剣が切り落とした。
「フン! ナチュラルごときが、生意気なぁ!」
クローとフォノンメーザーの片方を失ったが、それでもゾノが水中戦で負けるはずがない。
モラシムはゾノの残ったクローを振り回して、2機のMSを振り払うように魚雷を乱射する。
まずは引き剥がし、そして距離を開けたところで1機を魚雷で牽制しその隙に1機を撃破する各個撃破ならば……!
しかし、ストライクダガーの投げつけたシールドがゾノの振り回すクローや魚雷をかいくぐり、モノアイに直撃する。
一瞬シールドで視界がふさがれ、モラシムは苛立つ。
「フン! ちょこざいな、なんのつもりだナチュラルめ!」
忌々しげにクローでシールドを振り払うゾノ。
シールドを振り払った視界の先には、いつの間にかストライクから受け取っていた剣を振りかぶり接近するストライクダガーの姿が。
「フン! 自ら懐に飛び込んでくるとは、手間が省けるってもんだ!」
ストライクに比べ、簡素な造りゆえに貧相に見えやすいストライクダガー。
それが怪力自慢であるゾノに接近戦を挑んで来たことに、それこそゾノには好都合だと迎え撃つモラシム。
クローをストライクダガーに伸ばすのに対し、ストライクダガーは間合いが届いていない中で剣を振り回す。
ゾノのクローがストライクダガーに迫る。
これで勝ったと確信したモラシム。
だが、クローがストライクダガーに届く直前にそのゾノの背中にダガーから受け取ったストライクが撃ち込んできたロックオンなしのバズーカの砲弾が直撃し衝撃を与えてきた。
「な、何だ!?」
背中からの衝撃に、姿勢を崩されたゾノのクローは水中を空振りしてストライクダガーを捉えられなかった。
そして、何が起きたのだとモラシムはついストライクダガーから注意をそらしてしまう。
まだ間合いが届いていない距離で剣を振り回していたということもあるのだろう。
だが、バズーカの衝撃で上体の傾いたゾノは剣がかすめる距離に押し出されてしまっており、ストライクダガーの振り回した剣がゾノの頭部を切り裂きモノアイを破壊した。
「ぐぅ!? しまった、視界を──」
モノアイが破壊されたことで、視界がふさがれたゾノ。
そこに、返す刀でストライクダガーが今度はしっかりとゾノの機体を間合いに捉えた距離で剣を切り上げる。
「ば、バカなぁああああ!?」
コクピットも捉えた剣に機体を切り裂かれるゾノ。
ストライクのソードによってコクピットもろとも切り裂かれた直後、その大きな傷口に殺到した水圧に潰され、紅海の鯱と恐れられた男はその名を挙げた海の底に散った。
そして、ストライクダガーがゾノを切り裂いた直後に。
その機体の残骸にとどめを刺すように、ストライクが発射したバズーカが頑強な装甲にとどめの一撃を加える。
推進器を破壊され、残弾の魚雷なども誘爆。
水圧に押しつぶされ、バズーカに砕かれ、モラシムの真っ二つになった上に水圧に押しつぶされぺしゃんこになった死体を乗せたまま、ゾノは爆散した。
ユウにグーンを任せてゾノの撃破に向かったムウのストライクと、ミランダのストライクダガー。
ブリッツから取った海中戦のデータを反映させた操縦サポートAIのおかげで、ナチュラルであるムウもストライクを問題なく水中で操作できている。
「MSに関しては若葉マークだからな。頼むぜお嬢ちゃん、いや先輩さんよ!」
「先輩……いい響きです! はい、どーんと任されました!」
ムウの先輩呼びを受け、普段から年下にまで妹的な扱いを受けてばかりのミランダは、その新鮮な響きにたいそう機嫌をよくした。
2人の前にきたのは、ジブラルタルでサイクロプスを起動して大量殺戮を仕掛けてから去っていったスコルツェニーが最後に乗っていた機体であるゾノである。
ザフトの開発した新型水中戦闘用MSであるゾノは、現行の主力機であるグーンとは比較にならない重装甲と火力を持ちながら、水中の機動性能は全く劣らないという強力な機体である。
火力もそうだが、何より脅威なのはクローを搭載し近接格闘戦闘を可能とし、そして水中という抵抗の多い戦場で万全に動けるように搭載された圧倒的なパワーである。
深い海にも潜れる潜水艦の装甲をたやすく潰すそのクローに捕まることがあれば、フェイズシフト装甲が守るストライクでも抜け出せなくなり、ストライクダガーなど容易に握りつぶされてしまうだろう。
ジブラルタルでサイクロプスを使い、基地もろとも多くの命を奪った憎き敵、ヘルマン・スコルツェニー。
それを倒すべく、魚雷の発射態勢とロックオンに入ったゾノに対し、2機のMSはゾノの土俵である海で立ち向かう。
「ムウさんムウさん、後輩くんって呼んでもいいですか!」
「そりゃ俺が教えてもらう立場だし──ちょっと待て、ゾノがロックオンしてきてる!」
「なら二流ですよ。これで牽制できるのです!」
ムウに先輩と呼ばれて上機嫌となったミランダは早速先輩面がしたくなったのか、魚雷を発射するべくストライクをロックオンしてきたゾノに向かって、ロックオンせずにバズーカを発射して牽制。
ノリノリのムウから後輩くん呼びの許可をもらってから、そのバズーカの砲撃に慌てて回避行動をとったゾノを示しながらミランダ流MS戦闘指導を始めた。
「MS戦闘は、敵の操縦のクセを見抜けば戦闘がとっても有利になるのです!」
「お、早速ご教授願えるか。つまりどういうことですか先輩!」
ミランダ曰く、MS戦闘においては敵の操縦のクセを見抜けば戦闘は有利になるという。
どういうことかと尋ねたムウに、ミランダはバズーカを回避したゾノの動きを使って説明する。
「今のバズーカの回避、あのザフト右に回避しましたよね?」
「確かに……ってことは、それがクセなのか?」
「その通りなのです!」
ストライクダガーが牽制のためということだが明らかにコクピットを捉えた射線で発射していたバズーカ。
その砲弾によりストライクへの魚雷攻撃を中止してゾノは回避したが、その際の回避の方向を示してミランダはそれがクセだと言った。
「ユーさん曰く」
「坊主の受け売りかよ」
「“MSのパイロットはとっさの回避を利き手と逆の方向に避けるクセがある”とのことなのです! なので、あのゾノのパイロットはさっき私たちから見て右に避けたので、きっと右利きなのです!」
剣と盾を手に持ち同じ武装の敵と対峙した時、あるいはお互い銃を片手に対峙した時を想像すればわかりやすい。
通常、武器は利き手に持ち盾などは反対の手に持つ。
敵の攻撃を防ぐにせよ、回避するにせよ、人間は右利きであれば左に、左利きであれば右に回避する。
理由は単純。盾で防ぐには盾を持つ側──つまり、利き手の反対側の半身を前に出して盾を構えるものだからである。
あるいは、刀であっても同じ。敵の攻撃を受ける時は、攻撃の起点となる右足で踏み出すために左半身が前に出るものである。
あるいは、銃であっても同じ。物陰に隠れるために回避する時などは、即座に銃を取り出して攻撃態勢に動くために、基本的に受け身は銃を取り出す手とは反対側の腕で行うものである。
右利きであれば、左に回避して攻撃を避ければ、敵に対して右手に握った剣ですぐに反撃できる。
この時右に回避すれば、右手に持つ剣で相手に切り掛かるには一度敵に向き直るという一拍の無駄な動作が入り反撃に移るタイミングが遅くなるのである。
このことから、敵のとっさに回避する方向を予測できれば、ロックオンを用いなくても一瞬先の敵の行動──回避先というのが予測できるようになるのである。
一瞬先の敵の回避先を予測できれば、MS戦闘は大きく有利になる。
加えて、利き手がわかれば敵の攻撃のクセも想定しやすくなる。
ゾノのような両手に装備を持つ機体でも、利き手側の兵器で攻撃を仕掛ける頻度の方が多くなり、防御行動は反対側で行うことが多くなるという傾向が推測できるようになるので、敵の攻撃の予測もロックオンされずとも機体の動きでやりやすくなるのである。
「MSは人型兵器。自然と動き方、回避のクセとかも人の動きに合うので、パイロットのクセが出てくるのです!」
「なるほどな……MA乗りでも回避のクセってのはあるけど、MSだと攻撃までクセが出るってことか」
「その通りなのです、後輩くん!」
「はい! ご教授いただき感謝します、先輩!」
ミランダの──正確にはミランダに教えたというユウの──言葉は、確かに理にかなうもの。
それを実践してみせると言わんばかりに、ミランダはストライクダガーを動かしゾノのロックオンをしようとする照準から外れた。
利き手の攻撃を多用しがちになるクセ。
それを参考にすれば、回避する方向はそちらの不足が狙いにくい方向に回避するのが効果的となる。
あとはモノアイの動きというのはパイロットの視界を表しているので、その動きを見極めれば狙いを誰に定めているのかロックオンされる前から予測できるようになるという。
「……さすがにモノアイの動きまで見抜くのは、若葉マークの俺には難しいですよ先輩」
「そういう時のためのAIなのです! ユーさんが敵機モノアイの動きに合わせて回避支援してくれるシステムも入れてるって言ってました!」
「そういうことは早く言ってくれよ先輩!」
「戦いながら見ればわかるかなって」
「いや、俺ナチュラルだから!」
戦闘中に敵のMSのモノアイなんて見ている暇はない。
そう嘆くムウに、そういえばユウが敵機のモノアイの動きを解析し回避をサポートしてくれるシステムをAIに組み込んでいることを思い出して教えてくれたミランダ。
なら早く言ってくれよというムウに対して、ミランダはバズーカをゾノに向けてさも当然のように回避から流れるように反撃として撃ちつつ、モノアイの動きくらい見ればわかるのにとナチュラルの苦労を知らないコーディネイターらしい言葉を零したので、ムウは思わずツッコミをした。
「けど、理屈を聞けば確かに俺にも戦える気がするかもしれない。行くぜ先輩!」
「その意気なのです後輩くん! 回り込んでください、援護します!」
「了解だ!」
バズーカをフォノンメーザーでゾノは迎撃している。
それにより発生した爆発で、 ゾノとの間に煙幕が発生しており、2機のMSはゾノの視界から一時的に逃れていた。
それを利用し、ムウはストライクをゾノの背後に回るように動く。
その間の注意をひくために、ミランダがゾノの動きそうな方向に向かって牽制砲撃としてバズーカを発射した。
当然、クセがわかった機体の動きは予測できるので煙幕があろうとロックオンなど必要ない。
その攻撃はミランダの予想よりも動きの遅かったことでゾノに当たらなかったが、しかしムウのストライクがその間に回り込んで距離を詰めていた。
「貰った!」
距離さえ詰めれば関係ないと、ゾノのコクピットを捉えてソードを振りかぶるストライク。
しかし、ゾノはロックオンを受けたことにより寸前でストライクに気づいて、クローでその剣を受け止めた。
「やべっ──」
「ムウさんに手を出すなカジキ頭ザフトが!」
ストライクの剣を掴んで動きを封じ、そこにフォノンメーザーを撃ち込もうとするゾノ。
ムウは被弾することを覚悟したが、その危機を察知し煙の中をシールドを前にして飛んできたストライクダガーがタックルをゾノに仕掛けてその攻撃を妨害する。
その際、ミランダの普段の様子から明らかにかけ離れた罵声がムウの耳に聞こえてきたが、さすがになれたし今は戦闘中なので、すぐに気を取り直して機体の制御を立て直す。
「悪い嬢ちゃん!」
「ムウさん、今なのです!」
「おう!」
ゾノは標的をストライクダガーに移すが、そのクローを巧みな動作で回避したミランダがゾノの振り回してきた腕を逆に掴み取る。
その瞬間を見逃さず、ムウは一瞬の拘束の間にストライクのソードを使ってゾノのクローの片方を切り落とした。
しかし、それによってゾノのパイロットが怒ったのか。
取り付く2機を振り払うように残ったクローを振り回し、魚雷を一帯に乱射してくるゾノ。
その無茶苦茶な攻撃には、たまらずムウもミランダも一旦距離をとる。
だがゾノのパイロットは冷静さを見失っている。
追い詰められている証拠であり、ムウもミランダも勝機があると確信した。
「とるぞ嬢ちゃん!」
「やっちゃいますよ! ムウさん、バズーカ使ってください!」
「なら俺の剣を使え!」
ストライクダガーの方が近い。
その時、武器の交換を一瞬のやりとりで決めたムウとミランダは、ストライクダガーの盾をゾノのモノアイにぶつけた隙にお互いに魚雷が撃たれまくる中に武器を投げ、同時にそれを受け取る。
ゾノはストライクダガーのシールドを振り払ったが、そこにミランダがムウのストライクから受け取ったソードを装備したストライクダガーで切り掛かった。
「ムウさんバズーカ!」
「おっしゃ、食らえムウさんバズーカ!」
「──からの、斬首! 首置いてけザフト!」
命名“ムウさんバズーカ”が、少し間合いが足りないゾノの背中を直撃して、その姿勢を崩して前に押し出す。
それによりソードの間合いに入ったゾノの頭部をストライクダガーの振り下ろしたソードが切り裂き、モノアイを破壊してゾノの視界を奪う。
「首よこせ、スコルツェニー!」
「これで終わりだぁ!」
ゾノの頑強な装甲だが、そこへ叩き込まれる間髪入れない2撃目の攻撃。
視界を失ったゾノは返す刀で切り上げたストライクダガーのソードによりコクピットを捉える大きな傷を受け、それにより水圧でひしゃげた装甲の背中へとムウの発射したバズーカが撃ち込まれる。
コクピットもろともを切り裂いた傷口からオイルだけでなく明らかにパイロットを絶命に追い込んだ一撃の証である赤い液体が溢れ、直後にバズーカが止めとなりゾノは爆発し海に散った。
「……勝ったな」
「やってやったのです!」
そのゾノのパイロットは標的ではなかったが、しかしザフトの異名を持つエースが駆使するゾノを相手に水中戦で勝利した。
それはまぎれもない事実であり、この勝利はストライク、そしてストライクダガーという地球連合のMSの優秀な性能を立証する大きな勝利であった。
この勝利は、ジブラルタルで沈められた多くの戦友たちの供養となるだろう。
隊長を撃破されたことに驚愕したモラシム隊の旗艦であるクストーは、踵を返してインド洋を目指して撤退を開始。
モラシム隊のMS部隊は殲滅され、スエズから援軍として派遣され挟撃を仕掛けてきたMS部隊も壊滅したことにより、合同部隊の進路を妨害する敵部隊は紅海から一掃された。
MS部隊の帰還後、合同部隊はスエズに向けて紅海の北上を再開する。
すでに存在を感知されたことで奇襲とはならなかったが、水中戦でグーンやゾノを圧倒しモラシムを討ち取った敵部隊をザフトは重く受け止め、エジプトから広げていたハビリス攻略を目指すザフト部隊は大きく戦線を後退することとなる。
これによりスエズ方面の戦線の攻守は交代となり、数で勝る地球連合が一気に前線を押し上げてスエズへとザフトを追い返した。
スエズ方面の戦線の援軍が役目である合同部隊は、この海戦でグーンやゾノを撃破した部隊の存在を示して紅海からの牽制を仕掛けることがスエズ方面の地球連合への最大の支援となると判断し、スエズ攻略の足並みを揃えるためにスエズ南部にて停止する。
アークエンジェルとG兵器を強く警戒するザフトは迂闊に仕掛けることもできず、中東に撤退する友軍が通過する運河を守るためににらみ合うことしかできなかった。
こうしてアークエンジェルの脅威が残る中でエジプトに部隊を残すことができずアフリカ大陸の戦線を完全に放棄することとなったザフトは、スエズを最後の砦として前線を固め始める。
それに対して地球連合はスエズ攻略を決定。
ユーラシアの地中海艦隊が北から、南アフリカ統一機構の援軍を加えた北アフリカ方面の地球連合地上軍が西から、アークエンジェルを旗艦とする合同部隊が南から攻撃を仕掛けることとなる。
ジブラルタルで受けた損害は少なくなかったが、スエズ方面のザフトも完全にアフリカを放棄したことにより、ハビリスの安全は確保され地中海方面の戦況は地球連合の優勢へと大きく傾いていた。
このまま戦えば、地球連合はいずれザフトを倒せる。
優勢に傾く戦況に、スエズ攻略に集結したユーラシア連邦軍の将兵の多くはそう感じていた。
──だが、ユーラシア主導にてスエズ攻略が行われたC.E71年4月。
この月、地球連合が優勢で進む状況を一気に傾かせる事態が発生することとなる。
モラシムさんの華麗なる(?)最期と、兄貴のストライク大活躍回でした。
月本部に持ち込まれたMS操縦サポートAIを使いストライクダガーが完成したように、すでにナチュラル用MSは地球連合で本格的な生産が始まっています。
G兵器がザフトのMSに勝利を重ねている実績も相成り、アラスカの方も地球連合製MSの有用性については理解を示しています。
つまり作られるんですよね、後期GAT-Xシリーズと生体CPUが……