その首置いてけザフト共 作:みども
狙いません。今回はパナマです。
オペレーション・スピットブレイク。
パナマ攻略を目指すこの作戦に参加する部隊には、クルーゼ隊、スコルツェニー隊、ウィラード隊など、カオシュン攻略作戦に匹敵する大規模な戦力が集結している。
コーディネイターであるザフトのこの大軍であれば、劣等人種のナチュラルごときの戦力など蹴散らせるだろう。
──そんな驕った空気は、今のザフトにはなかった。
アフリカ戦線。
ビクトリア攻略を目指し、ジブラルタル基地の戦力を主力として構築、侵攻していたこの戦線で猛威を振るった連合製MS“G兵器”の存在があったからである。
これまでザフトが独占していた兵器であるMS。
しかし、連合が作り上げたその新兵器はザフトのMSをはるかに凌駕する性能を持ち、相対した部隊にはこれまで甚大な被害が発生してきた。
その地球連合が、新たな新型MSを開発し、さらには量産・前線へ大規模に配備している。
MSという質で戦闘機や戦車、艦船に対抗してきたザフトだが、そのMSは今やザフトだけのものではなくなっている。
ナチュラルの作り上げたMSは、アフリカ戦線を崩壊させ更にはジブラルタルまで陥落に追い込んだ。
これを脅威と呼ばず何と呼ぶのか。
オペレーション・スピットブレイクに参加するザフトの兵士たちの中には、対MS戦闘という今まで敵として対峙したことがない自分たちの駆使する兵器との本気の殺し合いが展開される新たな戦争の時代に突入したことに、緊張が漂っていた。
今回の攻略目標であるパナマ基地には、大量の連合のMS部隊──今までの鹵獲ジンなどとは違う、ナチュラルでも操縦可能であり大量生産によって数を補ったMSが展開している。
これまでのようにはいかない、一対一でも連合に負けかねない厳しい戦場が待っていることに、ザフトの兵士たちの中に緊張が満ちていた。
「これより、我々はパナマ基地攻略作戦──オペレーション・スピットブレイクを開始する。目標はパナマの制圧並びに、マスドライバー施設の破壊だ」
「破壊……? 攻略ではなく、ですか?」
「破壊だ。マスドライバーに関しては、破壊を目的とする」
オペレーション・スピットブレイクの作戦遂行指揮官であるウィラードからの作戦目標の説明を受け、1人の黒服がマスドライバーの破壊が目的であることに疑問を呈する。
わざわざ破壊などせずとも、あの大規模施設は有用性が高い。制圧という方が楽であり有益なはず。
だが、ウィラードは破壊が目的であると断言した。
「今回の作戦、我々ザフトの戦力は連合に対し劣っている。正攻法ではまず攻略できないだろう。故に、“グングニール”を用いた電磁パルス攻撃によりマスドライバー施設をはじめとする地球連合の兵器・施設の破壊による攻略を行う」
「グングニール……?」
MSの優位性が失われれ今、数で劣るザフトは正攻法では連合に勝つことが極めて厳しくなっている。
快進撃を続けてきた地球の戦線で敗北が重なり、台湾からの撤退やアフリカ戦線を放棄せざるを得なくなったことなどが顕著な例である。
それを覆すために、ザフトが新たに取り掛かったのが、一つの兵器で戦場の趨勢を覆す戦略兵器だった。
ザフトが今回、オペレーション・スピットブレイクのために作り上げたその兵器が、強力な電磁衝撃波を発生させることにより電子機器を破壊し兵器や施設を無力化するEMP発生装置“グングニール”であった。
戦車も、航空機も、ヘリも、ミサイルも、戦艦も、そしてMSも。
兵器のほぼ全ては電子機器が用いられており、これを破壊する電磁衝撃波は現代兵器の天敵である。
マスドライバーもまたこのEMPにより破壊される可能性のある存在であるため、可能であれば制圧をとのことだったが、現状の連合の戦力はもはやザフトの想定をはるかに上回るものであり、すでにパナマは正攻法の攻略そのものが不可能と判断されたことから今回の作戦においてマスドライバー施設は破壊が決定された。
軌道上から落下させたグングニールを現地でMSにて起動させ、EMP対策を施したザフト側の兵器のみが使用可能となった戦場を作り出し連合を無力化、これを持ってパナマを制圧するというものである。
しかし、落下してきたグングニールが勝手に起動するのを待っては連合に破壊されるだけだろうし、グングニール起動までおとなしく見ているわけもないだろう。グングニールの効果範囲は決して広くないため、戦場の只中に落とす必要があり、これの起動までグングニールと工作部隊を守らなければならない。
つまるところ今回のパナマ攻略作戦は、グングニールを起動させるまで連合の大軍の猛攻を守り抜くことが戦略目標であった。
「──というわけだ。今回集結してもらった諸君の武装には事前にグングニールのEMP対策が施されている。しかし起動には時間がかかるため、その間グングニールを守るために諸君には連合の大部隊との戦闘を強いることとなるだろう。MSはすでにザフトだけのものではない。これまでのいかなる戦場よりも過酷な戦闘になることを肝に銘じるように」
「「「はっ!」」」
「では、各員作戦準備に取り掛かってくれ。グングニール投下ポイントを確保したのち、順次軌道上よりグングニールを落としていく。作戦開始は24時間後、4月6日10:00よりとする。解散!」
ウィラードの解散の号令に従い、各隊長たちがそれぞれ作戦を部下たちに通達し準備を進めるために出て行く。
クルーゼとスコルツェニーもまた、先日の喧嘩騒動などなかったかのように落ち着いた様子で部屋を後にした。
そして、オペレーション・スピットブレイクは発動した。
カーペンタリアを出発したザフトの大軍は、パナマに向け南太平洋を横断し、70機を超えるMSの大部隊を展開して空と海から一斉に攻勢を開始する。
作戦の第一段階である、EMP発生装置グングニールの降下ポイントの確保とパナマの橋頭堡の獲得。
これを達成するべくパナマに上陸、攻勢を仕掛けてきたザフトに対し、パナマ守備隊として展開していた大西洋連邦と南アメリカ合衆国が構成する地球連合の守備隊が迎撃してきた。
「貴様らが来ることはわかっていた。コーディネイター共め、もうこれ以上思い通りにいくと思うなよ!」
ザフトが展開した部隊は大軍である。
70機を超えるMSの中には、主力となるジンだけでなく、バクゥ、グーン、ディンといった量産機から、ゾノやラゴゥ、シグーなどの隊長機、加えてザフトが鹵獲に成功していたG兵器であるイージスとバスターが参加していた。
圧倒的な戦力を前に通常兵器で構成されるパナマ守備隊の前線部隊と海岸警備隊は瞬く間に蹴散らされ、上陸ポイントを確保されてしまった。
「次だ、グングニールの降下ポイントを確保せよ!」
オペレーション・スピットブレイクの司令官を任されているウィラードは、橋頭堡の確保後すぐさま地上部隊を多数展開しグングニールの降下ポイント確保を命令する。
それに従い、続々と降下・上陸してきたザフトのMS部隊が前線を押し上げ、パナマ基地に入り込んできた。
「第13独立部隊、第14独立部隊を出せ! 南アメリカ合衆国軍に第8機動連隊の出撃を要請しろ! コーディネイター共め、これまで通りに行くとは思うなよ!」
しかし、ここでパナマ守備隊は虎の子の戦力であるMS部隊、ストライクダガーとロングダガーからなる第13独立部隊と第14独立部隊、南アメリカ合衆国の第8機動連隊を出撃させる。
「これ以上好きにはさせないぜ!」
基地内外から続々と出撃してくるストライクダガーとロングダガーの部隊。
操縦サポートAIにより、ナチュラルでも操縦が可能なMSとして完成したストライクダガーは、コーディネイターの操るザフトのMSに対して襲いかかった。
「くたばれコーディネイター!」
「ぐあっ!?」
「サイモン! くそ、ナチュラルのMSか!」
ストライクダガー部隊の登場により、快進撃を続けるザフトの攻勢が止められる。
それを起点に、地球連合は橋頭堡となっているポイントに向けザフトを海に追いおとすように包囲網を展開して反撃を開始した。
「情報にあったナチュラルのMSか。クソッ、動きは単調なくせにビームライフルやシールドが厄介だ……!」
ザフトはスエズ戦線にて既にストライクダガーの存在を確認しており、また地球連合がナチュラルでも操縦可能なMSを完成させていた情報を南アメリカ合衆国のスパイなどからの情報提供により得ていたため、この敵のMS部隊の出現はあらかじめ予測していた。
そのスペックに関しても、量産化を急ぐ方針をとった大西洋連邦がザフトのスパイも多くいる南アメリカ合衆国にも工場を作り生産を進めていたことで、ザフトに情報は流れていた。
その基礎スペック、武装面においては、ストライクダガーはジンを上回るだろうという予測が立てられるほどのMS。
所詮ナチュラルのものなどと侮った友軍がどういう運命を辿ったのか。
紅海の鯱の異名を得たザフトの猛将すらも海の藻屑と変えられたことから、ザフトはこのダガー系統の量産型MSを強く警戒していた。
操縦サポートAIの支援によりナチュラルが操縦可能となったMS。
しかしMSに慣れ親しみ、その優れた身体能力や反射神経で手足のように愛機を操縦するコーディネイターの扱うMSと比較して、その動きはやはり機械的で鈍い面があるのは否定できない。
しかしながら、ストライクダガーが劣っているのはパイロットのみ。
武装をはじめとする各種スペック自体はザフトの主力MSであるジンを凌駕しており、その性能がパイロットの技量面を十分にカバーしていた。
また、操縦サポートAIは基本的な戦闘に関しては素人が乗ってもAIの補助によりある程度戦える。
半ばAIが操縦を担当していると言ってもいいダガーは、パイロットの技量に関してはそこまで大きな問題ではなく、言い換えれば誰が操縦してもある程度のスペックを引き出す戦闘が可能だった。
そして何より、地球連合の物量の強さはザフトの想定を上回っていた。
「こ、こいつら……どんだけ出てきやがる!?」
兵力不足を補い、早急な量産を進めるべく、南アメリカ合衆国にも工場を建設し南米から徴兵した兵士たちも乗せ用意したダガー部隊。
量産が開始されてから一月ほどしか経過していないにもかかわらず、このパナマ基地に展開したMSはザフトの倍以上、約200機ものMS部隊が生産され配備されていた。
加えてダガー部隊を支援する地上砲台、リニア・ガンタンク、イージス艦、ブルドック、スピアヘッド、対MS戦闘ヘリなどの通常兵器も存在している。
パイロットの技量で数の劣勢やスペックの差を埋めてダガーに対抗するザフトのMSに、この通常兵器部隊の支援攻撃が加わることにより、ザフト側はMSの機動性能を思うように発揮できず被害が拡大していた。
「この……鬱陶しいっての!」
「バスターだ!」
「フェイズシフト装甲だろうとビーム兵器は防げまい!」
「最優先目標だ! 囲って叩き潰すぞ!」
その火力を生かして前線の部隊を支え次々にダガーを駆逐するディアッカのバスターに、連合が目標を定めて多数群がってくる。
フェイズシフト装甲を有するG兵器であるバスターだが、それに傷をつけることが可能なビーム兵器が主兵装であるダガー隊は今までのような実弾兵器の敵とは比較にならない脅威である。
火力に優れるバスターだが、機動性能は他のG兵器と比べて劣っている。
加えてもともと宇宙戦闘用に製造された機体であり、大気圏内でとびまわれるほど推進力は大きくない。
近接戦用の武器もないため、取り囲まれて距離を詰められれば厳しい戦いになるのは明白である。
「ディアッカ!」
大量のヘリ部隊と20機以上のストライクダガーに取り囲まれ、グゥルも被弾し地上に落ちたバスターに、イージスがグゥルから飛び降りて援護に入る。
「アスラン! 悪い、助かるぜ!」
バスターの背後を狙うストライクダガー2機を両手足のビームサーベルで瞬く間に四つに切り裂き破壊しながら方位の中に飛び込んできたイージス。
しかし、2機のG兵器が揃った場ということもあり、連合の注目を引き続々と部隊が投入されてきた。
「どうするアスラン? 降伏してみるか?」
「バカなことを言うな。イージスで突破口を作る、援護してくれ!」
「グゥレイト! 任せておけ!」
アークエンジェルとの戦闘を繰り返し、もはや2人になってしまったクルーゼ隊の赤服。
5人が揃っていた頃は不器用なアスランと、迂闊で残念軽薄なディアッカは折り合いが悪かったが、共に根は仲間思いであり、また相手の実力を信頼していた。
久しぶりの連携だが、息を合わせて数で圧倒する連合のダガー部隊に挑んでいく。
イージスのビームサーベルを駆使して、ダガーに肉薄し次々にその機体を切り裂いていくイージス。
周囲を飛び回り、走り回り、ミサイルを飛ばしてくるブルドックやスピアヘッド、ヘリ部隊を集中して狙い、イージスの周囲を守るように敵部隊を自慢の火力で駆逐していくバスター。
2人の強さは群を抜いており、孤立し完全包囲を食らうという絶望的な戦況の中でも、次々に数で圧倒する連合の部隊を破壊し着実に味方との距離を縮めていた。
だが、大局に影響を与える戦場から押し出された2機のG兵器の奮闘はザフトの優勢を呼び込むには至らない。
孤軍奮闘する2機のG兵器を主戦場は無視しており、橋頭堡を確保したザフトだが洪水のように襲い来るダガーの大軍によって被害は拡大する一方であり、グングニールの降下ポイントの制圧どころか確保した橋頭堡すら失いかねないほどに追い詰められていた。
「ナチュラルが……!」
「くたばれコーディネイター!」
戦況は明らかにザフトの劣勢である。
グングニールの降下ポイントを抑えなければ、ザフトに勝機はない。
「やむを得ん、一部の戦力を回し第二候補の上陸ポイントからも強襲を仕掛ける。スコルツェニー隊とホラソン隊、ロビンソン隊に打電、第二候補より強襲をかけ橋頭堡を確保させよ。主力は敵軍を可能な限り引きつけさせるのだ!」
このままでは敗北は濃厚だと判断したウィラードにより、現在主戦場となっているパナマ基地沿岸から、ジャングルが広がる運河の方、上陸の第二候補としていたポイントに対してスコルツェニー隊を主力とする部隊を派遣し新たな橋頭堡を確保、そこからグングニール降下ポイントの制圧に向け戦闘を展開する命令が出された。
孤立した2機のG兵器を気にかけている余裕は、ウィラードにはない。
これによりアスランとディアッカは自力で包囲網からの脱出を余儀なくされる。
スコルツェニー率いる部隊を海から出し、運河からジャングルに上陸。橋頭堡を確保し、森林地帯を抜けてグングニールの降下ポイントの確保に動かす。
しかし数は有り余る連合はこちらにもダガーをはじめとする大部隊を展開しており、即座にスコルツェニーの前に立ちふさがった。
「あのゾノは……! おのれ、スプルーアンス提督の仇!」
「うへえ、ゾロゾロと湧いて出てきたな。ゾノで地上戦ってあんまりやりたくないけど、まあ仕方ない。相手になってやるよ、大西洋連邦の諸君!」
大西洋連邦にとって、スコルツェニーのゾノはジブラルタルで多くの味方の命を奪った仇として認識されている。
そのためスコルツェニーの前に立ちふさがる連合の部隊の戦意は高く、ゾノの圧倒的なパワーと重装甲を活かしてストライクダガーを破壊するスコルツェニーだが、その進撃の足はすぐに止められ戦線は停滞した。
「オイオイオイ! 何コレ、私にばかりすっごい殺到してきてないかな? ないかなぁ!? きているよねコレ! ナチュラルにモテても嬉しくねえんですけど!」
「あら大人気ですこと」
「副官見てないで助けてくれぇ! おいこら置いてくな、隊長を囮に使うな、お前それでも私の副官なんですかぁ!?」
集ってくるストライクダガーやブルドックをクローで引き裂き、フォノンメーザーで瓦礫に変え、魚雷でヘリを撃ち墜としながら暴れるスコルツェニーと、それに殺到する連合の部隊を尻目に自らの隊長を囮に使ってその隙に連合部隊の間隙を潜って進んでいくドライ。
副官は思いっきり囮に使ったが、スコルツェニー隊に同行していたロビンソン隊は見捨てることができず、ゾノの援護に入る。
「援護する!」
「お、いいところに」
「ええっ!?」
多対一の戦闘に真価を発揮するゾノを駆使するスコルツェニーは、それを見るなり近くに寄ったジンの腰についていた重斬刀を掴んで奪うと、それを増援として接近中だったMS部隊の指揮官機であるロングダガーに投げつけてコクピットを破壊し撃墜した。
「ふむふむ。なるほど武装を盗むのも案外いいものだな」
「味方の武器を盗む奴があるか貴様!」
「いやぁスマンスマン」
魔女の真似をして、近接武器を奪いそれを投げるという攻撃を仕掛けたスコルツェニー。
パワー自慢のゾノということもあり、その威力はジンをはるかに超えとっさにシールドを構えたロングダガーをそのシールドもろとも貫通、破壊することに成功した。
敵からならばともかく、友軍のMSから重斬刀を盗むという前代未聞の行動に、部下が窃盗被害を受けたロビンソンがキレるが、それを全く誠意の感じられない謝罪で流すスコルツェニー。
さらには友軍の武装を盗むという行動に衝撃を受けている地球連合の部隊の隙をつき、クローを振り回しフォノンメーザーを撃って群がっていたストライクダガーを次々にスクラップへと変えていく。
「結果オーライ!」
「どこがだ貴様!」
しかし、多少削ろうとも圧倒的な数をもってその戦線の穴をすぐに連合は埋めてくる。
間隙を縫って進んでいたドライ率いるスコルツェニー隊の別働隊も見つかり、この別働隊による強襲上陸の攻勢もグングニールの降下ポイントに到達できずに止められることとなった。
「堅いよウィラードさん! タスケテェ〜!」
ザフトの被害は拡大する一方。
ストライクダガーという新たな兵器の登場は、この連合・プラント大戦に新たな一石を投じ戦場を一変させていた。
「ぐぬぬ……これ以上の攻勢は被害が拡大するのみか……やむを得ん、全軍をパナマより撤退させよ! 橋頭堡を放棄する!」
想定をはるかに上回る数を揃えてきた連合の守備に、これ以上の無理な攻勢は被害を拡大させるばかりとなると判断したウィラードにより、全ザフト部隊に撤退の命令が出される。
それに従いザフトは撤退を開始したが、しかしそこで友軍から引き離され孤立した2機のG兵器が取り残され、絶体絶命の危機を迎えることとなった。
「撤退命令!? この状況でって……無茶苦茶言ってくれるぜ!」
「くっ……!」
取り残された2機のG兵器。
その包囲網は厚く、攻勢限界が近づいていたザフトも撤退支援の援軍を送れない。
そしてザフトが橋頭堡を放棄して主力が海に退却したことにより、連合はこのザフトの手にある2機のG兵器を確実に破壊するか確保するべく、沿岸部にてザフトの主力と戦闘を繰り広げていた前線の部隊も一部を回してさらに包囲網を厚くしてきた。
取り残されたバスターとイージスに対し攻勢を強める地球連合。
群がる地球連合の大軍に、バッテリーの消耗が増加していく。
「……!」
追い詰められていく戦況に、アスランの額に汗が浮かぶ。
かつて、アスランは初めて敵として立ちふさがったMSと本気のMS同士の戦闘を経験したことがある。
当時はイージスに慣れていなかったこと、そしてその敵として立ちふさがったMSのパイロットがザフトの精兵をMS戦闘の土俵においては赤子のようにひねる化物じみた技量を持つ敵だったことなどから、3対1という数的優勢の中でも敗北を喫した。
世界の広さを思い知らされた戦い。
今のこの敵の大軍に包囲されるという戦況は、敵もMSを駆使するという兵器の質の差もほとんどない戦場は、その世界の広さを思い知らせた敵がザフトを相手にずっと戦い続けてきた戦場である。
いや、フェイズシフト装甲という防壁のない、G兵器よりもスペックの劣るジンなどを使って戦ってきたならば、まだなおこの絶望すら彼らの戦い抜いてきた戦場に及ばないのかもしれない。
「俺は……!」
ならば、この程度乗り越えられなければ、いつか再びあいつに並ぶ敵と対峙した時、大切な仲間を、故郷を守れない。
言い訳なんてなんの意味もない。飾りにもなければ、慰めにもならない。
無力ならば、大切なものを奪われるだけ、壊されるだけ。
あの時、何もできないままユニウスセブンが核攻撃で崩れる姿を見ているしかなかったバレンタインの日のように──
「もう、何も奪わせるわけには──!」
この手に
ここで負けてまた仲間を失うことがあれば、いったい自分はなんのために力を得たというのか?
「アスラン!」
「もう
──その瞬間、アスランの中で何かが弾けた。
資本主義の底力は大量生産。
戦いは数だよ兄貴!