その首置いてけザフト共   作:みども

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オペレーション・スピットブレイク7

 

 

「な、なんだ!?」

 

 グングニールの放つ強烈なEMPは、範囲内にいた対策を施しているザフト側の兵器以外の電子機器を根こそぎ破壊した。

 これにより集結していた連合の部隊のすべての兵器の機能が失われる。

 

 突如として発生した、戦場の穴。

 自軍の兵器にEMP対策を施しておくことで、敵軍だけの兵器を無力化する。

 たった一つの兵器で戦場そのものを変えてしまうザフトの戦略兵器の効果は絶大であり、この第一波のグングニールによって連合はパナマに展開する戦力の約8割を失うこととなった。

 

「今こそ反撃の時だ! 無力化した兵器は後回しで良い、パナマに向けて前進せよ! あの基地とマスドライバーを破壊する!」

 

 グングニールによって全ての前線に展開していた連合を無力化したウィラードは、すかさず本命であるパマナ基地への攻勢を命令する。

 それを受け、木偶の坊と化した連合の部隊を置き去りとしてザフトが一気に前進を開始した。

 

「無力化したナチュラル共はどうしますか?」

 

「あれでは何もできまい、放っておけ。ただし降伏した連中は1人として殺すな。これに関しては全軍に通達せよ。抵抗するならば構わないが、降伏したナチュラルに傷をつけた者、殺害した者は厳罰に処すと」

 

「了解」

 

 ウィラードはあくまでもパナマ基地の破壊を優先し、無力化した連合の残敵に関してはMSに戦える武器などないので放置すれば良いと言い捨てる。

 しかし、降伏を申し出てきた連合の兵士に関しては1人として殺してはいけない事を厳命した。

 

 ウィラードから出された、降伏したナチュラルを傷つけることは禁止するという命令。

 

「ふざけるな! ナチュラルは全員殺す、降伏なんざ認めねえ!」

 

 しかしナチュラル憎しの感情が強いザフトの中には納得いかない兵士もいたため、当然言う事を聞かない者も出てくる。

 

「やめてくれ──ぎゃああぁぁ!?」

 

「死ねナチュラルが!」

 

 南方で連合の大部隊と戦っていた中にいたナチュラル憎しの感情が強いあるザフトが、降伏してストライクダガーを降りてきた連合の兵士に向かってジンの機銃を撃ち殺害したのである。

 それを契機に、他のザフトたちも降伏した連合の兵士たちに対する虐殺を行おうとしたが、そこに待ったをかけた人物がいた。

 

「命令違反するならお前が死ね」

 

「なぁ──!?」

 

 暴走してもはや何もできないと降伏してきた連合のストライクダガーのパイロットを殺すべく銃を向けたザフトのジン。

 しかし、そのジンは連合の兵士を動かなくなったダガーの瓦礫ごと破壊した直後に、背後のゾノのクローによってコクピットを貫かれてパイロットもろとも友軍であるザフトのMSによって殺された。

 

 最初の殺害によってタガが外れ今にも虐殺を行おうとしていたザフトだが、いくら命令違反とはいえ躊躇なく友軍を平然と殺したゾノに驚き動揺が広がる。

 今にも虐殺されそうだった連合の兵士たちから見ても、そのザフトの行動は異端であった。

 

「おい、降伏したナチュラルには手を出すな。指の一本でも落としてみろ、対価はお前らの命となる」

 

 そのゾノが動揺して虐殺しようとしていた手が止まったザフトたちに向け、警告する。

 

「な、なんでお前が──!」

 

 一方、警告を受けた方のザフトたちからすれば混乱が大きかった。

 なにしろ、降伏したナチュラルに手を出した仲間を殺してまでも虐殺を止めたゾノは、ジブラルタルで何万人ものナチュラルを殺戮したはずのスコルツェニーの機体だったからである。

 

 ジブラルタルであれだけナチュラルを殺したお前がなぜ!? 

 

 そうつっかかってきたザフトに対し、スコルツェニーはゾノのクローを向ける。

 普段のふざけた飄々とした態度は鳴りをひそめ、周囲で虐殺に加担する寸前だったザフトのMSたちを取り囲む配下とともに、各者の周囲の温度を数度下げる錯覚を与えるような冷たい声で返した。

 

「命令だからだ。黙って従え。パマナ攻略において降伏した連合の兵士は殺すな。降伏勧告した後でもなお抵抗した相手ならば構わないが、白旗を上げた、両手を上げた奴には手を出すな。お前らジブラルタルを引き合いに出すけどよ、私があの時消した連中には1人としてザフトに白旗あげた奴はいなかったぞ。戦う意志と力がある敵と、意志も力も手放し降伏した相手の区別すらつけられないのか?」

 

「それをいうならナチュラル共が──ぎゃあ!?」

 

「誰が反論していいと言った? 命令違反で極刑」

 

 ジブラルタルでの殺戮では、降伏した兵士はいない。

 しかし今回の敵は降伏している。

 そう反論を封じるスコルツェニーは、それでも食い下がろうとしたザフトにまたも容赦なくゾノのフォノンメーザーを撃ち込み機体もろとも友軍を殺害する。

 

「降伏した奴らはスコルツェニー隊が預かる。そんなにナチュラルと戦いたいならさっさと前線に行けよ。降伏した相手に手を出すなら極刑にかけて回るから、肝に銘じておけ」

 

「「「──ッ!」」」

 

 躊躇いなく友軍を殺すスコルツェニー。

 その声に、降伏したナチュラルに手を出せば本気で容赦も躊躇もなくスコルツェニー隊が牙を向くことを察したザフトたちは、頭に恐怖という名の冷水をかけられ、パナマ基地の方へと向かっていった。

 

「はい、他のところにも周知を徹底。降伏したナチュラルに手を出したら、スコルツェニー隊が罰を下しに回ると」

 

 グングニールにより無力化されたことで、この戦争ではあまりにも多くあった白旗を上げた敵に対する組織的な虐殺が行われることとなると思われたパナマ攻防戦だが。

 過激派で知られるパトリック・ザラが最高評議会議長に就任してから初めて行われたこの大規模作戦においては、その大方の予想を裏切りスコルツェニーが降伏した連合兵士に手を出したザフトを容赦なく処刑する強い対応をとったことで、そう言った虐殺は最小限に抑えられた。

 

 なぜ、パナマにおいてそのような命令が出されたのか。

 その真相が知られるのはこのオペレーション・スピットブレイクの後のこととなるが、この戦いで発生した大量の連合の捕虜たちは非常に珍しく、身命の安全が保障されコルシカ条約に基づく丁重な扱いを受けた。

 

 基本的に捕虜はスコルツェニー隊が回収して周り、他のザフトの部隊はスコルツェニーに促されるように降伏した連合兵士の虐殺よりもパナマの完全攻略を進めることを優先して前線に動いたことで、ザフト側にも多少の混乱はあったもののグングニールの第一波による衝撃から立ち直れていない連合側よりも早く動くことができた。

 

「これが最後だ! グングニール第二波を投下せよ!」

 

 戦線を整理し、上陸ポイントAで戦うザフト部隊との戦線の接続と僅かに残っていたまだ動ける連合の前線部隊の駆逐を完了したウィラードは、すかさずパナマ基地を射程に収める第二波のグングニールを投下。

 それを見て絶対に起動させるなと残存戦力を根こそぎ動員しザフトに対して攻撃を仕掛けてきたパナマの最後の戦力と、グングニールを守るべく前線に出てきたザフトとの間で、オペレーション・スピットブレイク最後の戦いが展開されることとなる。

 

「止めろ! 絶対に起動させるな!」

 

「ここが正念場だ! 突破を許すな、グングニールを守りぬけ!」

 

 全戦力の8割をグングニールで失ったとはいえ、それでも莫大な物量を誇る連合は数の上ではこのザフトの前線の部隊と互角の数が残っている。

 基地の残存戦力を空にする勢いで動員してきた40機以上のストライクダガーと、リニア・ガンタンクや対MS戦闘ヘリ。

 MSの数では少し優勢だが、通常兵器らを加えると数の上では互角の戦力が残っていた連合の物量に、主力を一気に無力化したとはいえザフト側も気が抜けない戦いが続く。

 

「グゥレイト! もう慣れちまったぜ、MS戦は!」

 

「後輩ばかりに活躍されては、黄昏の魔弾の名折れってやつだ」

 

 圧倒的な強さを見せつけた代償としてイージスのバッテリーを使い尽くしたアスランは下がったが、しかし圧倒的な火力を持つディアッカの駆使するバスターと、ミゲルら多くのエースも参加しているザフトはやはり強く、数で互角となった連合はその戦列を崩しきれなかった。

 

 そして、2発目のグングニールが起動する。

 

「ポルタ・パナマが……!」

 

 パナマ基地を射程に収めていたグングニールの第二波は、パマナ基地の残存戦力とともに基地の機能、さらにはマスドライバーである“ポルタ・パマナ”をそのEMPをもって破壊。

 これにより全ての戦える戦力を失ったパナマ基地は降伏に追い込まれ、オペレーション・ウロボロス発動以来初めての連合側の宇宙港が陥落することとなった。

 

「パナマ基地の降伏宣言を確認しました」

 

「よし、皆よくやってくれた。パナマは陥落した、この戦い我々ザフトの勝利だ!」

 

 パナマ基地の降伏宣言を確認したウィラードが、勝利をザフトに通達する。

 ジブラルタルの失陥など、敗北が重なっていたザフトにとってこれは久しぶりの大きな勝利であり、戦場は彼らの歓声が鳴り響いた。

 

「あー、捕虜はスコルツェニー隊が引き受けるから降伏したのには手を出すなよ。いいか、出すなよ? 絶対に出すなよ!?」

 

 その後、降伏したパナマの連合守備隊の捕虜たちは、スコルツェニー隊が回収し、一切の危害を加えることを許さない命令を全ザフト部隊に徹底させた。

 これもあり、パナマ攻防戦“オペレーション・スピットブレイク”における両陣営の出した死者の数は戦いの規模に対してこの戦争では非常に少ない結果で終わることとなった。

 

 しかし現在のザフトの地上戦力では、パナマの維持は厳しい。

 グングニールという新兵器を警戒し連合もすぐに奪還に動くということは難しいだろうが、喉元に再び脅威となる拠点を作られた大西洋連邦はこのまま済ませるはずはない。

 確実に、近いうちにダガーを利用した大戦力を整えて奪還に動くことになるだろう。

 

 だが、オペレーション・スピットブレイクの目的はパナマの制圧とマスドライバーの破壊だけではない。

 この戦いを起点に、劣勢の続いてきたザフトは新たな戦略でこの戦争の様相を作り変えていくこととなる。

 

 その第一手として、パナマの陥落に動揺が走る連合に更なる衝撃のニュースがもたらされることとなる。

 

 

 

 ──それは、パナマ失陥後に南アメリカ合衆国に作られていた大西洋連邦の傀儡政権に対して現地勢力が各地で武装蜂起を行ったという知らせだった。




オペレーション・スピットブレイク編は以上になります。
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