その首置いてけザフト共   作:みども

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悪の三兵器1

 

 

 オペレーション・スピットブレイクによるパナマの陥落。

 それは、地球連合の保有する3箇所の宇宙港において初めての失陥となり、パトリック・ザラが新議長として就任したプラントがカオシュン、ビクトリアにて敗北したことにより頓挫していたと思われていた地球連合を地球圏内にとどめ宇宙と分断する戦略目標“オペレーション・ウロボロス”が再開したことを示していた。

 

 連合はダガー系統の連合製ナチュラル用MS、そしてザフトはグングニールという新兵器が登場した戦い。

 パナマ攻防戦は両陣営の新兵器が猛威を振るい、連合・プラント大戦の行方を大きく動かすこととなる戦いとなった。

 

 勝利を獲得し、パナマ基地とマスドライバー施設であるポルタ・パナマの破壊に成功したザフトは、マスドライバーの無いパナマに用はないと言わんばかりに早々に防衛用の戦力を残して主力はカーペンタリアへと撤退する。

 クルーゼ隊、ティアレ隊らこのパナマ攻防戦で活躍した部隊も、ウィラード隊とともにカーペンタリアへの帰路についた。

 

 一方で、この戦いにおいてグングニールの運用により兵器を無力化したことで大量に発生した連合側の降伏した捕虜は、スコルツェニー隊が預かることとなった。

 

 このパナマの守備隊には、兵員不足を補うため傀儡政権を立てた南アメリカ合衆国から徴用してきた兵士も多くいる。

 彼らの国は元々クライン政権時代にザフト側の積極的中立勧告を大洋州連合とともに受け入れてくれた親プラント国であり、コーディネイターに対する悪感情が地球の国家の中でも比較的小さい者たちである。

 連合の捕虜と一緒くたに数えて虐殺の輪に入れれば、南米の反プラント感情を煽ることになり、現地の独立を目指す勢力から敵視される可能性が高かった。

 

 ジブラルタル赴任後、スコルツェニーが基地の司令官としての職務と並行して進めていた任務。

 その一つが、大西洋連邦により打ち立てられた現傀儡政権を打倒し南アメリカ合衆国の再建を果たそうと考えている現地の抵抗勢力との接触と、独立運動の裏からの支援である。

 大西洋連邦が作った現在の傀儡政権の横暴に現地の南米の人々は強く反発しており、傀儡政権を打倒し大西洋連邦から独立させ親プラント国として取り込む工作をスコルツェニーは抵抗勢力と接触するなどして進めていた。

 

 プラントの独立を阻む主敵は、大西洋連邦、東アジア共和国、ユーラシア連邦のプラント理事国3カ国である。

 他の地球連合に所属する国家はプラントの恩恵をさほど受けておらず、独立の是非に関しては容認を引き出すことは難しく無い。

 地球連合加盟国のうちこの主敵となる3カ国を外交的に孤立させ、疲弊させるとともに他の連合加盟国を引き剥がし親プラント国として取り込んでいく。

 南アメリカ合衆国の独立を支援するのもこの戦略に則ったものであり、親プラント国として引き入れられる──つまり味方となる存在から反発されるような印象を抱かれるわけにはいかなかった。

 

 故に、今回のパナマ攻勢においては降伏した敵兵の虐殺を禁じることを徹底させた。

 今までの降伏した連合兵士に対する虐殺などもあくまでクライン政権時代の悪しき風習とし、パトリック・ザラが舵取りをするプラントはナチュラルの滅亡を望んでいない、あくまで理事国の暴政に対抗し独立のために戦っている組織であるという新しい印象を今後味方に引き込む予定の国に見せつける意味もあった。

 

 事情を知らず暴走に走った兵士はいたが、そこはスコルツェニーが指一本でも手出した兵士は容赦無く処刑することで恐怖を植え付け、それ以上の蛮行を許さなかった。

 そして大量に発生した捕虜のうち、スコルツェニーは南米出身の兵士たちを傀儡政権に対抗する勢力へと引き渡し解放を進めるとともに、とある外交筋のルートを使って地球連合に対しても残る大西洋連邦本国出身の捕虜たちの引き渡しに関する交渉を仕掛けていた。

 

 さらにスコルツェニーはパマナの失陥で混乱している隙をつく形で、南アメリカに密かに送り込んだザフト部隊に支援させ、現地の抵抗勢力を一斉に蜂起させた。

「ポルタ・パナマを失陥し、大西洋連邦は混乱している。今こそ自由を勝ち取る時。決起の好機であり、傀儡政権を打倒しあるべきあなた方の国を取り戻すべき時だ。ザフトが支援しよう」

 そう唆し、南米にて大西洋連邦の傀儡政権に対する独立運動を起こしたのである。

 

 ジブラルタルで海軍に大損害を与えられ、パナマ失陥と新兵器グングニールの登場により大きく力を削がれていた大西洋連邦は、混乱もありこのタイミングでの独立運動に対応しきれなかった。

 

 現地の勢力は蜂起すると、まずはスコルツェニーが送り込んだドライが率いるMSを保有する部隊とともにペルーに築かれたストライクダガーの生産工場を襲撃して占領。ここにあったストライクダガーを鹵獲し、パナマ戦でストライクダガーの操縦スキルを獲得していた、解放された捕虜たちが乗り込むことで独立勢力の戦力とした。

 

 ストライクダガーを戦力に加えた独立勢力は破竹の勢いで傀儡政権の軍勢を撃破。

 呼応して多くの人々が蜂起した独立勢力に参加し、その規模は恐ろしい速さで拡大。大西洋連邦の派遣した援軍も間に合わず、傀儡政権は打倒されブエノスアイレスが陥落。

 わずか一月ほどの間に、南アメリカ合衆国は悲願の独立を果たし傀儡政権を大西洋の海に叩き出すことに成功したのである。

 

 パナマの失陥で混乱していたところにもたらされた、南アメリカ合衆国における蜂起と、ダガーの生産工場の占領、そして傀儡政権の崩壊。

 立て続けにもたらされる情勢が不利に傾くニュースは大西洋連邦にさらなる混乱を招くこととなり、北米大陸を射程に収められる近場の大陸に巨大な親プラント国が打ち立てられたという脅威の出現を示していた。

 

 傀儡政権を打倒した南アメリカ合衆国の首都、ブエノスアイレスにて。

 パナマで発生した残る捕虜の処遇に関する交渉を進め、ようやく形にしたところでひと段落したスコルツェニーが南米に入ったのは、傀儡政権からこの首都を南アメリカが取り戻した頃だった。

 

 独立運動の発生をパナマ陥落の時まで我慢するようにお願いするなど、現地の勢力との裏ルートでの交流を続け、この独立と新たな親プラント国の誕生にまでこぎつけた工作の功労者であるスコルツェニーが、1ヶ月ぶりとなる副官との再会を果たす。

 

「大活躍じゃないですか。いやぁ、さすがですよ副官」

 

「裏工作ばかり得意となってきた無様な白服の隊長もお久しぶりです。こちらにきたということは、そちらは順調なようですね」

 

「1ヶ月ぶりの毒舌。相変わらず酷いけど、帰ってきたって感覚がするわ。いいもんだ、うん」

 

「気持ち悪」

 

「ガハッ! ……シンプルながらにすっげえ突き刺さる言葉をありがとう副官」

 

 1ヶ月ぶりの再会早々に副官から毒舌をぶつけられ、一度は懐かしさに喜ぶが続け様の2発目をくらいショックを受けるスコルツェニー。

 副官とのいつも通りのやり取りを済ませてから、かつてパナマ戦で捕虜になった時にも見せられたこともありそれほど驚くものではなくなった代わりに何してんだと呆れた目線を向けるようになったこの場にいるもう1人──南アメリカ合衆国独立戦争に参加した元大西洋連邦の軍人であるエドワード・ハレルソンに向き直った。

 

「あなたも1ヶ月ぶりになりますかね、“切り裂きエド”さん?」

 

「……故郷の恩人に言うことじゃ無えけどよ、いつもなのか? それ」

 

「これ? うん、いつものやりとりですよ」

 

 スピアヘッドの翼でディンのコクピットを切り裂いたことからついたあだ名、切り裂きエドで知られる連合のエースパイロットである。

 

 彼もパマナの守備軍にストライクダガーのパイロットして参加していたのだが、グングニールにより無力化されたことで投降。

 その後スコルツェニー隊預かりとなり、南米出身の兵士だったことから解放されて、エイプリルフール・クライシスのエネルギー不足で苦しむ国民を顧みず大西洋連邦の傀儡として暴政振るう傀儡政権に対する独立運動に参加していた。

 

 そんな彼はMSパイロットとしても切り裂きエドの異名に違わない活躍ぶりを見せつけ、ザフトの支援もあり南アメリカ合衆国の独立を勝ち取ることに成功した。

 そして独立後、南米に訪れたスコルツェニーから会いたいと言う旨をドライから聞いて、この場に来ていたのである。

 

「さて、オレに会いたいって話だったけど、その前に──お前さんらのおかげで故郷を取り戻すことができた。ありがとう」

 

 まずはと、ハレルソンはパナマで命を救っただけでなくこの南米の独立をお膳立てしてくれたスコルツェニーに向けて頭を下げた。

 スコルツェニーほどでは無いが戦場でも軽口を叩き、部下をジョークで困らせるなど陽気で困った所のあるハレルソンだが、そんな彼にしては珍しい真摯な態度での礼だった。

 

「あ〜、別にいいって。そんな畏まらなくて。こっちとしても南米が独立して親プラント国に加盟してくれるだけでもありがたいことだから。利用されるの承知の上で独立を支援したし、こちらも利用させてもらう気満々だからさ」

 

「そうかよ。じゃあ、遠慮なしでいいな。オレもそっちの方が気楽でいい」

 

「おう、よろしくさん」

 

 ハレルソンの態度に照れ隠しなのか本音なのか分かりにくい態度をとりながら、これからは味方同士だと手を差し出したスコルツェニー。

 相手を気遣わなくていい、利用しされる関係だと宣言しながら差し出されたその手を、そのくらいドライな関係の方がやりやすいなとハレルソンも受け取る。

 

「ストライクダガーの工場を抑えたことで、大西洋連邦が攻めてきても対抗できる戦力は整った。新政権も親プラント国として加盟し地球連合を脱退、大西洋連邦との戦争に関してザフトと協力体制を築くことも確約してくれたんで。まあ、これからは味方同士と言うわけですね」

 

「ああ、オレもこれからはこの国のために戦うつもりさ。昨日の敵は今日の友ってな」

 

 独立を果たした南アメリカ合衆国は、スコルツェニーの言葉通り、ペルーに大西洋連邦が作ったストライクダガーの工場を占領していることにより、MSを保有する勢力となっている。

 大西洋連邦といえどこの新たな親プラント国は無策の力任せで落とし切れる存在ではなく、そしてザフトにとってはパナマで苦杯を舐めさせられたことからその脅威を知るストライクダガーを有する非常に頼もしい大きな味方となる存在だった。

 

「また別件の仕事があるから私は不在にすることも多いけど、今後は大西洋連邦も再占領に向けて戦力を整えてくる可能性は高いし、スコルツェニー隊はこのままこの口の悪い副官と一緒に置いておくから存分に使ってくれて良いですよ」

 

「そうか。なら、またあんたと肩を並べて戦うことになるわけだな。よろしく!」

 

「微力を尽くします」

 

 残るパナマの捕虜の処遇に関することなど、他にやることが多いスコルツェニーは抜けることは多くなるが、スコルツェニー隊は引き続き南米に駐屯し大西洋連邦の派遣するだろう軍勢に対抗するため南アメリカと共同戦線を張ることになるという。

 それを聞いたハレルソンは、独立を目指した傀儡政権の軍勢との戦いで時にくつわを並べて戦った新しい戦友のドライに今後もよろしくと言う意味を込め片手を差し出し、ドライもそれに応じ握り返した。

 

 今後ともよろしくという挨拶、なら今後も共同戦線でくつわを並べることとなるドライはわかるが、南米を空けることが多いと言ったスコルツェニーが来る必要は薄いはず。

 わざわざ戦いしか取り柄のないエースを名指しに会いたいと言ってきたの理由は、小難しい政治的な方面の話をしに来た訳でもないだろうにと、エドはスコルツェニーに向き直る。

 

「──で、そういう国同士のやりとりみたいな難しい話はオレにすることじゃねえと思うけどさ。あんた、オレになんか用があったんじゃねえの?」

 

「ああ、そうだ! ちょっと頼みがたいことがあってさ」

 

 ハレルソンに言われたことで、本命の用事を思い出したスコルツェニー。

 スコルツェニーがハレルソンを名指しで会いたいと言ってきた理由。それは、今回南米に来る前に太平洋にて交戦し捕虜としたある連合のパイロットに関することだった。

 

「頼みたいこと?」

 

「エドさんは“ジェーン・ヒューストン”って名前に心当たりあったりする?」

 

「──!?」

 

 その名を聞いた瞬間、ハレルソンの表情が変わる。

 それを見たスコルツェニーは、やはりただならぬ間柄にある人物なのかと察した。

 

「ここに来る前に仕掛けてきた連合製MSのパイロットなんだけど、今捕虜としています。会ってもらいたくてさ、時間取れますか?」

 

「勿論だ。むしろオレの方から頼みたい」

 

「二つ返事で即答とは、こちらもしてもありがたい。ちょっと借りるぞ副官」

 

「了解しました。私はこちらで待機していますので」

 

 

 

 

 

 C.E71年6月30日。

 

 独立を果たした南アメリカ合衆国の地にて、同じ旗の下にザフトと戦い、そして与する勢力をいつの間にか違えていた2人が再会することとなる。

 

 そしてこの日。

 1ヶ月の期間で体制を立て直した大西洋連邦が、本格的な南アメリカ合衆国の再占領に向けた大部隊を派遣するべく北米大陸から艦隊を出航させていた。

 

 その艦隊は、イージス、バスターという戦場の盤面を個の力で変えてみせたG兵器という存在を重く受け止めた連合が完成させた、新型のG兵器が配備されている艦隊だった。




拙作の世界はモントゴメリが月本部にかなり早い段階でデータを持ち込んだこととと、G兵器やストライクダガーの活躍ぶりを見た連合上層部がMS開発に対して熱心になっているため、原作よりも進んでいるMSのプロジェクトも多いということになっています。
原作と登場時期がズレている機体がでてくることもあるかもしれませんが、了承ください。
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