その首置いてけザフト共   作:みども

84 / 95
悪の三兵器3

 

 

 南アメリカ合衆国の独立。

 現地の人々の希望など関係ない。大西洋連邦にとって、自国の傀儡ではなくザフトと通じている南アメリカ大陸に存在する国家という存在は、許されないものである。

 

 ブエノスアイレス制圧後、地球連合の脱退と独立を宣言した南アメリカ合衆国は、すかさずプラントと大洋州連合が、続くように汎ムスリム会議が国家として容認している。

 このまま放置すれば、親プラント勢力だけではなく、大西洋連邦の力を削ぎ地球連合の盟主の地位を揺るがそうと企む潜在敵国であるユーラシア連邦や東アジア共和国も南アメリカ合衆国を承認する可能性がある。

 当然大西洋連邦としてはそんな状況の中でいつまでも放置するわけにはいかず、すでにマスドライバーが破壊されたパナマ基地の奪還よりも南米の再征服を優先し、ムルタ・アズラエルが主導し開発した新型MSを搭載した艦隊を派遣してきた。

 

 1ヶ月で傀儡政府を打倒し独立を果たした南アメリカ合衆国。

 しかし、その独立をめぐる戦争は未だに終わっておらず、大西洋連邦の派遣してきた艦隊による首都を舞台とした戦いが勃発することとなる。

 

 C.E71年6月30日。

 ブエノスアイレス近海に展開した大西洋連邦の艦隊は、同盟国という名の傀儡政権の回復と南アメリカ合衆国を占領するテロリストからの国土の回復を名目とし、南アメリカ合衆国に対して降伏勧告などを一切行わない一方的な攻撃を開始した。

 

 大西洋連邦の艦隊が接近しているという情報は、南アメリカ合衆国も入手していた。

 傀儡政権が大西洋連邦の後ろ盾で得ていたMSをはじめとする兵器を鹵獲したこと、彼らの後ろ盾になっているプラントからの供与などにより、ある程度の戦力を確保していた南アメリカ合衆国だが、海軍はまだ持っていなかかったため海上での迎撃ができず、艦隊が大西洋を南下してくるのを指を咥えて見ていることしかできなかった。

 

 それでも艦隊の動向は把握していたため、目標がブエノスアイレスであることは察知しており迎撃準備と市民の避難は進めていた。

 

 それでも迎撃体制は万全ではない。

 大西洋連邦の艦隊が近海に展開してきたが、迎撃用の戦力も集まっておらず、民間人の避難も終えていなかった。

 

 そのため、向こうがまずしてくるだろう降伏勧告に対して交渉の姿勢を見せつつ時間稼ぎをおこない、民間人の避難だけでも済ませようとしていた南アメリカ合衆国だが、その予想を裏切りあろうことか大西洋連邦の艦隊は展開を終えるなり問答無用で都市に対する攻撃を開始してきたのである。

 

 民間人のいる都市に対し、一切の交渉も勧告も宣告もなく始められた攻撃。

 迎撃体制が不十分で、まだ攻撃は先だと思い込んでいたブエノスアイレスはそのミサイル攻撃をほとんど無防備な形で受けた。

 

 圧倒的な物量を有する大西洋連邦の都市を焼け野原するかのようなミサイルの飽和攻撃。

 ブエノスアイレスには多数の爆発が起こり、都市が大地震に見舞われたかのような衝撃が走り抜けた。

 

「ぐっ……! ふざけるなアイツら、民間人だってまだたくさん残っているのに、こんな無差別攻撃をしてくるなんて! 迎撃しろ、ブエノスアイレスを守れ!」

 

 この第一次攻撃で、ブエノスアイレスには大きな被害が出た。

 ムルタ・アズラエルの意向により、民間人の被害も一切考慮せず都市を更地にしすべてのテロリストという名のブエノスアイレスに住まう人々を抹殺しろという命令の名の下に行われた攻撃は、都市に甚大な被害を与えた。

 

 畳み掛けるように飛来してくる大量のMS部隊。

 それに対しこれ以上好き勝手にやらせるかと、南アメリカ合衆国も対抗してMS部隊を展開する。

 

 いまだに逃げ惑う市民も多い中、それを焼け野原に変える都市から逃げることを許さないかのように軍民問わず目につく人間全てに対して攻撃を仕掛ける大西洋連邦のMS部隊。

 

「やめろテメエら!」

「ふざけるなあのヤロウども!」

「家族と故郷を守るんだ! 行くぞ!」

 

 都市の至る所で繰り広げられる虐殺の様子に、南アメリカ合衆国軍の兵士たちは家族と故郷を破壊する侵略者へ怒りを露わにして立ち向かった。

 

 ブエノスアイレスに駐屯していたザフト、スコルツェニー隊もこの迎撃に参加するためMS部隊を展開する。

 隊長機のゾノを始め、ディンやバクゥといったザフトの特徴的なモノアイのMSが出撃し、パナマにおいては敵として矛を交えた南アメリカ合衆国のストライクダガーと肩を並べて、大西洋連邦のMS部隊に対峙した。

 

「ザフトと肩を並べて戦うってのも悪くねえな」

 

「そう言ってくれるとありがたいことですわ。スコルツェニー隊の各員は南アメリカ合衆国軍とともに大西洋連邦を、敵を迎撃したまえ! 民間人がいる都市に勧告すらせず攻撃仕掛けてくる野蛮な侵略者が相手だ、遠慮は要らないが逃げるのは許さないからな! ボッコボコにしてアイツら北米に叩き返してやれ!」

 

「「「了解!」」」

 

 義憤によって戦争に参加することを決意した義勇兵で構成されるザフト軍は、たとえナチュラルの国家であろうとこの類の野蛮な侵略戦争を仕掛けてきた敵に対してはその義憤が燃え上がり士気が高い。

 スコルツェニー隊のザフトたちは民間人も標的にして攻撃を仕掛けてくる大西洋連邦に対し、怒りを露わに戦闘を仕掛けていく。

 

 ただし、大西洋連邦の軍もまた、このスコルツェニーのゾノには散々な苦杯を舐めさせられ多くの仲間を殺された恨みがある。

 スコルツェニーのゾノが出撃してきた姿を見た途端、近場の部隊が一斉にそのゾノ目掛けて突撃を敢行してきた。

 

「アイツは……お前だけは許さねえスコルツェニー!」

「スプルーアンス提督の仇!」

「ジブラルタルで虐殺された中には弟がいた……お前だけは地獄に送ってやる!」

 

「文句があるなら力を示せ! 相手になってやるよキャピタリストの手先ども、ゾノを貧相なダガーで潰せると思うやつからかかってきな!」

 

 障害物の多い都市では、ロングレンジの攻撃は凌がれやすい。

 自ずと距離が縮まる戦場となり、それこそダガーを圧倒するパワーをフルに発揮できるゾノの戦場である。

 群がる連合のMSに対してむしろおびき寄せるかのように挑発するスコルツェニーは、その膂力を活かしクローやフォノンメーザーで群がるダガーを次々に返り討ちにしていく。

 

「副官、私が囮となって港湾の方に連合の部隊を引きつけるから、合衆国の人たちに協力して避難を進めろ!」

 

「了解しました」

 

「それからカーペンタリアにも援軍要請!」

 

「援軍要請はすでに行なっており、2時間後には宇宙からラコーニ隊が降下してくる予定となっています」

 

「さすが副官! でも全然足りないもっと持ってくるように再度要請しろ!」

 

「了解しました」

 

 大西洋連邦から多くの恨みを買っている自らを囮にして、民間人の避難誘導を進めるように指示を出すスコルツェニー。

 援軍要請は大西洋連邦の大艦隊が南下していることを知った時点ですでに副官が行なっており、本国から軌道上より降下予定のラコーニ隊が派遣されているが、10機ばかりのMSの援軍では焼け石に水だと更なる増援を要請するようにスコルツェニーが指示を出す。

 

 それを受けドライはスコルツェニーが囮となっている隙に、海岸から離れているためまだ比較的攻勢が薄い北の方から民間人の避難を進めるとともにカーペンタリアへの増援要請を再度行った。

 

 一方、ザフトと肩を並べて故郷を守るために戦う南アメリカ合衆国軍では。

 地球連合においてMSのパイロットとなってからその頭角を表してきたエース“切り裂きエド”こと、エドワード・ハレルソンがロングダガーを駆使し、その異名に合うビームサーベルの二刀流で対峙する大西洋連邦のストライクダガーを次々に切り裂き破壊していた。

 

「土足で人の国を踏みにじってくんじゃねえよ、下衆ども!」

 

 軽口を叩きながら余裕を見せてMSを切り裂き戦場を渡り歩くエースの姿はない。

 故郷をこのような形で蹂躙されることに、さすがの今回ばかりは普段飄々としていることの多いエドも激怒しており、普段の軽口混じりの彼からはかなり離れた怒りの感情をむき出しにする姿を見せながら敵機を次々と撃破していた。

 

「それ以上やらせるか!」

 

 その隣では、ダガー系統のMSとは異なるシルエットのMS、エドの恋人で彼の説得により南アメリカ合衆国軍に参加したジェーン・ヒューストンの操るフォビドゥンブルーが、特徴的な大鎌の近接戦闘装備“ニーズヘグ”を振り回し、後期Gシリーズに類するダガーを遥かに上回るその性能を駆使して、昨日までの味方であった野蛮な侵略者に刃を振るっている。

 

 故郷と家族を野蛮な侵略者の手先から守る。

 とても分かりやすいその動機のもとに集った南アメリカ合衆国軍の指揮は高く、ザフトの援軍、エドやジェーンと言ったエースの存在もあり、最初の攻撃では混乱していたが徐々に侵略者である大西洋連邦を押し戻し始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 一方、大西洋連邦の旗艦パウエルでは。

 上陸を仕掛けたMS部隊が、勝手にスコルツェニーへ群がり暴走する部隊も多数出ていることから苦戦を強いられている情報が次々に入ってきていた。

 

「……粘るな」

 

 数時間で都市を破壊し尽くし白旗を上げさせる予定だったが、思わぬ南アメリカ合衆国の奮戦ぶりにその当初の予想が狂っていることを、大西洋連邦の艦隊司令官は感じ取る。

 

 その横で肘掛けを人差し指で叩きながらも余裕の表情を崩さないで状況を見ているムルタ・アズラエルは、口元に笑みを浮かべた。

 まるで、そのくらいできる相手でないとつまらないとでもいうかのように。

 

 実際、アズラエルとしては容易く潰れるような相手では彼の肝入りで開発され持ってきた生体CPUをパイロットとする後期GシリーズのMSのデモンストレーションは務まらないから、このくらい奮戦する敵の方が都合が良かった。

 苦戦する様子にむしろ上機嫌となりながら、アズラエルは隣の艦隊司令官に言う。

 

「提督。カラミティ、レイダー、フォビドゥンを出しましょう」

 

「流石に早いのでは?」

 

「良いんですよ。壊すものが多い方が、彼らもやりがいを感じるでしょうし、我々としてもデータを多く取れる。デモンストレーションの舞台としてはもってこいです」

 

「了解しました。カラミティ、レイダー、フォビドゥンの発進準備!」

 

 アズラエルの意向を受け、艦隊司令官が後期Gシリーズ3機の発進準備を進めるように命令を出した。

 

 そのパイロットたち、ナチュラルでありながら投薬などの改造によってコーディネイターを上回る戦闘能力を与えられた存在、生体CPU──ブースデッドマンたちもまた、出撃準備に取り掛かる。

 手渡された薬を飲み、各々の機体に搭乗。

 パイロットとなる生体CPUを含めて完成されたG3機、カラミティ、レイダー、フォビドゥンがその猛威を振るうべく出撃体制に入った。

 

「良いですか皆さん。今回は徹底的に全て壊しちゃってください。中途半端に残すのはダメですよ、人も、建物も、都市機能も、兵器も、残らず壊してください」

 

「ハン、言われずとも全部壊してやるよ」

「分かりやすくて良いじゃん」

「うぜっ!」

 

 モニター越しにアズラエルから受けた命令に、三者三様に返答をする。

 

 無制限にブエノスアイレスを破壊し尽くせ。

 戦いのためだけに造られたブーステッドマンたちにとって、それは何よりも分かりやすい目的であり、彼らにとってもってこいの命令だった。

 

「復興事業もありますからねぇ。事業は多い方がいい。遠慮なく全部やっちゃってください」

 

「ヘェ、フォビドゥンって言うんだ……変な機体。出るよ」

「クロト・ブエル、レイダー行くゼェ!」

「お前ら邪魔すんなよ! オルガ・サブナック、カラミティ出るゼェ!」

 

 旗艦パウエルより、3機のMSが出撃してくる。

 

 ブリッツの後継機に当たる、隠密ではなく高い防御性により先陣を切り突撃することをコンセプトに作られたMS、フォビドゥン。

 

 バスターの後継機に当たる、徹底的な火力重視による重武装を施された破壊力では他の追随を許さないMS、カラミティ。

 

 イージスの後継機に当たる、MA形態への変形機構を搭載し重力圏下においても飛行可能な機動力と推進力を活かした強襲を得意とするMS、レイダー。

 

 禁断、災厄、襲撃者の名をもつMSが、南アメリカ合衆国とスコルツェニー隊のザフトに対してその猛威を振るうべく飛び立った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。