その首置いてけザフト共 作:みども
まずはフォビドゥンから。
闇落ちニコル(違います) VS 切り裂きエドになります。
いやでもロングダガーでは……
南アメリカ合衆国。
この国が大西洋連邦の傀儡として存在するか、親プラント国として独立を果たすか、それは連合・プラント大戦に大きな影響を与える。
南アメリカ合衆国独立戦争はこの大戦の勝敗に多大な影響を与えることになるため、この内戦の情勢は当事国である大西洋連邦と南アメリカ合衆国だけでなく、大西洋連邦と地球連合を構成する同盟国でありながら潜在敵国であるユーラシア連邦や、中立ではあるもののどちらが勝利しても太平洋という立地からその影響を受けることが目に見えているオーブ連合首長国など、多くの勢力が注目する戦争となった。
当事国である大西洋連邦が、パナマ奪還よりも優先し後期Gシリーズである3機を投入する大艦隊を派遣したことからも、大西洋連邦がどれだけ南アメリカ合衆国の存在を重視しているかがわかるだろう。
当然ながら敵対するもう片方の当事国であるプラントも黙ってはおらず、独立支援の工作をしてきたスコルツェニー隊に加えて増援要請を受けた本国から10機のMSからなるラコーニ隊を増援として派遣しており、カーペンタリアからも更なる増援を準備しているなど、続々と戦力の増強を行う動きを見せていた。
大西洋連邦もプラントも、大戦に勝利するために南アメリカ大陸を戦場としたこの戦争に介入をしている。
現地で戦う将兵の心境はともかく、国家の首脳部は南アメリカ合衆国を大戦を優位に導くための材料としか見ておらず、そこに表名に掲げる国土回復だの独立支援だのと言った大義はない。
だが、現地で大西洋連邦からの圧力に対抗して蜂起した南アメリカ合衆国の人々にとっては、これはプラント利権をめぐる戦争の一環でも、コーディネイターとナチュラルという人種間の戦争でもない。
彼らにとっては故郷と家族を侵略者から守り、自分たちの国家を取り戻すための戦いであり、プラント利権問題だの人種問題などといった物は関係なかった。
「もう二度と、俺たちの国を奪わせたりしない! 絶対に屈さねえぞ、奴らを叩き出せ! ここは俺たちの国、俺たちの故郷だ! 1mたりとも
「そうだ!」
「行くぞ!」
「どれだけ数が多かろうとも!」
「最後の1人になるまで俺たちはあきらめない!」
パナマ守備戦力の増強を目的にペルーに建設されたMS工場を占領して獲得した多数のストライクダガーを戦力として、大西洋連邦に抵抗する南アメリカ合衆国軍。
だが、故郷を取り戻すためという大義のもとで戦う彼らを嘲笑うように、戦場にそのMSは降り立った。
「じゃあ、最後の1人まで殺っちゃえば終わりってこと? 分かりやすくて良いじゃん」
「なっ!?」
海岸を防衛している南アメリカ合衆国軍のMS部隊の一団。
そこに降り立ってきたのは、それまで彼らが交戦してきた大西洋連邦のダガー系統のMSとは明らかに異なる設計で作られたMS“フォビドゥン”である。
「新型機……!?」
「こけ脅しだ、フェイズシフト装甲だろうとビーム兵器は有効だろ!」
背部に巨大なユニットを背負い、死神を連想させる大鎌を近接戦闘用装備として携えた緑色のG兵器。
上空の対MS戦闘ヘリをイージスや彼らの搭乗するストライクダガーなどにも搭載されている75mm対空自動バルカン砲“イーゲルシュテルン”で数機瞬く間に落とした初見のMSの登場に、ストライクダガーのパイロットたちは驚きながらもビームライフルを発射する。
地球の重力圏内でも飛行能力を確保できる巨大な背中のユニットといい、ダガーよりもイージスなどのG兵器を連想させる頭部といい、見るからに他の量産型MSとは違う雰囲気を感じるが、故郷を守るという大義のもとで戦う彼らにとっては敵ならば関係ない。
たとえフェイズシフト装甲を備える新型機だとしても、ダガーはジンとは違う。この兵器の装甲にも有効なビーム兵器がある。
巨大なその機体はむしろ鈍足だろうと、大鎌の射程に入る前に破壊して仕舞えば良いと、ビームライフルをフォビドゥンに向けて発射するストライクダガー。
「──フッ」
それを見たフォビドゥンのパイロット、シャニ・アンドラスは、フェイズシフト装甲でも脅威となるはずのストライクダガーのビームライフルを鼻で笑い、あろうことか回避もせず背部ユニットを展開するように屈むだけでほとんど無防備にそのビームを受ける。
近接戦闘用装備である大鎌“ニーズヘグ”は届かないが、ビームライフルを咄嗟に躱すのは困難なほどの距離ということもあり、フォビドゥンは一方的にビームライフルの攻撃を受け蜂の巣になるしかない。
そう思い勝利を確信した南アメリカ合衆国の兵士たち。
「──なに!?」
だが、直後に彼らの表情は驚愕に変わる。
ストライクダガーの発射した多数のビームライフルは、フォビドゥンに当たる直前にあらぬ方向に曲がるという摩訶不思議な現象を起こし、一撃も装甲に届かなかったのである。
「なんで、ビームライフルが……?」
「ぼさっとするな、撃ちまくれ!」
「は、はい!」
困惑する南アメリカ合衆国軍のパイロットたち。
しかし、ここは戦場。理解不能な現象に見舞われたからといって、敵を前に呆然としている暇などない。
隊長機からの叱咤を受け、すぐにビームライフルをフォビドゥンへ向けて撃つ。
「無駄だよ」
だが、それもまたあらぬ方向に曲がりフォビドゥンの装甲を掠めもしない。
混乱する南アメリカ合衆国軍のパイロットたちをよそに、シャニはフォビドゥンのバーニアを噴射して一気に距離を詰め、大鎌を一閃。
「うわあああぁぁぁ!?」
3機のストライクダガーをニーズヘグによって一撃で両断し、瞬く間に鉄屑の瓦礫に変えた。
「おのれ!」
部下を殺されたことに怒る隊長機のダガーが、ビームライフルの代わりにビームサーベルを抜刀し、盾を構えて突撃してくる。
理屈はわからないが、ビームライフルでは届かないカラクリがあると判断して、ビームサーベルを武器にして接近戦を仕掛けてきた。
怒りながらも冷静に有効な武装を見抜く頭はあるらしい。
だが、そんなの関係ないとシャニはフォビドゥンのニーズヘグを構える。
「デカブツの鎌など、懐に入って仕舞えば──」
「入れるわけないじゃん」
「ぐっ──!?」
ニーズヘグは大鎌。
見た目は派手だが、距離を詰められればその大きさと取り回しの扱い辛さが仇となり、ビームサーベルには対抗できない。
隊長の狙いは鋭いところをついていたが、しかしフォビドゥンを操縦するのが自分たちと同じAIのサポートを受けたナチュラルだという認識が誤りだった。
接近するストライクダガーに、フォビドゥンは一般的なAIの操縦サポートを受けたナチュラルな扱うそれとは比べ物にならないコーディネイター並み──いやそれ以上の速さで反応すると、大鎌を器用に回して石突を繰り出してきた。
パイロットは反応できなかったが、ストライクダガーの操縦サポートAIがコクピットを狙う攻撃に対して防衛行動として盾を構え、そのニーズヘグの一撃を防ぐ。
だが、ストライクダガーにできたのはそれまで。
フォビドゥンの圧倒的なパワーはストライクダガーの出力とは大きな差があり、ニーズヘグに突き飛ばされたストライクダガーの盾は反曲がり、機体はそのパワーに耐えきれず吹き飛ばされた。
ナチュラルでありながらコーディネイターと渡り合えるMSパイロットを作るというコンセプトの元、非人道的な薬物投与と外科手術によって造られた改造人間──ブースデッドマンを
近接戦闘や機動において内部のパイロットにかかる負担など安全も考慮して造られているストライクダガーやフォビドゥンブルーと違い、ブーステッドマンを搭載している機体はそういったセーフティが必要ないため、出力が他の有人機のMSを圧倒するパワーを与えられている。
そんなフォビドンが振るうニーズヘグが、ストライクダガーに防げるはずもない。
突き飛ばされて地面に倒れたストライクダガーに、フォビドゥンは無慈悲に反撃することも許さず、立て直す暇も与えず、両腕に搭載されるフェイズシフト装甲を持たないMSの装甲ならば容易く貫く115mm機関砲“アルムフォイヤー”をコクピットに発射して破壊した。
「ぐああああぁぁぁ!?」
「邪魔」
わずかな攻防。
4対1という数的優勢。
そんなものなどなんの障害にもならないと、単機でダガーの一部隊を無傷で殲滅したフォビドゥン。
「次、行こ」
しかし、そんなもので満足するはずもなく。
シャニは次の獲物を求めてブエノスアイレスの市街地の方に向かう。
そこでは異名の通り二刀流のビームサーベルを振り回すロングダガーで奮戦する切り裂きエドこと、エドワード・ハレルソンの姿があった。
「面白そうなのみっけ」
エドのロングダガーを新たな標的として見据えたシャニのフォビドゥンが、ブエノスアイレスに向けて突撃する。
都市に入ろうとするフォビドゥンを止めようとストライクダガーの部隊が立ち塞がるが、そんなものでブーステッドマンが操縦するフォビドゥンを止められるはずもなく、ビームライフルは掠めること許されず曲げられ、まともな反撃もできずにニーズヘグの餌食となった。
「ハァ!」
「G兵器!? チッ!」
誘導プラズマ砲“フレスベルグ”で仕掛けた先制攻撃は、ロックオンに気づいたエドが咄嗟に回避して外れる。
しかし構うものかと言わんばかりに突っ込んできたフォビドゥンに、エドは新型のG兵器に驚きながらも両手に持つビームサーベルで対応、迎撃した。
「でかい図体してなんつーパワーとスピードだよこいつ……!」
「へぇ……面白いじゃん」
背部の巨大なユニットにより、鈍重そうな第一印象を受けるフォビドゥン。
しかしブーステッドマンを搭載するゆえに安全性度外視で作られた特別な機体は、その見た目と裏腹に生体CPUの能力も相成り恐ろしい機動性とパワーを持つ。
それに驚きながらも、しかし持ち前の戦闘センスでフォビドゥンの最初の攻勢を凌ぎ切ったエド。
しかし機体性能もさることながら、ナチュラルどころかコーディネイターでも敵を潰す前に中身が壊れそうな出力を見せるフォビドゥンを操っているパイロットの技量にも一歩でも踏み外せば自分が死ぬだろう未来を見て、額に冷や汗が流れていた。
距離をとってエドのロングダガーと改めて対峙したシャニの方は、ヘルメットの下で命のやり取りをしているとは思えない緊張感や恐怖がない笑みを浮かべ、壊しがいのある獲物と出会えたことに歓喜を見せた。
「じゃ、死ねよ」
「ちっとやべえかもな……だが、負けてやる気なんざねえよ! 行くぞ!」
ブエノスアイレスの中は、まだ南アメリカ合衆国軍のMSの方が多い。
如何にイかれたMSだろうが、囲って叩けば勝機はあると、周囲の友軍機であるストライクダガーたちと共にフォビドゥンに立ち向かうエド。
狭い市街地内にて、緑の死神と切り裂きエドがぶつかる。
アルムフォイヤーでエドの随伴機に風穴を開けて撃破するとともに、ニーズヘグを振り上げ突撃するシャニ。
側面から増援のストライクダガーのビームライフルは、フォビドゥンを象徴する装備である背部のユニット、コロイド粒子を用いることで作られる磁場によりビームを曲げ自機への命中を避ける特殊装甲、エネルギー偏向“ゲシュマイディッヒ・パンツァー”で防御する。
「そら!」
「フッ」
「くっ……!」
邪魔者を排除し正面からエドのロングダガーが携える二刀流のビームサーベルとニーズヘグにて切り結んだフォビドゥンは、そのパワーでロングダガーを圧倒し押しこんだ。
上段から振り下ろそうとしたビームサーベルを、ニーズヘグの柄を刃ではなくサーベルを握るロングダガーの拳にぶつかることで止められたエドは、すぐに押し込まれて機体を倒される前に鍔迫り合いから離れる。
「そこだよ」
しかし、下がればその間合いはビームサーベルではなくニーズヘグのもの。
鍔迫り合いで押し倒すことからすぐに切り替えたシャニのフォビドゥンが振り回すニーズヘグがロングダガーのコクピットを切り裂こうと迫った。
「ぐっ──!」
咄嗟にニーズヘグの刃をビームサーベルで切り裂く形で防ごうとしたエドだが、その動きを読んでいたかのようにシャニはイーゲルシュテルンでロングダガーの頭部に牽制射撃をしかける。
装甲を貫かれることはなかったものの、ロングダガーのカメラにイーゲルシュテルンが命中する衝撃と着弾の火花が飛び散り、エドの視界が一瞬塞がれる。
(ヤベェ……!!)
その一瞬は、この戦闘では命取り。
シャニはニーズヘグをビームサーベルと当たる前に止め、無防備なコクピットに向けてこの距離ならビーム偏向も必要ないと直接のプラズマ砲フレスベルグを発射しようとする。
その攻撃を防ぐ術はエドにはない。
見えずとも確実に命を狙ってくる攻撃が仕掛けられようとしており、自分がそれに何もできないことを直感で察知していたエドは、その命を奪われる一瞬がとても長く感じた。
ロングダガーのコクピットをフレスベルグが貫いて終わる。
切り裂きエドといえども、生体CPUの扱うフォビドゥンの相手ではない。
それで勝負は決まる──はずだった。
「──は?」
フレスベルグを発射するまさにその直前、シャニの元に旗艦パウエルから最優先での帰還命令が齎された。
その画面を見て、思わず手が止まるシャニ。
その一瞬の隙を先ほどまで自分が死ぬと思っていたエドは見逃さず、すかさずビームサーベルを突き出す。
「邪魔」
「ぐっ……!」
しかしそれはコクピットの直上を蹴り付けることでシャニに軽くあしらわれ、ロングダガーは圧倒的なフォビドゥンのパワーにより振り回されたニーズヘグの追撃により地面に突き飛ばされて無様に倒れ込んだ。
「…………」
そのロングダガーを一瞥すらせず、シャニはフォビドゥンを飛ばす。
理由は不明だが、フォビドゥンに終始圧倒されたエドはシャニに見逃される形で一命を取り留めた。