その首置いてけザフト共 作:みども
お次はカラミティ無双回です。
これでも三機とも全然本気ではない軽く暴れているレベル。
バクゥ、ディン、ザウートでは、まあ……
「オラオラオラァ!」
一方、もう1機のブーステッドマンを搭載する後期Gシリーズ“レイダー”に輸送されて南アメリカ大陸に降り立ったMS“カラミティ”は、対峙するザフトの援軍であるスコルツェニー隊を相手にその火力による猛威を振るっていた。
両肩に背負う125mm2連装高エネルギー長距離射程砲“シュラーク”は、一撃でMSを容易に破壊できる出力を持つ。
加えて両腕には、ブリッツのトリケロスにも見られた兵装とシールドを一体化させた装備である115mm2連装衝角砲を搭載したシールド装備“ケーファー・ツヴァイ”、機体バッテリーではなく外部装備のマガジンから弾頭を確保している携行型の大型バズーカである337mmプラズマサボット・バズーカ砲“トーデスブロック”を装備しており、火力においてはバスターすら比にならないというのに手数でも上をいくというまさに砲撃戦において肩を並べる者のいない圧倒的な火力を有する機体である。
そしてこの機体の最強の装備である、イージスにも見られた胸部に搭載されている580mm複列位相エネルギー砲“スキュラ”。
フェイズシフト装甲を改良しバッテリーの消耗を抑えたトランスフェイズ装甲により、武装にエネルギーを回せるようになったことで実現した火力特化型機は、多対一の戦闘においてその破壊力を大いに発揮する。
人の手に余るほどの多数の武装、その重武装に反して各所に備えられたスラスターにより高い機動性も確保している機体のため、極めて操縦性が複雑であり、さらには火力や機動性の反動がモロにパイロットにも突き刺さるという大きな負担を必要とする期待のため、たとえAIのサポートを受けたとしてもナチュラルには当然扱える代物ではない。
ブーステッドマンによる運用を前提に作られた機体は、オルガ・サブナックという生体CPUを搭載してこそ完成した機体であり、そして操縦者も含めて完成されたこの機体はその圧倒的な火力を発揮してザフトのMSをゴミのように殲滅していた。
「どうしたどうした!? もっと出てこいよ、まだまだ足りねえんだよ雑魚どもが!」
シュラーク、ケーファー・ツヴァイ、トーデスブロック、そしてスキュラ。
いずれも一撃掠めるだけでザフトのMSを容易に破壊する高出力兵器でありながら、それを湯水のように消費してあたり一帯に撒き散らすカラミティ。
その火力を前にドライの率いるスコルツェニー隊のザフトMS部隊は手も足も出ず、鈍足なザウートから、機動性に優れているはずのバクゥやディンまで、たった一機に多くの犠牲を出し、その上傷一つ与えられていないという状態だった。
「ふざけた火力ですね。ラコーニ隊がきてもあれがいる限りは焼け石に水、隊長の言う通り戦力がまるで足りていなかった……」
機体のネーム通り、ザフトにもたらされる厄災という表現が似合うだろう友軍機が残骸に次々と変えられていく様とその惨状を生み出すカラミティを見て、ラコーニ隊の援軍では全く足りないだろうことを認識するドライ。
戦場にでてきた新型機の対応に動かしたスコルツェニー隊のMSが到着する順に破壊されていく惨状を森に隠れるバクゥから見ていた彼女は、この状況で海に潜っている隊長に通信を飛ばす。
「隊長、敵旗艦と思われる空母より出てきたMSにより、こちらの部隊が半数以上破壊されています。このままでは援軍到来前に戦線の崩壊もあり得ます。海に潜っている暇があったらこちらの対応に来てください」
『副官、その冗談は笑えません。どんだけ強くてもナチュラルの扱う機体なら、機体性能はともかくパイロットの都合上限界があるから。新型とか言って、どうせ大軍できているんでしょ?』
「いえ、事実ですが。イージスなどに見られる頭部シルエットから連合の新型のG兵器と思われます。パイロットも何かあるのか、ナチュラルとは思えない技量で機体を制御しています。端的に申し上げて、我々では抑えきれません」
『……船を潰して行けばそいつらも帰るはず。私がなんとかするから、ちょっと時間稼ぎしておいて』
「了解しました」
ドライからの報告を受けたスコルツェニーは一度それはあり得ないと否定したが、証拠映像とともに戦況を知らされるとそれが真実だと思い知らされる。
カラミティの圧倒的な火力とナチュラルがパイロットではあり得ないその機体を制御する技量に、真正面から戦っても勝てるはずがないと即座に判断すると、ゾノが得意とする海戦により艦隊に損害を与えることで撤退に追い込む方針を取ることを決めて、ドライたちには可能な限り時間稼ぎをするように指示した。
「各員、敵新型MSに対しては遅滞戦闘に努めてください。隊長が艦隊に被害を与え、敵新型MSを含めた敵軍を撤退に追い込みます。その間防衛線の維持を優先し、敵MSの撃破に固執せず遅滞戦闘に努めてください」
それを受け、ドライもスコルツェニー隊の各員にそれを通達する。
もっとも、カラミティが相手では時間を稼ぐだけでも命懸けではあるが。
それでも、どう撃破すればいいかわからない謎の新型機を相手に手探りの戦闘をしていたところから、明確な目的が提示された戦闘となったことで、多少はザフト側の戦いぶりもまともになってきた。
一方的にその火力の餌食となり被害が拡大するのは変えられないが、とにかく時間稼ぎに徹することを目的としたことで少しは被害を抑えられ──なかった。
「撃滅ッ!」
「て、敵増援が──がああ!?」
「バカな、こいつMSだと──うああぁぁ!?」
カラミティだけでも苦戦していたところに、空からレイダーが強襲を仕掛けてきた。
グゥルのようなものと認識していたザフトは、イージス同様のMA形態からMS形態への変形機構を持つレイダーの見せた正体に驚き、やっと安定してきたと思われた戦線が崩壊する。
襲撃者のネームに違わぬレイダーの急襲を受け、混乱するザフトに、カラミティの放つ圧倒的な火力が殲滅の牙を向く。
「横取りしてんじゃねえよクロト!」
「へっ! 取られる方が間抜けなんだよバーカ!」
「んだとテメェ!」
「敵の射線上にあいつを──な、馬鹿なぁぁあああ!?」
レイダーを利用してカラミティの射線から逃れようとする者もいたが、あろうことかカラミティは友軍であるはずのレイダーも平気で狙ってその火力を向け、レイダーの方もまるで味方に撃たれるのも当たり前というかのようにザフトの想定を上回る動きで飛び回るため、カラミティの火力から逃げる安全圏はなく、ザフトの部隊の被害は拡大する一方であった。
「これではラコーニ隊がくる前にこちらが全滅してしまいますね。我々の立場としてはあまり褒められるものではないですが、ここは南アメリカ合衆国軍に救援を求めるとしましょう」
レイダーの参戦によりスコルツェニー隊の壊滅も時間の問題となり、ドライはこのままではラコーニ隊の到着を待たずして殲滅されてしまうと、やむなく南アメリカ合衆国軍に救援を要請する。
「この国には手出しさせない!」
南アメリカ軍も苦しい戦況だが、流石にカラミティをブエノスアイレスに到達させるのは最悪の展開であることを理解しており、スコルツェニー隊の救援要請を受諾。
生半可な戦力では返り討ちに合うだけと、ザフトに対して強い憎しみを抱いているはずのエドの恋人ジェーン・ヒューストンが操縦するフォビドゥンブルーが駆けつけてくれた。
「さて、私も前線に参加しましょうか。この戦況、戦場を俯瞰し指揮する副官よりも、一機でも多くのMSという戦力が必要な時でしょうから」
フォビドゥンブルーの参戦を確認したドライも、バクゥを起動させ前線に向かう。
ブーステッドマンを搭載する後期Gシリーズが南アメリカを戦場とし、その猛威をザフトと南アメリカ合衆国軍に振り翳す。
3機の新型機の登場により、戦況は大きく傾けられつつあった。
一方、連合の新型MSである後期Gシリーズの3機が前線で暴れている中、ブエノスアイレス近海に展開する大西洋連邦の艦隊は。
南アメリカ軍が海軍を持たなかったことで出撃したMS部隊らが前線で暴れるのを安全圏で見ているだけと思い込んでいた彼等の足元に、スコルツェニーの率いる隊長機のゾノと5機のグーンからなる水中戦闘用MS部隊が襲来した。
「ミサイルとMS送り込んで安全圏から物見遊山のつもりですかね? ここは戦場、安全な場所なんてものはないっての。そんな君たちは、残らず海の藻屑になってもらいましょうかね!」
「魚雷発射!」
「くたばれナチュラルども!」
「海の底に沈め!」
ゾノとグーンから、艦隊に向けて魚雷が多数発射される。
艦隊の中でも南米大陸に近い前方ではなく、安全圏と思い込む後方に展開していた彼等にとってその攻撃は想定外であり、魚雷攻撃によって艦体に穴が開けられそこから入り込む海水により沈没が避けられないダメージを負う艦が多数出た。
「敵を撤退に追い込むのが目的ですから、功名にはやらない事。戦闘どころじゃない被害を与えることに成功した敵艦、その救援に駆け回る敵艦は無視して、まだ戦える標的に次々と切り替えて魚雷を撃ち込んでいきなさいよ。こっちの弾数にも限りがあるんだから、そこら辺の冷静さは欠かさないように!」
「「「了解!」」」
「いい返事じゃないの。そこら辺理解しているなら、あとは存分に暴れてよろしい。私も負けるつもりないんでよろしく!」
ブエノスアイレス近海まで一切の障害なく到達できたことから、ザフトの援軍にもグーンはいないとたかを括っていた艦体にとって、スコルツェニー隊の水中部隊の攻撃は想定外だった。
もともと海戦において連合がグーンに勝利したのはアデン湾と紅海のみ。水中戦闘を可能とするMSがいなければ、海の戦場はザフトの独壇場であるということを彼等は忘れていた。
慌てて艦隊からストライクダガーが海に放り込まれるが、陸戦とは勝手が違う海戦はバズーカを装備して飛び込めば勝てる戦場ではない。
紅海でモラシムを撃破したストライクダガーは海戦のデータ収集も目的としてミランダが搭乗していた機体であり、操縦サポートAIには水中戦闘のデータがまだまだ足りずこの時期のナチュラルが扱うストライクダガーにとって海の戦闘など不可能なレベルだった。
「うわ、ヘッタクソ。紅海じゃモラサムさんの乗るゾノすらもダガーに勝てなかったって聞いていたけど、絶対魔女達が乗っていた機体──パイロットの技量で勝ったでしょ。あれなら余裕ですわ」
まともに動くこともできていない、艦を軽くするために海に捨てたと言われても納得できるほど無様な動きしかできない水中に出撃してきたダガー隊の姿に、紅海海戦のことを聞いていたスコルツェニーは一瞬警戒したがすぐにそれがパイロットの技量による勝利だったことを見抜く。
「そんな動き!」
「あの白鯨に比べれば!」
「止まって見えるわ!」
加えてスコルツェニーとともに出撃してきたグーンにのるパイロットは、艦隊という大きな的を海中より狙い撃ちするばかりでMS戦闘のスキルが鈍っていたインド洋方面のザフトと違い、南太平洋にてフォビドゥンブルーとMS同士の海戦を経験している者たちである。
機体性能だけでなく技量においても艦隊から繰り出された海戦未経験のストライクダガーたちよりも優れており、まさに勝負にならなかった。
「邪魔だっつの! 勝手に沈むダガーなんかあしらうだけにしとけ、船の方が優先な!」
「「「了解!」」」
「素直でよろしい。マジでニーラゴンゴの皆さん、私の部下に欲しい」
スコルツェニーの艦隊に対する海からの攻撃は大きな効果をもたらし、拡大する被害に艦隊はたまらず一時撤退を開始。
それに伴い最優先でエドのロングダガーと交戦していたフォビドゥンに帰還命令が出され、上陸した各部隊に対しても艦隊の後退とともに撤退の命令が通達される。
カラミティとレイダーにより全滅しかかっていたスコルツェニー隊の方も、この影響で2機のG兵器が一時的に下がったことで、なんとか戦線の崩壊は免れることができた。
スコルツェニーの方も時間稼ぎが目的だと、フォビドゥンがパウエルの防衛のために来たことを受けて、巧妙に逸る真似は避けMS部隊を艦隊に撤退させたところで戦果は良しとしこちらも撤退。
ラコーニ隊が増援として降下してきたこと、艦隊の被害が大きく再建の必要があったこと、日没が近づいていたこともあり、大西洋連邦の艦隊も一時撤退し1日目の戦闘は幕を下ろした。
カラミティが暴れただけで一矢報いることもできずにスコルツェニー隊全滅寸前の状態になりました。