上級吸血鬼クロノ

彼は居所を3年に1度転々とする生活を送っていた。その理由は単純明快、人間種にとって吸血鬼は敵対対象だったからだ。ある日、いつものように狩りにクロノは出かけた。深くて暗い、森の中へ...,..。

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久しぶりに思いついたので投稿。反響があれば、続きを書くかも。


或る上級吸血鬼

 

上級吸血鬼である。霧に姿を変え、超人的速度で動き、不死の存在だ。

極めて危険で、個体ごとに卓越した特別な能力と技を持つ。途方もない寿命の中、磨き上げあげられた技だ。彼らが本気を出せば、人間の国家など一晩中に滅びるだろう。

 

この物語は、そんな上級吸血鬼の中でも少年という異端児、そしてその迫害と成長の物語だ。

 

「ここは......どこ?」僅かな鈍痛と共に起き上がったクロノは、不安と困惑を覚えた。化物の中でも特に注意が必要な自分達が、意識不明になるという事、それに驚きを隠せなかった。

そして、口煩い相棒(少なくともクロノはそう思っている)のキィキィと鳴く声も聞こえない。明らかな異常事態だった。

「僕は……そうだ、あの女」

クロノの記憶は、自分が何者かによって切られた所で途切れていた。そして気付けばここに居たのだ。

(一体何が起こったんだ?相棒は死んだのか?)

クロノは吸血鬼の中でも異端児であり、上級吸血鬼と疑われる程、弱かった。また若かった。100年も生きていない、牙の生え揃っていない「ひよっこ」だったのだ。しかし、それでも人間に負けない程度には強かった筈だ。それがこうもあっさり捕まるとは……。

「あぁ……畜生!」

 

周りはジメジメして、洞窟のようで..... 網目がいっぱいだった。つまり、クロノは牢獄に居るということだ。それも劣悪な。

 

手には錠、腕は背後に回されている。ディメリティウムを使っているみたいだが、この程度の拘束なら脱出できる。問題は"誰が""何のために"クロノをこの状態にしたのか、だ。

 

...サイコパスな人間に捕まった?

___いや、その程度に捕まるはずがない。

 

...一族の掟を破った?

___いや、ない。両親に散々躾けられた。特に同族を殺した覚えもない。

 

...国家転覆をしたか?

___犯人だと誤解されている可能性はあるが、それならもっと警備が厳重な筈だ

 

そう、そうだ。この牢獄には看守がいない。野晒しの洞窟に鉄の柵と錠、あまりにお粗末だ。個人が"何かの目的"で一時的に交流している......?

 

クロノは考えを纏めるうちに落ち着いてきた。少なくとも、吸血鬼にとって「死」といえる状況が近づいていないことが、その落ち着きを与えた。

 

「霧化、活性化、透明化は問題なし。やっぱり、ディメリティウム(ある種の対魔素材、魔法の力を遮断できる)は僕達に効かないか。脱獄は簡単そうだね」

腕を霧に変えたり、爪を伸ばしたり、いくつかの能力をクロノは試した。今のところ、問題はない。

 

「ほぅ、脱獄が簡単そうとはどういうことかね?」ヌッと、意識の隙間から現れた騎士は、真白な甲冑と凛々しい顔立ちをしていた。胸の膨らみから察するに、女だろう。

兜までして、臨戦体制だ。

 

ツゥ、とクロノの額を汗がしたたる。不味い、独り言を聞かれていたか。

「いやいや、まさか。そんなこというはずがないよ。見てくれよ、足を縄で括られて、手をディメリティウムの錠で拘束されてる!!魔術師、ウィッチャー、詐欺師、どんな人々だったこの牢獄からは逃れられないよ。」

「でも貴方は怪物よね?なら、話は別でしょう。その気になれば、いつでも脱走できる。

でも、しない。それは貴方が疑問を持ってるから。違うかしら?」

 

.......一瞬、静寂が空間に放たれた

「まぁ、そうだね。正直、情報はいくらでも欲しいんだ。何か話してくれることはあるの?」黒髪の少年は小首を傾げながら、困ったような声で喋る。

 

「まずは名前を教えて貰えるかな?僕の名はクロノ・クラウン。一応、上級吸血鬼さ」

「私はアリアドネ・メイセン。騎士団に所属する騎士だ。一応、伯爵家の長女でもある。」

「ふーん……伯爵、訳ありみたいだね。騎士団ってなんだい?」

「貴方達みたいな連中を捕まえたり、退治したりするのが仕事よ。」

「へぇ...それで、僕はどうなるかな?」

「とりあえず牢屋に居てもらうわ。」

「成程ねぇ……じゃあ、質問を変えよう。君達の目的はなんだい?」

「貴方達の種族は……特に上級吸血鬼は、危険すぎるのよ。だから、捕獲して研究する必要があるの。」

「研究……ねぇ……あ、もしかして、僕は解剖されるの!?」

「……いえ、そういうわけじゃないけど。」

「ならいいよ!安心した!」

「……随分と余裕があるのね。」

「そりゃあね。だって、君達が僕を殺せないのは分かってるし、さっき言ったように脱獄が簡単そうなのは事実だからね。」

「ほぅ、その余裕がいつまで持つか見ものだな。」

 

ピリリとした緊張が僅かに走る。両者共に相手を警戒しながらの会話。何が起きるのかわからないが故の緊張だ。

 

「……ところで、ここはどこだい?なんで僕らは捕まったんだろう?」

「ふむ。そうだな、まずここは、王国の地下にある牢獄。王国には沢山の牢獄があって、その中の一つになる。」

「そして貴方は、その......村人達の密告で、怪物あるいは犯罪者の疑いをかけられた。

私が、それに応じて捕まえたのだ」

 

......なるほど。クロノは腑に落ちた。少しあの村には長居しすぎたかもしれない。成長の遅い身体に、一人で行う狩り。獲物を捕らえる時に、活性化を見られたのかもしれない。

薬草医に、自分の知っていたキノコの知識を教えた。それが仇になったのかもしれない。

あるいは、魔女狩りの余波か...。

 

再び、静寂が空間を支配する......。

「さて、質問はそれぐらいか。すまないが、私は別の仕事がある。失礼するよ」

アリアドネはそういってその場から立ち去っていった。

 

(現在地はわからない。捕まった理由は密告。

元いた場所に戻るのは不可能か)

クロノは思慮に耽りながら、対策を考えた。脱獄すべきか、そうではないか。

 

(今は、情報が少なすぎる。霧化して逃げるのは簡単だけど、あの女騎士から色々聞いてからでも問題はないかな?)

 

ひとまず、今は大人しくして、アリアドネから話を聞くことに決めた。

 




上級吸血鬼、いい設定ですよね。個人的にデトラフは救われて欲しい

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